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協調性はつまらない。誰もが持つイビツを肯定する王舟の豊かな音

協調性はつまらない。誰もが持つイビツを肯定する王舟の豊かな音

王舟『PICTURE』
インタビュー・テキスト
渡辺裕也
撮影:中村ナリコ
2016/01/25
  • 57

上海出身で、8歳の頃から日本で生活しているというシンガーソングライター、王舟。彼は自分のことをこう分析しているという。

「例えばそこに多数派があると、それとは違ったものを体現しようとするクセが、どうも自分にはあるみたいで。なんていうか、その場に多様性を作りたくなるんですよね。例えば飲み会でみんなが騒いでいると、自分はそこで寝ていたほうが楽しいんじゃないかと思ったりして」

こうした感性と出自がそのまま反映されているのか、王舟の作る音楽はどこか気まぐれで、とらえどころがなく、それでいて妙な人懐っこさがある。デビュー作『Wang』とは打って変わって、すべて自らの手で録音したという新作『PICTURE』では、随所に南米音楽的な要素がみられるなど、サウンドのエキゾチックなムードはさらに色濃くなった。そして、何よりもその歌声にただようミステリアスな色気。とにかくその歌を聴けば聴くほど、この人への興味が湧いてきてしょうがないので、さっそく本人にインタビューを敢行。その音楽観をたっぷりと語ってもらった。キーワードは「東洋医学」。では、どうぞ。

「調子を整えれば、身体はおのずと健康になる」みたいな考え方があるんですよ。

―今回のアルバム『PICTURE』は、全編を通して南米音楽的なアプローチがとても際立っているように感じました。この背景には何があるのかなと思ったんですけど、王舟さんは以前、ボサノヴァのバンドを組んでいた時期があるそうですね。

王舟:ああ、それは高校を卒業する頃の話ですね。友達がDJパーティーをやりたいと言いだしたことがあって。そこで彼がラテン系の音楽をかけると言うから、そこに合わせてボサノヴァのバンドをやってみたらどうかな、と思ったんです。

―王舟さんも当時からボサノヴァに親しんでいたってこと?

王舟:いや、まったく。むしろ、その誘いをきっかけにボサノヴァを聴くようになって、すぐに「これを自分でやるのはちょっと無理だな」と思いました(笑)。やっぱり自分はロックバンドがやりたかったというのもあって。

―その当時やりたかったロックバンドって、具体的にはどういうイメージだったんですか。

王舟:僕はOasisが大好きだったから、なんとなくそういうものをイメージしてたのかな。あとPrimal Screamとか。そういうロックバンドへの憧れがものすごく強かったし、いまだにそこは変わってないと思う。

王舟
王舟

―バンドへの憧れは、今でもあるということ?

王舟:はい。それこそ最近はシャムキャッツやceroやミツメみたいなバンドと共演することもあるんですけど、控え室とかで彼らの話を聞いたりすると、やっぱりバンドっていいなと思いますね。うまく機能しているバンドって、こんな感じなんだなぁって。僕は昔、昆虫キッズの佐久間(裕太)とかとバンドをやっていた時期があるんですけど、そのバンドはうまく機能できないまま終わっちゃったので。

―それって、AMAZONというバンドのことですよね? なぜそのバンドはうまく機能できなかったんでしょう。当時の王舟さんはベースを担当されていたそうですが。

王舟:そのバンドには、僕の他にもう一人中心人物がいたんですけど、彼との方向性がなかなか合わなかったんです。やりたい音楽は近いんだけど、バンド内のシチュエーションに対する考えが違っていたというか……。要は東洋医学と西洋医学の違い、みたいなものですね。いや、この例え方ではうまく伝わらないかな……。

―いや、とてもおもしろそうなので、ぜひそのまま続けてほしいです。

王舟:まず、僕には「調子を整えれば、身体はおのずと健康になる」みたいな考え方があるんですよ。つまり、バンド内の風通しをある程度良くしておけば、自然とそこからはいろんなアイデアが生まれてくるだろう、と。一方でもう一人は、まずはじめにバンドの目標を決めてから、そこにみんなで向かっていこうとするタイプで。アイデアが自然発生するのを待つのではなく、セッションを叩き台としながらも、しっかりと個々のフレーズを指定していくようなやり方だったんですね。そうすると、やりたい音楽は近くても、そこに至るまでの過程はまったく別モノってことになる。

王舟

―なるほど。では、サポートメンバーを迎えて録音した前作『Wang』は、いわばその東洋医学的な考え方にしたがって作ったアルバムなのでしょうか?

