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『YEN TOWN BANDは、なぜ20年ぶりに本格的に復活するのか?』 Vol.1 小林武史インタビュー このバンドについて今話しておくべきこと

『YEN TOWN BANDは、なぜ20年ぶりに本格的に復活するのか?』 Vol.1 小林武史インタビュー このバンドについて今話しておくべきこと

柴那典
撮影:永峰拓也

YEN TOWN BANDは、経済合理性で成り立つシステムからハミ出して、生々しい空気感が好きで集まっているバンドという関係性を表したかった。

―20年前にYEN TOWN BANDに込められたコンセプトを、もう少し具体的におうかがいしてもいいですか?

小林:少し専門的な話になるけれど、1980年代はデジタルな打ち込み音が流行し始めた頃で、テクノやダンスミュージックだけじゃなく、バンド演奏でも、ドラムのキックやスネアを聴きやすい電子音に差し替えていく時代だったんです。つまり機材の高性能化に合わせて音楽の作り方が合理的になった。そうすると、どの曲を聴いていても同じようなサウンドが同じ音量で聴こえてくるんですよ。ウォーターフロントスタジオはそんな状況の中で、ヴィンテージ機材をたくさん揃えたアナログレコーディングで独自の音を追求していました。もともとはレニー・クラヴィッツが愛用していたスタジオなんですよね。

小林武史

―レニー・クラヴィッツのデビューアルバム『Let Love Rule』(1989年)は、キラキラした1980年代のサウンドとはまったく違う、丸く温かみのあるサウンドでした。

小林:当時、レニー・クラヴィッツの音に大きな衝撃を受けたミュージシャンはたくさんいて、僕自身もその一人でした。彼は1960、70年代に使われていたヴィンテージの機材を使って、演奏現場にある臨場感や空気感をそのまま閉じ込めようとしていた。そうすると後で音を差し替えることができないから、どんな音を出したいのか? という「初期衝動へのこだわり」をものすごく重んじて録音することになるんです。そんな研ぎ澄まされた状況で生まれる音楽は、演奏する人の息づかいや命がより見えてきて、ロックの持つ「自由な感覚」にもつながっている気がします。ウォーターフロントスタジオで僕が体験したのは、そんな多様な人々を生々しく捉えたバンドの在り方、音の在り方だったんです。

―そういった濃厚な空気感、生っぽさを含んだサウンドを求めて、YEN TOWN BANDのデビューアルバム『MONTAGE』(1996年)もウォーターフロントスタジオでレコーディングされたわけですね。

小林:まさに。YEN TOWN BANDのイメージを表現するにはヴィンテージ機材がピッタリでした。不自由だし、制限もあるけど、そのほうがサウンドに臨場感が出る。経済合理性の中で成り立つシステムからハミ出して、この生々しい空気感が好きでメンバーが集まっているバンドという関係性を表したかったんです。

音楽って面白いもので、“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”が、なぜ僕やYEN TOWN BANDの歌として特別になったのか、その理屈がいまだにわからない。

―1990年代に小林さんは、様々なアーティストをプロデュースされていましたが、YEN TOWN BANDはその中でどのような位置づけになるのでしょうか?

小林:『スワロウテイル』のサウンドトラックに“Gold Rush”という曲があって、映画の中盤でも、偽札偽造でお金持ちになった人間が故郷に戻るシーンがあるのですが、実際、1990年代は音楽業界もゴールドラッシュのようなところがありました。今の時代は、エンターテイメント業界全体が巨大化しつつも、アニメやアイドルのキャラクター性が前面に出ていて、音楽がその付属物になっているところがあるけれど、1990年代は音楽自体がマスに広まった時代だったんですね。そのマス化を、僕はサザンオールスターズの桑田さんとの付き合いの中で学ばせてもらったし、一方で小さいころから聴いていたプログレッシブロックからの影響もあって、音楽を不可思議なものとして捉える素養もあった。僕は、そんな両極端のものが結びつきながら音楽をマス化してきたプロデューサーだと思っています。その流れの中にYEN TOWN BANDもあったけど、じつはここだけが違うんですよ。「合理化していく時代へのアンチテーゼ」があった。

