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伝説のフォークシンガー高田渡が息子・漣に引き継いだ生活者の歌

伝説のフォークシンガー高田渡が息子・漣に引き継いだ生活者の歌

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織

まあ、しょうもない親父だったことは確かなんですよ。ただ、愛されてる人だったんだなとはつくづく思います。

―一方で、父親としての高田渡さんをどのように見ていらっしゃったのでしょうか?

高田:そうですね……まあ、しょうもない親父だったことは確かなんですよ。親父の古くからの友人たちも口を揃えてそう言うと思う。ただ、愛されてる人だったんだなとはつくづく思います。僕と父の関係でいうと、小学校の頃に両親が離婚したので、四六時中、高田渡と一緒にいなかったことが良かったのかな。結局近所に住んでいたので、頻繁に行き来はしてましたけど。

―ずっと一緒にいたら、音楽の道を選ばなかったかもしれないですね。

高田:そうなんですよ。それに自由業にも否定的だったと思います。実は僕、大学では政治学を勉強して、新聞記者になりたかったんですよ。昔からものを書くのが好きだったのと、キチッと会社勤めをしたいという小さな反発があったんでしょうね。ただ、気がついたら……。

―自分も父親と同じ道を進んでいた。

高田:これも縁かもしれないですね。当時はまだ音楽業界も元気が良くて、いっぱい仕事があったから、大学時代は調子に乗って音楽ばっかりやっていて、気づいたら就職活動もせずに、そのまま今に至るっていう(笑)。よく勘違いされるんですけど、僕は「音楽家になるんだ!」って思っていたわけではないんですよ。

植物が栄養や水を大量に与えられたら育つかというと、必ずしもそうとは限らないじゃないですか? 音楽も同じだと思います。

―クラムボンのミトさんも同世代かと思うんですけど、先日取材した際に同じようなことをおっしゃっていました。当時は今より余裕がある時代だったから、専門学校に行ったのは社会に出るのを遅らせるためで、「音楽を仕事にする」なんて考えてもいなかったって。

高田:僕らの世代はそういうちょっと受動的な音楽家が多いと思う(笑)。細野さんや教授、大瀧詠一さん、うちの父親みたいな世代の人たちは、「何かを生みだそう、何かを変えよう」という、確固たる原動力があって動いていて、そこは残念ながら僕らの世代と違うところですね。我々はさっき話したように、すべてが並列にある状態からのスタートだから。自分たちですべての種を見つけ出して、血肉化していった人たちには明らかに敵わない。それはいつも思います。

高田漣

―ただ、くるりもクラムボンも、もちろん漣さんも、最初から並列だからこそのオリジナリティーを作り出していった世代だと思うんですよね。

高田:もちろん、それはそうだと思います。ただ、植物が栄養や水を大量に与えられたら育つかというと、そうとは限らないじゃないですか? 音楽も同じで、たくさんのものが身の周りにあるということが、必ずしも音楽性を育てるとは思えないんです。むしろ、限られた情報や機材しかなかったほうが、できることがある気がする。今回のトリビュート盤をアナログで録ったのは、自分を追い込むことによってしか得られないものがあるんじゃないかと思ったんです。

数年間、細野晴臣さんと父が一緒にアルバムを作れるよう画策していて、これからようやく作れそうだというタイミングで父は亡くなったんです。

―高田渡さんも「便利」という言葉が好きじゃなかったそうですね。さきほどの漣さんのお話はそこにつながるかと思います。

高田:そうですね。僕は同世代の中では音楽業界に早く入ることができたので、当時はまだテープでレコーディングをしていたのですが、スタジオに入ったときの「緊迫感」が今と全然違ったんです。それからどんどん便利な世界になっていって、気づけばそこに埋もれてしまっていたというか。だから、今回アナログでやってみて、いろんな大事なことを思い出したんですよね。若い世代の人が聴くと、逆に新鮮なんじゃないかと思うんですけど。

―デジタルでは再現できない、その人の歌であり、言葉そのものの強さが改めてクローズアップされるとも言えそうですね。

高田:あと、僕が細野さんと一緒にやった狭山のライブ(『ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル』)(2005年)に、細野さんはうちの親父を呼ぼうとしてたんです。その最終的なお誘いの電話が僕にかかってきた日に、父が死んだんです。実を言うと、その前から数年間、細野さんと父が一緒にアルバムを作れるよう画策していて、これからようやく作れそうだというタイミングで父は亡くなりました。図らずも、僕はそれから10年間細野さんと一緒に仕事をして、細野さんの録音のノウハウをずっと見てきたので、今回の録音はそこで培ってきたものがすごく影響してると思います。

それまでたくさんの機材を持ってやっていたのが、急にバカらしく思えちゃったんですよ。ギター1本で、その何十倍も伝えられることがあるんですよね。

―「便利」が好きじゃなかったという言葉は、渡さんの生き方そのものにも反映されていたと思いますが、「生き方」という点において、父からどんな影響を受けてると思われますか?

