
ついに一人になった志磨遼平の嘘を、気鋭作家・松居大悟が暴く
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:永峰拓也
前作『Hippies E.P.』のリリース日である9月24日に、突如4人体制を終了し、志磨遼平一人での活動継続がアナウンスされたドレスコーズ。それからわずか3か月弱で発表されるニューアルバム『1』は、一部を除き、楽器の演奏もほぼすべてを志磨自らが行った、実質的なソロアルバムである。リードトラック“スーパー、スーパーサッド”のMVでは、ジャージ姿に無精ひげの志磨が、一人で曲を作り、演奏し、過去と対峙して葛藤しながらもそこから解放されていく様子が、生々しくもファンタジックに、美しく描き出されている。
このMVを手掛けたのは、劇団「ゴジゲン」の主宰者であり、近年は映画監督として、さらにはクリープハイプや大森靖子などのMVの監督としても知られる松居大悟。もともと松居が志磨のファンだったことから交流が生まれ、今回両者が直接連絡を取り合い、MVの撮影が決まったのだという。ロックバンドと劇団という違いこそあれ、もの作りの集団に身を置く二人の「個」は、いかにして自分を見つめ、お互いの活動を見ているのか。今まさに一人での活動を開始した志磨と、3年ぶりの劇団公演を終えたばかりの松居という不思議なタイミングも絡み合い、単なるリスペクトを超えた、本音の対話を聞くことができたように思う。
志磨さんの曲を聴くと、すごく燃えるというか、自分が行きたいところの8歩先ぐらいをススッと行ってて、そこで軽やかに踊ってるみたいな感じがするんですよね。(松居)
―今回、松居さんがMVの監督を務めることになったのは、お二人で直接連絡を取り合って決めたそうですね。
松居:僕はずっと志磨さんの作る音楽が好きだったんですけど、あるときネモト(・ド・ショボーレ / ロックレーベルDECKREC主宰)さんという方が、「志磨くんのこと知ってるから今度紹介するよ」って言ってくれて、今年の年明けにネモトさんと志磨さんと僕で食事をしたんです。めっちゃ緊張したんですけど(笑)、初めてとは思えないくらいにいろんな話ができて。
―どんな話をされたんですか?
志磨:どんな話だっけ……でも、しょうもないことしか話してないよね?(笑)
松居:「女性は難しい」とか(笑)。
志磨:そう、女性は苦手だって話を延々した(笑)。そのときに、「きっといつか一緒にお仕事するでしょうね」って話はしてて、今回ドレスコーズが一人になるタイミングで、絶対大悟くんに撮ってもらおうと思って。それで直接メールしました。
松居:ちょくちょくメールで、「僕だったらこういうふうに撮りたい」ってYouTubeの好きな映像を送ってたので、「いつ話が来るんやろう?」と思ってました(笑)。
―じゃあ、実際に連絡が来たときは「ついに来た!」と(笑)。
松居:そうですね(笑)。ちょうど自分がやっている劇団が再開して、他の仕事を少しセーブしようというタイミングだったんですけど、まったく迷いなく「やります」って言いました。
―そもそも、松居さんが志磨さんのファンだったのは、どんな部分に惹かれていたのか、言葉にしていただくことはできますか?
松居:そろそろ上手く言葉にしなきゃと思ってるんですけど……(笑)。でも、志磨さんと初めて会ったときに、相当な愛の告白をしたと思うんですよね。
志磨:毛皮のマリーズの武道館での解散ライブのTシャツを、真冬なのにちゃんと着て来てくれたんです。それで、「武道館にいた人の中で、絶対俺が一番志磨遼平のこと愛してるんで」って言ってくれて、ウワーって舞い上がったよ(笑)。
松居:志磨さんの曲を聴くと、すごく燃えるというか、自分が行きたいところの8歩先ぐらいをススッと行ってて、そこで軽やかに踊ってるみたいな感じがするんですよね。
作品情報
- 『ワンダフルワールドエンド』
-
2015年1月17日(土)から新宿武蔵野館ほかで公開
監督・脚本:松居大悟
主題歌:大森靖子“呪いは水色”
音楽:大森靖子、直枝政広
出演:
橋本愛
蒼波純
稲葉友
利重剛
町田マリー
大森靖子
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
- 『私たちのハァハァ』
-
2015年夏公開予定
監督:松居大悟
出演:
井上苑子
大関れいか
真山朔
三浦透子
池松壮亮
中村映里子
クリープハイプ
製作:SPACE SHOWER NETWORKS INC.
