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できないことを、必死にやり続けたい 曽我部恵一インタビュー

できないことを、必死にやり続けたい 曽我部恵一インタビュー

テキスト
金子厚武
撮影:田中一人

これはもてない男のやっかみかもしれないけど、早く中身になれよと。「いつまでイケメンとか言ってるんだよ」みたいなところはちょっとあるんだよね。

―「作品はそのときそのときの自分」っていうのは、アルバムのジャケットがすごく象徴してると思うんですね。ソロになってからのオリジナルアルバムは、『ラブレター』と『トーキョー・コーリング』以外、すべてに曽我部さんの写真が使われてるっていう。

曽我部:アートワークに関しては、あんまり考えてないだけなんだけどね(笑)。

―でも、サニーデイ時代はほとんどジャケットに登場することなく、唯一メンバーの写真が使われている『愛と笑いの夜』にしても、ぼやけた写真だったことを考えると、ソロになってからは「自分を出す」っていうことに意識的だったのかなって。

曽我部:いや、そこまで考えてないです(笑)。おしゃれな感じが嫌だったっていうのはひとつあるんですけど、ジャケットは結構いつもギリギリで作るんで、結局「写真でいいんじゃない?」ってなってる気がする(笑)。サニーデイのときは、ちゃんと世界観をパッケージするようなジャケットっていうことで作ってましたけど、ソロに関しては、今思うと何でこんな自分の顔ばっか出してんだって感じですね。もっとなんか、アイスクリームとかそういう方がいいような(笑)。

―ちょっとオシャレになっちゃうかもしれないですけどね(笑)。

曽我部:ただ、ジャケットとかどうでもいいと思いたいっていうのもあって、サニーデイの頃とか、今もまあそうなんだけど、「ジャケットまで完璧でひとつの作品でしょ」みたいなところがあるけど、今自分が行きたいのは「完璧な作品なんて求めてるの?」みたいな、誰が完璧なんて決められるんだっていう、ボロボロのものの方がいいじゃんみたいなところが何かあるんだよね。「その辺のおっさんが作った自主制作盤みたいのの方が素敵じゃん」みたいのがどっかにあって。

曽我部恵一

―比べるのもおかしな話ですけど、今って時代感的に言うと、コンセプトをがっちり固めて、フォトグラファー、デザイナー、コンセプター、アーティストがそれぞれの役割を担って、ひとつの作品を作り上げるみたいなものが多いように思うんですよね。

曽我部:ああ、相対性理論以降みたいな? ちょっと企画性っていうか、みんな大事に思ってるところはあるよね。でも、俺はだって、匿名性持ち得ないでしょ(笑)。太宰治の文庫本とかさ、「ジャケ最高だよね」とかないじゃん? 時代によって適当なのに変わるでしょ? 音楽も早くあれになんないかなと思って、「何まだジャケットがどうとか言ってるの?」みたいな、みんなパソコンで聴いてるんだし、早くそうなってよって感じ。結局さ、内容がよかったらいいわけじゃん?

―そこが基本ではありますよね、間違いなく。

曽我部:女の子もそうだけど、やっぱ中身でしょっていう。いや、男もそうだけどね。これはもてない男のやっかみかもしれないけど、早く中身になれよと。「いつまでイケメンとか言ってるんだよ」みたいなところはちょっとあるんだよね。夏目漱石の『こころ』もさ、何文庫で出ても、Kindleで出ても、俺はわたせせいぞうのジャケが好きだったけど(笑)、今は別に何でもいいんじゃないかって思うなあ。


やれないことをやり始めた人たちがいた、それがパンクロックで、自分もやろうと思った。それが基本としてあって、そこに自由っていうものが初めてある気がするんです。

―途中に「このベスト盤で一度真っ新に戻して、違う表現方法を模索している」という話がありましたが、ご自身の表現について今どんな風に考えているか、最後に改めて話していただけますか?

曽我部:とにかく、手習いというか、「これができるようになったらいいなあ」じゃなくて、できないことをまずやり始めたいんですよ。「最高の歌い手になりたい」っていうのだけがあって、そのためにはどういう鍛練とか、どういう心の状態が一番大事なんだろうっていうところで、やっぱり自分をいつも新鮮な気持ちにさせておくっていうことがすごく大事。気づいたら、ノリで上手い感じに歌っちゃってることとかあるんだよね、恐ろしいことに。