王舟:そうですね。『Wang』は「このメンバーで作れる音楽をやろう」という設定のもとに取り掛かったアルバムで、その結果として、特に意識することなくフォークやカントリーの要素が作品に表れたんです。その経験を踏まえて、一人でやってみるのもいいのかなと思ったのが、今回のアルバム。つまり新作は、いずれまた大編成で作るための勉強として取り掛かった作品でもあるんです。

前作『Wang』より“Thailand”

―大編成で作るための勉強というのは?

王舟:まず、僕は「なんとなくやってみたら、図らずもすごく良かった」みたいな音楽が、一番いいと思ってるんですね。でも、それってすごく難しいことだし、もしうまくいったとしても、それはそのときのシチュエーションありきってことにもなるから、すごく刹那的なんですよ。そういう音楽の成り立ち方にものすごく憧れている反面、自分がこれから音楽をずっとやっていくことを考えていくと、刹那的なものばかりをひたすら求めていくわけにもいかないなと思って。だから、まず今は自分がやれることをちゃんと整理してみたほうがいいかなと思ったんです。ここでいう勉強は、そういう感じですね。

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リリース情報

王舟『PICTURE』
王舟
『PICTURE』(CD)

2016年1月20日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1131 / felicity cap-246

1. Roji
2. Hannon
3. Moebius
4. 冬の夜
5. lst
6. ディスコブラジル(Alone)
7. Hannon(Reprise)
8. Picture
9. Rivers
10. あいがあって
11. Port town

イベント情報

王舟
『PICTURE Release Tour(Alone)』

2016年2月11日(木・祝)OPE N18:30 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 西アサヒ
出演:
王舟
inahata emi

2016年2月13日(土)OPEN18:00 / START19:00
会場:京都府 喫茶ゆすらご
出演:
王舟
畳野彩加(Homecomings)

2016年2月14日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:広島県 尾道 浄泉寺
出演:
王舟
白い汽笛

2016年2月18日(木)OPEN19:00 / START19:30
会場:福岡県 STEREO SIDE-B
出演:
王舟
夏目知幸(シャムキャッツ)

2016年2月20日(土)OPEN19:30 / START20:00
会場:北海道 札幌 キノカフェ
出演:
王舟
夏目知幸(シャムキャッツ)

2016年2月21日(日)OPEN19:30 / START20:00
会場:宮城県 仙台 BAR&EVENT HOLE Tiki-Poto
出演:
王舟
夏目知幸(シャムキャッツ)

料金:各公演 前売2,500円 当日3,000円

王舟
『PICTURE Release Tour(Big Band)』

2016年3月5日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2016年3月13日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

出演:
王舟(Vo,Gt)
岸田佳也(Dr)
池上加奈恵(Ba)
潮田雄一(Gt)
みんみん(Key)
山本紗織(Flu)
高橋三太(Tp)
荒井和弘(Trb)
大久保淳也(Cl,Sax,Flu)
増村和彦(Per)
小林うてな(Steelpan,Marimba)
annie the clumsy(Cho)

料金:各公演 前売3,000円 当日3,500円

プロフィール

王舟
王舟(おうしゅう)

上海出身、日本育ちのシンガーソングライター。2010年、自主制作CDR『賛成』『Thailand』を鳥獣虫魚からリリース。2014年、1stアルバム『Wang』、7インチシングル『Ward/虹』をfelicityからリリース。2015年、1stアルバムのアナログ盤『Wang LP』、12インチシングル『ディスコブラジル』をfelicityからリリース。2016年、2ndアルバム『PICTURE』をfelicityからリリース。バンド編成やソロでのライブも行なっている。

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