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中村勘九郎と鹿殺しの叫び「面白いものを作りたいだけなのに!」

中村勘九郎と鹿殺しの叫び「面白いものを作りたいだけなのに!」

劇団鹿殺し『名なしの侍』
インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:江森康之 編集:佐々木鋼平

熱意のあるシルク・ドゥ・ソレイユのアクターたちが歌舞伎を始めたら、ぼくら歌舞伎役者の存在意義はなくなってしまうかもしれません。(中村)

―劇団鹿殺しのお二人もシルク・ドゥ・ソレイユには相当影響を受けたと話していましたね。

丸尾:ラスベガスでシルクの舞台を観たとき、お客さんにチケットを買ってもらって、はるばる劇場まで足を運んでもらうには、これくらいのクオリティーを観せなきゃならないと衝撃を受けました。当時、演劇界で評価される芝居は、アンニュイだったり難解なものが多く、ぼくらとしても方向性に迷っている時期だったんです。だけどシルクを観て、この先進んでいくべき方向性がはっきりした。ぼくらにとっての「成功」とは、1年の楽しみの一つとして劇場に足を運んでくれた人たちを広い間口で迎えて、ここでしか味わえない臨場感や感情の昂りを感じてもらえるかにかかっていると。

丸尾丸一郎

菜月:一昨年にカナダに留学したとき、ケベックにあるロベール・ルパージュのスタジオを見学させてもらいました。彼は国から駅前のビルを30数年間無償で貸し出しされているんだそうです。

―理想的な創作環境ですね。

菜月:カナダはシルクの活動だけでなく、サーカスアクターを育てる学校も設立して、世界中で愛されるエンターテイメントを作り上げるべく、作り手も演者もバックアップしています。国と都市と企業とが協力して作品を創作する団体を育て、世界中で上演し、ケベック州に税金として戻せるようにしているんです。めちゃくちゃ正しいお金の使い方だと思います。日本では作品ごとに助成金が使われても、継続的なシステム作りにつながっていきません。体操やフィギュアスケートなど身体表現的なスポーツには長けているし、長期的にパフォーマ-を育てる教育機関があれば、すぐに世界に通用するエンターテイメントを作れそうなのに……。

中村:いまの話を聞いて真っ先に、熱意のあるシルクのサーカスアクターたちが歌舞伎をやったら……と想像しました。そのとき、ぼくら歌舞伎役者の存在意義はなくなってしまうかもしれません。

左から:中村勘九郎、丸尾丸一郎

菜月:シルクを観て、普通に働いている人たちの心をつかめる「力強い演劇」がやっぱり好きなんだと感じました。観劇層を拡げるだけに留まらず、生活の活力になるようなエンターテイメントの大事さを理解している人々が結束していくことができたらという希望があります。俳優も、歌舞伎役者も、シルクのようなサーカスアクターも結束できれば、世界中の誰が観ても心が動くような日本発の新たなエンターテイメントが生み出せるはずなんです。

生バンド演奏で世界観を作り出す自分たちの作風に自信が持てるようになってきた。(丸尾)

―現代演劇と歌舞伎というジャンルは違っても、共通するのは「面白いものを作りたい」ということだと思います。今後の活動でみなさんはどんな方向性を目指しているのでしょうか?

丸尾:7月に東京と大阪で『名なしの侍』を上演します。前作『キルミーアゲイン』は、得意ジャンルの一つでもあるノスタルジックな作品だったので、劇団創立15周年の2作目となる今作は、新しい可能性を示す時代劇に挑戦しようと思っているんです。

劇団鹿殺し『名なしの侍』イメージビジュアル 写真:江森康之
劇団鹿殺し『名なしの侍』イメージビジュアル 写真:江森康之

―「怒パンク時代劇」というキャッチフレーズからも、ほとばしる熱量を感じます。

丸尾:これまでは「時代劇×ロック」をやると、劇団☆新感線の真似に見えてしまうジレンマがあったんです。ただ、俳優による生バンド演奏で世界観を作り出す自分たちの作風にも自信が持てるようになってきました。ぼくらにしかできない音楽劇の形を探してしていきたいと思っています。

―勘九郎さんはいかがでしょうか?

