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人生観を変えるKARASのメソッド 佐東利穂子×小沼純一対談

人生観を変えるKARASのメソッド 佐東利穂子×小沼純一対談

インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:田中慎一郎

スタイリッシュなもの、観念的なもの、ユーモラスなもの、実験的なもの……。様々なタイプが次々と登場し、領域を広げているコンテンポラリーダンス。そんな中で、ストイックに身体と向き合いながら、型破りかつ、時には刺激的な作風で、80年代から国際的に活躍してきたコンテンポラリーダンサー、勅使川原三郎。その頼もしい右腕であり、ソロダンサーとしても数々の賞を受賞するなど、国内外で評価の高い佐東利穂子が、勅使川原率いるカンパニーKARASの新世代メンバーと共に、5人の中高生ワークショップメンバーも参加する作品『ダンサーRの細胞』を1月に東京芸術劇場で上演する。かねてからKARASのファンであり、坂本龍一との共演でも知られる音楽・文化批評家で詩人の小沼純一が、KARASの創造性から、ダンスが私たちの日常にもたらす新たな感覚までを佐東に聞いた。

CINRA.NET > 物質と動物と人間をつなぐもの 勅使川原三郎インタビュー

PROFILE

佐東利穂子
1995年からKARASワークショップに参加。1996年より勅使川原三郎振付の全てのグループ作品、デュエット作品、ソロ作品に出演し、国際的に活躍している。2006年にフランス・イタリアのダンス雑誌『Ballet 2000』の年間最優秀ダンサー賞、2008年日本ダンスフォーラム賞、2012年レオニード・マシーン賞今年度最優秀女性ダンサー賞(イタリア)を受賞。刃物のような鋭利さから、空間に溶け入るような感覚まで、質感を自在に変化させるダンスは、世界各国で反響を巻き起こしている。勅使川原作品の振付及び演出助手も務め、KARAS作品のみならず、『AIR』(パリ・オペラ座バレエ団)等でもダンスミストレスの役割を担う。また、勅使川原の教育プロジェクトや国内外でのワークショップを通して、勅使川原と共に青少年のダンス教育にも積極的に取り組んでいる。

小沼純一
1959年東京生まれ。音楽・文芸批評家。早稲田大学文学学術院教授。第8回出光音楽賞(学術・研究部門)受賞。横断的なまなざしで多分野をとらえる「音楽文化論」を提唱し、旺盛な執筆活動を展開している。著書に『武満徹 音・ことば・イメージ』『魅せられた身体 旅する音楽家コリン・マクフィーとその時代』『ミニマル・ミュージック』(以上、青土社)、『バッハ「ゴルトベルク変奏曲」世界・音楽・メディア』(みすず書房)。

びっくりしたと同時に、自分でもやってみたくなったんです。そんな気持ちになったのは、後にも先にもそれっきりです。(小沼)

―小沼さんは、以前から勅使川原さんの舞台をご覧になっていたそうですね?

小沼:最初に見たのは『月は水銀』(1987年)でしたけど、ダンサーにガラスがたくさん突き刺さった美術で、やたらとダンサーがステージ上にバタバタ倒れる(笑)。危なくないのかな? と思いつつ、すごくきれいで、目が離させなかったんです。

『月は水銀』 photo:Katsuaki Furudate(古館克明)
『月は水銀』 photo:Katsuaki Furudate(古館克明)

佐東:私もびっくりしました。初めて観たのは『DAH-DAH-SKO-DAH-DAH』(1994年)だったんですけど、それまでに自分が観たダンスとは何もかもが違っていた。ダンサーの身体と舞台上の世界観が、すごく高いレベル、かつ独創的で「人間の身体でこういうものが作れるんだ!」と、ただただ衝撃でした。

『DAH-DAH-SKO-DAH-DAH』photo: Shunki Ogawa(小川峻毅)
『DAH-DAH-SKO-DAH-DAH』photo: Shunki Ogawa(小川峻毅)

小沼:そもそも、佐東さんはどうしてダンスを始められたんですか?

佐東:高校を卒業するときに将来何をしたいのかを考えていて、突然ダンスじゃないか!? と思ったんです。それまで全然やっていなかったのに(笑)。今になって考えると、小さい頃に器械体操をやっていたのと、何かを表現してみたい! という思いがずっと強かったせいだと思うんですけど。大学に入ってからは、いろいろなダンスの公演を観に行ったり、勉強できるところを探していました。

佐東利穂子
佐東利穂子

―普通の大学に行きながら、ダンスをやりたいと思っていたのですか?

佐東:そうです。親や周囲には「ダンスをやる!」と言ったものの、実際にはどうしたらいいかわからなくて。大学の舞踊科を受験することなども考えたのですが「木になってください」「石になってください」という試験があるということがわかって、これはちょっと違うなと(笑)。そうこうするうちに勅使川原さんの作品に出会って感銘を受けて、KARASのワークショップに行ったのがすべてのきっかけです。KARASは当時、コンスタントに一般向けのワークショップをやっていたんですよ。

―実は小沼さんも、KARASのワークショップに参加されていたことがあるんですよね?

