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七尾旅人インタビュー 「何億もの声」から見えてくるもの

七尾旅人インタビュー 「何億もの声」から見えてくるもの

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2010/08/13

体内に格納してる大自然っていうのが、ほとんど殺されないまま表出してるんだよね、黒人音楽って。

―3曲目の“one voice(もしも私が声を出せたら)”の「歌うことができない女の子」と、4曲目の“検索少年”の「どんなに検索しても見つけられない君」っていうのも、1曲目・2曲目と同様に関連性があるように思うんですけど。

七尾:そうっすね、一応つなげて入ってるんですけど…想像を膨らませてほしいですね。

―ちなみに個人的にパッとイメージしたのは「ネット・アイドル」なんですよね。

七尾:新解釈ですね(笑)。すごい意外な意見(笑)。ネット・アイドルは俺正直よく知らなくて、俺にとってのネット・アイドルを無理やり上げればU-zhaanとドラびでお一楽さんかな。あの二人のTwitterが面白すぎるから、俺にとってのネット・アイドル(笑)。あとハラカミさんのTwitter!ハラカミさんがいちばんアイドルっぽいかも。ツンデレキャラだし。可愛らしいつぶやきの数々に萌え死に寸前ですよ。実際のところ“one voice”はネット・アイドルとは全く関係ないですけど、そう取ってもらっても全然いいんですよね。今すごい新鮮な風が吹いてきて面白かった。

何も言わないのも申し訳ないんで、“one voice”についてひとつかふたつお話できることを言うと、まずSalyu(ボーカル/コーラスで参加)ちゃんは二十歳ぐらいから友達なんですけど、ずっと歌ってもらうのが夢だったんです。今回それが叶って嬉しかったっていうのがあり、あと“one voice”っていうのはアルバム・タイトルと対応してて、無数の声が湧き出した状況下にあって、「ここにもひとつの声がありますよ」っていう意味ですね。

―“シャッター商店街のマイルスデイビス”と“BAD BAD SWING!”は共通して「ジャズ」っていうテーマがあると思うんですけど、ソウル、ブルース、ゴスペルとかも含めて、黒人音楽に対する愛情がより強くなってるように思うのですが、いかがですか?

七尾:どうなんですかね…以前と同じくらい好きですね。一貫して好きです、子供のころから。親父がすごいジャズ・ファンで、家で毎日かかってて。中一ぐらいになって自力でB'zとか聴き出すまでは、ジャズ漬けだったんで。ソウルとかも一貫して好きですね。ふだん黒人音楽だけ聴いてるわけではないんですけど、13歳までずっと耳にしていたのは、ジャズですね。

―ベーシックなところには、間違いなくあると。

七尾:それはもう間違いないです。“シャッター商店街のマイルスデイビス”も実際に親父の車に乗って地元のシャッター街を通過してるとき、車内ではマイルスがかかっていて、それで思いついた曲。子供のころに大好きだった商店街が廃墟みたいになっちゃってて。そこに案外ジャズが合うんですよ。マイルスが演ってたのって都市の先端的な音楽なんだけど、廃墟化した地方都市にも合うし、海や山にも合うんだよね。間口が広いの。それが黒人音楽の不思議なところで、体内に大量の大自然を格納してる感じがする。どれほど都市の人間として近代化されたとしても、根源にある大自然の力は強い。辺境から来たミュージシャンって面白いじゃん? ミルトン・ナシメント(「ブラジルの声」の異名を持つ、ブラジリアン・ポピュラー・ミュージックの代表的アーティスト)とか、エルメート・パスコアルとか、フェラ・クティとか。新しいグルーヴや奇妙な空間感覚でこれまでになかった価値観を作り上げながらも、歌はやけにスピリチュアルで素朴だったりする。俺はあんまり聴かないけど、MIAとかビョークもそういう部分があるんじゃないの?

―ああ、まさにそうですね。

七尾:そのアンバランスが面白い。体内に格納してる大自然っていうのが、ほとんど殺されないまま表出してるんだよね。黒人音楽はその度合いがとても強い。ニューヨーク行って思ったことなんですけど、足下数センチから聴こえてくる地下鉄の音とか、街のざわめきとか、もうホントにどう聴いてもビバップなんですよ。「あ、普通に街の音なんだ」っていう。もし俺が佐野元春さんだったらめちゃくちゃ長いポエム書いてますよ(笑)。ものすごい自然力の強い存在が、あまりにも異質な環境下に移動した結果、圧倒的な焦燥と共に進化していく、その感じが好きなの。環境に適応しつつ抗うために、結果的に世界のエッジに立ってしまうっていう、そういう音楽なんじゃないかな。

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リリース情報

七尾旅人<br>
『billion voices』
七尾旅人
『billion voices』

2010年7月7日発売
価格:3,000円(税込)
felicity cap-96 PCD-18615

1. MIDNIGHT TUBE
2. I Wanna Be A Rock Star
3. one voice(もしもわたしが声を出せたら)
4. 検索少年
5. シャッター商店街のマイルスデイビス
6. BAD BAD SWING!
7. なんだかいい予感がするよ
8. あたりは真っ暗闇
9. beyond the seasons
10. どんどん季節は流れて
11. Rollin' Rollin'
12. 1979、東京
13. おめでとう
14. 私の赤ちゃん

プロフィール

七尾旅人

79年夏生まれのシンガーソングライター。98年のデビュー以来、幾つかの問題作を発表。07年9月11日には3枚組というボリュームで、驚異に満ちたインディペンデント・ミュージカル作品『911ファンタジア』を発売。また、ライブパフォーマンスも圧倒的な存在感を見せつけており、自身ライフワークと位置付け全国各地で開催してきた弾き語り独演会『歌の事故』、全共演者と立て続けに即興対決を行う『百人組手』の二つの自主企画を軸に、各地のフェス、イベント、Ustでも伝説的ステージを生み出し続ける。twitterで驀進中!!!Check it!

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