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批判や精神不安定からサバイブした、椎名もたの漫画みたいな人生

批判や精神不安定からサバイブした、椎名もたの漫画みたいな人生

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望
2015/03/04

不幸も幸福も人に見せびらかしてはいけない

中学2年生のときにニコニコ動画への投稿を始めると、「ぽわぽわP」とあだ名が付けられ、再生回数50万回以上を誇る“ストロボラスト”をはじめ、椎名の曲はすぐに話題を呼んだ。ボカロPとして順調なスタートを切ったかのように見えたが、決してハッピーなだけではなかったことが“9から0へ”(3曲目。テーマは「衝動」)に表れている。

椎名:軽い気持ちで作った曲なのに、思ったより評価してもらえたことに不安がありました。当時「にゃっぽん」っていうボーカロイドのネットコミュニティーがあったんですけど、幼いと叩かれるのがわかってたので、本当は中学生なのに大学生だって嘘をついてたんです。でも、高校受験のときに家庭の事情で行きたかった高校に行けなくなって、このストレスをどこかで吐き出したくなったときに、ネットで「実は僕受験生なんです」って言ってしまったんですよね。そうしたら、めっちゃざわついちゃったんです。

椎名は徐々に体調を崩すようになり、志望校の代わりに進んだ高校から定時制の高校に編入。しかし、そこも満足に通うことができず、中退することになる。ストレスの原因となっていた家庭環境への不満などをネットで吐き出してしまい、批判的な言葉をユーザーから浴びた結果、2011年に音楽活動も一時休止。そんな椎名に手を差し伸べたのが、後に所属レーベルとなる「GINGA」だった。

椎名:今思えば、不幸も幸福も人に見せびらかしちゃダメなんだなって思うんです。でも、そのときは見せびらかしちゃって、「死んでやる」みたいなことも言っちゃって。ちょっと神経がいかれちゃってて、ネット上の自分に対する悪口とか、見なきゃいいことも見ずにはいられなくなってたんですよね。

―そこから回復への道筋を作ってくれたのが、「GINGA」からの誘いだったと。

椎名:そうですね。“プリーズテルミーミスターワンダー”(5曲目。テーマは「栄光」)の<栄光とともに崩れる>っていう歌詞は、石黒正数さんの『ネムルバカ』って漫画からきてるんですけど、パンクバンドをやってる主人公が、「天才はどんな壁もぴょんと飛び越えていくけど、我々は地道にスコップで掘っていくしかない」って言いつつ、壁に触れてみると「あれ? 意外と柔らかいんだ」って気づくシーンがあるんです。それって、言ってみれば「壁が崩れた」ってことで、僕も「GINGA」に誘われて、壁って意外と柔らかいんだって思えました。

椎名もた

こうして2012年3月、ファーストアルバム『夢のまにまに』を発表。「~P」名義で、初音ミクをはじめとしたボーカロイドのキャラクターがジャケットを飾るCDが多い中、作家性を重視するレーベルと椎名自身の意図のもと、「椎名もた」名義で、キャラの登場しないシックなジャケットでリリースされたこのアルバムは大きな反響を呼び、南波志帆への楽曲提供や、渋谷慶一郎のリミックスなど、活動の幅を広げて行く。そして、1年後にはEP『コケガネのうた』を発表したが、椎名は当時を「半信半疑」と回想する。

椎名:“ハンシンハンギミー”(7曲目。テーマは「旅立」)に<疑り深く歩き出したのさ>ってあるように、とにかく自分の現状を歌ってみたものの、わりと不健康な歌が生まれちゃってたから「いいのかな?」って気持ちだったんですよ。「実は自分には歌いたいことなんてないんじゃないか?」って気がして。

―でも、もたくんはデビュー当時から「マイノリティーであることを自覚して、ちゃんと表現がしたい」ということに意識的だったと思うのですが?

椎名:言ってしまえば、ちょっと開き直ったんですよね。だから、「旅立」がテーマっていうのは、「もう引き返せないぜ」ってことなんです。

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リリース情報

椎名もた『生きる』初回限定盤(CD+DVD)
椎名もた
『生きる』初回限定盤(CD+DVD)

2015年3月4日(水)発売
価格:3,240円(税込)
UMA-9051/2

[CD]
1. アライブ・コンシャス
2. ワガハイは
3. 9から0へ
4. ドラッグ・スコア
5. プリーズテルミーミスターワンダー
6. 夢でも逢えない人がいる
7. ハンシンハン=ギミー
8. 普通に歳をとるコトすら
9. 少女A
10. みんなの黙示録
11. 6畳半の隙間から
12. アイケアビコーズ
13. さよーならみなさん
[DVD]
1. “ピッコーン!!”PV
2. “3年C組14番窪園チヨコの入閣”PV
3. “さよーならみなさん”PV
※二つ折り紙ジャケット、表紙カバー仕様

リリース情報

椎名もた『生きる』通常盤(CD)
椎名もた
『生きる』通常盤(CD)

2015年3月4日(水)発売
価格:2,700円(税込)
UMA-1051

1. アライブ・コンシャス
2. ワガハイは
3. 9から0へ
4. ドラッグ・スコア
5. プリーズテルミーミスターワンダー
6. 夢でも逢えない人がいる
7. ハンシンハン=ギミー
8. 普通に歳をとるコトすら
9. 少女A
10. みんなの黙示録
11. 6畳半の隙間から
12. アイケアビコーズ
13. さよーならみなさん

プロフィール

椎名もた(しいな もた)

幼少の頃よりギター、ドラム、エレクトーンなどの楽器を嗜んでおり、中学2年(14歳)の時よりDTMを始める。その後、「ぽわぽわP」としてVOCALOIDを使用した楽曲の投稿を始め、開始後より人気を博し、代表曲“ストロボラスト”をはじめとしたストロボシリーズによりその地位を確固たるものへとする。そんな中、2011年初頭、突然の活動休止。半年後、GINGAとの邂逅により活動を再開し、2012年3月デビューアルバム『夢のまにまに』を発表し賛否両論の話題を呼ぶ。コミック雑誌『コミカロイド』への漫画執筆など音楽以外での活動も広げている。VOCALOIDシーンから生まれ、電子音楽シーンに舞い降りた、類まれなるサウンドメイキングと天性のグルーブ感、心の隙間にスルッと入り込む、どこか人懐っこい詩世界を合わせ持つ、弱冠19歳の驚異である。

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