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インディー精神が『パリコレ』で花開く。UNDERCOVERの25年

インディー精神が『パリコレ』で花開く。UNDERCOVERの25年

『LABYRINTH OF UNDERCOVER』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:田中一人
2015/11/18
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今年で25周年を迎えたファッションブランド「UNDERCOVER」の回顧展『LABYRINTH OF UNDERCOVER』が、12月23日まで東京オペラシティ アートギャラリーにて開催されている。同ブランドを主宰するデザイナーの高橋盾が、これまで手がけてきたコレクションアーカイブやドローイング、映像などがところ狭しと展示されており、会場に一歩足を踏み入れた途端、まるで彼の脳内を覗き込んだような錯覚を誰もが覚えるだろう。

Sex Pistolsと、そのメンバーが着ていたヴィヴィアン・ウエストウッドの服に衝撃を受け、ファッションの世界へとのめり込んでいった高橋のデザインには、「美」と「醜」が渾然一体となった魅力がある。それは、着る人のなかにある「歪み=本質」をも引き出す力を持っており、四半世紀にもわたって人々を魅了し続けてきた理由の1つでもある。音楽や映像、社会現象など、あらゆる事象にインスパイアされた作品で、日本を代表するファッションデザイナーとなった高橋。いまなお進化し続ける彼の、クリエイティビティーの核に迫った。

単に綺麗なドレスには興味がなくて。綺麗の裏にある醜い部分、相反する感情やイメージを混ぜるようにしています。

―UNDERCOVERの回顧展『LABYRINTH OF UNDERCOVER』を拝見して、まず驚いたのが「動線がない」ということです。美術館の方によれば、こうやって会場を細かく区切って迷路状にしたり、動線を壊すというのは「禁じ手」らしいんですよ。美術館側からはまず出てこないアイデアで、そういう意味でも今回の展覧会は画期的だと。

高橋:そうだったんですか(笑)。本当はもっと細かく区切りたかったんですけどね。単にコレクションをズラーッと並べても、かえってわかりづらいと思ったので。それに今回は、服もあればドローイングもあるし、デザインノートもある。細かく分けたほうが見やすいんじゃないかなって。

東京オペラシティ アートギャラリー『LABYRINTH OF UNDERCOVER』展示風景
東京オペラシティ アートギャラリー『LABYRINTH OF UNDERCOVER』展示風景

―会場内は、まるで高橋さんの脳内を覗き込んでいるようでもありました。辞書のように分厚い無地のノートの展示も圧巻でしたね。デザイン画のスケッチやメモ、雑誌の切り抜きなどアイデアの素がギッシリ詰め込まれていて。1シーズンで1冊使い切るそうですが、アイデアや着想は普段どんなところから得ているのでしょうか。

高橋:それは本当に様々ですね。(鏡の破片が刺さった)「HURT」(2015-16秋冬)は、普段着のなかに感情的なもの、あの場合は「痛み」を差し込みたかったんです。最新のコレクションである「EVIL CLOWN」(2016春夏)は、The Rolling Stonesの映像作品『ロックンロール・サーカス』からインスパイアされました。自分のなかにある多面的で混沌とした部分を、少しずつ出していけたらと思っています。

「HURT」(2015-16秋冬)
「HURT」(2015-16秋冬)

デザインノートの展示
デザインノートの展示

―「HURT」は、突き刺さった鏡の破片とその反射が印象的でしたが、2015年のコレクションで「痛み」という感情を差し込もうと思ったのはなぜでしょうか。僕は勝手に「戦争」や「テロ」をイメージしたんですが。

高橋:じつは政治、社会的なメッセージはまったくこめていなくて、なんか「怖い服」を作りたいなと。それで、自分にとって「怖い」とはなんだろう? それを服に落とし込むとしたら? など、純粋にデザインと向かい合った結果ああなったんです。

―UNDERCOVERのデザインには、これまでにも怖い要素や、グロテスクな要素ってあったと思うんですよね。

高橋:それはありますね、常に。単に綺麗なドレスっていうのには、まったく興味がなくて。綺麗の裏にある醜い部分、相反する感情やイメージを混ぜるようにしています。というか、自然にそうなってしまうんですけど。だから、いろんな面が(作品から)見えてきているのだと思う。「可愛いけど、なんか怖い」とか。でも人間ってそういう多面性のある生き物じゃないですか。

「GRACE」(2009春夏)
「GRACE」(2009春夏)

―当時インスタレーションで発表された「GRACE」(2009春夏)に登場する、エイリアンのようなクリーチャーはその極みですよね。人間ではない謎の生命体の視点で世界を見つめている物語になっています。アンチヒーローである「UNDERMAN」(2011春夏)なども印象的でした。

高橋:「UNDERMAN」は、小さいころに好きだった特撮ヒーローからのオマージュです(笑)。戦隊シリーズとか、『超人バロム・1』とかありましたよね。自分の子どもとそういうテレビを一緒に見ている横で、「あ、これ自分でヒーローキャラクターを作ってUNDERCOVERで発表したら面白いな」って思いついたんです。このコレクションでは全36枚のカードセットやフィギュアも作りました。

「UNDERMAN」(2011春夏)
「UNDERMAN」(2011春夏)

―そういう「ユーモア精神」も、UNDERCOVERには散りばめられていますよね。「SCAB」(2003春夏)でモチーフにしていたブルカ(イスラム文化圏で用いられる女性のヴェール)は、おそらくニューヨークの同時多発テロやイラク戦争にも少なからずインスパイアされたものだと思うのですが、そこにアイコニックな「クマ」のキャラクターが描かれていたり、カラフルだったりする。シリアスなテーマでも、ユーモア精神は忘れていないというか。

高橋:そうですね。人間の感情のなかでも「ユーモア」はとても大切だと思っています。ちなみにあのブルカはシースルーになっているんですよ。ブルカって本来は透けてはいけないのだけど、そこには「女性の解放」というメッセージも含まれているわけです。

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イベント情報

『LABYRINTH OF UNDERCOVER“25 year retrospective”』

2015年10月10日(土)~12月23日(水・祝)
会場:東京都 初台 東京オペラシティ アートギャラリー
時間:11:00~19:00(金、土曜は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(月曜が祝日の場合は翌火曜)
料金:一般1,200円 大・高生800円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料

プロフィール

高橋盾(たかはし じゅん)

1969年群馬県桐生市生まれ。1990年、文化服装学院在学中にUNDERCOVERをスタート。1994年『東京コレクション』デビュー、1997年『毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞』を受賞。2001年『毎日ファッション大賞』を受賞。2002年『パリコレクション』初参加。2009年、『第76回ピッティ・イマージネ・ウオモ』に特別ゲストとして参加。2013年、2度目となる『毎日ファッション大賞』を受賞。

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