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「音」を使う現代美術家・八木良太の音楽的ルーツを探る旅

「音」を使う現代美術家・八木良太の音楽的ルーツを探る旅

インタビュー・テキスト
竹内厚
撮影:佐々木鋼平
2014/11/28
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様々なメディア、日用品を素材にしながら、主に音や文字、時間を題材にした美術作品を制作してきた八木良太。氷でレコードを制作し、氷が溶けていくとともに、徐々に再生される音楽も消えていく作品『Vinyl』。あるいは、完全な球体状にカセットテープを巻きつけて、それを再生する『Sound Sphere』などの作品で覚えている方も多いだろう。

そんな八木の最新の個展『サイエンス/フィクション』が、5つの展示室からなる巨大スペースで有名な神奈川県民ホールギャラリーにて、まもなく開催される。これまで様々なグループ展などに出展してきた八木だが、美術館規模で過去作品から最新作までがまとまる機会は珍しく、一つひとつの作品ごとに別々の小宇宙を生み出すような作家だけに、今展はいわば惑星直列級の希有な機会。

今回のインタビューでは、これまで思いがけないやり方で、音や音楽機材を活かしてきた八木の音楽的なルーツについてもたずねるべく、京都市内某所にある倉庫物件を改装した制作アトリエを訪ねた。

僕はTOWA TEIさんという存在を通して、アートやデザインという世界があることを知り、今の道へ進んだと言っても過言じゃないんです。

―八木さんは現代美術シーンの中で、音を素材としたサウンドアートのような作品も数多く作られていますが、今日はそんな八木さんにあえて音楽のルーツの話を聞いてみよう、というのが目的です。

八木:作品として音をコンセプトに扱っているのは、少なからず音楽が身近なものだったからという理由はあると思います。高校時代は吹奏楽部でしたし、中学3年生の頃には、ローランドの「XP-50」っていう、オールインワンタイプのシンセサイザーを買って、曲作りもしていました。それをカセットテープに録音して学校で友だちに聴かせたりとか。

Vinyl (2005) photo:Nobutada Omote
Vinyl (2005) photo:Nobutada Omote

―曲まで作られていたんですか? それは一度聴いてみたいです。

八木:ハウストラックみたいな4つ打ちのしょぼい音源ですよ(笑)。テープが残っていたら面白いんですけどね。

―事前に聞いていた話では、八木さんがアートやデザインに興味を持ったのも、じつはTOWA TEIさんの影響が大きかったというのが興味深かったです。

八木:僕の地元はいわゆる都会ではなかったので、当時TEIさんのようなクラブミュージックが街のCD屋に並んでいることはありませんでした。だから、坂本龍一さんが好きだった友だち経由で教えてもらったのかな? とにかく地元のCD店でTEIさんの『Sound Museum』というアルバムを取り寄せてもらったんです。音楽がカッコ良かったのはもちろんですが、ジャケットやブックレットのアートワークも刺激的で、それらを含めて1つの世界観が出来上がっていることに「音楽とデザインはこんなに近かったのか」と。そこからTEIさんの作品をいろいろ買うようになりました。より上の世代だと、Kraftwerkだったりするんでしょうけど、僕にとってはTEIさんだった。

八木良太
八木良太

―『Sound Museum』はTOWA TEIの2ndアルバム。1998年に発売されました。

八木:TEIさんはウェブサイトを立ち上げたりするのも早くて、インターネットが普及し始めた頃には、もうTEIさんのサイトがあったと思います。BBSには、武蔵野美術大学の短大卒で食パンかじりながら木炭デッサンしていたとか、ニューヨークに渡って活動していたとか、いろんな書き込みがあって、運がよければTEIさんからリプライがもらえるような雰囲気でした。だから、僕は地元のCD屋からTEIさんという存在を通して、アートやデザインという世界があることを知り、今の道へ進んだと言っても過言じゃないんです。

―八木さんにとって、表現を知った最初の入り口でもあった。

八木:大学の選択肢の1つとして、美術大学を入れるというきっかけにはなったでしょうね。大学に入ってから、音楽と美術がクロスオーバーした様々な活動や作品を知って、音楽も美術も境界はないんだって意識していくことにもつながりました。

知覚領域を拡張するのが僕の仕事だと思っていますし、見たいものしか見ない、聴きたいものしか聴かないという知覚のあり方に対して、批判的な立ち位置ではいるつもりです。

―TOWA TEIさん以外にも影響を受けたミュージシャンはいましたか?

