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できないことを、必死にやり続けたい 曽我部恵一インタビュー

できないことを、必死にやり続けたい 曽我部恵一インタビュー

テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2013/06/25

今の日本の音楽シーンにおいて、曽我部恵一を誰か他のアーティストと比較したり、何かの文脈に当てはめて語ることはとても難しい。例えば、サニーデイ・サービスであれば、渋谷系の後期を出発点としながらも、はっぴいえんどに代表される日本語のロック / ポップスを見つめ直し、数々の素晴らしい作品を残しながら、くるりや中村一義といった後進の道を切り開いた、というような文脈で語ることができるだろう。しかし、2枚のアルバムをメジャーから発表し、2004年に自身のレーベルROSE RECORDSを設立後の曽我部は、曽我部恵一、曽我部恵一BAND、曽我部恵一ランデヴーバンドと様々な名義を用い、CD、CD-R、アナログ、配信と多彩な形態で膨大な量の音源を発表していて、そのキャリアを数行でまとめることは不可能だ。その唯一無二の存在を、何とかして言葉に落とし込もうとするならば、「パンクロックに魅せられて、『未完成という名の完成』というアンビバレンツな業を背負った、魂の歌うたい」といったところか……まあ、「ただただ最高のミュージックラバー」と言ってしまっても、全然間違いではないと思うんだけど。

そんな曽我部恵一が、ソロとしてはキャリア初のベストアルバム『曽我部恵一BEST 2001-2013』を、サニーデイ・サービスのベストアルバム『サニーデイ・サービスBEST 1995-2000』と同時発売する。そこで、今回CINRAではソロのキャリアに的を絞って、総括インタビューを試みた。「メジャーとインディー」「怒涛のライブ活動」「下北沢」「震災」といったキーワードから、10年以上にわたる歴史を紐解きつつ、今後の活動にも迫ったロングインタビュー。ぜひ、ゆっくり楽しんでいただきたい。

サニーデイが終わって一人になったから、とにかく自分のドキュメンタリーを出していかなきゃって。

―まずは今回、サニーデイ・サービスとソロのベストを同時に発表することになった経緯を教えてください。

曽我部:まずサニーデイのベストを出さないかっていう話が向こうのレコード会社(MIDI)からあったんです。過去にベストは1枚出してるんですけど、それからもう10年以上経ってるから、もう1回ちゃんと自分で選曲して、マスタリングの監修もやる形で出そうかってことになって、じゃあソロになってからのものも同時にまとめておこうかっていう流れですね。あと小田島(等)くんがジャケットを作ってくれて、サニーデイの方は桜の木の下にいるカップルの写真なんですけど、それを見たときに、「これの別バージョンもあったらいいな」と思って、「同じパターンでソロのも作ってよ」っていうのもありました。

―ソロのベストは、レア曲がたくさん入った2枚組で、非常に豪華な作品になってますね。

曽我部:僕のソロに関して言うと、アナログとか配信だけで出したものもあるので、全部持ってる人はほとんどいないと思うんですよ。あとライブが終わった後とかに、「あの曲どのCDに入ってますか?」ってよく訊かれるんで、「これだけ買ったらいいですよ」っていうCDがあると便利だと思ってて、今回はそういうものにもしたかったんですよね。

―1曲目を飾っている“ギター”はソロとして最初に発表したシングル(2001年12月)で、ちょうど9.11(アメリカ同時多発テロ事件)があったタイミングでのリリースになったわけですが、当時はどんなことを考えて曲を作っていましたか?

