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語り継がれる名作『MOTHER』からの25年 鈴木慶一×田中宏和

語り継がれる名作『MOTHER』からの25年 鈴木慶一×田中宏和

インタビュー・テキスト
タナカヒロシ
撮影:豊島望

『MOTHER』で作った音楽をセルフカバーしてみたいなと、さっき思いましたね(笑)。いつになるかわからないけど。(鈴木)

―お二人の近況も伺いたいんですけど、鈴木さんは今正式に動いているものは、KERAさんとのユニット「No Lie-Sense」と、昨年スタートさせた「Controversial Spark」の2つですか?

鈴木:正式に表面立ってるのはね。もうじき、なんかやるかもしれないけど(笑)。

左から:田中宏和、鈴木慶一

―今後のご予定は?

鈴木:まずはControversial Sparkのアルバムを出すこと。No Lie-Senseも2枚目のアルバムがほとんどできてるんだけど、ちょっとKERAが忙しすぎるから(笑)。いずれソロも出そうと思ってるし、いろんなことを考えてますけど、1つずつ動かしていくしかないので。あと、『MOTHER』で作った音楽をセルフカバーしてみたいなと、さっき思いましたね(笑)。いつになるかわからないけど。

―田中さんのほうはゲームやポケモンの音楽はもちろん、ゲームボーイカラーの赤外線通信機能を使ったゲーム『ちっちゃいエイリアン』(2001年)を開発されたり、先日も『aDanza』という新しいiPhoneアプリを発表されたり、常に新しいジャンルでもの作りをされているイメージがあるんですけど、ご自身の中では全部つながっているんですか?

田中:意識はしてないですけど、任天堂のときに音楽も商品開発も分け隔てなくさせてもらっていたことが、ずっと残っているんですよね。あと、若い人たちをドライブしたいっていう気持ちは常にありますね(笑)。そういうことに対してはいつもマメに動こうと意識しているかもです。

『aDanza』※「力士」近日リリース予定
『aDanza』※「力士」近日リリース予定

鈴木:作曲やって、開発やって、社長もやってるわけでしょ。脳の中はすごく汗をかいてると思うんですよ。私もいろんな活動を並行しているけど、そのほうが働くことが逆に苦痛じゃなくなって、いいと思うんですよね。

田中:今の自分の状況は偶然の積み重ねですね。たとえば作曲家としての自分を考えたら、慶一さんみたいにアーティストとしての作品作りじゃなくて、「ポケモンの曲お願いします」って言われたらポケモンの曲を一生懸命書くし、「チップチューンかぁ~」って思ったらそういう方向で取り組むし。でも、「田中さんは何を作りたいの?」と聞かれたら、じつは答えられない(笑)。

鈴木:田中さんはいろんな顔を持ってますよね。経営者になるなんて、『MOTHER』をやっていた頃は思いもよらなかったし(笑)。私も一時、いろんな分野をやろうとしたけど、結局は音楽が一番性に合ってるな、音楽を作るだけでいいんじゃないかなと思うようになって。だから私からすると、田中さんの持つ多面性は興味深いなと思うんですよ。

―そんな多面性のある田中さんの最新作が、再生する音楽に合わせてキャラクターがダンスをするiPhoneアプリの『aDanza』ですけど、鈴木さんもご自身のiPod touchに入れられてましたね。

鈴木:Twitterで田中さんがつぶやいてて、「なんだろうな?」と思ってダウンロードしたんですよ。あれ、必ずしもリズムに乗らないところが面白いですよね。

『aDanza』※「力士」近日リリース予定
『aDanza』※「力士」近日リリース予定

田中:はい、基本は人が踊ったダンスのモーションキャプチャデータを元にしているのですが、プログラムが独自に音楽を解析してキャラの動きを制御しているので、開発した我々でも予期せぬダンスに出会って、スタッフみんなで大笑いしていることもあります。

―最近、新しいキャラクターもリリースされたとか?

