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「音」は人や街を変えることができるのか?『音まち千住の縁』 Vol.1 スプツニ子!インタビュー「人は変化できるんだということを伝えたい」

「音」は人や街を変えることができるのか?『音まち千住の縁』 Vol.1 スプツニ子!インタビュー「人は変化できるんだということを伝えたい」

白坂ゆり
撮影:高島圭史

私がいなくなっても続くコミュニティデザイン

―スプツニ子!さんは現在、ロンドンと東京で暮らしていらっしゃいますが、今のロンドンの街と文化の関係はどうですか?

スプツニ子!:ロンドンは暮らしている人が東と西にはっきりと分かれていて、西ロンドンが高級住宅街。貴族や金融関係者などのセレブしか住めない地域なんですよ。東ロンドンは物価が安いので、移民の方達や美大生、ミュージシャンなどが暮らしています。ファッションやアート、デザインなど、クールな文化が生まれるのは主に東ロンドンで、それに対して西ロンドンの人々がお金を払うような構図もあります。アレキサンダー・マックイーンやフセイン・チャラヤンのスタジオも東にありますね。クラブやお店も東の方が断然面白い。でもそれでお金持ちが少しずつ東に移動し始めるんですね。例えばホクストン付近は、5年くらい前は治安が悪かったんですけど、銀行マンが移り住み始めてからは、家賃や物価が高くなっちゃった。それでアーティスト達は今、さらに東のハックニーなどに移り住んでいます。

―偶然ですが、都内23区の東部地域にも、ここ数年ギャラリーやアーティストがどんどん集まっていますね。千住のヒップホップシーンもこれから注目されるといいですね。

スプツニ子!:そうですね。ロンドンでは、クリエイティブでパンク魂のある人達が暮らすから街がカッコよくなって、そこにお金が集まって活性化されるというプロセスが繰り返されています。

―ちなみに今、ハックニーはどんな状況なんですか?

スプツニ子!:移民が多く、昼間から無職の大人が大勢うろうろしていますし、去年は暴動も起きました。貧困層の親の多くが教育に価値を見出せていないので、子供もあまり学校に行かず、代々生活保護で生きていくのが当たり前になっているような層もあります。そこでイギリス政府は、子供達に映像制作などのクリエイティブなスキルを身に付けてもらうワークショップを地域で行なっています。そうやって作品を作っていくなかで、非行を防いだり、サウンドエンジニアになろうとか、編集者になりたいとか、それぞれ夢を持ってもらうんですね。

―今回のプロジェクトでも中学生に対してワークショップを行ないますね。

スプツニ子!:そうですね。ロンドンのケースとは事情が違いますが、すでに街にあるヒップホップシーンというクリエイティブコミュニティと、地域の中高生や他の人々を繋げて、それぞれが自分の街を再発見することで、活性化できたらと考えています。「コミュニティデザイン」という、建築家の山崎亮さんがよく使われている言葉があるのですが、先日山崎さんと対談させて頂いたときに、「この足立区のプロジェクトって、コミュニティデザインですよね」って意気投合したんです。既に地域にあるものや人を発見して繋いで活性化していく。もしこのプロジェクトが終わって私がいなくなっても、参加者だけでその流れを続けていけるというのが理想なんです。

―またスプツニ子!さんは、これまでの映像作品でも同じようにTwitterで広く呼びかけて、知らない人ともチームを組んで作品を制作していましたよね。今回はその幅が大きく広がったようにも見えます。

スプツニ子!:ただ、これまでは私の作品を作るという目的のために人を集めていましたが、今回は元々ある、足立区のコミュニティを私がデザインするということなので、動機がまったく違うんです。私はハーフで、日本人とイギリス人、理系だけどアーティスト、どっちつかずな存在だととられることが多いのですが、そうすると逆にいろいろなコミュニティにすっと入っていきやすいという事に最近気づきました。以前はどこにも属さない感じが嫌でしたけど、最近はそれが強味だと思うようになりました。

―そんなスプツニ子!さんを介して、繋がるはずのなかった縁がどんどん繋がって、何か新しいものが生まれていったらいいですね。

スプツニ子!:今もどんどん繋がっていますし、これからも楽しみにしています。

―以前インタビューで、「自分の作品をとおして、人は変化できるんだ、ということを伝えていきたい」とおっしゃっていたのを読んだことがあるのですが。

スプツニ子!:今回のプロジェクトに関しても、同じ気持ちで取り組んでいます。自分の環境は努力しだいで変化させる事ができる、と考えるのは大切な事です。

―今日お話をお伺いしていて、今回スプツニ子!さんと千住の人々がコラボレーションして、1つのプロジェクトを生み出していくことの必然性が、とてもよく分かった気がします。アートは、人々がそういった様々な壁を乗り越えていくことに、少しは役に立つと思いますか?

スプツニ子!:そうですね。アートはなんでもありだからこそ可能性に満ちている。この「音まち」のプロジェクトでも、いつもそう思って人と会っています。

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イベント情報

『アートアクセスあだち「音まち千住の縁」』

2012年10月27日(土)〜12月2日(日)※コアタイム
会場:東京都 足立区千住地域
時間:未定
料金:無料(一部有料)
※スプツニ子!のプロジェクト詳細は未定、最新情報はオフィシャルウェブサイト参照

会期中プログラム

足立智美『ジョン・ケージ「ミュージサーカス」芸術監督:足立智美』

2012年11月3日(土)
会場:東京都 足立区 中央卸売市場足立市場
時間:15:00〜17:00(14:30開場)
※荒天時は翌日11月4日(日)12:00〜14:00(11:30開場)に順延

大友良英『千住フライングオーケストラ』

2012年10月27日(土)※荒天時は変更の可能性有
会場:東京都 荒川河川敷 虹の広場
時間:未定
出演:大友良英、遠藤一郎ほか

大巻伸嗣『Memorial Rebirth 千住本町』

2012年11月24日(土)
会場:東京都 足立区 千寿本町小学校校庭
時間:12:00〜/15:00〜(各回30分程度)

大巻伸嗣『Flotage(仮)』

2012年10月27日(土)〜11月25日(日)
会場:東京都 足立区 千住2-31
時間:13:00〜19:00(金土日のみ)

やくしまるえつこ『作品名未定』
スプツニ子!『作品名未定』
八木良太『作品名未定』

プロフィール

スプツニ子!

1985年、東京都で、英国人の母と日本人の父(ともに数学者)の間に生まれる。東京、ロンドン在住。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を20歳で卒業後、フリープログラマーとして活動。その後、英国王立芸術学院(RCA)Design Interactions科修士課程を修了。在学中より、テクノロジーによって変化する人間の在り方や社会を反映させた作品を制作。2009年、原田セザール実との共同プロジェクト『Open_Sailing』が、アルス・エレクトロニカで「the next idea賞」を受賞。2012年より神戸芸術工科大学大学院客員教授。 主な展覧会に、『東京アートミーティングトランスフォーメーション』(2011、東京都現代美術館)、『Talk to Me』(2011、ニューヨーク近代美術館)など。

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