インタビュー

minus(-)藤井インタビュー 急逝した森岡賢への想いと今後を語る

minus(-)藤井インタビュー 急逝した森岡賢への想いと今後を語る

インタビュー・テキスト
小野島大
編集:矢島由佳子

ここ十何日でいろいろ考えてみたんですけど、一言で表すとするなら、「弟」というのが一番言い得て妙かなと。

―森岡さんに初めて出会ったのはいくつの時ですか?

藤井:僕が18で、森岡が17だったと思います。

―言ってみれば子供と大人の端境期に出会った。将来なにになるかもわかってない時期。

藤井:会ってしばらくしたら電話がかかってきて、電話口で延々と自作テープを2時間ぐらい聴かされたんですよ。「僕、今こんなの作ってるんだよね」って。当時はデータで送るとか当然できないし、延々受話器をスピーカーにくっつけて聴かされたんですけど、レコード流してるんじゃねえの、って思うぐらい完成度が高かった。びっくりしましたね。

―なるほど。

藤井:当時、森岡の家は新宿で、僕も音羽で近かったからよく遊びに行くようになって、一緒に曲を作ったりして。僕と森岡の最初の合作は、NHKの番組のオープニングタイトルの音楽だったんですよ。当時、二人でCM音楽の仕事とかやってたんです。一緒に遊んだりしつつ、NTT「カエルコール」のCMとか、けっこう大きな仕事をしてました。そういう仕事は彼のお父さん(作曲家の森岡賢一郎)から回ってきたんじゃないかな。

―そんなことをやってたんですね。その頃印象に残っているエピソードなどは?

藤井:うーん……あんまりないかも。

―(笑)。仲は良かったわけでしょ?

藤井:仲がいい悪いっていうのも、僕らには当てはまらない気がしてて。なんでしょうね。普通の感覚で言ったら、仲がいいわけじゃないと思います。常に一緒にいるとか、そんなんじゃないし。10代の頃は遊び仲間だったけど、普通の遊び仲間ではなく、お互い意識しつつ……なかなか一言では言い表せない。

―ライバル、という関係ですか?

藤井:ライバル関係……ではないと思います、実は。

―じゃあなんですか?

藤井:……腐れ縁?

―つまり友だちですか?

藤井:うん、広い意味ではそうかもしれないけど。うん。

―いつも藤井さんは森岡さんのことを話す時は憎まれ口を叩きますけど、藤井さんにとって森岡さんはどういう存在なんですか?

藤井:……ここ十何日でいろいろ考えてみたんですけど、一言で表すとするなら、「出来の悪い弟」というのが一番言い得て妙かなと。「めんどくせえ!」という。うん。なんの飾りも嘘もない表現はそれかな。

―その「出来の悪さ」とは、ふだん一緒に仕事をしている時に感じてたわけですか?

藤井:……あのう、人って亡くなるとアイコナイズされるじゃないですか。天才だっただの、人を愛する人だっただの、気遣いの人だっただの。でもおよそそういう評判とは180度違う人でしたね。フフフ(笑)。

―亡くなってから、彼の人柄の良さを語る人が多かったですけど。

藤井:人当たりは悪くないんですよ。でもその先のことを一切考えない。結局あの人って「me, me, me」なんです。自分が全てであって、そういう意味で気遣いなんて全然なかったですよ。

―なのであとで尻ぬぐいしなきゃいけない。

藤井:一緒にいる場合は。なので面倒くさい、「出来の悪い弟」だなと。

弟って、可愛くなくても、いいところがなくても、弟だから(笑)。

―SOFT BALLET時代にはいろいろやり合ったと聞きますけど。

藤井:それもいろいろ伝聞として広がってますけど、「やり合って」はいないですね。「やった」けど(笑)。

―(笑)。

藤井:あの人、SOFT BALLET時代のことを回想して「フジマキ君とよく殴り合って」みたいに言いますけど、「殴り合った」記憶は一度もないんですよ。「殴った」ことはありますけど。フフフ(笑)。

―どういうシチュエーションで?