中村:ぼくは、このままだったら歌舞伎に未来はないと思っています。もともと歌舞伎はトレンドの発祥地でした。2020年『東京オリンピック』のロゴに採用された市松模様も、ルーツを辿れば中村座が江戸時代に流行らせたものです。この先、歌舞伎がトレンドを生み出していくには、「国に守られる文化」という考えを排除しなければダメなんです。父も「国から守られるようになってしまったらアウトだ」と常に言ってました。

―国の保護のもとでふんぞり返るのではなく、あくまでもエンターテイメントとしての魅力を保ちたいということですね。勘九郎さん自身、「面白いものを作る」ための戦いを諦めてはいませんね。

中村:「純粋に面白いもの」を追求するところになかなか行けないもどかしさはありますが、鹿殺しのような人たちの芝居が希望の光になっています。残念ながらいまのところ、本当の意味での「歌舞伎役者」は、ぼくたちではなく彼らなんですよ。ぼくは鹿殺しが生み出すようなパワーを歌舞伎に求めていきたいです。

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イベント情報

劇団鹿殺し
『名なしの侍』

作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
音楽:入交星士×オレノグラフィティ
出演:
菜月チョビ
丸尾丸一郎
オレノグラフィティ
橘輝
鷺沼恵美子
浅野康之
近藤茶
峰ゆとり
有田杏子
椙山さと美
メガマスミ
木村さそり
玉城裕規
鳥越裕貴
谷山知宏(花組芝居)
堂島孝平
piggy
奥泰正
辰巳裕二郎
池田海人
石川湖太朗
長田典之
ちゃこ
中島ボイル
前川孟論
矢尻真温

東京公演
2016年7月16日(土)~7月24日(日)全11公演
会場:東京都 池袋 サンシャイン劇場
料金:S席6,300円 A席5,300円 学生券3,900円

大阪公演
2016年7月28日(木)~7月31日(日)全6公演
会場:大阪府 グランフロント大阪 ナレッジキャピタル4F ナレッジシアター
料金:S席6,300円 学生券3,900円

『中村勘九郎・中村七之助 錦秋特別公演2016』

東京公演
2016年11月7日(月)
会場:東京都 八王子 オリンパスホール八王子
料金:S席8,000円 A席6,500円 B席5,000円

2016年11月10日(木)
会場:東京都 後楽園 文京シビックホール 大ホール
料金:S席8,000円 A席6,500円 B席5,000円
※その他、全国12か所で24公演

出演:
中村勘九郎
中村七之助
中村鶴松
ほか

舞台『真田十勇士』

脚本:マキノノゾミ
演出:堤幸彦
出演:
中村勘九郎
加藤和樹
篠田麻里子
高橋光臣
村井良大
駿河太郎
荒井敦史

栗山航
望月歩
青木健
丸山敦史
石垣佑磨
山口馬木也
加藤雅也
浅野ゆう子
ほか

東京公演
2016年9月11日(日)~10月3日(月)
会場:東京都 初台 新国立劇場 中劇場

神奈川公演
2016年10月8日(土)~10月10日(月・祝)
会場:神奈川県 横浜 KAAT 神奈川芸術劇場

兵庫公演
2016年10月14日(金)~10月23日(日)
会場:兵庫県 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール

プロフィール

中村勘九郎(なかむら かんくろう)

1981年10月31日、十八代目中村勘三郎の長男として誕生。1986年1月歌舞伎座『盛綱陣屋』の小三郎で初お目見得。翌1987年1月『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。2012年2月新橋演舞場『土蜘』僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで六代目中村勘九郎を襲名。また、歌舞伎の舞台公演にとどまらず、映画、テレビ、写真集など幅広い分野へも挑戦している。

劇団鹿殺し(げきだん しかごろし)

2000年、菜月チョビが関西学院大学のサークルの先輩であった丸尾丸一郎とともに旗揚げ。劇場では正統的演劇を行いながらも、イベントでは音楽劇的パフォーマンスを繰り広げる。上京後2年間の共同生活、週6日年間約1000回以上の路上パフォーマンスなど独自の活動スタイルで、演劇シーン以外からも話題を呼ぶ。入交星士、オレノグラフィティの作曲陣による、全編オリジナル楽曲も魅力。2013年、菜月チョビの文化庁新進芸術家海外派遣制度による1年間の海外留学を発表。2013年には歌手のCoccoの初舞台を丸尾が作・演出、2015年には、シンガーソングライターの石崎ひゅーいを客演に招き、全編生演奏のロックオペラ『彼女の起源』を発表した。

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