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デタラメになれない人間、小田晃生が描くチグハグな世界

デタラメになれない人間、小田晃生が描くチグハグな世界

インタビュー・テキスト
田中宏
撮影:相澤心也
2014/03/27

何気ない日常を趣深い物語に変える言語感覚も、曲に合わせた柔軟な楽器使いも、普通のバンドマンとは異なる活動を続ける彼だからこそ生み出せるものなのだろう。アイリッシュやカントリーなどを取り入れたアコースティックバンド「コケストラ」に始まり、子どもたちに大人の本気を見せつけることをめざした「歌のおじちゃん」4人組バンド「COINN」、ショピンの野々歩との親子で楽しめる童謡や遊び歌のユニット「ノノホとコーセイ」など数々の遍歴を持ち、さらにはひっそりと小学生向け音楽教室のギター講師も行っている小田晃生が、シンガーソングライターとしては実に5年ぶりとなるアルバムをリリースした。そのタイトルどおり、バラバラなアプローチで挑んだ10曲を収録した『チグハグソングス』は、どこかほのぼのとした彼の人間性が一貫して伝わってくる魅力的な作品だ。これまでの歩みとソロ活動の位置づけ、そしてハッと驚くMVについてを含む今作のこと。たっぷりと語ってもらった。

やりたいと思ったことにとことん時間を使える学校だったので、高校時代は芝居をやったり、バンドをやったり、しこたま好きなことをやってました。

―まずは小田さんが何者なのかというところから紐解きたいのですが、音楽活動はいつ頃からスタートしたんですか?

小田:表立って始めたのは、同じ高校の卒業生で結成した「コケストラ」というバンドです。すごくへんてこな誕生の仕方をしまして、ポリスターレコードの牧村さんというプロデューサーの方のアイデアで、いきなりCDをつくる企画から生まれたバンドなんです。

―ポリスターの牧村さんと言えば、シュガー・ベイブやフリッパーズ・ギターも手がけた超有名プロデューサーじゃないですか?

小田:そうなんです。「もう定年も近いし、最後に好きなことやって、パーッと終わらせたいんだよね」みたいなことを言っていたみたいで。本当はオムニバスみたいなものを想定していたみたいなんですけど、僕たちはデビューできるものだと勘違いして、バンドを組んじゃったんです(笑)。いまショピンというバンドでボーカルをやっている野々歩(ののほ)と、柴山真人というフィドルのメンバーと三人でやっていました。何年か前に活動休止しちゃったんですけどね。

―コケストラはどんなバンドだったんですか?

小田:音響設備がなくてもできるアコースティックな編成で、歌詞が柔らかいこともあって、自然と子どもたちの前で演奏する機会が多かったですね。音楽劇をやったりしてすごく面白かったんですけど、そのバンドではなかなかできなそうな曲がたまっていって、ソロ活動も始めました。

小田晃生
小田晃生

―自分で曲を作るようになったのは、いつ頃からですか?

小田:しっかり作り始めたのはコケストラをやるようになってからです。高校生の頃からがんばって書いてはいたんですけど、最初はミスチルのマネみたいな曲ばっかりでしたね。でも高校の頃は寮生だったので、昼も夜も音楽やらお芝居やら、好きなことにしこたま時間を使ってましたよ。

―自由の森学園といえば、永積タカシさんとか、星野源さんとか、ミュージシャンをたくさん輩出してますよね。

小田:普通科しか無いんですけどね。音楽の学校なの? と訊かれることがあります(笑)。今回の作品にも、同じ高校出身の元SAKEROCKの二人(田中馨と野村卓史)に参加してもらっています。ちょっと年が離れているので、関わるようになったのは卒業してからですけどね。ミュージシャンだけじゃなく、卒業してからいろいろなお仕事の現場で、同窓生と出会うことがありますよ。

僕は「チグハグ」や「デタラメ」に憧れているけど、実際にはそういう人間にはなりきれないんです。でも、少しはそういう部分があるし、そこに面白さがあるとも思うから、あえて「デタラメ」なことに挑戦してみようと。

―今回のアルバム『チグハグソングス』は、5年という長い時間を経ての新作になりますよね。

小田:今回痛感しましたけど、ソロって後回しになっちゃうんです。この5年の間に新しいユニットを組んだりもしていて、やっぱり人と関わることのほうが優先されるんですよね。でも、その中でコツコツ作りためていた曲がようやくまとまったという感じです。

―どんなコンセプトで制作を進めていたんですか?

