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伝説のフォークシンガー高田渡が息子・漣に引き継いだ生活者の歌

伝説のフォークシンガー高田渡が息子・漣に引き継いだ生活者の歌

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織

アルバムを作りながら、父ともう一度会話をしてるような感じがしましたね。父の歌を僕がアレンジしたらこうなるよって。

―2013年に出た『アンサンブル』も、そういう傾向が表れていましたね。

高田:ぶっちゃけて言うと、『アンサンブル』を作っている段階で、今回のアルバムのアイデアが漠然とありました。考えてみれば、震災後に“鉱夫の祈り”を歌った時点から、少しずつステージで父の歌を歌うようになって、ここに向かってきてたんですよね。

―極端に言えば、『アンサンブル』は渡さんの歌を歌うための予行演習だったと。

高田:まさにそうです。唯一違うのは、『アンサンブル』はいかにJ-POPのフォーマットでやれるかを考えて作ったんですけど、今回そこは一切関係なくて、誰にも聴かれなくていいぐらいのつもりでした。ただ、父の作品を自分が形にしないといけないんじゃないかというのは、震災後からずっと思ってたことだったんですよね。

―非常にパーソナルな意味合いの強い作品だと。

高田:そうですね。なんとなく、アルバムを作りながら、父ともう一度会話をしてるような感じがしましたね。父の歌を僕がアレンジしたらこうなるよって。

―アルバムの選曲に関しては、どのような意図があったのでしょうか?

高田:トリビュートに関しては、普段父がよくライブでやっていた曲を入れたので、晩年の高田渡のライブを見てた人には、懐かしいセットリストだと思います。ベスト盤のほうは歴史的な意味もあるので、基本的には時系列に沿っています。1曲目と2曲目は逆ですけど、聴いていくことで高田渡の歴史を追えるし、日本の音楽史の中で、録音物の音がどう変化してきたかもわかると思いますね。あとは少しカラフルな音を意識したというか、高田渡というとどうしても言葉に話がいきがちですけど、音楽的にもいろんなことをやってたんだよというのを少し強調するような選曲にしました。

高田漣『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』ジャケット
高田漣『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』ジャケット

高田渡『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』ジャケット
高田渡『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』ジャケット

人間って、どんなに文明が進んでも、相変わらず愚かで、相変わらず可愛らしいわけですよね。その両面が父の歌にはあって、残念ながら今もそのまんまなんです。

―最初に“鉱夫の祈り”を歌ったのは、今、歌う意味のある曲だったからというお話がありましたが、今回の選曲も、今の時代にふさわしい曲が並んでいるように思いました。

高田:そうですね。逆に、政治的なニュアンスを深く取られ過ぎそうなものは、あえて入れなかったのもあります。父は“自衛隊に入ろう”でデビューしたけど、ベルウッドレコードに移籍した『ごあいさつ』以降は、あえて政治的な部分をオブラートに包んで、歌の目線をより普段の生活に移し、普通の人たちが何を見て、何を聴いて、どう生きてるか? というほうにシフトしていったので、そういうものを選びました。

高田漣

―まさにそこがポイントで、今歌われるべきは「生活者の歌」だと思うんです。政治も経済も、現代はいろんなレベルで生活が緊迫していることは間違いないと思うんですね。そういう中で、辛い日常を忘れさせるエスケーピズムの効果も音楽の役目だとは思うんですけど、こういう時代だからこそ、もっと生活に寄り添って、たくましく生きるための音楽が必要だと思う。高田渡さんはそういう目線を持っていた方だと思うし、今回のアルバムもそこを反映しているような気がして。

高田:おっしゃる通りですね。今回トリビュートだけじゃなくベストも同時に出すべきだと思ったのは、近年、高田渡に興味を持つ若い人の声を生で聞くようになって、時代に求められているような感じがしたというのもあって。当時から聴いていた方はもちろん、今の若い世代の子が聴いても何か共感するメッセージがあるのはすごく大事なことだから、なるべくその部分を打ち出したかったっていうのはあります。父の歌は、明治時代の演歌(現在の演歌ではなく演説の歌)だったり、山之口貘や金子光晴の詩を使ったもので、“自衛隊に入ろう”にしても、“アンドーラ”っていうマルビナ・レイノルズ(アメリカのフォーク、ブルースのシンガーソングライター)の原曲があって、歌詞の内容もほぼ同じなんですよ。つまり、父が作った時点で、それは過去のものなんです。高田渡っていう人はデビューした時点で、すでに古臭い人だったんですよね(笑)。

