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貪欲すぎるLiLiCoの才能 人は苦難をどこまで受け入れられるのか

貪欲すぎるLiLiCoの才能 人は苦難をどこまで受け入れられるのか

インタビュー
佐々木鋼平
テキスト:杉山洋祐(編集集団WawW!Publishing), 撮影:相良博昭
2014/03/31

今でもずっと歌手で成功をしたいと思っていますよ。そのために、映画コメンテーターという仕事は回り道なのかもしれない。でもそこで出会った人たちはいい人ばかりで、ラッキーだったと思います。

―ずっと歌手になることを夢に頑張ってこられたLiLiCoさんは現在、映画コメンテーターとしての活動を中心にされています。ぶしつけな質問かもしれませんが、今のご自身については、どのように感じられているのですか。

LiLiCo:つまり、私は成功していないんですよ。歌手として活動していますけど、ヒット曲があるわけでもない。「いただいたお仕事は何でもやってみよう」と思ってやっていたら、映画コメンテーターとしてお仕事をいただけるようになったということなんです。でも私は、今でもずっと歌手で成功をしたいと思っていますよ。そのために、映画コメンテーターという仕事は回り道なのかもしれない。でもそこで出会った人たちは、みんなすごくいい人ばかりだったので、ラッキーだったと思います。

―夢を実現するために、何かを「受け入れる」ということについて、LiLiCoさんは寛大な人なんじゃないかと思うんです。駆け出しの頃の経験しかり、歌手以外の仕事にしても、映画のコメンテーターにしても。

LiLiCo:人生で大変な経験をしてきたことが、逆にラッキーだったと思っています。何でも受け入れられますよ(笑)。大胆に言えば、苦手な人の方がちょっと興味あるんです。「この人とは絶対に友達になれないけれど、なんでこんなに性格が悪くなってしまったんだろう?」って。これはもうインタビュアー魂だと思うんですけれど。映画『キャプテン・フィリップス』で、ソマリアの海賊が貨物船をジャックして船長を人質に取ったりしているのに、でも最後に感動して涙が出るのは何でだろう? って。海賊の人たちも過酷な状況に追い込まれていて、シージャックをしないと生きていけない。だからその人たちの悲惨な人生もそこにはあるんですよ。もちろんジャックするのはだめですよ。でも性格が悪くなった人たちも、何かしらの理由があると思うんです。お父さんと戦っていたとか、周りに悪い友達ばっかり置いていたとか。私が仲良くさせていただいているある方は、親とすごく仲が悪かったそうなんです。私も親とすごく仲が悪かったから、やっぱりそういう人とは何か感じ合えるところがあるんですよね。

―今日、LiLiCoさんのお話を聞いていて、「想像する」ことで、本当に世界の見え方って変わるんだなあって、あらためて思いました。

LiLiCo:映画は私の視野を広くしてくれます。私、興味のないことって基本的にはないというか、なくそうとしているんですよ。興味がなくてもそこに行ってみよう精神というか。幕張メッセでいろんなショーをやっているじゃないですか。自転車を持っていないし、欲しくもないのに、自転車ショーとかに行ってみるんですよ。で、そこに行くと、サドルが何百個とか並んでいて、それを見つめている男性たちがいて、「どれでもいいじゃん」って思うんだけど(笑)。でも、ちゃんと見ていると、なるほど、この男性は通勤で自転車を使っていて、一生懸命サドルを選んでいるんだなって、そういう世界もあるんだなって思えてくる。そうすると道で自転車が倒れていたりすると、このサドルも一生懸命選んだ人がいたのかなって思えて、起こしてあげたりとか。さすがに何台も倒れていたら嫌だけど(笑)。

LiLiCo

―もう、その貪欲さは才能でもありますね(笑)。普通、やっぱりそこまで思わない人もいるわけじゃないですか。コメンテーターという仕事も、ものすごく幅広い対象を相手にするわけで、相当大変な仕事なんだろうなって思います。

LiLiCo:コメンテーターなんて誰でもできると思われているように感じることが多いんですけど、そんな簡単にできませんよ。テレビで話す技術って、めちゃくちゃ高度なものを要求されるんです。大体みんな初めはもうロボットみたいになっちゃって(笑)。

人生でいいことなんて勝手には何一つやってこないですよ。私は自分で人生を楽しもうとしているから楽しくなるだけで、全部自分で作っているんです。

―LiLiCoさんが、初めてコメンテーターの仕事をされたときは、どうだったんでしょうか?