田中:「パイナップル」と「ビキニ」と、最新が「力士」ですね。ビキニの中身はマライア・キャリーの体型を意識しているらしいです(笑)。力士は肌感を出すために、ウチの社員の肌をテクスチャーで使いました。

鈴木:カオス度が高いね(笑)。

左から:田中宏和、鈴木慶一

―これは誉め言葉ですけど、発想がおかしいですよね(笑)。日常空間に溢れる赤外線からエイリアンを捕まえる『ちっちゃいエイリアン』とか、思いもつかないようなものを提供していきたいっていうのは、田中さんの根底にあったりするんですか?

田中:それはたまたま、そのときの興味ですよ。『ちっちゃいエイリアン』の当時は、宇宙はビッグバンが起こって爆発して膨張し、また収縮したりして、いつか無くなっちゃうのなら、僕らは光の中のツブツブみたいな存在なんじゃないか……(笑)、となんとなく思ったのがきっかけで。で、今回は 「踊る」って誰でもできるし、それが面白いなと思って作り始めたアプリなんです。『aDanza』のダンスはプロアマ含め、人間の踊りをモーションキャプチャしているんですけど、人間じゃないキャラクターに人間の骨格が憑依している感じが面白いと思ったり。人は音から何がしかの感情を受け取るわけじゃないですか。踊りも音と似たようなところがあって、国境がないというか、あと年齢差もなく楽しめるなあと思って。

今まで聴いたことがない音楽に出会いたいという強い欲求がある一方で、1つの音楽を末永く楽しむための自分なりの方法というのも模索しているんです。(田中)

―お二人とも本当に次々アイデアが出てくる感じですけど、普段から何か心掛けていることはあるんですか?

鈴木:私は自分を狭い場所に置かないようにしたほうがいいと思っていて。やっぱり「音楽やってる鈴木さん」っていうのがあるじゃないですか。なるべくそうじゃない場所に自分を置くようにしてますね。今所属しているサッカーチームが3つあるんですけど、マネージャーから「なんでこんなにサッカーの予定がいっぱい入ってるんですか?」って言われていて(笑)。

―これも曲を作るためだと?

鈴木:うん。これをやらないとね、曲ができないのって。

―それ言われたら何も言い返せないですね(笑)。田中さんはどうやってインプットを得ているんですか?

田中:僕は趣味がそのまま音楽なので、とにかく聴きまくります。もともと雑多な音楽が好きなんですけど、だんだん音楽の幅を広げるためのきっかけがなくなってきて。ここ数年は女の子のジャケットのレコードを買うことに凝っていて、コロンビアとかベネズエラとか、中南米の女の子の水着ジャケを一生懸命探してますね(笑)。

田中宏和の中南米レコードコレクション

田中宏和の中南米レコードコレクション

鈴木:水着買いだね(笑)。

田中:でも、あくまで大事なのは中身ですよ(笑)。しょうもない作品もあるんだけど、たまに本当に面白いのがあるんですよ。あとはなるべく新しいものを聴くようにも心掛けています。

―それは純粋に楽しくてやっているのか、新しいものを吸収しなきゃいけないという強迫観念的なものなのか、どっちなんですか?

田中:両方ですね。

―これだけ世の中に音楽が溢れている中で、そこから新しいものを見つけるって、すごいエネルギーが必要ですよね。

鈴木:1人じゃ無理だよね。パートナーとか、マネージャーからニュースを聞いて。レコメンドしてもらったりしないと。

田中:確かにそうですね。みんな今まで聞いたことがない音楽に出会いたいという要求があるけど、僕の場合それはやっぱ新しい音楽を聞く、ってことかなぁ、と身も蓋もないけれど。あと、ジャケ買いをするのも、未知の音楽にたどり着く1つの道なんだけど、その気楽さが結果的に、音楽まみれで自分が煮詰まりにくくなることにつながるのでは、と思ったりもするんです。「末永く楽しむ」ために今は何を選択すべきか、みたいなことが、音楽に限らず最近のテーマの1つという気がしています。

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イベント情報

『SOTIRED Supported by aDanza』

2014年9月18日(木)18:30~22:00
会場:東京都 表参道 OMOTESANDO Gallery
出演:
Carpainter
Chip Tanaka
DE DE MOUSE
Licaxxx
Seiho
料金:当日2,000円 当日フライヤー持参1,000円
※ 問い合せ、詳細は企画・運営担当のエレダイへ

