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『GRAPHIC IS NOT DEAD.』 Vol.5 日比野克彦&スプツニ子!対談 SNS時代のグラフィックの可能性

『GRAPHIC IS NOT DEAD.』 Vol.5 日比野克彦&スプツニ子!対談 SNS時代のグラフィックの可能性

島貫泰介
撮影:菱沼勇夫

『六本木アートナイト』は、寒い3月の夜に、暖をとれる場所があれば自然と人が集まる。そして何かが始まるだろうと、火をキーワードにしたんです。(日比野)

―今年3月に開催された『六本木アートナイト』で、日比野さんはアーティスティックディレクターを務めてらっしゃいましたね。そこでは、船や灯火をキーアイテムにして、来場者が街のさまざまな場所を訪ねていくような設計をされていました。今年で5年目(開催は4回目)を迎えた同アートナイトが、普段は美術館に行かない人たちにも広く認知されるようになったことも情報の波及性を裏付ける出来事だと思いますし、結果として大勢の人たちが六本木の街に集まるという体験性も今日的な現象と言えなくもない。日比野さんのフィジカルな活動とネット上のコミュニケーションの間には、実は親和性があるのかもしれませんね。

日比野:アートナイトのときに何を考えたかっていうと、3月の夜って寒いじゃないですか。だから、単純に「みんな暖まりたいだろうな」と思ったんです。暖をとれる場所があれば、自然と人が集まる。そして何かが始まるだろうと。それで暖かさの象徴である火をキーワードにしたんだよね。

スプツニ子!:人を集める着火点みたいですね。

左から:スプツニ子!、日比野克彦

―寒いから暖まりたい、っていうのはすごくシンプルな発想ですよね。それこそ「マカンコウサッポウ」も面白いだけでなく、すぐにマネできるというシンプルさも大きかった。これらの現象は、ネット上でのコミュニケーションが果たす役割が大きくなる現代社会において、グラフィックが持つ力とは何かを考えるきっかけになると思います。スプツニ子!さんは、足立区のラッパーを集めた『ADACHI HIPHOP PROJECT』をやっていましたよね。

日比野:それはどういうものなの?

スプツニ子!:足立区が主催するアートプロジェクトに「せっかくやっているのに足立区の若者が来ない、スプ子!助けてくれ!」って誘われたんです。それで、私がロンドンで暮らしていたときは郊外でラップが流行っていたから、ひょっとすると足立区も同じでは? と勝手に想像して、Twitterで「足立区でラップやってる人いませんか?」って聞いてみたら、やっぱりたくさんいて。リサーチのために足立区のラッパーコミュニティーの中心人物に会いに行ったりしたんです。和菓子屋の息子だったんですけど。

―和菓子屋のラッパー(笑)。

スプツニ子!:で、彼の和菓子工場で地元のラッパーたちと顔合わせして、足立区を紹介するバスツアーをやることになったんです。ラッパーがバスガイドになって、普段は足立区に来たことないような美大生やアートファンがお客さんになるっていう。「足立区の歌舞伎町」こと竹ノ塚ステーションとか団地をバスで回りながら、フリースタイルラップで紹介してもらって、みんなで「おおーっ!」って驚いたり(笑)。

日比野:地元のラッパーが即興のラップでガイドするんだ。ツアーは1時間くらい?

スプツニ子!:そうですね。その後にライブイベントを藝大内でやりました。このアートプロジェクトは私が関わった中でも特にフラットでソーシャル的ですね。スプツニ子!っていう名前はあったけれど、あくまでラッパーたちが主役。私はネットワーカー、カタリスト(触媒)的に動いた感じです。

左から:スプツニ子!、日比野克彦

―日比野さんの『種は船 航海プロジェクト』と近いものを感じます。

日比野:バスと船っていう、乗り物つながりもあるよね(笑)。このあいだ宮城県の塩釜に行って、新しいアートプロジェクトの打ち合わせをしてきたんだけど、塩釜湾の中に大きな島が4つあるんだよね。そこを船で巡りながら島同士の交流を促す、ブランディングするというもの。サイズ的には30分くらいあれば巡れてしまうような小さな湾なんだけれども、実は地元の人たちの行き来が少ないんだ。

―意外ですね。

日比野:塩釜湾ってすごく小さいけれど、もともと豊かな場所なんですよ。海って幸を運んでくれると言うけれど、塩釜湾には牡蠣のタネが漂流していて、ホタテ貝をばーっと海に沈めると、そこにタネがたくさんつく。で、それを広島とか全国の牡蠣の産地に送るの。放っておいても豊かなところ。だから、これまでそれぞれの島が独立して経済を成り立たせていて、交流も少なかった。でも、大震災の後は海が根こそぎぐちゃぐちゃになってしまった。これからは島同士が力を合わせてやっていかないといけない、っていうところでプロジェクトの話が持ち上がったんです。

日比野克彦

スプツニ子!:新たに関係を築いていくというのは大変ですよね。川の北と南でライバル同士、っていう話とかたまに聞きます。

日比野:どこにでも必ずあることだよね。船もそうだけれど、バスツアーで地域を回ったりすると、隣の生活圏のことをあらためて知る機会になったりする。アートはそのきっかけを作ることができるかもしれない。でも難しいのは、3.11のような危機感を喚起させる大きな問題がないと、何かを変えようとはなかなか思わない。外からアーティストがやってきて「何かやりましょう」って言っても、「俺たちで十分にやっていけるから余計なお世話だよ」っていう意見も実はあったりする。アートの押し売り、アートだったらなんでもOKでしょ、って考えるのはちょっと危険なときもあるんだよ。

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イベント情報

『2013 Graphic Grand Prix by Yamaha』

応募期間:2013年6月3日(月)〜9月30日(月)
テーマ:「いいの?」「いいね!」
審査委員:
日比野克彦
スプツニ子!
ヤマハ株式会社 ヤマハ発動機株式会社 デザインセクションメンバー
川田学(ヤマハ株式会社 デザイン研究所 所長)
吉良康宏(ヤマハ発動機株式会社 デザイン本部デザイン・ディレクター)
竹井邦浩(ヤマハ・デザイン・スタジオ・ロンドン デザイナー)
並木育男(ヤマハ発動機株式会社 デザイナー)

プロフィール

日比野克彦(ひびの かつひこ)

アーティスト。1958年岐阜市生まれ。東京芸術大学先端芸術表現科教授。東京藝術大学大学院修了。大学在学中の1982年にダンボールを使った平面作品で、第3回日本グラフィック展大賞、さらに翌年には第30回ADC賞最高賞を受賞し注目を浴びる。国内外で個展・グループ展を多数開催する他、パブリックアート・舞台美術など、多岐にわたる分野で活動中。近年は各地で一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを多く行っている。

スプツニ子!(すぷつにこ!)

1985年、東京都で、英国人の母と日本人の父(ともに数学者)の間に生まれる。東京、ロンドン在住。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を20歳で卒業後、フリープログラマーとして活動。その後、英国王立芸術学院(RCA)Design Interactions科修士課程を修了。在学中より、テクノロジーによって変化する人間の在り方や社会を反映させた作品を制作。2009年、原田セザール実との共同プロジェクト『Open_Sailing』が、アルス・エレクトロニカで「the next idea賞」を受賞。2012年より神戸芸術工科大学大学院客員教授。主な展覧会に、『東京アートミーティングトランスフォーメーション』(2011、東京都現代美術館)、『Talk to Me』(2011、ニューヨーク近代美術館)など。

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