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イラストレーターのつくる音楽 中村佑介インタビュー

イラストレーターのつくる音楽 中村佑介インタビュー

インタビュー・テキスト
久保正樹
2011/06/08

みんなの想像より数ミリだけずれた違和感をつけることにより、人はそのくすぐったさが癖になります。

―中村さんのイラストは、トータルで見るとかわいかったり、美しかったり、洗練されているのですが、美しさと同時に何かひっかかり、違和感のようなものを感じます。またその違和感はセイルズの音楽にもすごく感じました。その辺りは意図的なのですか?

中村:はい、意図的です。実は香水には臭い成分も入っていたり、カレーに隠し味でコーラを入れると美味しい、という話がありますが、同じように絵においてはモチーフや色、また音楽においての歌詞や演奏に、みんなの想像より数ミリだけずれた違和感をつけることにより、人はそのくすぐったさが癖になります。やりすぎると痛みや嫌悪感になるので、あくまでスパイス程度ですが。

―そのさじ加減に中村さんの美学をすごく感じますね。そこは時間をかけた慎重な作業だったりするのですか?

中村:いいえ、そこはこれまでの経験と、自分の直感を信じて割とパッと決めちゃいますね。まぁ老若男女、また趣味は違えど、その痛点のような部分はみんな同じですから。ただカレーの辛さのように段々慣れてきますので、その時は刺激を強くするのではなく、思い切って甘くしたり。押したり引いたりの夫婦関係のようなものですね。

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セイルズ『Pink』ジャケット

例えば「エロス」と「スケベ」は同じことを指しますが、印象は大分変わってきますよね。

―では、セイルズ結成のいきさつ。メンバーのことを教えて下さい。

中村:ずっと宅録で音楽を作り続けていたのですが、カジヒデキさんやCOILが30才デビューだったので、自分もそろそろかなと思って、28歳の時に初めてギターボーカルをとるバンド、セイルズを結成しました。何度かのメンバーチェンジを経て、現在は長谷川梓沙(アコーディオン、コーラス)と飼原正之(ベース)というドラムレスのアコースティックトリオの体制でライブ活動していますが、録音では、僕が気ままに散らかしたアイデアの部屋を、あっちゃん(長谷川)が演奏技術面で掃除してくれて、飼原さんがアレンジ面で整理整頓してくれて、ようやく音楽という形になってゆきます。音楽におけるお母さんとお父さんのような存在ですね。もちろん僕の役割は子供です。

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セイルズ

―アルバムについてですが、今回収録の曲はこれまでライブで披露されてきたものが中心ですが選曲の際にテーマなどはあったのですか?

中村:ほかにもお気に入りのレパートリーはたくさんあるのですが、セイルズらしさの分かる、単純に歌詞がおもしろくて楽しいリズムの曲の中から、アルバム全体のバランスを考え5つを選びました。大好きな小沢健二さんの『LIFE』というアルバムは、時間も決して短くなく、内容もギュッと詰まっているのに、中間の“いちょう並木のセレナーデ”のアコースティック演奏と、ラストのオルゴールアレンジが風穴となって、通して聴いても疲れないアルバムになっているので、それをお手本に凝ったバンドアレンジと、いつもライブでやっているドラムレスのアコースティックアレンジを交互に配置しています。

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中村佑介作品集『Blue』

―アルバムタイトルが『Pink』ということですが、どうしても2009年に発売された中村さんの画集『Blue』との関連が気になります。その意図は?

中村:わかりやすく言うと、イラストは女の子から見た青春、音楽は男の子の青春ですかね。例えば「エロス」と「スケベ」は同じことを指しますが、印象は大分変わってきますよね。そのようにイラストとは一見違うイメージでも、実は同じものを表裏一体で表現しているので、画集『Blue』と対になるように『Pink』というタイトルにしました。

2/3ページ:そのままでは恥ずかしくて言いにくいことを、女性という隠れミノを使って正直に言っているという感じかもしれません。

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リリース情報

セイルズ『Pink』
セイルズ
『Pink』

2011年5月25日発売
価格:1,500円(税込)
Waikiki Record / WAKRD-035

1. わたしの穴
2. ビューティフル
3. おしりのふとん
4. 絵筆は役に立たず
5. ほんとはね

プロフィール

セイルズ

数々のCDジャケットや書籍カバーを手掛けるイラストレーター中村佑介が2005年に結成したポップスバンド。歌謡曲、フォーク、アコースティックスィング、ボサノバを基調としたブルーなメロディの上にまたがるピンクな歌詞を特徴とする。編成は中村佑介(ボーカル・ギター)、長谷川梓沙 (アコーディオン、コーラス)、飼原正之(ベース、編曲)のドラムレストリオ。2011年6月、エレキベースや徳永憲の所属するワイキキレコードよりデビュー。

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