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新しい集団のヒントがある? いま世界の大学で進むクラブ研究とは

新しい集団のヒントがある? いま世界の大学で進むクラブ研究とは

『フェスティバル/トーキョー16』
インタビュー・テキスト
住吉智恵
撮影:高見知香 編集:佐々木鋼平

その場限りのルールにもとづく、非常に流動的なクラブ空間は、国家や政治とは真反対にあるもの。

―そういった自然発生的な空間のルールや人の動きこそが、「グルーヴ」のお話にもつながってくるわけですね。

セバスチャン:そうです。ただしそれは「組織化」とは対極のもので、自然な成り行きを顕在化したものなんです。まさにそれがパブリックでありプライベートでもあるクラブの倫理につながります。思想やアイデンティティーでもなく、その場限りのルールにもとづく、非常に流動的かつ生産的なものです。国家や政治とは真反対にあると言ってもいいかもしれないですね。

タンツハウスnrw(ドイツ / デュッセルドルフ)での『 x / groove space』、2016年6月世界初演  ©Katja Illner
タンツハウスnrw(ドイツ / デュッセルドルフ)での『 x / groove space』、2016年6月世界初演 ©Katja Illner

―適度にコントロールしつつ、即興性を残しながら、パフォーマンスを展開していくプロセスには、新しい「身体の政治学」とも呼べるような、未来的な展望を感じます。

セバスチャン:すべての展開は流動的ですから、どこに導いていくのか、自分はどんな立場でどの程度関わるか、という無言の倫理がその都度立ち現れます。お互いの接触や合図などをどのくらい行うかということは、あくまで個人にゆだねられた流動的なものです。そこからグルーヴが生成され、パフォーマンス全体の空気感を作り上げます。多様な人たちが交錯することに意味があり、選択が多岐にわたり、解釈を限定しないことによって『groove space』が作り出されるんです。

日本のパチンコ屋は、ノイズミュージックよりもアグレッシブ。あの轟音空間でじっと集中する姿に興味を惹かれました。

―『フェスティバル/トーキョー16』で上演される『x / groove space』には、瀬山葉子さん、伊東篤宏さん、岩井優さんといった、かなり個性的なアーティストが参加していますね。

セバスチャン:『groove space』を上演する際、参加してもらうアーティストは要になります。瀬山葉子さんは、動く彫刻を制作しています。これはパフォーマーや鑑賞者にとって、視覚的に影響を及ぼすパートナーとなるはずです。伊東篤宏さんは、蛍光灯の明滅する光で増幅させたノイズ音を発する自作の音具「オプトロン」を使ったサウンドパフォーマンスを行います。

―「オプトロン」の激しいノイズ音がクラブで流れても、普通は踊れないですよね(笑)。だいぶ前ですが、伊東さんとのコラボレーションで、アーティストの山川冬樹さんが、自身の心音やホーメイを使って呼応していたのが印象的でした。伊東さんのオプトロンのパフォーマンスは、視覚的・聴覚的にすごく刺激が強いので、以前、リハーサルで体験したときは、あとで頭痛がひどかったです(笑)。

セバスチャン:でも、刺激とか苦痛というのは、パフォーミングアーツにとってかなり効果的なものだと思っているんです。そもそも、楽しくしなければならない必然性がありますか?(笑)

―(笑)。そりゃ、そうですね。

セバスチャン:今作のリサーチとパフォーマーとの対話のなかで、東京とドイツのノイズミュージックシーンには共通点があるとも感じました。ノイズミュージシャンのライブでは、東京でもドイツでも同じように、観客は爆音の轟くなかで、じっと座って静かに聴いているんです。

その例で言うと、もっとアグレッシブなのが日本のパチンコ屋です。あの轟音にまみれた眩しい空間で、身体ひとつ動かさず、じっと集中しています。このように相反する要素が共存する空間にはとても興味を惹かれます。

セバスチャン・マティアス

―人は徐々に刺激に慣れていく習性を持っていますよね。「ノイズ」が、パフォーマンスの流れに引っかかりを作り、それによって観客や空間のグルーヴにも思わぬ影響を与えそうです。それは、でこぼこ道でつまずきながら歩くとき、普段より身体性を意識するという体験にも似ています。

