インタビュー

minus(-)藤井インタビュー 急逝した森岡賢への想いと今後を語る

minus(-)藤井インタビュー 急逝した森岡賢への想いと今後を語る

インタビュー・テキスト
小野島大
編集:矢島由佳子

minus(-)で初めて声をかけた時、「僕もうダメなんだよ~」って言ってたぐらいですから。すごく元気にはなっていたと思いますよ。

―森岡さんの音楽的な良さってどこにあるんですか?

藤井:なんだろう……「ニューウェイブ感」?

―とは?

藤井:それが一番難しいんですけどね。哀愁がありつつポップ?

―そのポップセンスみたいなものは、藤井さんにはないものだった?

藤井:あの人のポップセンスって、手癖なんですよ。U2やDEPECHE MODEをパクったりもしてましたけど、あの人本来のポップはそういうものとも違う独特の手癖なんです。独特のコード感というか。

―それが森岡賢の個性。

藤井:個性なんですけど、最近はそこから逃れられないという苦しみがあったみたいですね。

―ああ、殻を破れない、ある種の壁にぶち当たっていた。

藤井:うん……それが悩み……というか僕がダメ出ししてたんですけどね。(森岡が曲を作ってくるたびに)「これ、SOFT BALLETの“PHOENIX”(の焼き直し)だよね」って言ったりとか。

―自分は遠藤遼一のようには歌えない、藤井麻輝のように完成度の高いサウンドも作れない、だから二人が必要なんだ、ということはおりに触れて言ってましたね。

藤井:……それ、唯一の本音かもしれないですね。

―前のCINRAのインタビュー(一度は音楽業界と決別した藤井麻輝、復帰後の怒濤の活動を語る)で、藤井さんは森岡さんのボーカルの技量不足を指摘してたでしょう。たぶん彼自身もそれはわかっていたと思う。でも彼は黒衣に徹することはできない人でしょう。常に真ん中にいて脚光を浴びていたい人だから、そういうギャップは感じてたかもしれない。

藤井:うん。僕は彼の歌はガンガン貶してたけど、そういうことを言えるのは、周りに僕しかいなかったと思うんですよ。彼はね、昔はすっごく歌が上手かったんです。まあ僕が18歳の時に聴いた印象だからかなり美化されてると思いますけど、イギリスのニューウェイブの雰囲気があった。彼はたぶんボーカリストとして(高橋)幸宏さんの影響をかなり受けていて、節回しとか、その印象が強いんです。なのでああいう風に歌えたらもっと幅が広がるのになあ、と思ってましたね。

―なるほど。そういう意味でも、彼はSOFT BALLET以降、自分の才能を生かし切れてなかった印象があります。彼の才能が全開になった作品というとなんだと思いますか。

藤井:『MILLION MIRRORS』(1992年発売、SOFT BALLETの5枚目のアルバム)とか『INCUBATE』(1993年)の頃……“PARADE”(『INCUBATE』収録)とか彼の最高傑作じゃないかな。彼の絶好調の時代だった気がします。

―ここ最近の彼についてはどういう印象がありますか?

藤井:音楽的にですか? ……なんとも言いようがないですけど……ただ音楽家に限らず、モノを作る人って必ず浮き沈みがあるんで……。

―でもminus(-)を始めてから、上向き傾向だったんじゃないですか?

藤井:それはあると思います。minus(-)で初めて声をかけた時、3年前の2月に会った時は、「僕もうダメなんだよ~」って言ってたぐらいですから。すごく元気にはなっていたと思いますよ。

―自信なくして落ち込んでる時に、自分が誰よりも信頼する昔からの仲間から必要とされた。すごく嬉しかったと思いますよ。

藤井:うーん、まあ腐れ縁ですからねえ。

―藤井さんも、ライブをやりたいと思った時に真っ先に頭に浮かんだのが森岡さんだったわけでしょう。

藤井:うん、それが超不思議なんですよね……。ほかの誰も浮かばずに、森岡賢だけが浮かんだから。僕がなんか適当なことをやって、森岡がひゅーひゅー言って踊っていれば成り立つ、と思える間柄であったことは確かなんでしょうね。

遺影の前で手を合わせて、「大事な時になんてことしてくれたんだ」って。最後は「ちゃんとやっとくから」って。

―彼が亡くなったのを聞いたのはどういうタイミングだったんですか?