高田:僕、古臭いものが好きなんですよね。何か新しいものを知ったときは、そのルーツをすごく知りたくなるんです。音楽以外の趣味ってほとんどないんですけど、唯一『名探偵ポワロ』と『シャーロック・ホームズ』が好きで、それは昔のロンドンの街並みを見るのが楽しいから。古い東京の写真とかもすごく好きだし、そこは父とも何かしら似てるかもしれない。楽器もビンテージばっかり買っちゃうし、車も古い車だし、靴もなるべく汚したい。唯一父と違うところがあるとすれば、ボロアパートには住みたくない(笑)。

高田漣

―古いものを大事にするというのは、逆に言えば、ときに新しいものや便利なものを切り捨てることになるわけですよね。それでも高田渡さんにとっては「身軽である」ことが大事だったように思うんです。

高田:そう、それはすごくよく高田渡を表してる言葉だと思います。だって、ギター1本、リュック1つで日本全国どこにでも行けた人ですから。僕が震災後に気づいたことの1つが、そのフットワークなんです。それまではたくさんの機材を持ってやっていたのが、急にバカらしく思えちゃったんですよ。そんなことしなくても、ギター1本持って行けば、その何十倍も伝えられることがある。そう思ったら、急に今までやってたことと真逆な世界に移ってしまったんです。

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リリース情報

高田漣『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』(CD)
高田漣
『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』(CD)

2015年4月15日(水)発売
価格:3,000円(税込)
KICS-3178

1. 仕事さがし
2. 自転車にのって
3. フィッシング・オン・サンデー
4. ヴァーボン・ストリート・ブルース
5. コーヒーブルース
6. 銭がなけりゃ
7. ひまわり
8. 系図
9. ブラザー軒
10. 生活の柄
11. 雨の日
12. 私の青空
13. ホントはみんな
14. おなじみの短い手紙
15. くつが一足あったなら

高田渡『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』(CD)
高田渡
『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』(CD)

2015年4月15日(水)発売
価格:2,700円(税込)
KICS-3177

1. この世に住む家とてなく
2. 自衛隊に入ろう
3. ごあいさつ
4. 自転車に乗って
5. おなじみの短い手紙
6. コーヒーブルース
7. 系図
8. 鉱夫の祈り
9. 私は私よ
10. 私の青空
11. 当世平和節
12. 火吹竹
13. フィッシング・オン・サンデー
14. ヴァーボン・ストリート・ブルース
15. 冬の夜の子供の為の子守唄
16. ホントはみんな
17. 夕暮れ
18. ブラザー軒
19. 生活の柄

書籍情報

『マイ・フレンド―高田渡青春日記1966-1969』
『マイ・フレンド―高田渡青春日記1966-1969』

2015年4月17日(金)発売
著者:高田渡
編者:高田漣
価格:2,700円(税込)
発行:河出書房新社

イベント情報

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”』

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks” 岐阜編』
2015年4月15日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:岐阜県 ワタルカフェ
出演:高田漣
※チケットは完売

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”京都編』
2015年4月16日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 磔磔
出演:
高田漣
伊賀航
伊藤大地
武川雅寛
ほか
トークゲスト:
寺田"テリー"国敏
水島博範
司会:野村雅夫
料金:3,800円(税込)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”特別編』
2015年4月18日(土)OPEN 16:30 / START 17:00
会場:東京都 新大久保 グローブ座

第1部「高田渡を語る」
トーク出演:
高田漣
井上陽水
司会:清野茂樹

第2部「高田渡を噺す」
出演:桃月庵白酒(落語)

第3部「高田渡を歌う」
出演:
高田漣(Vo,Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)、武川雅寛(Vl,Tp,etc)、関島岳郎(Tub)、徳澤青弦カルテット
ゲスト:ドレスコーズ
料金:4,800円

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”博多編』
2015年5月17日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:福岡県 LIV LABO
出演:
高田漣
キセル
and more
料金:3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”広島編』
2015年6月10日(水)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:広島県 SHAMROCK
出演:高田漣、伊賀航
料金:3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”名古屋編』
2015年6月15日(月)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:愛知県 名古屋 TOKUZO
出演:
高田漣(Vo,Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)
ゲスト:いとうたかお
料金:3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”浜松編』
2015年6月17日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:静岡県 浜松 ESQUERITA68
出演:高田漣(Vo,Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)
料金:予約3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”信州編』
2015年6月25日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:長野県 ネオンホール
出演:高田漣
料金:予約3,800円(ドリンク別)

『高田渡トリビュートライブ“Just Folks”金沢編』
2015年6月26日(金)OPEN 19:30 / START 20:00
会場:石川県 金沢 もっきりや
出演:高田漣
料金:予約3,800円(ドリンク別)

プロフィール

高田漣(たかだ れん)

1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田 渡の長男として生まれる。少年時代はサッカーに熱中し、14歳からギターを始める。17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭蔵のアルバムでセッション・デビューを果たす。スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として、YMO、細野晴臣、高橋幸宏、斉藤和義、くるり、森山直太朗、星野源、等のレコーディングやライヴで活躍中。ソロ・アーティストとしても今までに6枚のアルバムをリリース。2007年、ヱビス<ザ・ホップ>、プリングルズのTVCMに出演。同年夏、高橋幸宏の新バンド構想の呼びかけにより、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の計6人で「pupa」結成。映画、ドラマ、舞台のサウンドトラックの他、CM音楽も手掛ける。

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