八木:TEIさんもそうですが、どうやらレコードを使って音楽をやっているDJという人たちがいるらしいと知って、高校生の頃にレコードを買い始めました。カール・クレイグとか、Squarepusherだとか。カール・クレイグはどちらかと言うとジャケ買いで、実際に聴いてみたら、当時は単調で暗い音楽だなぁと(笑)。今でもレコードを持っていますけど、あらためて聴いてみると、すごく良かったことに気づくという。

Cicada (2008) photo:Nobutada Omote
Cicada (2008) photo:Nobutada Omote

―耳が追いついてきたんですね。

八木:その後、大学を卒業してからは、スティーブ・ライヒやテリー・ライリーなどの現代音楽やノイズミュージックまで聴くようになりましたけど、それも高校生の頃に出会っていたら、拒否反応を示していたと思います。「こういう音楽がカッコイイ」なんて、勝手に耳を閉じていたところもあるんでしょうね。そういった体験は今、作品を作って目指していることにわりと近いかもしれません。知覚領域を徐々に拡張するというのが僕の仕事だと思っていますし、見たいものしか見ない、聴きたいものしか聴かないという知覚のあり方に対して、批判的な立ち位置ではいるつもりです。

―ちなみに、どこかでミュージシャンの道へと進む可能性はありませんでしたか。

八木:それはどうでしょう?(笑) いまだに西洋近代絵画とかを面白がって見られる眼が自分の中にないので、美術より音楽のほうがすんなり受け入れられる気はしますけど。ただ、学生時代なら音楽的な脳も働いていましたが、今となっては曲作りをしようとしても、全然上手くいかないと思います。音楽を作る作業って、フィニッシュの落ち着きどころがわからないんですよ。曲作りって、ある部分のノイズを削ると他の部分がダメになってしまったり、すべての音や時間が相対的に関係していて、美術作品を作るのとは全然違う。僕はPhotoshopで画像処理をする作業が苦手なのですが、それに近いイメージがあります。どちらもいろんな部分を調整しながら、ちょうどいいバランスを探るような作業だという感じがしていて、ちょっと苦手かもしれません。

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イベント情報

八木良太展
『サイエンス/フィクション』

2014年12月21日(日)~2015年1月17日(土)
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
時間:10:00~18:00(入場は閉場の30分前まで)
休館日:12月29日~1月3日
料金:一般700円 学生・65歳以上500円
※高校生以下、障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料

展覧会関連イベント
八木良太展『サイエンス / フィクション』アーティスト・トーク

2014年12月21日(日)14:00
出演:八木良太、ほか
料金:無料(要展覧会チケット、予約不要)

八木良太展『サイエンス / フィクション』トークセッション「物の理(もののことわり)八木良太の場合」
2015年1月12日(月・祝)14:00
出演:畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員)、金子智太郎(東京藝術大学/本展図録ゲスト執筆)、八木良太
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
料金:無料(要展覧会チケット、予約不要)

イベント情報

八木良太展×アートコンプレックス2014『タイムトラベル』

2014年12月23日(火・祝)19:30開演
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
出演:
岩渕貞太(パフォーマンス)
八木良太(美術)
音楽:蓮沼執太(楽曲提供のみ)
料金:2,000円(全席自由、要事前予約)

八木良太展×アート・コンプレックス2014『タイムトラベル』公開稽古
2014年11月30日(日)14:00~15:30(予定)
出演:岩渕貞太、八木良太
会場:神奈川県 横浜 急な坂スタジオ ホール
料金:無料(予約不要)

八木良太展×アート・コンプレックス2014『タイムトラベル』アフタートーク
2014年12月27日(土)14:00
出演:平倉圭(横浜国立大学)、岩渕貞太、八木良太
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
料金:無料(要展覧会チケット、予約不要)

プロフィール

八木良太(やぎ りょうた)

1980年愛媛県生まれ、京都府在住。2003年京都造形芸術大学空間演出デザイン学科卒業。音響作品をはじめとして、オブジェや映像、インスタレーションからインタラクティブな作品まで、多様な表現手法を用いて制作を行なう。身近なものを題材にして、それらが持つ機能を読み替え再編集することによって関係性や価値を反転させ、もう1つの意味を浮かび上がらせる。

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