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チェルフィッチュ『地面と床』鼎談 岡田利規×小泉篤宏×橋本裕介

チェルフィッチュ『地面と床』鼎談 岡田利規×小泉篤宏×橋本裕介

インタビュー・テキスト
前田愛実
撮影:三野新

自分ができているかどうかは別として、僕自身は演劇のポテンシャルを疑ったことは一度もないんですよ。(岡田)

―ブリュッセルの『クンステン・フェスティバル・デザール』での反応はいかがでしたか?

岡田:今回初演した『クンステン』は、過去に初めての海外公演を行なったフェスでもあり、そのとき上演した『三月の5日間』が成功したことで、僕にとって大きな契機になった特別なフェスティバルでした。だけど、やっぱりそこから抜け出したいという気持ちも個人的にあって。今作は『三月の5日間』のときのように、新鮮とか奇妙だとか、見たことがないという反応から少し変化して、怖いとか悲しいという受け止められ方をしたように思います。

橋本:世界初演というのもあったのかもしれませんが、観客は舞台から受ける刺激に反応するというより、舞台で流れている空気を一緒に吸って、自分たちも作品にリンクしようと息をひそめながら見ている感じでしたね。

岡田:ただそういった重さは、見世物である以上、見づらさにしてはいけないと思っていて。そこを根本かつ最終的な部分で回避できたのは、やっぱりこの作品が音楽劇だったからでしょうね。

小泉:日本的なものと捉えられていましたか?

岡田:内容的に今の日本の状況につらなっているという意味では日本的ですね。だけど形式としては日本的だとかではなく、音楽がパワフルだとか、そういう感想でした。

橋本:今回演劇というメディアが有効であることをアップデートしたいと岡田さんはおっしゃっていましたよね。新しい音楽劇を作ることでその有効性は再確認できましたか?

岡田:自分ができているかどうかは別として、僕自身は演劇のポテンシャルを疑ったことは一度もないんですよ。例えばこれまでのチェルフィッチュは、これだけあれば演劇が成立するという可能性を証明しようとしてきました。音楽なんていらない、セットなんていらないとか。だけど今作では音楽はもちろん、衣装もあるし、考えられないことにチェルフィッチュで初めてスモークを使っているんです(笑)。いつの間にか僕、「ここまで削いでも演劇なんだ」ではなくて、「ここまで盛っても演劇なんだ」という考えになってるんですよね。でも、演劇の可能性を疑ってない、という点では両者に違いはないんですよ。

今舞台の世界で何が起こっているのかを知らない人がまだまだ沢山いるので、今後も開拓できるというやり甲斐を感じています。(橋本)

―本人も戸惑うほど変化したチェルフィッチュですね。今作をいち早く国内で見られるのが、国際舞台芸術祭である『KYOTO EXPERIMENT 2013』なんですが、他にも池田亮司の新作公演や海外からの招聘作品があったり、他所では見られないプログラムが目白押しの、まさに実験的な舞台芸術の祭典です。このイベントはどういう経緯で始まったんですか?

橋本:2010年に始まり、今年で4回目になるんですが、始めた理由の1つにはいくら京都でアーティストが作品を作っていても、なかなか見に来てもらえないという恨みから始まりました(笑)。僕らは面白そうな作品があればどこにでも行きますが、東京の人は誘っても、1本見るためにわざわざ京都までは行けないと言います。だったら何本かまとめて見に来れるようフェスティバルでもやりますか、っていうのがきっかけの1つです。

橋本裕介

岡田:首都圏にいると本当にそうですよね。僕は九州に移ったので以前の自分がなんて腰が重かったのか痛感します。もちろん東京にいようと出かけていく人はいるんですが、それは余程の大した方なんですよ。

―東京からの観客は増えていますか?

橋本:年々増えてますね、1割くらいでしょうか。東京は圧倒的に規模が大きいのですが、だからといって何でも手に入るわけじゃない、ってことを知らせたい。これまでの4年は京都で実験的なフェスティバルを開催することを模索する期間で、いろんな切り口でパフォーミングアーツへのアプローチを提示しました。特に関西の観客はこれまで多様な作品に触れるチャンスがあまりなかったんです。また、パフォーミングアーツに興味を持ってこなかった、別のジャンルのアートに関心のある客層を劇場に引っ張ってきたいという意図もありました。

