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なぜ劇団・地点がスゴイといわれるのか? 三浦基×佐々木敦対談

なぜ劇団・地点がスゴイといわれるのか? 三浦基×佐々木敦対談

インタビュー・テキスト
九龍ジョー
撮影:西田香織

『光のない。』を大学の生徒が観てすごい衝撃を受けていた。自分が体験したことに圧倒されて、アワアワしていたんです。(佐々木)

佐々木:いや最近、地点に影響を受けた若い劇団をちらほら見かけるんですよ。

三浦:ホントですか?(笑)。

佐々木:舞台上の発話を聞くだけでわかります(笑)。にもかかわらず、ぜんぜん違うものに見える。それは役者の技量とか時間とかコストとかの問題もあるんでしょうけど、それ以上に、やはり根本的な部分でプログラムが違うわけで。

三浦:劇団における集団性の問題もあると思いますね。個人じゃダメなんです。演出家らしき人が興味を持ったことを役者たちに押しつけて、一対一で責任を取ろうとしてしまうとダメ。それでは集団性が生まれてこない。ここで言う「集団性」とは、ある種のいい加減さをベースにしながら、劇団全員で責任を持つようなシステムのことです。地点の場合、作品全体の責任の所在をいろんなカタチを持ち寄って埋め合うんです。そこには偶発性もあるし、役者の向き不向きもある。

三浦基

佐々木:その集団性は重要ですね。三浦さんの演出って、役者のモノローグ(独白)の中に三浦基個人をできる限り入れないようにしている。だからこそ演出家だといえるのかもしれない。でも、実は演出に徹しているように見える人ほど、演出家としての「私」性みたいなものが滲み出てしまったり、もしくはそれを利用していることがあると思うんです。三浦さんには、そうはならないストイシズムがある。

三浦:戯曲に対しては、僕は「医者である」っていうスタンスですからね。同じように役者に対しても「ここ病んでいるなぁー」って病人扱いをしているところがある。そして、これは地点としての経験の蓄積も大きいと思うんですけど、役者のほうが実は医者であるケースも多い(笑)。「あ、また三浦ここにハマっているな」ってな具合に。そうやってお互いに影響し合っていく。ある意味ストレスフルな状況でもあるけど、そこでは誰それの自意識とか、誰それがどうやりたいとか、そういうことはほぼないわけです。つまりは、職人集団。

佐々木:以前、地点は役者の人数がほぼ確定しているので、どんな芝居でも同じ人数で演じるっておっしゃってましたよね。例えば役柄が1人しか出てこない作品でも、20人出てくる作品でも、同じ5人で演じるっていう(笑)。いまいる5人の役者に対してはすごい信頼と共闘関係が築かれていますよね。

三浦:どうしてそうなるかというと、サッカーだったらフィールドに立つのは1チーム11人って決まっているわけじゃないですか。それと同じで、地点はいま5人制の演劇をやっています、ということだけなんです。そこでボールが作品だとすると、どういうふうにパスを回したらいいかってことを考えるわけです。

佐々木:当然、ポジションも……(笑)。

佐々木敦

三浦:あります(笑)。それぞれ得意技もある。昔はこのやり方でなんでもできるってハッタリかましていましたけど(笑)、でもいまは、上手くいかないときもあるとは思っています。それと同じで、このやり方だからこそ面白くなる作品っていうのも確実にある。ま、人数に関して言えば、7人ぐらいには増やしたいんですけどね(笑)。

佐々木:あと2人ぐらいは欲しい?

三浦:ええ、門戸を開いておりますのでぜひ(笑)。あと、先ほどの自意識のことでいうと、よく「観客のことをどうお考えですか?」って聞かれるんですけど、そんなこと、一度も考えたことがない(キッパリ)。こういうターゲットを狙おうとか、専門家だけにウケればいいとか、外国で上演するからこうしようとか、まったく考えたことがない。とにかく本番の初日を開けることで精一杯ですよ。昔はよく「地点の芝居はわからない」ってことを言われたんです……いや、いまでも言われるか(笑)。でも、「わかる人だけに向けてつくっている」とか、そんなわけない。だから思い切ってこれからは「わからないやつはバカですよ」くらい言ってしまおうかと思っているんです。だって、ちゃんとわかる人がいるんだから。ただ恐ろしいことに、俯瞰して見てみると、非常にマイノリティでもあるっていう。

