特集 PR

いつかのあの日をプレイバック かせきさいだぁインタビュー

いつかのあの日をプレイバック かせきさいだぁインタビュー

インタビュー・テキスト
小宮川りょう
撮影:木下夕希
2011/06/22

気持ちや記憶が呼び起こされるような情景描写を心がけているし、そういうポップスに挑戦してるつもりです。

―表現方法はラップですけど、聴き手のシンパシーを呼び起こすって部分で言うと、かせきさんの音楽は「ポップス」ですよね。資料の中にも「最後のシティポップス」という表現がありましたが、ヒップホップのフォーマットでシティポップスをやるっていうジャンルで、かせきさんはオリジネーターですね。

かせき:ちゃんとシティポップスをやろうという気持ちはありますが、ストレートにやるんだったら山下達郎さんとかには絶対敵わないわけだし。だったら誰もやってない方法でやればいいんだっていうね。まぁ、実際に最後かどうかわわからないですけど、はったりかましてそう謳ってます(笑)。

―ちなみにシティポップスをやるぞという自意識の中には、アーティストというよりアルチザン(=職人)的であろうというような、ある種のアティテュードが含まれていたりするのでしょうか。

かせき:自分の作品はどれだけ実験できるのかってことを意識しているので、職人的とは違うんですが、出来上がりがポップになるようには心がけています。実験的でめちゃくちゃすごい人もいますけど、ハードコアみたいなものをやるのは、ある意味簡単。小難しい風にすれば賢く見えるわけだから、それっぽい風にするのは誰でもできちゃう。ポップに作る方が難しいと思います。僕の師匠である作詞家の松本隆先生も「誰もがわかるような簡単な言葉で歌詞を書くっていうのが一番難しいんだ。難しい言葉で書くのは実は簡単なんだよ」って仰ってましたが、本当にその通りですよね。わかりやすくすればするほど難しくなっていくので、挑みがいがあるなぁと思ってます。

いつかのあの日をプレイバック かせきさいだぁインタビュー

―具体的に松本さんの歌詞でそれを実感したことはありますか?

かせき:松本先生が手掛けた斉藤由貴の“卒業”の歌詞で「卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう」というのがありますけど、ひとつも難しい単語が出てこない。でも絵が浮かぶんですよね。こんな絶妙な言葉の組み合わせ、普通は思いつかないでしょう!(松本先生を)全然抜けないぁと思いますね。だからラップをやってるんだと思います。

―歌謡曲だと限られたセンテンスしか詰め込めないけど、ラップだとたくさん言葉を詰め込めるから、より細かな情景描写をすることが可能ですよね。

かせき:より多く詰め込める分、大変なんですけど、確かにその利点はありますね。昔、松本先生に「君の歌詞には人と人のスパークがないね」と言われたんです。確かに「泣かないと冷たい人といわれそう」って歌詞は、実際に誰かと誰かが触れ合っている描写ではないのに、人と人とのスパークを感じますよね。それ以降、意識するようになって、僕も多少はスパークできるようになったものの……まだあまりうまくはないです(笑)。

―収録曲“夏をプレイバック”でも、孤独の中、ひとりぼっちで過ぎた夏に思いを馳せてるような切なさがありますよね。

かせき:曲を作る時に、大勢で聴くことより1人で聴くことを想定してしまうんです。電車の中や家、1人の空間で音楽を聴くことの方が多いと思いますから。そこに響くようなもの作りにしたいなと思ってます。

―確かにパーソナルな表現の方がハマりますよね。

かせき:“夏をプレイバック”っていう僕の言葉にはスパークがない。でも、気持ちや記憶が呼び起こされるような情景描写を心がけているし、そういうポップスに挑戦してるつもりです。いつか(松本先生に)「スパークがないきみの歌詞にはかなわん」と言わせたいなぁ(笑)。

―情景描写の中でも、過去を振りかえるようなメランコリックな雰囲気が濃厚な気がします。もしかしてここ最近は、バック・イン・ザ・デイズ……昔を懐かしむようなタームだったり?