小沼:80年代の勅使川原さんの作品は、宮沢賢治とか稲垣足穂、あるいは日夏耿之介のような、大正から昭和初期にかけての文学作家の不思議な世界観を独自に反映していて、それがすごく面白かった。一体これは何なんだろう? って、びっくりしたと同時に、自分でもやってみたくなったんです。それでワークショップに申し込んだんですね。僕は普段まったく体が動かないタイプで、体育も全然ダメでコンプレックスだらけだったのに、それでも参加してみたくなった……。そんな気持ちになった舞台作品は、後にも先にもあれっきりです。

小沼純一
小沼純一

佐東:そういう感情を誘発するんですよね、KARASの作品は。観ていてもそうだし、自分でやっていてもそうなんですけど、自分の身体を使った「実験」みたいな感じがしませんか?

小沼:そうそう。ワークショップと言うからには、振付というか、ある程度の形を目指すのかと思ったら全然違って。「頭のてっぺんに糸がついていて、それが10cm、20cm、1mと上に伸びていって、それぞれのときに体はどうなるでしょう?」とか「体のどこかにヒビが入って、そこから徐々にヒビが広がって全体が割れていくイメージで……」とか(笑)。

佐東:ただイメージするだけだと雰囲気だけで終わってしまうので、自分の身体に影響を及ぼすところまで実践するのが大事なんです。イメージを感じている身体自体が変容していくのが面白いというか。

小沼:自分の周りには、空気があって、床があって、自分の身体は重力で下に引っ張られている……、ということが、初めて実感としてわかったんです。2、3人で踊っているときに、相手の近くに行くと、触れ合わなくても、相手に引っ張られたり反発したりする空気の動きを感じました。

佐東:小沼さんは踊れる人ですよ。他人や物、光、音楽と同列に自分を感じると、そこから動きが生み出されていくんです。勅使川原さんと出会うまでは、どこに行っても「まず基礎を勉強してから来なさい」と言われて、「基礎ってなんですか?」と聞くと「クラシックバレエです」と答えられることが多くて。でも私は別にバレエをやりたかったわけではないし、その年齢で始めることが本当に基礎になるんだろうか? と疑問で。勅使川原さんはまったく違う価値観で身体を扱っているということがわかったとき、「なんて面白いんだろう!」と初めてしっくり来ました。

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イベント情報

東京芸術劇場リニューアル記念 芸劇dance
勅使川原三郎ディレクション U18ダンスワークショップ・プロジェクト

2013年1月26日(土)15:00 / 19:00
2013年1月27日(日)13:00 / 17:00
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
監修・演出・振付・美術・照明:勅使川原三郎
出演:
佐東利穂子
KARASダンサーズ
U18ダンスワークショップ・プロジェクト参加者
料金:
一般 前売3,500円 当日4,000円
U18(18歳以下)1,000円
65歳以上3,000円
25歳以下2,500円
※U18、65歳以上、25歳以下の割引チケットは、前売のみ取り扱い(枚数限定・要証明書)

イベント情報

『勅使川原三郎 / KARAS コンテンポラリーダンス特別ワークショップ』

2013年1月14日(月・祝)18:00〜19:30
会場:東京都 渋谷 チャコット渋谷スタジオ
講師:佐東利穂子
料金:2,500円

2013年1月15日(火)16:30〜18:00
会場:東京都 池袋 チャコット池袋劇場通りスタジオ
講師:佐東利穂子
料金:2,500円

プロフィール

佐東利穂子

1995年からKARASワークショップに参加。1996年より勅使川原三郎振付の全てのグループ作品、デュエット作品、ソロ作品に出演し、国際的に活躍している。2006年にフランス・イタリアのダンス雑誌『Ballet 2000』の年間最優秀ダンサー賞、2008年日本ダンスフォーラム賞、2012年レオニード・マシーン賞今年度最優秀女性ダンサー賞(イタリア)を受賞。刃物のような鋭利さから、空間に溶け入るような感覚まで、質感を自在に変化させるダンスは、世界各国で反響を巻き起こしている。勅使川原作品の振付及び演出助手も務め、KARAS作品のみならず、『AIR』(パリ・オペラ座バレエ団)等でもダンスミストレスの役割を担う。また、勅使川原の教育プロジェクトや国内外でのワークショップを通して、勅使川原と共に青少年のダンス教育にも積極的に取り組んでいる。

小沼純一

1959年東京生まれ。音楽・文芸批評家。早稲田大学文学学術院教授。第8回出光音楽賞(学術・研究部門)受賞。横断的なまなざしで多分野をとらえる「音楽文化論」を提唱し、旺盛な執筆活動を展開している。著書に『武満徹 音・ことば・イメージ』『魅せられた身体 旅する音楽家コリン・マクフィーとその時代』『ミニマル・ミュージック』(以上、青土社)、『バッハ「ゴルトベルク変奏曲」世界・音楽・メディア』(みすず書房)。

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