YEN TOWN BAND『MONTAGE』ジャケット
YEN TOWN BAND『MONTAGE』ジャケット

―1990年代は「J-POP」という言葉と共に、ミリオンセラーのCDがいくつも生まれ、まさに音楽がマス化していった時代でした。小林さんはその時代を担ったプロデューサーの一人ですが、時代の立役者でありつつ、それに対してのオルタナティブなものとしてYEN TOWN BANDを位置づけていた。

小林:そうですね。いわゆるポップミュージックとしての在り方とは違うものとしてYEN TOWN BANDを捉えていました。それは何かというと、初期衝動を含むロックの自由な魂みたいなもの。レニー・クラヴィッツを聴いたときの衝撃から、それを取り戻さないといけないと気づいていたんです。

―そういった感覚を込めたことが、YEN TOWN BANDが今でも有効であることにつながってくるわけですね。

小林:ただ、それだけではYEN TOWN BANDはここまで長く続いていなかったと思うんです。自分でも決定的だったと思うのは、“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”があったこと。あの曲が持っている独特の雰囲気は今でも心が動かされるし、イントロを聴くと蘇るあの感覚がないと、YEN TOWN BANDは絶対に成功しないと思っていました。

小林武史

―YEN TOWN BANDといえば、“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”というくらい、象徴的な曲として、幅広い世代のアーティストにカバーされています。小林さんにとってもキーとなる1曲だった。

小林:岩井くんから頼まれてもいなかったけど、”My Way”のカバーだけやっても意味がない、エンドロールに流れるとんでもない1曲が絶対に必要だと感じて、本当に探していました。ある日、スタジオでエレピをポロポロと弾いていたら「えっ!?」っていう瞬間があって、イントロのメロディーが降りてきた瞬間に確信した。サビのメロディーができたときにはもう全てが見えていました。「やった!」と思いましたね。これは本当にそう感じた。その興奮は、岩井くんもCharaも、当時はあんまりわかってくれなかったんだけど(笑)。

―そうだったんですね。

小林:ただ、音楽って面白いもので、それがなぜそうなのか、あの曲がなぜ僕にとってそんなに特別で、YEN TOWN BANDの歌として魂の旗頭になれたのか、その理屈がいまだにわからないんですよ。とにかくある日、この曲が絶対に重要になると確信した。長く残っていく作品には、象徴的な何かは絶対必要なんですよね。それは今でも思っています。もちろんアルバム全体を作るプロデューサーではあるけれど、やっぱり1曲の重要性も知っているから。

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イベント情報

『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』

2015年9月12日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:新潟県 まつだい「農舞台」
料金:前売5,000円(全自由・入場整理号付)
※『大地の芸術祭』作品鑑賞パスポートチケット付
※『大地の芸術祭』作品鑑賞パスポートをお持ちの方は別途ライブチケット(2,000円)の購入が必要

イベント情報

『JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM』

2015年10月17日(土)
会場:北海道 札幌 Zepp Sapporo
出演:
YEN TOWN BAND
ACIDMAN
Lily Chou-Chou

2015年10月22日(木)
会場:東京都 お台場 Zepp Tokyo
出演:
YEN TOWN BAND
amazarashi
Lily Chou-Chou

2015年10月25日(日)
会場:福岡県 Zepp Fukuoka
出演:
YEN TOWN BAND
クリープハイプ
Lily Chou-Chou

2015年10月26日(月)
会場:愛知県 名古屋 Zepp Nagoya
出演:
YEN TOWN BAND
miwa
藤巻亮太

2015年10月28日(水)
会場:大阪府 Zepp Namba
出演:
YEN TOWN BAND
スキマスイッチ

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プロフィール

小林武史(こばやし たけし)

音楽家、音楽プロデューサー。1980年代からサザンオールスターズやMr.Childrenなどのプロデュースを手掛ける。1990年代以降、映画と音楽の独創的コラボレーションで知られる『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』など、ジャンルを越えた活動を展開。2003年に「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギーや食の循環、東日本大震災の復興支援等、様々な活動を行っている。

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