佐々木:「わかる人」がね(笑)。

三浦:なぜかというと答えは簡単で、日本では「現代演劇」というもの自体がマイノリティだからなんです。この国には現代演劇の見方が根付いていない。ただそれだけのこと。ロシアに行って驚くのは、観客がマジョリティとして僕らの芝居を見ているんです。それは決してロシアがすごいって話じゃなくて、ただ現代演劇の土壌があるかどうかだけの差なんです。ロシアでは演劇によって政治が変わったり、劇場に観に行くということが日常だったりして、現代演劇自体がマジョリティであるっていう。

佐々木:つまり地点のあり方によって、日本の現代演劇が置かれた歴史性と現在の状況が逆照射されてしまっているんですね。

三浦:そう、だからしょうがないなって。

『光のない。』フェスティバル トーキョー 2012年 撮影:松本久木
『光のない。』フェスティバル トーキョー 2012年 撮影:松本久木

佐々木:たしかにそういう状況はありますね。ただ、地点の『光のない。』を、僕が大学で教えている生徒の何人かが観にいったんです。彼らのほとんどは演劇を見慣れていない若者なんですけど、観劇後にすごい衝撃を受けていた。イェリネクのメッセージ云々以前に、いま自分が体験したことに圧倒されて、アワアワしてしまっていたんです。それはロシアの観客とは違ったレベルでの「わかる」経験ですよね。つまり、バカとかバカじゃないってこととは無関係に「わかる」っていう。音楽や照明や舞台美術や役者の動きとか、そういうあらゆるものが込みで、地点の舞台には「わかる」可能性があるんだと思います。

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イベント情報

地点
『駈込ミ訴ヘ』

2013年3月7日(木)〜3月26日(火)全9公演
※3月7日はプレビュー公演
休演日:3月11日〜3月19日、3月22日、3月24日
会場:神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

原作:太宰治
演出・構成:三浦基
出演:
安部聡子
石田大
窪田史恵
河野早紀
小林洋平
青戸知
美術:山本理顕(建築家)
照明:大石真一郎
音響:徳久礼子
衣裳:堂本教子(KYOKO88%)
舞台監督:山口英峰
プロダクションマネージャー:山本園子
技術監督:堀内真人

料金:
一般3,500円
シルバー(65歳以上、要身分証明書)3,000円
U24(24歳以下、要年齢証明書、枚数限定)1,750円
高校生以下1,000円(要生徒手帳、枚数限定)
2演目セット券6,000円(枚数限定)
※3月7日のプレビュー公演のみ 一般2,000円 U24(24歳以下、要年齢証明書、枚数限定)1,000円

地点
『トカトントンと』

2013年3月15日(金)〜3月24日(日)全6公演
休演日:3月20日〜3月23日
会場:神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

原作:太宰治
演出・構成:三浦基
出演:
安部聡子
石田大
窪田史恵
河野早紀
小林洋平
庸雅
美術:山本理顕(建築家)
照明:大石真一郎
音響:徳久礼子
衣裳:堂本教子(KYOKO88%)
舞台監督:山口英峰
プロダクションマネージャー:山本園子
技術監督:堀内真人

料金:
一般3,500円
シルバー(65歳以上、要身分証明書)3,000円
U24(24歳以下、要年齢証明書、枚数限定)1,750円
高校生以下1,000円(要生徒手帳、枚数限定)
2演目セット券6,000円(枚数限定)

プロフィール

三浦基

973年福岡生まれ。地点代表。演出家。桐朋学園大学演劇科・専攻科卒。99年より文化庁派遣芸術家在外研修員としてパリに2年間滞在する。2001年帰国、地点の活動を本格化。05年、京都に活動拠点を移転。07年よりチェーホフ四大戯曲をすべて舞台化する「地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演」に取り組み、第三作『桜の園』にて文化庁芸術祭新人賞受賞。11年度京都市芸術新人賞受賞、他受賞多数。著書に『おもしろければOKか?現代演劇考』(五柳書院)。

佐々木敦

1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌『エクス・ポ』編集発行人。『批評時空間』『未知との遭遇』『即興の解体/懐胎』『「批評」とは何か?』『ニッポンの思想』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。2013年度より早稲田大学文学学術院教授。

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