曽我部:サニーデイが終わって一人になったから、とにかく自分のドキュメンタリーを出していかなきゃって考えてました。自分が思うこと、自分が今日見た風景とか、今日感じたこととか、それをまずは歌わないとって。

曽我部恵一
曽我部恵一

―「生活と音楽の距離が近い感じ」っていうのは、その後のソロのキャリアにおいても活動の基盤になってますよね。“ギター”の<戦争にはちょっと反対さ>という歌詞も、まさにそれを表していたと思いますし。

曽我部:あれは当時、物議を醸しましたけどね。でも、今も一緒だな、震災後の話も。「原発にはちょっと反対さ」って感じになる。本当は戦争にも原発にも「絶対」反対なんだけど、「絶対反対!」って歌ってきたロックの歴史を踏まえて、「ちょっと」と歌うことが自分なりのドキュメンタリーだった。今も“ギター”は歌ってて、自分にとって不思議な曲です。「どうやって日記を歌にしよう」ってトライする中でできた曲で、ある日の全部の風景や感じたことをまず書き出してみたんです。だから最初はもっと長くて、ラップみたいに言葉数の多い歌詞だったんだけど、どんどん切り詰めて行って、そこから残ったものがこの曲になった。

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リリース情報

曽我部恵一<br>
『曽我部恵一 BEST 2001-2013』(CD)
曽我部恵一
『曽我部恵一 BEST 2001-2013』(CD)

2013年6月26日発売
価格:3,000円(税込)
ROSE RECORDS / ROSE-155

[DISC1]
1. ギター
2. 瞬間と永遠
3. 恋人たちのロック
4. おとなになんかならないで
5. 女たち
6. キラキラ!
7. 抱きしめられたい
8. 浜辺
9. シモーヌ
10. 満員電車は走る
11. 魔法のバスに乗って
12. 東京 2006 冬
13. 春の嵐
14. LOVE-SICK
15. おかえり
[DISC2]
1. サマー・シンフォニー Ver.2 feat. PSG
2. テレフォン・ラブ Single version
3. ほし TRAKS BOYS remix
4. ロックンロール TOFUBEATS remix
5. 世界のニュース -Light of the world!!-
6. カフェインの女王(TSUCHIE feat. 曽我部恵一)
7. イパネマの娘
8. ぼくたちの夏休み
9. スウィング時代 DJ YOGURT & KOYAS remix
10. White Tipi SUGIURUMN house mission mix
11. クリスマスにほしいもの
12. トーキョー・コーリング Studio live version
13. STARS Studio recoding
14. ジムノペディ
15. サマー・シンフォニー

サニーデイ・サービス<br>
『サニーデイ・サービス BEST 1995-2000』(CD)
サニーデイ・サービス
『サニーデイ・サービス BEST 1995-2000』(CD)

2013年6月26日発売
価格:3,500円(税込)
MIDI / MDCL-1538/39

[DISC1]
1. 恋におちたら
2. 雨の土曜日
3. 恋はいつも
4. スロウライダー
5. あじさい
6. 青春狂走曲
7. いつもだれかに
8. シルバー・スター
9. baby blue
10. さよなら!街の恋人たち
11. サマー・ソルジャー
12. 白い恋人
13. 夜のメロディ
14. NOW
15. 若者たち
[DISC2]
1. サマー・ソルジャー(2000.12.14 @新宿リキッドルーム 解散ライブ)
2. 花咲くころ
3. 恋人の部屋
4. あの花と太陽と
5. 魔法(Carnival mix)
6. 真昼のできごと(Unreleased version)
7. 96粒の涙(Alt. version)
8. 何処へ?
9. Somebody's watching you
10. ここで逢いましょう
11. 成長するってこと
12. からっぽの朝のブルース
13. 土曜日と日曜日
14. 恋におちたら(AG version)
15. いつもだれかに(1996.4.24 @渋谷クラブクアトロ 公式デビューライブ)

プロフィール

曽我部恵一(そかべ けいいち)

1971年生まれ、香川県出身。ミュージシャン。ROSE RECORDS主宰。ソロだけでなく、曽我部恵一BAND、再結成を果たしたサニーデイ・サービスなどで活動を展開し、歌うことへの飽くなき追求はとどまることを知らない。プロデュースワーク、執筆、CM・映画音楽制作、DJなど、その表現範囲は実に多彩。下北沢のカフェ兼レコード店CITY COUNTRY CITYのオーナーでもある。

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