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細美武士の表現と強さの本質とは。揺るぎない作家精神を紐解く

細美武士の表現と強さの本質とは。揺るぎない作家精神を紐解く

the HIATUS『Hands Of Gravity』
インタビュー・テキスト
加藤将太
編集:柏井万作、山元翔一

デモ音源の持っているプリミティブな快感を残しながら、アルバムの完成形を作りたかった。

―the HIATUSとしてやりたい音楽に特化できた『Hands Of Gravity』というアルバムが完成するまで、そのプロセスにもやはりこれまでと違った手応えがあったのでしょうか。

細美:もうアルバム5枚目だから、メンバー間の関係がやっぱりすごくしっかりしてて、阿吽の呼吸になってきましたね。全部言う必要はなくなったし、逆に余計なこと言っちゃっても変にこじれたりしなくなりました。

the HIATUS『Hands Of Gravity』ジャケット
the HIATUS『Hands Of Gravity』ジャケット(Amazonで見る

細美:今回のレコーディングでは、曲のダイナミクスを大切にして録音することにこだわりました。コンピーな仕上がりにして、都会の雑踏や車の中、電車の中とかでも全部はっきり聴こえるように作るのは、俺たちがやらなくてもいいことだと思ったので。小さいところは当たり前に小さく、音が大きくなるところではちゃんと大きくなるように作ってあります。

個人的な挑戦で言うと、できるだけ人間を感じられるような、いい演奏をレコードに残したいと思ってました。テイクを重ね過ぎたり、きれいに編集しちゃったりすると、デモ音源にあったような、曲が生まれたときの喜びとかマジックが損なわれたように感じることがよくあって。デモを聴きかえすと「なんかやっぱりこれいいんだよなあ」みたいに感じることって、ミュージシャンならみんな経験あるんじゃないかな。だから今回は、デモ音源の持っているプリミティブな快感みたいなものを残しながら、アルバムの完成形を作りたいと思ったんです。

『Hands Of Gravity』より

―それが「ダイナミクスを残す」という制作コンセプトにも繋がっているわけですね。

細美:うーん、それは音の話だから別ではあるんだけど、結果的にいい演奏を録る、ってことと、いい音のレコードを作る、っていう二つがうまくいって今回のアルバムができたんじゃないかな。もちろん各パートのエゴも音楽には重要な要素なんだけど、「何が曲にとってベストな選択か」みたいなことをみんなで話し合えるような、いい関係性の中で作れました。

―たしかに『Hands Of Gravity』は聴いていて耳が疲れない印象があります。今回、DTM色を全面に出した前作『Keeper Of The Flame』を通過して、バンドサウンドに回帰した側面もあると思っていて。

細美:プログラミングは『Keeper Of The Flame』で結構やったから、自分たちにとって「すごく新しいもの」ではなくなったからかもね。プログラミングの分量自体はそんなに意識してなかったけど。

―前作とサウンドスケープは大きく変わりましたが、今作でも世界的に有名なテッド・ジェンセンにマスタリングを依頼していますよね。細美さんとしては彼にどんなことを期待して依頼したんですか?

細美:俺がテッドのマスタリングで好きなのは、楽器が鳴ってない帯域にも、何かしら存在を感じられるようになるところですね。グランドピアノと歌しか入ってないような曲でも、スカスカにはならないで、何か充足するようになる。

『Hands Of Gravity』より

―現場では一緒に細かく詰めていくんですか?

細美:レコーディングエンジニアの柏井(日向)くんも立ち会ってるし、マスタリングは基本的にほとんど口出しすることはないですね。テッドに方向性を確認されたりはするけど。もう何枚もマスタリングしてもらってて、その全部に満足してるから、すごく信頼しています。

何かに挑戦するのは楽しいことだから、音楽を作るときもそれを続けていきたいですね。

―細美さんはご自身のことを「ただのバンドマン」と言っていましたが、偏屈であることにはどこかアーティスティックな響きもあると思うんです。アーティストと呼ばれることに対してはどう思いますか?

細美:自分が作ったものが芸術とかアートなのか、ってことは正直よくわかんないし、どっちでもいいですね。自分が作りたいもの、聴きたい音に向かっていくことが好きで、「ほんとにできるのかな?」ってことに挑戦していたいだけで。単純に何かに挑戦するのは楽しいことだから、音楽を作るときもそれを続けていきたいですね。

―挑戦すること自体に、喜びがあるんですね。

細美:そうですね。俺の場合は、その挑戦が作品として残っていく。これって、めちゃくちゃ幸せなことだよね。

―常に挑戦していく楽しさの中には、自分自身を常に更新していくということも含まれていますか?

細美:そんな難しく考えてるわけじゃなくて、子供の頃にゲームにハマったみたいに、今も楽しいから熱中しちゃうだけ(笑)。ゲームが上手くなりたいと思ってたわけじゃなくて、楽しくてやってるからね。それと同じで、音楽を作る、歌を歌う、楽器を演奏するのが楽しいと思ってるだけなんじゃないですかね。

―その楽しさが、色あせることはありませんか?

細美:この間ふと気が付いたんだけど、音楽って年齢で劣化していかないんだよね。歌にしても作曲にしても、ずっと伸びていくもんなんだなって、ふと気付いて、すごく嬉しかったです。

―どんどん楽しさを見出していける一方で、身体的な衰えに直面するときも来ると思うんです。そうなった場合、そのときの自分に合うフォームを見つけるという感じなんでしょうか。

細美:そうなのかなあ? まあ、もし自分の限界が見えたら、「もういいんじゃね?」ってパタッとやめちゃうかもね。でもなんとなくだけど、5年後には今よりいい歌を書けて、歌えるようになってると思うよ。肉体なんて鍛えればいくらでも応えてくれるしね。もっともっと強くなってるといいな。

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リリース情報

the HIATUS『Hands Of Gravity』
the HIATUS
『Hands Of Gravity』(CD)

2016年7月6日(水)発売
価格:2,592円(税込)
UPCH-20422

1. Geranium
2. Clone
3. Drifting Story
4. Bonfire
5. Let Me Fall
6. Radio
7. Catch You Later
8. Secret
9. Tree Rings
10. Sunburn

プロフィール

細美武士(ほそみ たけし)

ELLEGARDEN活動休止後、the HIATUSのボーカルとして活動中。オルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつも、ジャンル不問の新しい音楽を追究し続けている。また、2011年以降はソロアーティストとしての活動も活発になり、クラブDJやループサンプラーを用いた弾き語りライブも行っている。

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