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安藤裕子が映画ヒロインに初挑戦、遂にたどり着いた憧れの世界

安藤裕子が映画ヒロインに初挑戦、遂にたどり着いた憧れの世界

インタビュー・テキスト
藤田ひとみ
撮影:豊島望
2014/10/07

映画の世界は、自分にはこれからも手の届かない遠いところだなって思っていました。(安藤)

―安藤さんは、今回のヒロイン役が決まったとき「映画の世界を諦めた理由も、憧れた理由も思い出した」とコメントを発表されていましたね。その「諦め」と「憧れ」について、具体的にお伺いできますか?

安藤:大学受験のときに、映画専門の大学に入りたいと思って願書まで取り寄せて、受験科目である2科目の準備を進めていたんですけど、急に道を決断するのが怖くなっちゃって諦めたんです。お嬢様育ちだったというか(笑)、他の人々からあまりにはみ出したことはしたくないし、「できない」って思い始めてしまって。願書を出す12月ぐらいになって、先生に「やっぱり普通の大学に行きたい」って相談したんですよね。それで急遽進路変更して偶然入学した大学が女子大だったんですけど、入学してみたら、かなり違和感があったんですよ。みんなの会話がよくわかんなくって(笑)。

安藤裕子
安藤裕子

三島:わかる! 私も女子大に通ってたのですが、みんなの会話に全然ついていけなくて。私も間違えて入っちゃったパターンです。

安藤:大学にとけ込めなくて、私、浮いていたと思いますよ。内向的になってしまうぐらい、「ここは自分の居場所じゃないな」って思ったので、文章を書くことに没頭したんですよね。映画の制作現場には行けなくても、ものを書くことでも表現できるんじゃないかと思って。論文を書く授業を専攻して、新聞記者にも憧れていたんですけど、小説とか書いているとやっぱり画が浮かぶから、「これが映像になったらいいな」という想いがどうしても消えなかったんですよね。映画の制作会社に自分が書いた本を送りつけたり、アポなしの直談判で「読んでください!」て押しつけたりしていましたね。いきなり映画会社に、「バイトとかないですか?」と訪ねたり(笑)。

三島:そうだったんだね。私もいきなり映画会社に行って「仕事ないですか?」って言ったことありますよ。「ないよ、ごめんね~」って言われちゃいましたけど。

三島有紀子
三島有紀子

―意外な共通点ですね(笑)。

安藤:結局私は、知り合いを介して企画側ではなく出演者として、なんとか映像の世界へ紛れ込むことができたんですが、挨拶回りのときも自分の企画書を読んでもらいたくて、テレビ局の編成局長やプロデューサーに直接手渡したりしていました。いまでこそカメラマンの前でにっこり笑ったり、ポーズを作ることもできますけど、生まれ持ってのニヒルな人間だったし、その当時は、白いお洋服なんか着させられて、髪は外巻きにカールされて、宣材写真撮るのに「はい、笑ってー!」なんて言われても、「笑えるかいっ!」て思って……ダメでしたね。「本当は映像を作る側の仕事がしたいのに」っていう焦燥と葛藤がずっとあったんです。

三島:やっぱり安藤さんはクリエイターなんですよね。自分の中から湧き出る何かを表現したいっていう人ですよね。

安藤:エキストラとして映画やドラマの制作現場に入って、映像が作られていく過程を見るのはすごく楽しかったし勉強になった反面、作る作業をされているスタッフの皆さんの過酷さを、まざまざと見ることにもなりました。なまぬるい人生を歩んでいたので、正直たじろいだんです。自分には制作現場は無理かな、と思うのと同時に、笑えと言われても笑うこともできない演者としての自分のレスポンス能力の低さに、嫌気がさしていました。

―そんな落ち込む日々の中、ミュージシャンとしてデビューするチャンスが訪れてきた、ということでしょうか。

安藤:役者としてのオーディションで歌をほめられたことをきっかけに、音楽を作り始めていたんです。音楽は、やり始めるととんとん拍子に仲間が増えていき、アレンジしたいと言ってくれる子が現れたり、スタジオを提供してもらえる機会に恵まれたり、すぐにライブも実現したし、そのうちにレコード会社の人とも会えて、話もどんどん進んでいって、音楽の方が自分の中でリアリティーが湧いていきました。最初から音楽に興味があったわけではないのだけれど、映画よりも音楽との距離が近くなっていって。映画の世界は、自分にはこれからも手の届かない遠いところだなって思っていました。

