インタビュー

メジャー再挑戦から1年、竹原ピストルのドサ回りはまだまだ続く

メジャー再挑戦から1年、竹原ピストルのドサ回りはまだまだ続く

インタビュー・テキスト
渡辺裕也

竹原ピストルは今日も歌い続ける。日本のどこかで、ほぼ毎日。人呼んで「不屈のシンガーソングライター」。メジャーレーベルでの再挑戦が始まってから1年が経った今も、竹原はアコギ1本で全国を駆け回っているのだ。それにしても、この男をここまで駆り立てるものって、一体何なのだろうか。メジャー2作目となるニューアルバム『youth』を聴き、1年ぶりに彼と話す機会を得た私は、改めてその衝動に迫ってみたいと思った。

「とにかく売れたいんですよ」。フォークバンド=野狐禅の一員としてデビューしてから現在にいたるまで、その野心は一度も潰えたことがないし、もちろんこの1年間もそれを胸に邁進してきたと、彼は屈託ない表情で話す。そこで新作『youth』に耳をかたむけてみる。豪快なバンドアレンジが施されたタイトルトラック“youth”で幕をあける今作は、サウンド面での新機軸が非常に際立つアルバムだ。この男の無骨な佇まいに惹かれてきた人のなかには、「竹原ピストルらしくない」と思う方もいるかもしれないが、いやいや、とんでもない。ここには相変わらずおのれと向き合い、苦悩し、それでもやはり歌わずにはいられない等身大の竹原がいる。そしてその歌をより広範囲にとどけるべく、迷わず彼は新たな挑戦に打って出たのだ。竹原ピストルとは、そういう男なのだ。

いつまでもガキはガキのまま。マトリョーシカのなかから体操着姿の子供が姿を見せている『youth』初回盤のアートワークに、私はそういうメッセージを見出している。そう、『youth』とは竹原自身のことであり、今もどこかに青さを宿している、私やあなたのことだ。

「君に1つだけアドバイスできるとすれば、それは『誰のアドバイスにも耳を貸すな』ってことだよ」という言葉は、ずっと頭のなかにあって。

―前作『BEST BOUT』を発表してから1年が経ちました。あれから竹原さんの活動にはどんな変化がありましたか? ライブスケジュールの過密さは相変わらずのようですね。

竹原:そうですね。でも、名実ともに世間で知られているような方と共演する機会は、ここ1年でぐっと増えました。それこそ、自分ひとりではなかなか手が届かないようなフェスとかにも出させてもらっているので、最近はそれとミックスさせながら、自分でもブッキングを組んでいます。つまり、ざっくり言うと「もうドサ回りは卒業だ」と思っていたんだけど、実際はまだそれほどの売れ方をしてないってことですね(笑)。とはいえ、『BEST BOUT』は今までの作品と比べると、考えられなかったくらいにたくさんの人が手に取ってくれたし、次のステップに進んだなっていう実感はすごくあって。

竹原ピストル 撮影:フクマサリョウジ
竹原ピストル 撮影:フクマサリョウジ

―それでも、ドサ回りから得るものはまだまだあると。

竹原:そうだし、そうしていくべきだと思ったんです。というのも、これは超極端で勝手な物言いなんですけど、やっぱり歌うたいって、現場で歌を歌って稼いだ金以外はもらっちゃいけないような気がしちゃうんですよね。こうして事務所に所属していると、いわゆる専属料というものが月にいくらか入ってくるし、それにCDの売り上げとかも加わってくる。でも、なんだかそれって稼いでる実感が薄いというか。それよりも、俺はやっぱり現場で歌って「ギャラくれ!」と言えたほうがしっくりくるんですよね。だから、そういう精神的な部分でのバランスをとるためにも(ドサ回り的なライブ活動は)必要だったと思う。

―竹原さんにとっては、音源制作も別モノなんですか。

竹原:というより、音源制作とライブは別の脳みそで考えてると言ったほうがいいですかね。そこに関しては『youth』と前作でもぜんぜん違うんですよね。『BEST BOUT』は「ここからまた始めるぞ!」っていう意思表明の作品ですけど、『youth』はそこからまた活動していくなかで出来たアルバムなので。

