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増田セバスチャンが「カワイイ」で取り戻す、大人が忘却したもの

増田セバスチャンが「カワイイ」で取り戻す、大人が忘却したもの

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:永峰拓也

CG全盛の時代にあえてアナログの力を使うことで、そこからじんわりじんわり、何かを感じられるんじゃないかと思っているんです。モノには魂のような力が宿ると僕は信じている。

―ちなみに、増田さんは、もともとストップモーションアニメはお好きだったんですか?

増田:もちろんティム・バートンの一連の作品やヤン・シュヴァンクマイエルの映画は見ていますし、クレイアニメも好き。ストップモーションもクレイも、かなり手間のかかるアナログな表現ですが、とても可能性のある、面白いジャンルだと思っています。僕のクリエイティブでも、CGを使えば簡単にできることを、あえてアナログにこだわって表現しています。例えば、僕が美術を担当してきゃりーぱみゅぱみゅが出演した「アイスの実」のCMは、CGのように見える背景も書き割りで作っていますし、流れ出るアイスの実も僕とスタッフが手作業で地味に転がしているんですよ(笑)。

―何でも想像したものを自由に作れるCGを使ったほうが、ラクではありませんか?

増田:そもそも「モノを作る」というのは、自由にならないことなんです。例えば、道ばたにお地蔵さんがありますよね? あれは手で彫ったものだから、そこに魂が宿って人々が信心する価値のあるものになる。モノには魂のような力が宿ると僕は信じているので、CG全盛の時代にあえてアナログの力を使うことで、そこからじんわりじんわり、何かを感じられるんじゃないかと思っているんです。

―今回の原作映画『くるみ割り人形』のストップモーションアニメも、35年前は1日に3秒分の撮影しかできず、映像が完成するまで5年かかったそうですね。

増田:まさにそれが、先輩たちの魂がこもったクリエイションですよね。だからこの映画もCGに置き換えてしまうのではなく、手間のかかった人形劇をそのまま使わせてもらっています。


僕が定義する「カワイイ」は小動物やお人形さんではなく、もっとエモーショナルな意味を含んでいるんです。

―公式サイトで公開されているプロダクションノートの中に、増田さんが監督を引き受けられた際に「この映画は『ルーツ・オブ・カワイイ』です」とおっしゃったというエピソードがありました。我々は「カワイイ」をとても感覚的に受け止めていますが、増田さんは「カワイイ」をどのように定義されているのでしょうか?

増田:僕が使っている「カワイイ」には2種類あるんですよ。その1つが「自分の中に小宇宙を作ること」。「誰にも譲れない、これは私だけのオリジナルの『カワイイ』だ」という思想が、僕の「カワイイ」の根幹にあります。もう1つは、今、世界的に普及しているアルファベットの「Kawaii」。これは、海外の人による日本のカルチャーへのリスペクトの言葉なんです。日本に興味を持った人たちが日本語のテレビや映画を見ると、他の言葉は分からないけど、女の子たちが「すごい」という言葉の代わりに多用している「かわいい」という言葉だけは聞き取れる。日本に行ったら、とにかく「Kawaii!」と言えば感動が伝わるとすら思ってる人もいるくらい(笑)。そこから転じて、海外が真似できない日本独自のポップカルチャーへのリスペクトを「Kawaii」という概念で表すようになったんです。

増田セバスチャン

―増田さんご自身の概念と海外の人たちの概念は別のものになっているんですね。

増田:僕が世界に「カワイイ」を提唱しはじめた頃と今では、「カワイイ」と呼ばれるものの範囲も広がっていると思います。世界的にはキティちゃんも原宿も、彼らに魅力的に映る日本のポップカルチャーは全てKawaiiで表現されています。経済産業省が盛んにクールジャパンを仕掛けていますが、「クール」という言葉自体、もう海外ではカッコいい言葉ではなくて、今「クールジャパン」と言うと……日本語に訳せば「ナウいジャパン」みたいな、古臭いイメージが漂ってしまう。国内需要だったらそれで良いと思うんですが、対世界なら実は「クールジャパン」より「Kawaiiジャパン」にしたほうが、言いたいことは伝わると思いますけどね。

『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN
『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

―やはり海外の「Kawaii」も、日本の「カワイイ」と同じように若い世代の言葉なんですか?

増田:そうですね、若い子というのは自分たちの中だけで通じるような新しい言葉を作りますよね。海外でもそれは一緒で、大人たちには理解できない日本語の「Kawaii」を使うことで、大人に対して優越感を抱くわけです。

―先鋭的だった隠語が流行語となり、全世代に通じる一般的な言葉に進化していったと。では、増田さんが提唱されたオリジナルの「カワイイ」についてもう少しうかがいたいです。私たちは犬猫、キャラクターなど何かのモノを見て「かわいい」と感じますが、増田さんのおっしゃる「カワイイ」=「自分の中に小宇宙を作ること」は、形ある物質を指すのではなく、思想なんですね?

増田:はい。おそらく日本語を背景にしている我々は、「かわいい」と聞いた瞬間に漢字の「可愛い」に置き換えてしまうんですよ。だから、その瞬間に小動物やお人形さんを思い浮かべてしまう。僕の「カワイイ」はそれではなく、もっとエモーショナルな意味を含んでいるんです。「カワイイ」を語る上では、どうしても僕がやってきたことがピックアップされるのでカワイイ=カラフルなものを想像しがちですが、実はモチーフは何だっていい。その人の小宇宙を構成するものは自由です。

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作品情報

『くるみ割り人形』

2014年11月29日(土)から全国ロードショー
監督:増田セバスチャン
3D監督:三田邦彦
テーマ曲:きゃりーぱみゅぱみゅ“おやすみ -extended mix-”ワーナーミュージック・ジャパン(作詞・作曲・編曲:中田ヤスタカ(CAPSULE))
声の出演:
有村架純
松坂桃李
藤井隆
大野拓朗
安蘭けい
吉田鋼太郎
板野友美(友情出演)
由紀さおり(特別出演)
広末涼子
市村正親
配給:アスミック・エース

プロフィール

増田セバスチャン(ますだせばすちゃん)

アートディレクター/アーティスト。1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。原宿Kawaii文化をコンテクストとした活動を行っている。2009年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー『Harajuku"Kawaii"Experience』を開催。2011年きゃりーぱみゅぱみゅ“PONPONPON”MVの美術で世界的に注目され、2013年には原宿のビル「CUTE CUBE」の屋上モニュメント『Colorful Rebellion -OCTOPUS-』製作、六本木ヒルズ『天空のクリスマス2013』のクリスマスツリー『Melty go round TREE』を手がける。2014年に初の個展『Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-』をニューヨークで開催。

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