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変幻自在に言葉を操る、ぼくのりりっくのぼうよみという名の17歳

変幻自在に言葉を操る、ぼくのりりっくのぼうよみという名の17歳

ぼくのりりっくのぼうよみ『hollow world』
インタビュー・テキスト
武田砂鉄

歌詞が完成した後に解放感があるとすれば、「この理不尽な事象をうまく表現できた!」です。

―直接的な言葉を使わずに間接的な言葉を使っていることも影響してるのだとは思いますが、歌詞全体から世界を俯瞰する姿勢が感じられます。

ぼくりり:今まで音楽の趣味が合う人が近くにいたことがなくて、「これ聴いてみてよ」って誰かと共有することが一切できなかったんです。だから音楽の話で共感を得るのは無理だなって、中1くらいで諦めました。高校も、僕の学校は「進学校になりきれていない進学校」なんです。本当の進学校ならばもっともっと自由な感じで個性が溢れる人がいっぱいいるんでしょうけど、音楽についてもどこか中途半端な感じが多かったんですよね。

―そういえば、歌詞に、学び舎の風景なんて一切登場しませんね。

ぼくりり:「放課後のなんとかかんとか~」とかないですね。

―「二人で夕陽を見ていたあの頃」なんて間違っても使わない。

ぼくりり:使わないですね(笑)。言葉が陳腐化しますよね。

―それを一切やらずに突っ走るのが気持ちいいです。

ぼくりり:とにかく嫌なんです。それは、誰かに何かを伝えるために音楽をやっているわけではなく、自分のためにやっているから。ついでに他の人が好きだったらラッキーだなというくらいで。最近は何事に対しても「ヤバい」としか思わなくなってきました。「ヤバい」とか「ウケる」とか。

―とっても現代人っぽい反応ですね。

ぼくりり:でも、その「ヤバい」「ウケる」が曲に繋がっていくんです。

―歌詞を書くことで、自分の「ヤバい」「ウケる」の気持ちが解放される感覚はありますか?

ぼくりり:どうだろう……例えば、何か事象があって、それに対して自分が「ヤバい」と思ったことを歌詞にするときは、事象自体を歌詞にしているんです。僕がどう思ったかではなくて、そのこと自体を膨らませて書く。だから、完成した後に解放感があるとすれば「この理不尽な事象をうまく表現できた!」です。今回の歌詞で言えば“CITI”なんかはそうやってできました。ネトウヨの人って、やたらめったら怒ってるじゃないですか。そういう人に対して、というわけではなく、そういう人の曲を書いています。

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影:神藤剛
撮影:神藤剛

―<虚ろなour relationships / 灯りもない闇の中を / 走りだす 当てもなく 止めどなく / 代わり映えのない日々going on…><砕けてcan't identify / 明日を待ち続けcall it on / 傷つける 当てもなく 止めどなく / 消えた自分を取り戻すjourney on…>と書いています。対抗するわけではなく、むしろ、その人側に入ってみる。とても素直なアプローチですよね。

ぼくりり:そうです、その人自身を表現する、という感じなんです。

―今回、たくさんインタビューを受けられているでしょうけれど、その素直なアプローチをほじくって、表現者として変わっている部分を探し出そうと、ご本人にしてみれば「考えすぎ」の設問を投げかけられるケースも多いんじゃないですか。

ぼくりり:そうなんです。「いいや、違います」と主張できる意見があるわけでもないので、つい、「そうかもしれません」って答えることが多くなります。

―それだけ普段、言葉を自由に動かしていると、たとえば現代文のテストで、「このときの主人公の気持ちを答えなさい」なんて問題に正しい答えを出すのはしんどくないですか?