藤井:最初は……ライブのアレンジの締切があったんですけど、当日になってもなにもできてなくて、「やるって言ってたじゃねえかこのボケ」というのがまず1回。2回目は確か『INCUBATE』(1993年発売、SOFT BALLETの6枚目のアルバム)のマスタリングの時でしたけど、僕の曲を3db下げたいって言うんですよ。理由を訊くと、自分の曲より大きいのがイヤだ、みたいな話で。じゃ今から行くから待ってろ、と言ってバイクでビクタースタジオまで行って、パキッ!

―(笑)。3度目は……?

藤井:3度目は……SOFT BALLETの再結成の時(1995年解散、2002年再結成)ですね。ライブのトラックは全部僕が作ってたんですけど、「僕もやりたい、僕も作れる」と言い出して。「じゃあ任せた」と言って任せたのに、何か月も経って森岡がやってきて「できてないんだよ~」って言い出したんで、パチーン!(笑)

―1回目と3回目は同じ理由だったと。

藤井:そうですね(笑)。

―自分が悪かったって反省してるんですか。

藤井:どうなんですかねえ。それも僕にはよくわからないですね。そういう人だったんで、「出来の悪い弟」だなと。

―でも弟だから、可愛いし、いいところもある。

藤井:いや、弟って可愛くなくても、いいところがなくても、弟だから(笑)。

―楽しかった想い出とかないんですか?

藤井:それ訊かれると思って考えたんですけどね……ないんですよね(笑)。

―森岡さんはSOFT BALLETの長い下積み時代に初めてレコード会社から声がかかって、三人で肩を叩きながら涙涙で喜び合った、それがいい想い出だったと言ってますけど。

(レコード会社の)方に声をかけていただいた時に、本当に心から「やってて良かったねぇ」って、ほんとに涙モノな感じでみんなで喜んで、肩を叩き合ったのを未だに覚えてます。苦節5年でね。あの気持ちはもう3人では味わえることはできないんだろうか、って思ったりとかするとけっこう寂しくなりますけど
(SOFT BALLET『INDEX』ライナー所収の森岡インタビューより / インタビュアー:小野島大)

藤井:あ、それも大嘘ですね!

―(爆笑)。せっかくの美談なのに。

藤井:それはあの人の妄想ですね。その時僕はロンドンにいたから。だいたい僕が肩たたき合って涙ぐんだりすると思います?

―(笑)。だからいい話なんじゃないですか。

藤井:だからそれは森岡の妄想なんです!(キッパリ) 彼が人に話してる逸話はほとんど彼の脳内生成ですよ。そういう人なんで。そこが面倒くさいところでもあり、「バカヤロウ」という感じでもあるわけで。

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イベント情報

『minus(-) TOUR 2016 summer“Voltaire”』

2016年8月13日(土)
会場:東京都 赤坂BLITZ
※7月16日10:00からチケット販売再開

『J 2016 LIVE <10 days of GLORY -10 Counts for Destruction->』

2016年11月19日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:
J
minus(-)(スペシャルゲスト)
※7月30日10:00からチケット一般発売開始

プロフィール

minus(-)
minus(-)(まいなす)

元SOFT BALLETの藤井麻輝と森岡賢によるユニット。2014年5月に結成。ニューウェイブ、エレクトロニカ、ノイズという要素を交え、他にはないオリジナリティに溢れたサウンドを構築。10月22日に1stミニアルバム『D』をリリースし、その後、LUNA SEA主催のフェスを始め、ヒカシュー、BELLRING少女ハート、石野卓球、SUGIZO、THE NOVEMBERSといった幅広い相手との対バンを行なう。2015年12月9日には2ndミニアルバム『G』をリリース。12月28日には新宿ReNYでのワンマンライヴを成功させた。

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