曽我部恵一

―上手く歌えるようになってきたということが、逆に落とし穴になると。

曽我部:この間子供の運動会に行って、八木節みたいのをみんなで踊ってたんだけど、途中でオケが止まっちゃって、完全な無音状態になったわけ。でも、子供たちは全然動じずに、止まったこともわかんないぐらい夢中で一生懸命踊ってるのよ。そういうのがすごいいいなって思って。リレーとか見てても、一番だろうがビリだろうが関係ないわけよ。ホントに必死で、歯食いしばって走ってるビリのやつの表情とかオーラ、説得力が半端ないわけ。だから、そこで余裕綽々に走ってるめちゃめちゃ速いやつがいる。で、どっちやりたいのかって話だと思うんだよね。自分がやりたいのは、ズタボロだけどなんかグッと来たみたいなことで、パーフェクトに八木節を演じましたってことじゃない。途中でオケが止まって、そこで自分が何を始められるか、それをやっていないとしょうがないですよね。

―では、曽我部さんはなぜそちら側を選んでしまうのでしょうか?

曽我部:自分はパンクを聴いて音楽をやろうと思ったから、やっぱりそこはDNA的な部分に入っちゃってるんですね。やれないことをやり始めた人たちがいた、それがパンクロックで、自分もやろうと思った。素晴らしいことだと思った。それが基本としてあって、そこに自由っていうものが初めてある気がするんです。「何でもやっていいよ」って。言ったら怒られることを言ってもいいし、やったらダメってことはひとつもない、自分にとってはそこに勇気とか自由があるから、自分はそれを体現していかないとしょうがないなって。「曽我部いいキャリアあるのに、何ラップとかやってんの?」っていうようなことを、ずっとやっていたい。振り返ってみても、やっぱりそこだけでしたね。

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リリース情報

曽我部恵一<br>
『曽我部恵一 BEST 2001-2013』(CD)
曽我部恵一
『曽我部恵一 BEST 2001-2013』(CD)

2013年6月26日発売
価格:3,000円(税込)
ROSE RECORDS / ROSE-155

[DISC1]
1. ギター
2. 瞬間と永遠
3. 恋人たちのロック
4. おとなになんかならないで
5. 女たち
6. キラキラ!
7. 抱きしめられたい
8. 浜辺
9. シモーヌ
10. 満員電車は走る
11. 魔法のバスに乗って
12. 東京 2006 冬
13. 春の嵐
14. LOVE-SICK
15. おかえり
[DISC2]
1. サマー・シンフォニー Ver.2 feat. PSG
2. テレフォン・ラブ Single version
3. ほし TRAKS BOYS remix
4. ロックンロール TOFUBEATS remix
5. 世界のニュース -Light of the world!!-
6. カフェインの女王(TSUCHIE feat. 曽我部恵一)
7. イパネマの娘
8. ぼくたちの夏休み
9. スウィング時代 DJ YOGURT & KOYAS remix
10. White Tipi SUGIURUMN house mission mix
11. クリスマスにほしいもの
12. トーキョー・コーリング Studio live version
13. STARS Studio recoding
14. ジムノペディ
15. サマー・シンフォニー

サニーデイ・サービス<br>
『サニーデイ・サービス BEST 1995-2000』(CD)
サニーデイ・サービス
『サニーデイ・サービス BEST 1995-2000』(CD)

2013年6月26日発売
価格:3,500円(税込)
MIDI / MDCL-1538/39

[DISC1]
1. 恋におちたら
2. 雨の土曜日
3. 恋はいつも
4. スロウライダー
5. あじさい
6. 青春狂走曲
7. いつもだれかに
8. シルバー・スター
9. baby blue
10. さよなら!街の恋人たち
11. サマー・ソルジャー
12. 白い恋人
13. 夜のメロディ
14. NOW
15. 若者たち
[DISC2]
1. サマー・ソルジャー(2000.12.14 @新宿リキッドルーム 解散ライブ)
2. 花咲くころ
3. 恋人の部屋
4. あの花と太陽と
5. 魔法(Carnival mix)
6. 真昼のできごと(Unreleased version)
7. 96粒の涙(Alt. version)
8. 何処へ?
9. Somebody's watching you
10. ここで逢いましょう
11. 成長するってこと
12. からっぽの朝のブルース
13. 土曜日と日曜日
14. 恋におちたら(AG version)
15. いつもだれかに(1996.4.24 @渋谷クラブクアトロ 公式デビューライブ)

プロフィール

曽我部恵一(そかべ けいいち)

1971年生まれ、香川県出身。ミュージシャン。ROSE RECORDS主宰。ソロだけでなく、曽我部恵一BAND、再結成を果たしたサニーデイ・サービスなどで活動を展開し、歌うことへの飽くなき追求はとどまることを知らない。プロデュースワーク、執筆、CM・映画音楽制作、DJなど、その表現範囲は実に多彩。下北沢のカフェ兼レコード店CITY COUNTRY CITYのオーナーでもある。

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