―岡田さんも一昨年から熊本に移住されて、そちらでも活動を始められていますが、首都圏ではなく地方で活動する面白さはどういうところにありますか。

岡田:東京の捉え方や、付き合い方が相対化できたことが新鮮ですね。九州で演劇をやっているのに東京というか、東のほうにだけ視線が傾いちゃうのはもったいないと思うんですよね。今日ここに来る前にソウルの演劇フェスティバルのディレクターと打ち合わせをしてきたんですが、九州を日本の端と捉えるのではなく、自分たちを中心に置いたら地図の左側に韓国も中国も入ってきて、そんなふうに世界を見たり考えたりするほうが楽しいと思うんですよね、って話をしてました。北海道だったらロシアとかが入ってくるんでしょうし。

―今作『地面と床』は、国内外9都市による共同製作となっているというのも、かなり異例で凄いことだと思うんですが、何故橋本さんはチェルフィッチュの新作公演を『KYOTO EXPERIMENT 2013』で共同製作しようと思ったのですか?

橋本:チェルフィッチュには1回目の『KYOTO EXPERIMENT 2010』で、『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』を上演してもらったのですが、このカンパニーはこれからどんどん変化していくだろうな、と感じたんです。だから次に出てもらうなら、完全に違う姿に変わったときに観客に観てほしいと思っていたんですね。

―ここ数年、特に大震災以降のチェルフィッチュの変化は目を見張るものがありますね。

橋本:そうなんです。出てもらうならこのタイミングしかないだろうと思いました。チェルフィッチュを含め、今舞台の世界で何が起こっているのかを知らない人がまだまだ沢山いると思うので、今後も開拓できるというやり甲斐を感じています。

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イベント情報

チェルフィッチュ
『地面と床』

作・演出:岡田利規
出演:
山縣太一
矢沢誠
佐々木幸子
安藤真理
青柳いづみ
音楽:サンガツ
美術:二村周作
ドラマツゥルグ:セバスチャン・ブロイ
衣装:池田木綿子(Luna Luz)
解剖学レクチャー:楠美奈生

京都公演
『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2013』

2013年9月28日(土)、9月29日(日)全3公演
会場:京都府 京都府立府民ホール アルティ
料金:
前売 一般3,500円 ユース・学生3,000円 シニア3,000円 高校生以下1,000円
当日 一般4,000円 ユース・学生3,500円 シニア3,500円 高校生以下1,000円

『ポスト・パフォーマンス・トーク』
2013年9月29日(日)の公演終演後
ゲスト:建畠晢(京都市立芸術大学学長)

横浜公演
2013年12月14日(土)〜12月23日(月・祝)
会場:神奈川県 横浜 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2013』

2013年9月28日(土)〜10月27日(日)
会場:京都府(以下同)
京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)、元・立誠小学校、京都府立府民ホール アルティ、Gallery PARC、京都市役所前広場 ほか

上演作品:
[公式プログラム]
チェルフィッチュ『地面と床』
マルセロ・エヴェリン/デモリションInc.『突然どこもかしこも黒山の人だかりとなる』
庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』
木ノ下歌舞伎『木ノ下歌舞伎ミュージアム“SAMBASO”〜バババッとわかる三番叟〜』
She She Pop『シュプラーデン(引き出し)』
Baobab『家庭的 1.2.3』
池田亮司『superposition』
ロラ・アリアス『憂鬱とデモ』
ビリー・カウィー『“Art of Movement” and “Dark Rain”』
高嶺格『ジャパン・シンドローム〜ベルリン編』

プロフィール

岡田利規(おかだ としき)

1973年 横浜生まれ。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で第49回岸田戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で『TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―』最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第2回大江健三郎賞受賞。小説家としても高い注目を集める。12年より、岸田國士戯曲賞の審査員を務める。13年には初の演劇論集『遡行―変形していくための演劇論』を河出書房新社より刊行。

小泉篤宏(こいずみ あつひろ)

1973年東京生まれ。サンガツでは、これまでに4枚のアルバムを発表。近年は、音を使った工作 / 音を使った組体操のような楽曲に取り組んでいる。また、最新プロジェクト「Catch & Throw」では、「曲ではなく、曲を作るためのプラットフォームを作ること」に焦点をあて、その全ての試みがweb上で公開されている。

橋本裕介(はしもと ゆうすけ)

舞台芸術プロデューサー。合同会社橋本裕介事務所代表。京都大学在学中の1997年より演劇活動を開始。2003年、橋本制作事務所設立。現代演劇、コンテンポラリーダンスのカンパニー制作業務や、京都芸術センター事業「演劇計画」などの企画・制作を手がける。2010年より『KYOTO EXPERIMENT』を企画、プログラム・ディレクターを務める。

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