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手塚るみ子が語る、手塚治虫と冨田勲。本人亡き後に成すべきこと

手塚るみ子が語る、手塚治虫と冨田勲。本人亡き後に成すべきこと

冨田勲『冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:山元翔一

今年5月5日に逝去した冨田勲の未完の遺作『ドクター・コッペリウス』が、11月にBunkamura オーチャードホールで舞台化される。ソリストを務めるのはボーカロイドの「初音ミク」。ホログラムによる「彼女」の立体映像と、新進気鋭のダンサー風間無限、そして渡邊一正の指揮による東京フィルハーモニー交響楽団の演奏がコラボレーションする画期的な内容である。「オーケストラ作曲家」であり、「電子音楽の父」であった冨田勲の追悼公演にふさわしいプログラムと言えるだろう。

そして今回、そのイメージボードに手塚治虫タッチの初音ミクが描かれ大きな話題となっているが、冨田は1960年代半ばに放映された、『ジャングル大帝』や『リボンの騎士』『どろろ』など手塚の初期アニメ作品のサウンドトラックを手がけており、手塚治虫を語るうえで欠かせない存在でもある。初音ミクという二次元のヒロインが、時空を超え手塚と冨田を再び引き合わせた、とも言えるかもしれない。

折しも、手塚作品における冨田のスコアを音源化した『冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集』が、5枚組のCD-BOXという形でリリースされる。そこで今回、手塚治虫の実娘であり、手塚作品を使った斬新なコラボレーション企画を、これまでにも数多く手がけてきた手塚るみ子に話を訊いた。父亡き後、彼女が守り、引き継いできた「手塚イズム」とは?

※手塚の「塚」の字は、正しくは旧字体(塚にヽのある字)となります

きっと、私の父が雲の上で何か作っていて、そのプロジェクトに冨田先生が必要になって呼び寄せたんじゃないかと思っているんです。

―冨田勲さん、初音ミク、そして手塚治虫さんという、異色のコラボが実現した経緯を教えてもらえますか?

手塚:2012年11月23日に、宮沢賢治の文学作品を題材とした冨田先生の『イーハトーヴ交響曲』が、東京オペラシティで上演されたのですが、ソリストを務めたボーカロイドの初音ミクが、アンコールで『リボンの騎士』のサファイアに扮して登場したんです。私はご招待を受けて観に行ったのですが、このことを全く知らされていなくて(笑)。正真正銘のサプライズだったんですね。冨田先生が、初音ミクとのコラボレーションに、多少なりとも父との仕事をオーバーラップされているとお聞きしたことがあったので、初音ミクを通して何か一緒に出来たらいいなと、そのときから思っていました。

―るみ子さんと冨田さんが初めてお会いしたのは、劇場版『ジャングル大帝』(1997年)を制作したときだそうですね。

手塚:もちろん、それ以前から先生のことは存じあげておりましたが、ちゃんとご挨拶したのはそのときが初めてでした。それ以来、家族ぐるみのおつき合いをさせていただいて……それこそ父を亡くした私にとっては、もう一人の父親のよう存在でしたね。

今回の『ドクター・コッペリウス』は、先生にとって集大成的なものになるとは伺っていたんですけど、先生がご存命のときには具体的に何か一緒にやるという話はなかったんです。それで、今年の5月5日に、あのようなことになってしまって……。きっと、私の父が雲の上で何か作っていて、そのプロジェクトに冨田先生が必要になって呼び寄せたんじゃないかと思っているんです。父は何か思いつくと、突然人を電話で呼びつけたりするところありましたから。

手塚るみ子
手塚るみ子

―(笑)。

手塚:実は来年、兵庫県宝塚市にある「手塚治虫記念館」で、初音ミク展を開催する予定なんですね。それは、『ドクター・コッペリウス』とは全く別のところで企画を進めていましたので、今回の「手塚ミク」のお話をいただいたときには、何か運命のようなものを感じました。『ドクター・コッペリウス』という作品を通じて、冨田先生の中にある「手塚イズム」を表現する手段として、我々「手塚プロダクション」が何かしらお手伝いできたらと。

手塚プロダクションが描き下ろした初音ミク
手塚プロダクションが描き下ろした初音ミク

―初音ミクについては、るみ子さんご自身はどのような印象をお持ちでしたか?

手塚:初音ミクという存在は知ってはいたのですが、本当に印象づけられたのは『イーハトーヴ交響曲』のときで。だからどうしても「初音ミク=冨田先生」というイメージです。今回の『ドクター・コッペリウス』のような、ホログラム化したアニメーションを実際のライブ演奏と舞台の上で融合させる試みも、父が生きていたらきっとやりたかっただろうな、と思いますね。

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リリース情報

冨田勲『冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集』
冨田勲
『冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集』(5CD)

2016年11月9日(水)発売
価格:10,800円(税込)
COCX-35885~9

イベント情報

『冨田勲 追悼特別公演 冨田勲×初音ミク「ドクター・コッペリウス」』

2016年11月11日(金)、11月12日(土)全3公演
会場:東京都 渋谷 Bunkamura オーチャードホール
料金:S席10,000円 A席8,500円

プロフィール

手塚るみ子(てづか るみこ)

プランニングプロデューサー。手塚プロダクション取締役。漫画家・手塚治虫の長女として生まれる。大学を卒業後、広告代理店に入社し、セールスプロモーションなどの企画・制作に携わる。父親の死をきっかけに独立し、手塚作品をもとにした企画のプロデュース活動を始める。原宿ラフォーレミュージアムにおける展覧会「私のアトム展」をはじめ、劇場アニメ「ジャングル大帝」の宣伝プロデューサー、また手塚治虫生誕70周年記念トリビュートCD「ATOM KIDS」(ワーナーミュージック)や、朝日放送創立50周年キャンペーン「ガラスの地球を救え」年間イメージソングのプロデュース、最近では『手塚治虫文化祭~キチムシ』を開催するなど、様々なジャンルで幅広い企画制作をプロデュースする。「オサムシに伝えて」(太田出版)「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」(文藝春秋)などの著書がある。また音楽レーベル「MUSIC ROBITA」を設立し、2003年の「鉄腕アトム」生誕にあわせたトリビュートCD「Electric-Brain feat. ASTROBOY」はじめ、手塚作品の音楽企画も制作する。

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