©2014『ぶどうのなみだ』製作委員会
『ぶどうのなみだ』 ©2014『ぶどうのなみだ』製作委員会

少女になったり、母性あふれるたくましい母親になったり、いろんな安藤裕子が、年齢を超えて見えてくるのが面白いなって思います。(三島)

―安藤さんは、PVをご自身で監督したり、現在もやはり映像で伝えるということに挑戦し続けていらっしゃいますよね。

安藤:音楽をやっていて、映像制作の機会がもらえたことは、ラッキーだったなって思います。PV制作をやり始めた当時は、言葉で人に伝える能力がなかったので、制作の現場でも意見を仲間内にすら伝えられなくて大変でしたね。最初のアルバムを作っているときも、レコーディングの最中に泣き出してしまったりして、エンジニアさんを困惑させたこともありました。

三島:矛盾なんですよね。映像表現をしたい人間って、言葉で伝えきれないからこそ映像を介して思いを伝えたいんですけど、映像というのは、どうしても1人では作れない。まずは一緒に作る人と共有しなきゃならないのに、しゃべるのが下手で言葉では伝えられなくて、「だから映像で伝えたいのに!」っていうジレンマ。

安藤:でもやっていくうちに上手になっていくんだなって思います。三島監督はすごくわかりやすく理解させてくれましたよ。だから私は、ただただ監督の言葉を聞いてカメラの前に立っていたし、監督がエリカの感情まで誘導してくれたなっていう想いがあります。私は、今回の撮影現場で、あえてモニターは見ませんでした。監督を信頼して、自分が違和感なくしゃべれているって事は、多分大丈夫だろうと。

三島:やはり感性の鋭い方なので、言葉以上のものをその場で受け止めてくれました。土の感触や風の透明感、すべてをいっぱい感じ取って表現して下さるので。

©2014『ぶどうのなみだ』製作委員会
『ぶどうのなみだ』 ©2014『ぶどうのなみだ』製作委員会

―お話を伺っていると、監督と安藤さんは、似ている部分がたくさんあるような気がします。

三島:安藤さんはシンガーソングライターで、私は原作から脚本・監督をしているわけで、自分のオリジナルを表現する、という意味では似ていますよね。それから、お嬢様育ちで、日常で内包しているものを表現で解放したい、映像表現で伝えたいって部分が共通項でしょうか(笑)。

安藤:エリカを演じていても、「これは監督の体現なのかな」と何度か思いましたよ。本人は否定するかもしれませんが、制作の現場では女性であることを隠すかのように、凛とたたずんでいらっしゃるんですけど、どこか少女的で、繊細で、多感なんです。

三島:特に「少女性」は共通項ですよね。安藤さんはもう母親ですけど、時々少女の顔がのぞいているし、私も自分の中に8歳くらいの少女がいて、ものを書いているときにふいに現れたりするんです。少女になったり、母性あふれるたくましい母親になったり、いろんな安藤裕子が、年齢を超えて見えてくるのが面白いなって思います。

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イベント情報

『ぶどうのなみだ』

2014年10月4日(土)から北海道先行公開、10月11日(土)から全国ロードショー
監督・脚本:三島有紀子
音楽:安川午朗
出演:
大泉洋
安藤裕子
染谷将太
田口トモロヲ
前野朋哉
りりィ
きたろう
大杉漣
江波杏子
配給:アスミック・エース

プロフィール

三島有紀子(みしま ゆきこ)

大阪府出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局。『NHKスペシャル』『トップランナー』など「人生に突然ふりかかる出来事から受ける、心の痛みと再生」をテーマに一貫して市井を生きる人々のドキュメンタリー作品を企画・監督。11年間の在籍を経て独立後、『刺青~匂ひ月のごとく~』で映画監督デビュー。オリジナル脚本で監督を務めた『しあわせのパン』は、同名小説も執筆し、ともにヒットを記録した。次回作『繕い裁つ人』(主演・中谷美紀)は来年1月公開予定。

安藤裕子(あんどう ゆうこ)

神奈川県出身。2003年シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。2005年、月桂冠のTVCMソングに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、一躍話題に。2010年にリリースした5thアルバム『JAPANESE POP』が、ミュージックマガジン年間ベストアルバムJ-POP部門1位を受賞。自身の作品ではすべてのアートワーク、メイク&スタイリングをこなし、ミュージックビデオの監督も手がけるなど、楽曲制作だけに留まらない多才さも注目を集めている。ミュージシャンとしてデビュー後は、本作が本格的な演技初挑戦となる。

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