『DIGGIN' IN THE CARTS』公開記念イベント
『Red Bull Music Academy presents 1UP: Cart Diggers Live』

2014年11月13日(木)19:00~
会場:東京都 渋谷 Womb
出演:
Rustie vs Yuzo Koshiro
Oneohtrix Point Never: Bullet Hell Abstraction IV
Fatima Al Qadiri: Forgotten World
CHIP TANAKA
DUB-Russell & (*L_*) & 初音ミク
HALLY
QUARTA 330
大久保博
井上拓
佐野電磁
杉山圭一
ローリング内沢 CURATING THE ROOM
日野太郎(VJ)
+Classic Arcade machines
料金:1,000円 ※20歳未満入場不可 / 要 写真付身分証

詳細情報

RED BULL MUSIC ACADEMY presents『DIGGIN' IN THE CARTS』

日本のテレビゲーム音楽に隠された歴史を探るドキュメンタリーシリーズ
RBMA日本サイトにて、9月4日(木)から毎週木曜日、1エピソードずつ順次公開予定
出演:田中宏和、古代祐三、植松伸夫、Flying Lotus、ほか

リリース情報

『aDanza』

2014年7月18日(金)リリース
料金:無料
動作環境:iOS6.1以上、iPhone4s~、iPod Touch(第5世代~)、iPad(第3世代~)(Android OS未対応)

Controversial Spark<br>
『Section 1』(CD)
Controversial Spark
『Section 1』(CD)

2014年10月22日(水)発売
価格:3,000円(税込)
Kinksize / XQCG-1904

1. Hello Mutants
2. Ex-Car
3. Section1
4. くりかえす
5. Jigoku No Hamabe
6. Over Heaven
7. Moonlight N.M.D
8. Sweet Home
9. a Hook
10. Greys
11. Controversial Short Stories
12. Spark Stories
13. First Session(Bonus Track)

プロフィール

鈴木慶一(すずき けいいち)

1951年東京生まれ。1972年にはちみつぱいを結成、アルバム『センチメンタル通り』(1972年)を発表し解散。1975年、はちみつぱいを母体に、弟、鈴木博文らが加わりムーンライダーズを結成。1976年アルバム『火の玉ボーイ』でデビューし、2011年には35周年を迎えた。ムーンライダーズの活動と並行して、1970年代半ばよりアイドルから演歌まで多数の楽曲を提供すると共に、膨大なCM音楽を作曲。任天堂より発売されたゲーム『MOTHER』『MOTHER2』の音楽は、今でも世界中に多数の熱狂的なファンを持ち、国内外の音楽界とリスナーに多大な影響を与えている。映画音楽では、北野武監督『座頭市』の音楽で『第27回日本アカデミー賞最優秀音楽賞』『第36回/シッチェス/国際カタルニヤ映画祭オリジナル楽曲賞』を受賞。2008年、ソロアルバム『ヘイト船長とラヴ航海士』をリリース。『第50回日本レコード大賞優秀アルバム賞』を受賞した。

田中宏和(たなか ひろかず)

株式会社クリーチャーズ代表取締役社長。作曲家。1980年、任天堂に入社。ゲーム&ウオッチやファミコン、ゲームボーイなどの企画及びゲームプログラム、サウンドデザインや、音源開発などに携る。ゲーム音楽の代表作としては、『メトロイド』『スーパーマリオランド』『テトリス』『ドクターマリオ』『MOTHER』(鈴木慶一との共作)『MOTHER2 ギーグの逆襲』(同)『ポケットカメラ』などがある。作曲を手がけた、テレビアニメ『ポケットモンスター』主題歌“めざせポケモンマスター”は180万枚というセールスを記録。クリーチャーズでは、蛍光灯や白熱電球、リモコン受信部など、日常の光を使って遊ぶコンピュータゲーム『ちっちゃいエイリアン』の他、『ポケパーク』シリーズ、『ポケモンレンジャー』シリーズを企画・開発。他に『ポケモンカードゲーム』シリーズのエグゼクティブプロデューサーも務める。

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