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入江悠×伊賀大介対談 映画とファッションの交差点

入江悠×伊賀大介対談 映画とファッションの交差点

インタビュー・テキスト
宮崎智之(プレスラボ)
撮影:菱沼勇夫

役作りって喋り方を変えたりとかじゃなくて、服をたたんだりとか、靴ひもを結んだりすることで、全然いいんだなという気がしますよね。(入江)

入江:『SR』の1作目は本当に少人数でスタートしたので、スタイリストもいなかったんですよ。だから、HIP HOP的な衣装を借りに、助監督と一緒に服屋を回ったりして。また、IKKUの体がでかいからサイズがないんですよね。腹が入るやつ何でもいいから貸してくれといった感じで(笑)。

伊賀:すごく良かったですけどね。ヒロインのみひろさんの感じとか、たまらないものがありました。

入江:何が埼玉感なんだろうと、すごく悩みました(笑)。撮影中、衣装は俳優自身に管理させていたんですが、毎日、撮影から帰ってきたら自分でたたんで、朝出発するときは自分で着ていく。そうすると愛着が湧いてくるみたいですよね。ライブの前と後ではどこか違っていたりして。『苦役列車』のお話を聞いていて、すごく近いなと思いました。

入江悠

伊賀:結局、脚本の中にしかいない架空のキャラクターでも、現場で人格がどんどん立ってくるじゃないですか。スタッフ全員がそのキャラクターのことを考えていると、具現化されていっちゃうっていうか。

入江:役作りって喋り方を変えたりとかじゃなくて、見えないところで服をたたんだりとか、靴ひもを結んだりすることで、全然いいんだなという気がしますよね。

伊賀:僕はスタイリングをするとき、キャラクターのマッピングをするんです。『モテキ』もそうだったんですけど、この人の給料はいくらあるのか、実家に住んでいるかどうかで服にかけられるお金が違ってきますよね。手取りは20万円だけど、実家なら5万円は服に使える、だから、月賦で30万円のバッグは買えるとか、でも家の中ではユニクロを着ているとか。

入江:確かに収入のリアリティーが出せるのは、衣装ですもんね。

伊賀:必要以上に雄弁ではなくていいと思うんですよ。ブランドとかシルエットとかではなくて、キャラクターの背景とか物語も含めてスタイリングだと思うんです。だから、画面には映らない靴下だけがユニクロだとか、そういうことも必要だと思うんですよね。『SR3』の同棲している部屋の様子とか、完璧じゃないですか(笑)。

寝られないことくらいのことで辞めたら情けないなと思っていました。だから楽しかったですよ。(伊賀)

入江:下積み時代の話なんですが、伊賀さんは熊谷隆志さんについていた頃のエピソードが過酷だったというお話をお聞きしました。

伊賀:専門学校に通っていたとき、熊谷さんを人から紹介されたのがきっかけでした。その後突然、電話がかかってきて「学校どうするんだ?」と聞かれたので、次の日には学校を辞めて、その翌日には熊谷さんのところに行ってました。丸3年間修行して、その間休みは4日間しかありませんでした。

入江:3年間で休み4日はハードですよね(笑)。他にもアシスタントの方はいたんですか?

伊賀:兄弟子にいま安室奈美恵さんやPerfumeなどのスタイリングをしている三田真一さんがいたんですけど、二人ともあまりにも寝られないので、撮影中スタジオの裏で5分ずつ寝るとか、撮影を見ているふりして寝る、みたいなワザを編み出していました(笑)。本番中が一番よく寝られますもんね。みんな静かで。

入江:それだけ休みなく働くと、心が折れそうになりませんでしたか?

伊賀:んー、まったくなかったですね。僕は本当にボンクラで映画とか好きなものの趣味も偏っているのに、かつそれで飯を食いたいと思っていたので、寝られないことくらいで辞めてしまったら情けないなと思って。だから楽しかったですよ。他に僕がやれることもないと思っていましたし。

伊賀大介

入江:わりと早いうちから、スタイリストになりたいという思いはあったんですか?

伊賀:そうですね。高校のときに海外の雑誌を読んでいて、すごいカッコいいファッションページにモデル、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、というクレジットがあったんです。モデルはまあないとして、機械にも弱かったんでカメラマンは駄目、絵が下手なのでヘアメイクは無理、そしたらスタイリストしか残ってなかったんですよね。そのときはスタイリストがどういうことをする仕事なのか、具体的にはピンときていなかったんですけど、いろいろなことを知っといた方がいいということはなんとなく分かっていたので、学校さぼって映画を観に行ってても、これは僕の中ではアリみたいな感じになっていたんですよね。

入江:3年間の修業期間を経て、独立に至ったきっかけは何だったんですか?

伊賀:ガソリンスタンドで車にガソリンを入れているときに、いきなり師匠に「お前、あと半年で独立だから頑張るように」みたいなことを言われて(笑)。実は独立しろと言われるまではずっと付いていこうと思っていたのでビックリしました。男って仕事覚えるとすぐ独立してみたくなっちゃうじゃないですか。でも僕は仕事を覚えて1年とかで独立している人って、すごくもったいないと思うんですよね。最低3、4年はやって、仕事を覚えるだけじゃなくて応用も出来て、自分の世界を確立してからじゃないと。

入江:いま伊賀さんのスタイリングで「Yohji Yamamoto」を着ているから言うわけじゃないんですけど、北野武さんって芸人を長くやられてから映画の世界に入られたので、映画を作るにあたって、すごいストックがあると思うんですよね。北野さん自身も「寄り道をしてから、何かをやるのはいいことなんじゃないか」というようなことを仰っていましたし。僕は助監督として同じ監督の元で下積みをした経験があまりなくて、わりと初めから監督としてインディペンデントでやってきたんですけど、いま本当にそうだなと思うんです。吸収出来る時間は貴重だし、どんどん吸収しておいたほうがいいですよね。その時間の中で熊谷さんに教わったことで今も忘れないことってありますか?

伊賀:「全身是スタイリスト」みたいなところです。師匠は、とにかくなんでも仕事にしちゃうんです。カッコいい不良と出会うと次の日の撮影に呼んで、いきなりモデルにしたりとか(笑)。しかも雑誌だから、それが2週間後に実際に世の中に出ちゃうんですよね。

入江:アンテナが鋭いというか、いろんなことに敏感になっている方なんですね。

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番組情報

『入江悠の追い越し車線で失礼します Driven by 三井ダイレクト損保』

毎週日曜日20:30〜21:00からTOKYO-FMで放送

リリース情報

『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)

2012年11月21日発売予定
価格:3,990円(税込)
発売元:アミューズソフト/メモリーテック

監督・脚本・編集:入江悠
出演:
奥野瑛太
駒木根隆介
水澤紳吾
斉藤めぐみ
北村昭博
永澤俊矢
ガンビーノ小林
美保純
橘輝
板橋駿谷
中村織央
配島徹也
中村隆太郎
HI-KING
回鍋肉
smallest
倉田大輔

プロフィール

入江悠

1979年、神奈川県生まれ。監督作『SRサイタマノラッパー』(2009)が『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』でグランプリ、『富山国際ファンタスティック映画祭』で最優秀アジア映画賞を受賞。同シリーズ3作目『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(2012)では野外フェスシーンに延べ2000人のエキストラを集め、インディペンデント映画として破格の撮影規模が話題となる。

伊賀大介

1977年 西新宿生まれ。96年より熊谷隆志氏に師事後、99年、22才で独立してスタイリストとして活動開始。雑誌、ミュージシャン、広告、映画、演劇のスタイリングなどを手がける。band所属。

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