「月刊CINRA」連載 あの雑誌の特集、予想します。第13回「美術●帖」

第13回 「美術●帖」2009年11月発売号の特集
特集名「田舎に帰ろう!」

雑誌の趣向を分析しつつその雑誌の特集を勝手に予測しているこの連載。「そもそも雑誌なんて読まねぇし」って人と話をしてみれば、このコラムからその雑誌の姿自体を予想して楽しんでくれているようで、あれま、複雑な需要が生まれたもんだなと。そんな需要もあるんだったら、ちょいとマニアックな雑誌でいきましょうか、今回はアート専門誌「美術手●」。

第13回「美術●帖」2009年11月発売号の特集

身内で集まって消えそうな焚き火を囲うようにミニマムな企画ばっかりやってんでしょと、ひねくれて構えてますと、あらいやんヌード特集、おおこわっアウトロー特集と、従来のアート誌には見られなかった飛距離を見せつけてくる雑誌なのでありますが、パラパラと広告を見ていて気づくこと、そう、大学と専門学校だらけなわけ。「これから美大に行ってやろうと思ってんだけど、オレはね、そこらへんのとは違うから」とイキがってるニキビ君だって読者としてしっかり取り込まなきゃいけないのだ。彼らに「でもあれだな、オレはそんなに才能無いしな」と思わせちゃいけない。オレのことか、と思わせなきゃいかん。

美術でも音楽でも映画でもカルチャー分析に持ち出されやすいのが「年代」と「地方」。ゼロ年代なんてここ最近言われ始めたのにゼロ年代が終わるとなった途端「ゼロ年代とは何だったのか」をやってしまうわけで(正にその、早急に現象化する態度こそゼロ年代だったのは)。それが終わると今度は地方論で攻める。ヤンキー論然り、ファスト風土化然り、ケータイ文化然り、東京と東京以外でカルチャー比較をするわけ。何だかお決まりのアプローチ。

東京の美大を目指す高校生、そんな映画を五本くらい観た気がする。ところでボーイズ&ガールズ、そのまま田舎にいちゃダメなんでしょうか。「美●手帖」の広告を見ていると、地方にも専門学校が乱立してるようですし。直島にまるごとアートな島があって、新潟でアート祭りをやってる。四国から上京して夏休みに直島へ行く美大生、北陸から上京して実家に帰らず越後妻有アートトリエンナーレなんて、まぁ不経済だこと。地方分権は政治の世界のみならずアートだってそうかもしれん。上京してるとそれだけで何だか成し遂げちゃった気になりがち。でもね、なんも成し遂げてないんだから、それ。だったら田舎で自分にシビアな創作活動しませんか。親の冷たい目線を超える、これが「お絵描き」と「アート」の境界線。親も広告主も上機嫌な「田舎に帰ろう!」特集は11月中旬発売です!

[結果報告:的中率10%]
大胆な特集予想、結構イイ線いってんじゃねえかと思ってたのですが、その後の特集は「茶の湯の美」「コムデギャルソン」「日本イラストレーション史」と、かすりもせず。しかし、私は確認し続けているぞ、地方の美術系大学・専門学校の広告が入り続けている事を。「田舎に帰ろう!」特集、機は近いうちに熟す。



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