LiLiCo:いやもう酷かったですよ。喋れないですもん。人様の作品を母国語じゃない言葉でどうやって人に伝えればいいんだ? っていう話で。それはもうディレクターさんやいろんな方に教えられたり、自分で言い方を学んで知恵にして。

―コメントされるときに気をつけていることってありますか?

LiLiCo:「私、この映画が好きだから紹介します」って、やっているわけじゃないんです。日本には1億3000万人くらいの人がいて、趣味なんてそれぞれですから、人の好みとは関係なく伝えないといけない。だから、ただ「面白かったです」とは言わないようにしています。それじゃ私と趣味を共有している人にしか伝わらない。でも、「今はちょっと振られてしまって、恋をするのは疲れちゃったなって思っているかもしれないけれど、この映画を見たら、もう一度新しい恋をする勇気がもらえるよ」って言われたら、「あ、なるほど」って、誰でもわかるじゃないですか。『ワイルド・スピード』みたいなカーアクション映画なら、「このままビールジョッキ3杯いけるよ!」って(笑)。たぶん大事なのはそこなんですよ。視聴者と映画をどうやってつなげるのか。

―素晴らしいですね。まさに「メディア=媒介」の仕事というか。

LiLiCo:こういうタイプの人がいなくなっちゃだめだなって思いますよ。自分の好みだけでしゃべっている人が非常に多いので。

LiLiCo

―そうですね。特に今はネットの影響もあって「一億総批評家時代」とも言われていて、どうしてもみんな批評家になりたがってしまう。それがいい部分も勿論あるんですけれど……。

LiLiCo:私は、悪く言うのは素人だと思っているんですよ。どうしても言いたかったら飲み屋で言えばいいんです。あの映画は自分に合わなかったとか、「あの主人公、甘くない!?」みたいな、共感できないことだっていっぱいありますよ。それはそうですよね、私自身はこういう人生で、自分の基準で物事を見ているわけですから。でも、映画を観ているときは、素人目線のLiLiCoとプロ目線のLiLiCoがいて、さらに女性のLiLiCoと、男性のLiLiCoと、オカマのLiLiCoがいるんですよ。だから、私はオカマちゃんとも気が合うし、よく「あんたはオカマの中のオカマよ!」って言われるんですけど(笑)。あと、レズビアンにも気に入られますし、おじいちゃんやおばあちゃんも、「LiLiCoちゃん!」とか言ってくれて。

―今日はLiLiCoさんのことをたくさん伺ってきましたけど、お話を伺えば伺うほど、懐の深い方だなあ……という印象で、ひょっとしたら本当のLiLiCoさんはまだ他にもいるんじゃないか、っていう気もしているんです。

LiLiCo:そうなんですよね~! でも、そこは謎のままですよ(笑)。ひょっとしたら私はLiLiCoを作り上げていて、今話しているのは、そのLiLiCoかもしれない。じつは家に帰ったら、「あ~~~」とか言ってるのが本当のLiLiCoの姿かもしれない。でも、もしそうだったとしても、LiLiCoっていう1人のタレントを作り上げるのもプロとしての仕事です(笑)。

―もし、本当のLiLiCoさんがいたとして、その心を動かす作品、映画でも本でも何でもいいんですけれど、フェイバリット作品ってどういうものなんでしょうか?

LiLiCo:映画だったら、『歓びを歌にのせて』というスウェーデンの映画です。生きる喜びを優しく、そしてアグレッシブに教えてくれるから。人生は自分だけのものだよって、そういうことを説教っぽくなく、気付かせてくれる映画なんです。だって、人生なんて楽なもんじゃないし、いいことなんて勝手には何一つやってこないですよ。私は自分で人生を楽しもうとしているから楽しくなるだけで、全部自分で作っているんです。

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書籍情報

『ザリガニとひまわり』

2010年12月発売
著者:LiLiCo
価格:1,470円(税込)
発行:マガジンハウス

プロフィール

LiLiCo(りりこ)

スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳の時来日、1989年から芸能活動スタート。TBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演しているほか、フジテレビ『ノンストップ!』『SHELiCoの夜活』など、レギュラー出演番組も多数。映画、ファッションのイベントやトークショー、ラジオ、映画やアニメの声優も演じるなど、マルチに活躍している。

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