セバスチャン:池袋駅の構内で、日本人がみんなスイスイと人混みをすり抜けていく技には驚かされました。

日本の都市には刺激や情報が過剰にあふれていますが、その状況を瞬時に察知し、自分の立ち位置を掴むというテクニックが鍛えられていると感じました(笑)。『x / groove space』には、そういった日本の体験も盛り込んだ演出を考えているので、ぜひみなさんに体験してほしいですね。

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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー16』

2016年10月15日(土)~12月11日(日)
会場:東京都 東京芸術劇場、あうるすぽっと、にしすがも創造舎、池袋西口公園、森下スタジオ ほか

『x / groove space』
2016年11月3日(木・祝)~11月6日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
振付・構成:セバスチャン・マティアス

『フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園』
2016年10月15日(土)15:00~20:00
2016年10月16日(日)13:00~18:30
会場:東京都 池袋西口公園
総合ディレクション:プロジェクト FUKUSHIMA! + 山岸清之進

『Woodcutters ― 伐採 ―』
2016年10月21日(金)~10月23日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 プレイハウス
翻案・美術・照明・演出:クリスチャン・ルパ
作:トーマス・ベルンハルト

イデビアン・クルー
『シカク』

2016年10月21日(金)~10月29日(土)
会場:東京都 にしすがも創造舎
振付・演出:井手茂太

パク・グニョン×南山芸術センター
『哀れ、兵士』

2016年10月27日(木)~10月30日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
作・演出:パク・グニョン(劇団コルモッキル)

マレビトの会
『福島を上演する』

2016年11月17日(木)~11月20日(日)
会場:東京都 にしすがも創造舎
作・演出:マレビトの会

ドーレ・ホイヤーに捧ぐ
『人間の激情』『アフェクテ』『エフェクテ』
2016年12月9日(金)~12月11日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
構成・振付:スザンネ・リンケ

アジアシリーズ vol.3 マレーシア特集
公演編
インスタントカフェ・シアターカンパニー
『NADIRAH』

2016年11月11日(金)~11月13日(日)
会場:東京都 にしすがも創造舎
作:アルフィアン・サアット
演出:ジョー・クカサス

公演編
『B.E.D. (Episode 5)』

2016年11月12日(土)~11月13日(日)
会場:東京都 江東区某所
(受付場所:SAKuRA GALLERY)
構成・演出・振付:リー・レンシン

レクチャー編
ASWARA - マレーシア国立芸術文化遺産大学
『BONDINGS』

2016年11月4日(金)~11月6日(日)
会場:東京都 森下スタジオ
コンセプト:BONDINGS クリエイティブチーム
作:スリ・リウ
講師・演出:ウォン・オイミン

レクチャー編
『POLITIKO』

2016年11月8日(火)~11月12日(土)
会場:東京都 森下スタジオ
講師・コンセプト:ムン・カオ

北京発・カルチャーから見る現代中国

FM3
『Buddha Boxing』

2016年12月2日(金)~12月3日(土)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと ホワイエ
演出:FM3

まちなかパフォーマンスシリーズ

『ふくちゃんねる』
2016年10月27日(木)~10月30日(日)
会場:東京都 南池袋公園内 Racines FARM to PARK
作・演出・出演:福田毅

『うたの木』
2016年11月10日(木)~11月13日(日)
会場:東京都 豊島区庁舎 10階 豊島の森
振付:森川弘和、村上渉
音楽:吉田省念
出演:
森川弘和
村上渉
吉田省念

ドキュントメント『となり街の知らない踊り子』
2016年12月1日(木)~12月4日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと ホワイエ
脚本・振付・演出:山本卓卓

チェルフィッチュ
『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』

2016年12月2日(金)~12月5日(月)
会場:東京都 南池袋公園内Racines FARM to PARK
作・演出:岡田利規

プロフィール

セバスチャン・マティアス

ジュリアード学院、ベルリン自由大学で舞踊学を学び、修士号を取得。彼の振付作品はモジュール化された即興システムを元にダンサーたちと創作される。カンプナーゲル、ゾフィーエンゼーレ、ルツェルン劇場、クルベルグ・バレエ等で自ら率いる制作チームとの共同作業を続けている。2012年3月からはハンブルグ大学のポストグラデュエイトプログラム「Versammlung und Teilhabe」より研究助成を受け、『groove space』シリーズのなかで参加的プロセスの拡張を実践、観客も含むメンバーから構成されるリサーチグループと共に自身のアーティスティックリサーチを継続している。2014~2016年はデュッセルドルフのタンツハウスnrwのファクトリーアーティストとして活動中。

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