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二階堂ふみ×最果タヒ「わからない」を肯定する二人の言葉談義

二階堂ふみ×最果タヒ「わからない」を肯定する二人の言葉談義

『第33回現代詩花椿賞』
インタビュー・テキスト
武田砂鉄
撮影:永峰拓也

一番先に排除されてしまう仕事についている自覚がある。だからこそ乏しくならないために作り続けなければいけない。(二階堂)

―揺らぎの中で言葉を選び抜いたときに、例えば夜書いたとして、寝て起きた朝に、「ん? なんかこれ違うな」って思うことはないんですか。

最果:昔は、一度決めた言葉が凝固して、変えたくても変えられなかったんですよ。まるで他人が作ったみたいに。でも今は、後々でピンとこないってこと自体があまりないんです。その瞬間瞬間に調整しているんだと思います。

二階堂:私も最近、原稿を書く仕事をしているんですけど、「これなら自分が言っても大丈夫かな」と思うことしか書かないんです。以前は言いたいことを言えば必ず伝わる、と思っていたときもありましたが、まったく伝わらず、誤解を解く作業が大変だったことも多くありましたから。

二階堂ふみ

―書き連ねていると、どうしても自分の手癖が出てきますよね。それを発見してしまった場合、別の言葉や要素を発見しにいくものですか?

最果:いえ、手癖は手癖でいいのかな、と思っています。その手癖って、結構ブレるものなんですよ。ある作品ではポジティブなのに、別の作品ではネガティブに影響したり。その場合は、違う言葉を探すのではなく、1回解体するようにしていますね。私、「やべぇ」と「うめぇ」しか言わない友達が好きだったんです。言葉のボキャブラリーは少ないのですが、とても表情が豊かな子で、そういう子になりたいとすら思った時期もあったくらい。私自身、誰よりも言葉を書くのが下手だから書いているという気持ちがあるし、下手だからこそ、詩のようなわからない状態で言葉が出てくるんだろうなって思う。でも例えば、太宰治作品の中に、ほとんど推敲されていない作品があって、私はその手の作品が好きなんです。なぜなら、その人が絶対に説明できない文章が生まれるから。だからなんて言うか、どんどん下手になればいいとすら思うんです。

―今回、最果さんが受賞された『現代詩花椿賞』、その創設に際しての、詩人・宗左近の言葉に「お化粧も詩である、ファッションも詩であるという立場に僕は立ちたいんです」があります。最果さんは、受賞の言葉の中で「その人の内側に眠る美しさを浮かび上がらせていくような、そんなお化粧」「それは私が作りたかった詩の、あり方そのものだと思ったのです」と書かれていますね。

最果:先ほど、わからないものが面白いという話をしましたが、「美しい」ってその頂点ですよね。美しいものを見たときって、感情がすぐには出てこなくて、圧倒されるじゃないですか。圧倒されているけど、すべてを把握しようとはせずに受け入れているという状況を体現しているのが美しさです。役に立つとか展開が面白いといったことばかりが優先されると、この状況って最初に捨てられていく。「お化粧やファッションがなくても生きていける」って言われたら何にも言えなくなっちゃうけど、「それを言うな!」みたいな感覚は強い。だから「お化粧も詩である」と初めて読んだときにはとにかく共感したんです。

左から:二階堂ふみ、最果タヒ

二階堂:お化粧って、生きていく上での三大欲求には入っていないですよね。私、茨木のり子さんの詩『わたしが一番きれいだったとき』を読んではたと気づいたんです。例えば「わたしが一番きれいだったとき わたしの頭はからっぽで わたしの心はかたくなで 手足ばかりが栗色に光った」という箇所。私たち女性は三大欲求だけを与えられていればいい、というわけではないのかなと。この詩は戦争中のことを思い返して読まれた詩ですが、戦争は、人間の理にかなっていなかったわけですよね。そんな時、自分は、一番先に排除されてしまう仕事についているな、という自覚があります。何かあったときに、真っ先に食べられなくなる仕事です。だからこそ、乏しくならないために作り続けなければいけない。

最果:お化粧って「化ける」って書くじゃないですか。雑誌などでも、コンプレックスを隠すため、と書かれますよね。でもこの間、資生堂の美容部員さんが、あなたはここを見せたほうがいい、って引き出すお化粧をしてくれたんです。隠すものではなく引き出す感覚。詩も同じなのかなと感じます。「わからない」芸術作品を見て圧倒されながらも、それが不快ではなく心地良く感じるのは、作品から美しさが出ているだけじゃなくて、それを見ている自分からも美しさが出ているからなんです。

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書籍情報

『死んでしまう系のぼくらに』
『死んでしまう系のぼくらに』

2014年8月27日(水)発売
著者:最果タヒ
価格:1,296円(税込)
発行:リトルモア

『花椿』12月号
『花椿』12月号

2015年11月5日(木)から配布

『near, far 二階堂ふみ写真集』
『near, far 二階堂ふみ写真集』

2015年12月11日(金)発売
著者:二階堂ふみ
撮影:チャド・ムーア
価格:2,160円(税込)
発行:スペースシャワーネットワーク

プロフィール

二階堂ふみ(にかいどう ふみ)

1994年9月21日生まれ、沖縄県出身。12歳のとき『沖縄美少女図鑑』に掲載された写真がきっかけとなりスカウトされる。2009年『ガマの油』でヒロイン役に抜擢されスクリーンデビュー。2011年『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』にて主演を果たす。2012年公開の『ヒミズ』で『ヴェネチア国際映画祭 マルチェロマストロヤンニ賞(最優秀新人賞)』を受賞。2016年に主演映画『蜜のあわれ』『オオカミ少女と黒王子』の公開を控えている。

最果タヒ(さいはて たひ)

詩人・小説家。1986年、神戸市生まれ。『第44回現代詩手帖賞』『第13回中原中也賞』受賞。詩集に『グッドモーニング』(思潮社)、『空が分裂する』(新潮社)。『死んでしまう系のぼくらに』(リトルモア)で『第33回現代詩花椿賞』受賞。小説に『星か獣になる季節』(筑摩書房)、『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』(講談社)がある。

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突然少年“火ヲ灯ス”

教室でも放課後でも負け続けたこと、弱さ故に大事な友達も傷つけてきたことーー振り返るほど情けなさでズタズタになってきた自分達の青春を全部吐き出しながら、だからこそ今まで裏切らず側にいてくれた人を離さず抱き締めて生きていきたいのだと表明する1stアルバムが『サンキュー・マイ・フレンド・アンド・マイ・ファミリー』だ。ブッチャーズ、eastern youth、NUMBER GIRLを抱き締めて離さない号泣ファズは変わらぬまま、アルバムタイトルの通り「誰に何を歌いたいのか」に重心を置いた結果としてバンドサウンドが撚られ、歌がグッと前に出た。汗と唾を撒き散らす激情の成分はやや減ったが、あなたと友達になりたい、友達との絆を目一杯歌いたい、だからまずは自分達が素っ裸になってあなたと向き合いたいという意志がスウィートなメロディに乗って突き抜けている。「たったそれだけ」をたったひとりに伝えるためにもんどり打つ、バンドの核心がそのまま映し出されたMV。端からライブの中核を担ってきた名曲がさらに躍動している。(矢島大地)

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