かせき:うーん、どうだろう。そういうわけでもないんだけど、人間は過去しかわからないじゃないですか? 未来のことを歌っても、わからないから漠然としてしまう。だから過去を歌ってるんです。過去はみんなの共通意識として共有できるわけですし。「未来の夏ってこんな感じじゃねー?」って曲を作るより、「夏ってこんな感じでしたよね?」って歌うほうが、よりみんなにリアルなものを提示できるんだと思います。

―なるほど。ところでアルバムタイトルの『SOUND BURGER PLANET』の「サウンドバーガー」ですが、1980年代のポータブルプレーヤーの名前ですよね?

かせき:そうです。もともとはただの「サウンドバーガー」ってタイトルにするつもりだったんですけど、作っているうちに「プラネット」な感じに思えてきたんですよね。自分がやっているのはヒップホップ。ヒップホップの宇宙っぽいところを、ボクなりに再現したつもりです。

―では、最後に今後の予定を教えてください。

かせき:しばらくはちゃんと音楽をやっていきたいなぁ。絵を描いたり、映像を撮ったり……あと『ズッコケ三人組』を読破したり、原付で静岡の実家まで帰れるかチャレンジしてみたりとか(笑)、くだらないことも含めて本当に色々やってきたけど、今は音楽をやりたいです。

Page 3
前へ

リリース情報

かせきさいだぁ『SOUND BURGER PLANET』
かせきさいだぁ
『SOUND BURGER PLANET』(CD+DVD)

2011年6月29日発売
価格:3,150円(税込)
AWDR/LR2 / DDCB-12039

1. Intro
2. サウンドバーガープラネット
3. CIDERが止まらない
4. 夏をプレイバック
5. 明日ライドオンタイム
6. ときめきトゥナイト
7. 恋のANYTHING GO !
8. ネェ What do you want?
9. STAYTUNE
10. 雨のびいと
11. GO ! GO ! ハグトーンズ
12. 夏をプレイバック(Dub's DUB)
[DVD収録内容]
・“CIDERが止まらない”PV
・“GO!GO!ハグトーンズ”PV
・ハグトンムービー「ロックの巻」
・まるでさいだぁVTR .001
・恋の赤ペン先生の「かせきさいだぁ白書」

プロフィール

かせきさいだぁ

1996年、「かせきさいだぁ≡」でメジャーデビューし、1998年に2ndアルバム「SKYNUTS」を発表。他にも「Baby&CIDER」、「トーテムロック」、「The Dub Flower」など、さまざまなユニットでライブ活動中。'09年からは「かせきさいだぁ&ハグトーンズ」を結成し、かせきさいだぁの音楽活動を再開している。2011年6月29日には、13年ぶりとなる待望の3rdアルバム『SOUND BURGER PLANET』を発表。また4コマ漫画「ハグトン」を2001年から描き続けており、近年では、個展も年に数回開催されている。CIDER inc.所属。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う 1

    羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う

  2. 自己不信や周囲の目にどう向き合う? 女性アスリートの6篇の物語 2

    自己不信や周囲の目にどう向き合う? 女性アスリートの6篇の物語

  3. 坂口恭平が語る「死なないという勝ち方」。画狂老人・北斎に学ぶ 3

    坂口恭平が語る「死なないという勝ち方」。画狂老人・北斎に学ぶ

  4. カネコアヤノが歌う、変わっていく覚悟 中野サンプラザ公演を観て 4

    カネコアヤノが歌う、変わっていく覚悟 中野サンプラザ公演を観て

  5. スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士 5

    スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士

  6. 音楽イベント『森、道、市場 2021』タイムテーブル発表 6

    音楽イベント『森、道、市場 2021』タイムテーブル発表

  7. Homecomings福富が語る原点 寂しさを手放さず、優しさで戦う 7

    Homecomings福富が語る原点 寂しさを手放さず、優しさで戦う

  8. 東京事変が『ガッテン!』『笑う洋楽展』『ムジカ・ピッコリーノ』ジャック 8

    東京事変が『ガッテン!』『笑う洋楽展』『ムジカ・ピッコリーノ』ジャック

  9. 木梨憲武のジャンルに縛られない働き方。下の世代にも学ぶ理由 9

    木梨憲武のジャンルに縛られない働き方。下の世代にも学ぶ理由

  10. 小出祐介が問題提起、日本語ポップスにおける「歌詞の曖昧さ」 10

    小出祐介が問題提起、日本語ポップスにおける「歌詞の曖昧さ」