小田:先に『チグハグソングス』というタイトルのアルバムを作ろうというのがあって、曲ごとに世界観が異なるところにあるというか、「全体が散らばっているということをコンセプトにしたかったんです。僕は絵を描いても塗るのをサボったり、同じような色の服ばかり買っちゃったり、色とりどりな感じを発想するのが苦手なんですけど、あえてデタラメなものや予測がつかないものを目指したかったんです。

―それはなぜでしょう?

小田:僕は「チグハグ」だったり「デタラメ」に憧れてはいるけれど、実際にはそういう人間にはなれないんです。例えば、タオルをたたんだら角はピシっと揃えたくなりますし、食器がごちゃっとなってたら洗いたくなるし。基本的に僕、意外なこととか言えないんですよね。かなり真っ当な人間なんじゃないかなっていう自信がある(笑)。就職してないし、知らないこともいっぱいあるんですけど、そこまで他人にヒドいこともしてないと思いますし。やっぱり音楽をやっていると、すごい人の話っていっぱい聞くじゃないですか。

―確かにメチャクチャなミュージシャンとかいますよね。

小田:良くも悪くも、普通の自分の中で憧れが募って生まれたのが「チグハグ」という言葉だったんです。『チグハグソングス』なら「グ」が3回あって韻を踏んでるのも面白いし、まず冠を先につけて、そこに向かってできあがった曲を並べていきました。

―でも、“僕はこわくなった”や“44ひきのねこ”など、かなり振れ幅がある楽曲を聴いていると、小田さんが『チグハグソングス』という世界を構築したのには、1人の人間が1つの人格を担って生きていかなければならないということを、了解していない感覚があるのかなと思ったんです。人って、毎日考えることも違うし、少しずつ変化していくのに、社会性を保つために、ずっと同一の人間として生きていかなくてはならないという矛盾に抗っているというか。

小田:それは本当にそうで、1人の人間の中って、本当はごちゃごちゃしてるじゃないですか。いろんなことを考えながら別のことをやってたりとか。昔、CD屋でバイトしていたんですけど、同じ日に発売されたモーニング娘。の最新シングルとQUEENのリマスター盤を同時に買っていくおじさんがいたりして、チグハグしてるなって思ったんですよ。でも、自分もそういう部分があるし、それは認めたほうがいいし、そこに面白さがあるとも思うんです。

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リリース情報

小田晃生<br>
『チグハグソングス』(CD)
小田晃生
『チグハグソングス』(CD)

2014年3月29日(土)発売
価格:2,520円(税込)
TORCH-001

1. チグハグ
2. 僕はこわくなった
3. ネムネムの国
4. 海の食事
5. スラローム
6. 44ひきのねこ
7. うっかりの日
8. 猟師と三日月
9. 雨男
10. 旅のもの

プロフィール

小田晃生(おだ こうせい)

音楽家。作詞作曲と歌、演奏楽器は主にギター、パーカッションなど。2006年頃より、ソロ名義でのギター弾き語りを中心としたライブ活動を始め、小さな呑み屋や食べもの屋さん、ライヴハウス、コンサートホールなどなど、大小さまざまな会場で幅広く演奏を行っている。これまでに2つのアルバム作品『まるかいてちょん』('07年)『発明』('08年)をリリースした。また、こどもとその親たちの為のコンサートや音楽制作も行っており、齋藤紘良率いる4人組チルドレンミュージックバンド“COINN”のドラムとバンジョー。そして、ショピンのボーカル、野々歩とのふたりユニット“ノノホとコーセイ”のギターとして所属し、それぞれで歌や作曲も手がけている。そのほかに、舞台・映像作品・CMなどの音楽制作や、小学生向け音楽教室のギター講師などの活動の場も持つ。2012年、NHK Eテレで放映された5分アニメ「ノンフィクション型旅アニメ おかっぱちゃん旅に出る」では、声の出演として、全13話で登場するたくさんの奇天烈で愉快なキャラクターたちを声色を変えながら演じた。

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