藤井:(6月)3日の昼かな。亡くなった直後ぐらいだと思うんですけど、僕は前の日遅くまでminus(-)のアルバムの作業してて、寝てまして。電話が何度も鳴って。見たら金光さん(マネージャー)で。最初は「なんの冗談?」と思ったんです。前日に森岡と電話で話してたんで。

―じゃあ死を予感させるような兆候はまったく……。

藤井:だって健康診断をしばらく前にやってて、「数値超正常!」とか浮かれてましたからね。てめえナニ健康なんだよ、みたいな。

―驚きのあとに来た感情はなんでしたか?

藤井:……「困った」。最初に浮かんだのがBLITZのことでしたね。ツアーのチケットも売り出してたし。自分が一緒に活動していた人が、こういう形で突然亡くなったのは初めてだったんで。どうすんだこれ、みたいな。

―うーん……。

藤井:僕ね、大脳辺縁系の振る舞いがちょっとおかしいのか、「悲しみ」という感情がないんです。両親が亡くなった時もそうだった。涙が出て号泣、みたいなことがない。なのでまず考えたのは、ライブどうしよう、困った、という。……うん。……冷たい、とか人非人、と思われるかもしれないけど、こればっかりは、そういう生理なんですよね。

―自分にとって本当に大事な人を亡くした時の感情は、一筋縄ではいかないものなのかもしれないですね。まして仕事で深く関わっていた相手だと、まずは現実に降りかかってくる問題に対処しなきゃいけないから。

藤井:……うん……。

―遠藤さんと一緒に森岡家にご焼香に行かれたんですよね。

藤井:遺影がminus(-)のアー写だったんです。その前で手を合わせて(内心で)罵詈雑言ですよ(苦笑)。大事な時になんてことしてくれたんだ、って。最後は「ちゃんとやっとくから」って。そう(内心で)呟いて。

―うん。

藤井:最近よく言うんですけど、「こんなに迷惑かけやがってバカヤロウ、死ねばいいのに。あ、死んでるのか」って(苦笑)。その繰り返し。

―遠藤さんはなにか言ってました?

藤井:遠藤は最近なぜか2回ぐらい電話かけてきて。「大丈夫?」って。

―あなたを気遣ってるということですか。

藤井:たぶん。別に嬉しくないですけど(苦笑)。

―でもこれで三人がまた一緒にやることは永遠に不可能になってしまいましたね。

藤井:(素っ気なく)もともとないですよ。僕が死んだら可能性あったかもしれないけど。

―えっ?

藤井:たぶん僕が一番嫌がってたから。森岡はもともとやりたがってたし。

―……そうですか。

藤井:でも……森岡のところに行くなら三人……というか僕と遠藤が揃って行きたい、という話はして。森岡の遺影の前で一瞬SOFT BALLETが復活しましたから。それでいいんじゃないですか。

―森岡さんを見送るなら遠藤さんと一緒がいい、と思ったわけですよね。

藤井:……うん。昔から(森岡の)お母さんも知ってるし、それは筋としてね。10代の頃からの長い付き合いだったから。

―友だちだもんね。

藤井:うん……まあ「だんご3兄弟」みたいなもんですかね(笑)。……でも罵詈雑言言えるのも、そういう関係じゃなきゃ言えないし。根本的なところで繋がりが深かった人だから。面倒くさいけど(苦笑)。

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イベント情報

『minus(-) TOUR 2016 summer“Voltaire”』

2016年8月13日(土)
会場:東京都 赤坂BLITZ
※7月16日10:00からチケット販売再開

『J 2016 LIVE <10 days of GLORY -10 Counts for Destruction->』

2016年11月19日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:
J
minus(-)(スペシャルゲスト)
※7月30日10:00からチケット一般発売開始

プロフィール

minus(-)
minus(-)(まいなす)

元SOFT BALLETの藤井麻輝と森岡賢によるユニット。2014年5月に結成。ニューウェイブ、エレクトロニカ、ノイズという要素を交え、他にはないオリジナリティに溢れたサウンドを構築。10月22日に1stミニアルバム『D』をリリースし、その後、LUNA SEA主催のフェスを始め、ヒカシュー、BELLRING少女ハート、石野卓球、SUGIZO、THE NOVEMBERSといった幅広い相手との対バンを行なう。2015年12月9日には2ndミニアルバム『G』をリリース。12月28日には新宿ReNYでのワンマンライヴを成功させた。

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