―言い方を変えれば、高田渡さんが歌にしていた題材というのは、はじめから普遍性のあるものばかりで、だからこそ今も昔も変わらずに響くということですよね。

高田:人間って、どんなに文明が進んでも、相変わらず愚かで、相変わらず可愛らしいわけですよね。その両面が父の歌にはあって、残念ながら今もそのまんまなんです。だから、“自衛隊に入ろう”や“鮪に鰯”が今でも通じてしまうし、片や“夕暮れ”とか“ブラザー軒”みたいな世界観も通じる。身に着けてるものや、住まいや、外枠は変わっても、人間って結局変わらないんだなって思いますね。

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リリース情報

高田漣『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』(CD)
高田漣
『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』(CD)

2015年4月15日(水)発売
価格:3,000円(税込)
KICS-3178

1. 仕事さがし
2. 自転車にのって
3. フィッシング・オン・サンデー
4. ヴァーボン・ストリート・ブルース
5. コーヒーブルース
6. 銭がなけりゃ
7. ひまわり
8. 系図
9. ブラザー軒
10. 生活の柄
11. 雨の日
12. 私の青空
13. ホントはみんな
14. おなじみの短い手紙
15. くつが一足あったなら

高田渡『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』(CD)
高田渡
『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』(CD)

2015年4月15日(水)発売
価格:2,700円(税込)
KICS-3177

1. この世に住む家とてなく
2. 自衛隊に入ろう
3. ごあいさつ
4. 自転車に乗って
5. おなじみの短い手紙
6. コーヒーブルース
7. 系図
8. 鉱夫の祈り
9. 私は私よ
10. 私の青空
11. 当世平和節
12. 火吹竹
13. フィッシング・オン・サンデー
14. ヴァーボン・ストリート・ブルース
15. 冬の夜の子供の為の子守唄
16. ホントはみんな
17. 夕暮れ
18. ブラザー軒
19. 生活の柄

書籍情報

『マイ・フレンド―高田渡青春日記1966-1969』
『マイ・フレンド―高田渡青春日記1966-1969』

2015年4月17日(金)発売
著者:高田渡
編者:高田漣
価格:2,700円(税込)
発行:河出書房新社

イベント情報

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”』

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks” 岐阜編』
2015年4月15日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:岐阜県 ワタルカフェ
出演:高田漣
※チケットは完売

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”京都編』
2015年4月16日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 磔磔
出演:
高田漣
伊賀航
伊藤大地
武川雅寛
ほか
トークゲスト:
寺田"テリー"国敏
水島博範
司会:野村雅夫
料金:3,800円(税込)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”特別編』
2015年4月18日(土)OPEN 16:30 / START 17:00
会場:東京都 新大久保 グローブ座

第1部「高田渡を語る」
トーク出演:
高田漣
井上陽水
司会:清野茂樹

第2部「高田渡を噺す」
出演:桃月庵白酒(落語)

第3部「高田渡を歌う」
出演:
高田漣(Vo,Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)、武川雅寛(Vl,Tp,etc)、関島岳郎(Tub)、徳澤青弦カルテット
ゲスト:ドレスコーズ
料金:4,800円

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”博多編』
2015年5月17日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:福岡県 LIV LABO
出演:
高田漣
キセル
and more
料金:3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”広島編』
2015年6月10日(水)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:広島県 SHAMROCK
出演:高田漣、伊賀航
料金:3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”名古屋編』
2015年6月15日(月)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:愛知県 名古屋 TOKUZO
出演:
高田漣(Vo,Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)
ゲスト:いとうたかお
料金:3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”浜松編』
2015年6月17日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:静岡県 浜松 ESQUERITA68
出演:高田漣(Vo,Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)
料金:予約3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”信州編』
2015年6月25日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:長野県 ネオンホール
出演:高田漣
料金:予約3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”金沢編』
2015年6月26日(金)OPEN 19:30 / START 20:00
会場:石川県 金沢 もっきりや
出演:高田漣
料金:予約3,800円(ドリンク別)

プロフィール

高田漣(たかだ れん)

1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田 渡の長男として生まれる。少年時代はサッカーに熱中し、14歳からギターを始める。17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭蔵のアルバムでセッション・デビューを果たす。スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として、YMO、細野晴臣、高橋幸宏、斉藤和義、くるり、森山直太朗、星野源、等のレコーディングやライヴで活躍中。ソロ・アーティストとしても今までに6枚のアルバムをリリース。2007年、ヱビス<ザ・ホップ>、プリングルズのTVCMに出演。同年夏、高橋幸宏の新バンド構想の呼びかけにより、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の計6人で「pupa」結成。映画、ドラマ、舞台のサウンドトラックの他、CM音楽も手掛ける。

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