―その新作『youth』は、アルバムのタイトルトラックでもある“youth”という曲から始まります。この曲は竹原さんの自伝的な内容にも聴こえるのですが、これをアルバムの冒頭に持ってきた狙いは、どんなところにあったのでしょうか。

竹原:この曲には、それこそ自分の原点を込めたようなところがあって。つまり、なんちゃってオリジナルソングを作っては、仲間に披露して「俺、将来は竹原ピストルっていう名前で世に出るから」と言いふらしてた「ユース」時代のことですね。そういう「なんでそんなことするの?」と人から訊かれてもうまく答えられないような欲求や情熱って、誰にでもあるじゃないですか。そもそも、このアルバムだって「俺、こういう歌も書いたんだぜ!」とクラスメイトに見せびらかせるような気持ちで作った作品だし、これから作るものもきっとそうなると思うので、まずは1曲目でそこを伝えたいなと。

―なるほど。一方で住友生命のCMにも起用された“よー、そこの若いの”は、竹原さんが今の「ユース」にむけて歌っているようにも聴こえます。実際、竹原さんに対して何かしらのアドバイスを求める若い人たちはきっといるだろうと思うのですが。

竹原:共演した子からアドバイスを求められることは、たしかに時々あります。そういうときはいつもなんとなく濁してしまうんですけど、「君に1つだけアドバイスできるとすれば、それは『誰のアドバイスにも耳を貸すな』ってことだよ」という言葉は、ずっと頭のなかにあって。

―それは竹原さん自身、誰のアドバイスにも耳を貸さなかったということ?

竹原:はい、絶対に聞かなかったです(笑)。たまに、頼んでもいないのにアドバイスしてくる先輩とかもいましたけど、そういうときは「それと逆の方法で成功してやるから、今に見とけ!」と思っていましたから。まあ、つまりはひねくれてたってことなんですけど、僕は共演の若い子たちを見ているときも「そのまま勝手にやれ。それでいいんだよ」と思ってて。少なくとも、彼らに対して「もっとこうしたほうがいい」とかは言ったことがないつもりなんです。

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リリース情報

竹原ピストル『youth』
竹原ピストル
『youth』(CD)

2015年11月25日(水)発売
価格:3,132円(税込)
VICL-64415

1. youth
2. 全て身に覚えのある痛みだろう?
3. 午前2時 私は今 自画像に描かれた自画像
4. じゅうじか
5. 高円寺
6. へっちゃらさ、ベイビー
7. 月夜をたがやせ
8. よー、そこの若いの
9. ぼくの夢でした
10. 石ころみたいにひとりぼっちで、命の底から駆け抜けるんだ
11. トム・ジョード

プロフィール

竹原ピストル
竹原ピストル(たけはらぴすとる)

歌手、ミュージシャン、俳優。大学時代の1995年、ボクシング部主将を務め、全日本選手権に2度出場。1999年、野狐禅を結成し音楽活動を本格化。際立った音楽性が高く評価され、2003年にメジャーデビュー。2009年4月に野狐禅を解散し、一人きりでの表現活動を開始。毎年200~250本のペースでライブも並行するなど勢力的に活動を行う。2014年、デビュー時のマネージメントオフィスであるオフィスオーガスタに再び所属。そして、10月22日に、ビクタースピードスターレコーズよりアルバム『BEST BOUT』を発表。2015年、全国のライブハウスを行脚する傍ら、11月25日にニューアルバム『youth』をリリース。2016年より112本に及ぶ全国弾き語りツアー“youth”を開催する。音楽活動とは別に、役者としての評価も高く、『青春☆金属バット』(2006年、熊切和嘉監督)、『さや侍』(2011年、松本人志監督)などに出演。2016年秋には全国ロードショー、西川美和監督最新作『永い言い訳』への出演が決定している。

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