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
リリース情報

- ドレスコーズ
『1』初回限定盤(CD+DVD) -
2014年12月10日(水)発売
価格:3,780円(税込)
KICS-93146[CD]
1. 復活の日
2. スーパー、スーパーサッド
3. Lily
4. この悪魔め
5. ルソー論
6. アニメみたいな
7. みずいろ
8. 才能なんかいらない
9. もうがまんはやだ
10. 妄想でバンドをやる(Band in my own head)
11. あん・はっぴいえんど
12. Reprise
13. 愛に気をつけてね
[DVD]
・“スーパー、スーパーサッド”PV
・ 『「ワン・マイナス・ワン」DOCUMENTARY VIDEO』
コメントゲスト:薔薇園アヴ(女王蜂)、大山卓也(「音楽ナタリー」編集長)、川上洋平([Alexandros])、THE BAWDIES、青木 優(音楽ライター)、越川和磨(THE STARBEMS ex.毛皮のマリーズ)、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)、松居大悟(映画監督)、奥野望(作家)、山田玲司(漫画家)、鈴木拓郎(所属事務所社長)
プロフィール
- ドレスコーズ
-
2012年1月1日結成。2012年7月に1stシングル『Trash』をリリースし、タイトル曲は映画『苦役列車』主題歌となり話題を集めた。12月に1stフルアルバム『the dresscodes』をリリース。2013年8月、フジテレビ系アニメ『トリコ』エンディング主題歌となる2ndシングル『トートロジー』リリース。11月、2ndフルアルバム『バンド・デシネ』をリリース。同日をもって、志磨遼平のソロプロジェクトとなることが発表され、12月10日には現体制で初となるニューアルバム『1(読み方:ワン)』がリリースされる。
- 松居大悟(まつい だいご)
-
1985年生まれ。脚本家、演出家、映画監督、俳優。慶應義塾大学在学中に劇団ゴジゲンを旗揚げ、全作品の作・演出・出演を手掛ける。2009年にはNHK『ふたつのスピカ』で同局最年少のドラマ脚本家デビュー。2012年映画の初監督作『アフロ田中』が公開。その他、監督作品に映画『スイートプールサイド』(2014年) 『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『男子高校生の日常』(2013年)。 2015年1月に橋本愛&蒼波純主演の『ワンダフルワールドエンド』、夏にクリープハイプと組んだ映画『私たちのハァハァ』を公開予定。
POPULAR TAG 人気のタグ
POPULAR IMAGES 人気の画像
-
CRCK/LCKSの哲学と特異性 Chara、中村佳穂らの手紙から紐解く
その歩みは、音楽シーン激動の2010年代後半とともに。バンドの変化の足跡を語る
-
人生は楽しい暇潰し。zo-sun parkが語る、肩肘張らない生き方と歌
「肩肘張って音楽をやるのは嫌だ」という出発点から一気に飛躍。面白CMソングが大好物
-
ハービー・ハンコックとの共演をきっかけに、世界に飛び出したピアニストの挑戦
-
5lack、仙人掌の盟友。「こだわり」の原点は、スケボーへの熱中があった
-
Momが現代に鳴らす警鐘。大衆化が進む社会の無邪気さに抱く疑念
Momが進化を続ける理由。自らのイメージに言いたいことの邪魔をされたくない
-
「金髪スジ盛りはモテないと気づいた」ホスト自身が語る、近代化した新宿・歌舞伎町
-
NOISEMAKER×キム・ジョンギ 誰もが表現者の時代のプロの姿勢
日本のバンドと韓国最強の絵師が対談。デジタル時代こそ、「こだわり」に価値がある
-
大友良英が『いだてん』音楽で伝える「敗者がいて歴史ができる」
各国ミュージシャンと活動する音楽家。日本の内向きな姿勢に疑問を投げる
-
髙橋涼馬(Seebirds、mol-74)の物語 失ったものも愛しながら前へ
疎外感があった10代、喪失感を味わった数年前、mol-74加入、そして現在までを語る
-
ermhoiの「声」を輝かせている生い立ち、思想、知識、機材を取材
Black Boboi、millennium parade、ソロで活動中。自分らしさを貫いてきた生き方を語る
-
「私がこのままであることが責任」。聴き手と深く繋がり、想いを寄せる胸の内を明かす
-
吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る
ひとクセある人の取材を多く手掛けるライター。その根底にある、不良への憧れ
-
Suchmos・YONCEが語る、急激な状況変化が起きた2年間のすべて
サッカーテーマの制作、アルバム発表後の感触、そして夢のハマスタ公演などを聞く
-
菅田将暉が語る、芸術文化への問題意識。米津らと共有する価値観
実力派俳優が、この国の芸術・エンタメに抱いている「危機感」。そして音楽をやる理由
-
根本が感じる東京ゲゲゲイの振付の魅力。日本のミュージカルの難しさとは
PICKUP VIDEO 動画これだけは
10月12日、13日にルミネ新宿で開催する『LUMINE ART FAIR -My First Collection』のために制作された動画。現地アーティスト2名の言葉と、リアルな空気感とともにNYのアートシーンを紹介している。「NY、かっこいい!」という気持ちがムクムク膨れ上がってくるはずだし、アートに触れるきっかけはそれくらいがちょうどいいと思う。(石澤)
POPULAR ENTRY 人気の記事
-
1
東京パラリンピック開会式の演出はKERA、閉会式は小林賢太郎 出演者募る
-
2
『ONE PIECE』×カップヌードルCMの第3弾 ビビが仲間への想いを語る
-
3
平野紫耀、永瀬廉、高橋海人が『婦人公論』で座談会 タキシード姿も披露
-
4
有安杏果、結婚を発表。その経緯、お相手など、赤裸々に語る
-
5
神木隆之介が母子で「au PAYで!」特訓&松本穂香の姿も 「高杉くん」新CM
-
6
『アナと雪の女王2』の歌に注目。エルサのメイン曲など新曲多数
-
7
大友良英が『いだてん』音楽で伝える「敗者がいて歴史ができる」
-
8
ソフトバンク新CMで岡田准一と賀来賢人が教師、リーチマイケルが校長に
-
9
ポン・ジュノ『パラサイト』が東京&大阪の2劇場で先行上映、特別映像付き
-
10
星野源、Apple Music『歌詞のままに生きる』登場 日本のアーティストは初