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現代アートが嫌いでもいい。大規模すぎる『大地の芸術祭』ガイド

現代アートが嫌いでもいい。大規模すぎる『大地の芸術祭』ガイド

杉原環樹
撮影:佐々木鋼平
2015/07/15
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過疎高齢化の進む日本有数の豪雪地、越後妻有(新潟県十日町市、津南町)地域の広大な土地を美術館に見立て、2000年から3年に1度開催されている世界最大級の国際芸術祭『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』。農業を通して大地と関わってきた「里山」の暮らしが今も豊かに残っている地域で、「人間は自然に内包される」を基本理念として集められた作品群を巡る旅は、地域作りの先進事例として、国内外から注目を集めています。

誰にとっても未体験の試みだった第1回『大地の芸術祭』(2000年)は、ここ10年ほどで一気に数が増えた地方活性化のためのアートプロジェクトの潮流を作り出した先駆的な実験でもありました。しかしその歩みは平坦ではなく、現地の自治体や住民による厳しい批判との戦いの月日でもあったと言います。

過酷な自然環境の中で生きる人々に対する、総合ディレクター・北川フラムの熱い想いから始まったという『大地の芸術祭』は、15年間の歳月を経てどのように変わったのでしょうか。また、多くの反対意見に北川さんはどう立ち向かってきたのでしょうか。開催準備に追われる『大地の芸術祭』の様子を一足早く、北川さんに案内していただきました。

※記事掲載後、大地の芸術祭事務局の意向により作品解説部分を一部修正いたしました。

(メイン画像:『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 草間彌生『Tsumari in Bloom』2000年 photo:Osamu Nakamura)

東京23区を超える面積に、380点もの現代アート作品が並ぶ「世界最大級の芸術祭」

「世界最大級の芸術祭」という少し大袈裟な紹介をしましたが、その表現は間違いではなく、開催場所となる越後妻有地域の面積はなんと約762平方キロメートル(東京23区の総面積が約623平方キロメートル)。そんな里山地域に2012年の開催時には、48万人余りが訪れました。今年も約200の集落に380点の作品(新作180点)が設置されています。

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 Ilya & Emilia Kabakov『The Rice Field』2000年 Photo:Osamu Nakamura
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 Ilya & Emilia Kabakov『The Rice Field』2000年 Photo:Osamu Nakamura

とてつもなく大規模な『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』の巡り方には、決まった順番はありません。「どこから訪れたらいいの?」と途方に暮れてしまいそうになりますが、とりあえず最初に訪れておくべきスポットが、JR十日町駅から徒歩圏内の越後妻有里山現代美術館「キナーレ」。原広司+アトリエ・ファイ建築研究所の設計による同館は、インフォメーションセンターや温泉、地域の文化を伝える常設展示などを含む、『大地の芸術祭』を巡る旅の起点と位置付けられる施設です。

越後妻有里山現代美術館「キナーレ」 photo by Osamu Nakamura
越後妻有里山現代美術館「キナーレ」 photo by Osamu Nakamura

ここで合流していただいたのが、本日の案内役であり『大地の芸術祭』総合ディレクターの北川フラムさん。『大地の芸術祭』のほかにも、2010年に始まり、2013年開催の第2回には100万人以上の来場者数を記録した『瀬戸内国際芸術祭』も指揮するなど、数多くの芸術祭を手がけてきた地域型アートプロジェクトの先駆者です。

彼がまず案内してくれたのが、「キナーレ」内部にある回廊空間で設営されている、現代アート界の巨匠・蔡國強(ツァイ・グオチャン)さんによる新作『蓬莱山』。蔡さんは、第1回から毎回出品している『大地の芸術祭』の常連です。中央の池には緑の島が、回廊の天井には藁を編んだようなオブジェが浮いていますが、これは一体?

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 蔡國強『蓬莱山』制作中の様子
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 蔡國強『蓬莱山』制作中の様子

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 蔡國強『蓬莱山』
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 蔡國強『蓬莱山』

北川:タイトルの『蓬莱山』も示す通り、ここでのテーマは「理想の島(ユートピアアイランド)」。近年、東アジアでは島を巡るトラブルが相次いでいますが、蔡さんはこの問題を軽やかに扱って、「理想の島とは何か?」を問うている。回廊に浮かぶ藁でできたオブジェは、船や人、鳥のかたちをしていて、地元の人たち含めたボランティアの力も借りて作られています。最終的には千体近くになる予定なんですよ。

北川フラム
北川フラム

蔡さんは同作以外にも、生まれ故郷の中国福建省から移築した「登り窯」を利用する「ドラゴン現代美術館」(津南エリア)で館長兼キュレーターを務めるなど、『大地の芸術祭』に幅広く関わっています。北川さんの口ぶりから感じられるのは、そんな蔡さんへの圧倒的な信頼感。のどかな地方の片隅に作られつつある大作の予感に、早くも興奮を感じます。

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イベント情報

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015』

2015年7月26日(日)~9月13日(日)
会場:新潟県 越後妻有地域各所
料金:
前売 一般3,000円 高・専・大学生2,500円
当日 一般3,500円 高・専・大学生3,000円
※中学生以下無料

イベント情報

『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』
2015年9月12日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:新潟県 まつだい「農舞台」
料金:前売5,000円(全自由・入場整理番号付)
※『大地の芸術祭』作品鑑賞パスポートチケット付
※『大地の芸術祭』作品鑑賞パスポートをお持ちの方は別途ライブチケット(2,000円)の購入が必要

プロフィール

北川フラム(きたがわ ふらむ)

1946年新潟県生まれ。アートディレクター。東京藝術大学卒業。主なプロデュースとして、『アントニオ・ガウディ展』(1978-1979)、『子どものための版画展』(1980-1982)、『アパルトヘイト否!国際美術展』(1988-1990)など。地域作りの実践として『瀬戸内国際芸術祭』『大地の芸術祭』の総合ディレクターをつとめる。

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