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増田セバスチャンが「カワイイ」で取り戻す、大人が忘却したもの

増田セバスチャンが「カワイイ」で取り戻す、大人が忘却したもの

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:永峰拓也

原宿に集まる女の子の気持ちみたいなものを、この映画を通じて幅広い世代に翻訳できたんじゃないかと思います。

―「カワイイ」というのは、「これはカワイイ、あれはカワイイではない」と他人から分類されるものではないということですね。

増田:日本語で考えれば確かに、可愛いモノと可愛くないモノに区別はあると思いますが、僕がやっている、カルチャーの思想としての「カワイイ」の定義はそうではない。人によって「カワイイ」の中身は違うし、違っていいと思うんです。昔は何でも権力からトップダウンで物事が降りてきて価値が決まっていきました。でも今はSNSの普及により、100万人いたら100万人の「いいね!」があり、SNSから世の中を変えるような動きが出てきている。僕は「カワイイ」的な活動の根幹は、そういうところにあると思う。つまり、「カワイイ」はモノではなく運動体なんですよ。

―「カワイイ」は思想であり、運動体である……とても腑に落ちます。

増田:大人は「カワイイ」と聞くと、「原宿でしょ? きゃりー(ぱみゅぱみゅ)でしょ?」とわかったかのように決めてかかって1枚壁を作ってしまいます。ロックにせよ「カワイイ」にせよ、新しい価値観を作るのはいつでも若い世代。「カワイイ」を単なる奇抜なムーブメントと思い込むのは、すごく損だと思いますね。

増田セバスチャン

―これは日常的な実感ですが、おそらく女性は世代に関係なく、直感的に「カワイイ」を体現している気がします。それはたぶん……先ほど増田さんもおっしゃった、長い歴史のある日本の少女文化を、女の子なら誰もが共有してきたからじゃないかと。その良き例が、この『くるみ割り人形』。増田さんが手がけることによって「カワイイ」を今体現している少女たちに向けて現代的にリクリエイトされていますが、おばあちゃん、お母さん世代も見ることのできる、「カワイイ」映画だと思いました。

増田:そう言われてみると、初監督ということで、はじめはどの世代に向けて作ればいいか、さっぱり分からなかったんですよ。でも自分は原宿で20年以上ファッションに関わってきたので、10代、20代の女の子の気持ちだけは分かる。だったらその子たちに響けば良しとしようと思って始めたんです。でも作り終えてみると、意外にも30代、40代のみなさんからの反響がすごく大きかった。僕は、原宿に集まる女の子の気持ちみたいなものを、この映画を通じて幅広い世代に翻訳できたんじゃないかと。改めて、映画っていいものだなと思いましたね。

『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN
『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN
『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

―この作品は、「本当の愛」をテーマに、夢と現実を行き来するファンタジックなストーリーも普遍的ですし、増田さんが新たに演出したポップな映像も、女の子の心の中に残っているような世界観だと思いました。人形劇にもノスタルジーと新しさを感じますし、あらゆる世代の女性にとても魅力的に響きます。

増田:今回、シュヌルル王子役の声優として参加してくれた藤井隆さんは、実は原作映画の大ファンで、その藤井さんも「これはこれで面白い作品だ」とおっしゃってくれたんです。若い女の子以外にも面白く見ていただけるものになっていたとしたら、嬉しいですね。

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作品情報

『くるみ割り人形』

2014年11月29日(土)から全国ロードショー
監督:増田セバスチャン
3D監督:三田邦彦
テーマ曲:きゃりーぱみゅぱみゅ“おやすみ -extended mix-”ワーナーミュージック・ジャパン(作詞・作曲・編曲:中田ヤスタカ(CAPSULE))
声の出演:
有村架純
松坂桃李
藤井隆
大野拓朗
安蘭けい
吉田鋼太郎
板野友美(友情出演)
由紀さおり(特別出演)
広末涼子
市村正親
配給:アスミック・エース

プロフィール

増田セバスチャン(ますだせばすちゃん)

アートディレクター/アーティスト。1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。原宿Kawaii文化をコンテクストとした活動を行っている。2009年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー『Harajuku"Kawaii"Experience』を開催。2011年きゃりーぱみゅぱみゅ“PONPONPON”MVの美術で世界的に注目され、2013年には原宿のビル「CUTE CUBE」の屋上モニュメント『Colorful Rebellion -OCTOPUS-』製作、六本木ヒルズ『天空のクリスマス2013』のクリスマスツリー『Melty go round TREE』を手がける。2014年に初の個展『Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-』をニューヨークで開催。

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