ぼくりり:よくできている現代文の問題だと、きちんと整合性がありますよ。例えば東大の現代文の試験でいうと、問1から問4まで異なる部分を解かせておきつつ、最後に、それらの設問と解答をふまえた上での大きな問題が用意される。こういった問題を解いていくのはむしろ楽しいです。

喋っている自分の他に、俯瞰する自分がいるんです。歌詞を書くときには、その「監視カメラ」な目線が強く出る。

―間接的に物事を見ようとする視線を感じます。例えば、“CITI”や“Sunrise(re-build)”に「半透明」という言葉が出てきます。アルバムタイトルにある「hollow(=うつろな)」もそうですが、対象物に対して直接向かっていかない感覚が全体的に敷かれていますね。

ぼくりり:今、こうして向き合って喋っているじゃないですか。でも、喋っている自分の他に、俯瞰する自分がいるんです。この感覚はずっと持ってます。まぁ、みんなそうだと思うんですけど。

―自分とは別に、自分を監視するカメラがある、という感じですか。

ぼくりり:そうですね。歌詞を書くときには、その「監視カメラ」な目線が強く出るのかもしれません。

―なぜ創作するときに、そちらの目を選択するのでしょう。

ぼくりり:そっちでしか書けないんです。例えば今、ここにあるコップの水がこぼれて自分にかかったとするじゃないですか。自分は「濡れた、冷たい」と思う。でも、監視カメラの自分は「水がこぼれている」と思う。自分が「濡れた」って感じることには興味がないんです。「そうなんだ」で終わってしまうというか。

―となると、誰かに対して怒るとか、自分が感情をむき出しにすることが少ないんじゃないですか。

ぼくりり:確かにそんなに怒りはしないですね。「ああ、この人はこういう人なんだ」と諦めているところがあります。自分が何かをすることで、他の人がガラッと変わるビジョンが見えないというか。

―15歳のときに書いたという“sub/objective”で、<いつしかすり替わる一人称から三人称へ><いつしか物を見ている自分を見るようになった><叫ぶ自分をobjectiveに眺める>と書いてますよね。その「監視カメラ」はいつ頃設置されたんですか? みんな持っているものではないと思うのですが。

ぼくりり:えっ、そうなんですか。僕は小学生くらいですかね。本当は設置したくなかったはずですけど。

―なぜ設置しようとしたんでしょう。「対社会」とか「対大人」への苛立ちがあったわけでもないんですよね?

ぼくりり:特にないですね。音楽が何かの手段になっているわけではないですし。こうして今、自分たちを囲んでいる大人が「何を考えてるんだろう?」という興味は強いかもしれません。それは「ふざけんな」みたいな対抗心とかではなく、純粋に何を考えているのかに興味があるんです。

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リリース情報

ぼくのりりっくのぼうよみ『hollow world』
ぼくのりりっくのぼうよみ
『hollow world』(CD)

2015年12月16日(水)発売
価格:2,160円(税込)
VICL-64487

1. Black Bird
2. パッチワーク
3. A prisoner in the glasses
4. Collapse
5. CITI
6. sub/objective
7. Venus
8. Pierrot
9. Sunrise(re-build)

プロフィール

ぼくのりりっくのぼうよみ
ぼくのりりっくのぼうよみ

横浜在住の高校3年生、17歳。早くより「ぼくのりりっくのぼうよみ」、「紫外線」の名前で動画サイト等に投稿を開始。高校2年生だった昨年、10代向けでは日本最大級のオーディションである『閃光ライオット』に応募、ファイナリストに選ばれる。TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK!』で、その類まれなる才能を高く評価されたことで一躍脚光を浴びた。これまで電波少女のハシシが主催するidler records から4曲入りEP『Parrot’s Paranoia』を発表している。他のトラックメーカーが作った音源にリリックとメロディーを乗せていくラップのスタイルをベースとしつつ、その卓越した言語力に裏打ちされたリリック、唯一無二の素晴らしい歌声、高校生というのが信じられない程のラッパー/ヴォーカリストとしての表現力が武器。

関連チケット情報

2018年2月4日(日)〜3月15日(木)
ぼくのりりっくのぼうよみ
会場:横浜ベイホール(神奈川県)
2018年2月10日(土)
ぼくのりりっくのぼうよみ
会場:ペニーレーン24(北海道)
2018年2月21日(水)
ぼくのりりっくのぼうよみ
会場:広島クラブクアトロ(広島県)
2018年2月24日(土)
ぼくのりりっくのぼうよみ
会場:DRUM LOGOS(福岡県)

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