ヒューマンビートボックスの世界大会で数多くの好成績を残し、日本人ビートボクサーとして国内外で注目を集めるSHOW-GO。
北海道でビートボックスに出会い、海外の舞台で「自分らしさ」を探した先にあったのは、日本のルーツをまとい、呼吸のリズムで景色ごと音を鳴らす表現だった。京都に拠点を置き、雅楽とのセッションも重ねながら、彼はビートボックスに日本的な美意識を見出している。
そんなSHOW-GOが今回向き合ったのが、宮城県・気仙沼のサメ漁だ。廃棄されがちなサメ革を活用したオーディオテクニカのポータブルレコードプレーヤー「SHARK BURGER(シャークバーガー)」をめぐる共創プロジェクトを立ち上げた。SHOW-GOはそのプロジェクトのために、オリジナル楽曲“Ocean Voices”とMVを制作した。
気仙沼に足を運び、港や街の音、現場で働く人々の声を、楽曲と映像にどう落とし込んだのか。プロジェクトのテーマ「届かない声を届ける」に込めた解釈とともに、たっぷり語ってもらった。
ビートボックス=土地の原始的な音楽? 「和風」ビートボクサーと呼ばれる理由
─SHOW-GOさんの楽曲には“Zen”や“Japanese”“A LOVESONG FOR KYOTO”といったタイトルが付けられていたり、YouTubeの動画でもご自身の部屋に和風の小物が散りばめられていたりします。日本の伝統や地域ごとの文化に強く興味を持つようになったのは、どんなきっかけだったのでしょうか。
SHOW-GO:僕は北海道出身で、中学2年生のときにYouTubeでビートボックスに出会って、そこからずっと続けています。もともと歴史や寺社仏閣、古代史みたいなものにロマンを感じるタイプではあったんですけど、最初からビートボックスに日本らしさを持ち込もうとしていたわけではなくて。
国内の大会に出るようになって、アジア大会や世界大会で海外のアーティストと会うようになると、服装や雰囲気からその人のルーツや文化がにじみ出ている人がたくさんいて、素直に「かっこいいな」と思ったんです。そこで、自分が一番自分らしくいられるのは、ルーツである日本のものを身につけているときなんだ、と気づきました。和のものを取り入れるようになったきっかけは、そこが大きかったですね。
SHOW-GO(しょうご)
1999年、北海道出身。中学生の頃にYouTubeでビートボックスに出会い、独学で技術を習得する。数々の世界大会で好成績を残し、日本人ビートボクサーとして世界から注目される。口から出したビートボックスの音のみを使った楽曲をはじめとして、作詞作曲、映像やデザインなど制作全てを自身で手がけている。近年はアーティスト活動に力を入れており、ビートボックスにこだわらない抄語(しょうご)名義での音楽活動を開始。現在は京都の町家スタジオから作品を世に放っている。
─特に京都が好きで、北海道から移住されるまでになったのは?
SHOW-GO:高校の修学旅行で京都と奈良に4泊5日滞在して、歴史を学びながら回ったことが大きかったです。そのときの空気や街の雰囲気に、すごく惹かれて。北海道にももちろん歴史はあるんですけど、明治以降に本格的に開拓された土地なので、長く都だった京都とは町のたたずまいがまったく違うんですよね。生まれ育った場所とは別の環境で一度は暮らしてみたい、という思いもあって、「北海道を出るなら京都だろう」と決めて移住しました。
─YouTubeなどを拝見していると、小物や部屋のインテリア、空間づくりも「和」とモダンの融合がとても素敵です。そういった趣味は、創作表現にどんな影響を与えていますか?
SHOW-GO:そもそも僕のなかでは、ビートボックス自体が結構、日本的だなと思うところがあるんです。もちろんルーツはヒップホップで、機械っぽい音を口で真似してラップに乗せる、という手法なんですけど、極端な話、それってどの時代でも理論上はできるじゃないですか。縄文時代でも、もしかしたら似たようなことをやっていたかもしれない(笑)。
そう考えると、土地の原始的な音楽という印象が自分のなかで強くなってきて。生の音で素朴だし、人間から出る音の温かみがある。いまのものにはない古いものの手作り感──ちょっと未完成だったり、整えられすぎていない感じ──に、ビートボックスと近いものを感じるんですよね。
─なるほど。しかも口だけで音を鳴らすわけだから、一度に出せる音色にも限りがある。音数を削ぎ落とし、隙間を活かしたトラックの雰囲気が、日本の「わびさび」の感覚に通じるところがあるのかもしれない。
SHOW-GO:それはめちゃくちゃ感じます。僕、京都でときどき雅楽の演奏者とセッションをしているんですけど、日本の伝統音楽って西洋音楽みたいにビシッと緻密に構成されているというより、外の環境の音に寄り添いながら鳴っていく感覚がある。ビートボックスも呼吸から出てくるものなので、人工の楽器よりも自然に近い気がするんですよね。
─しかもSHOW-GOさんは、ビートボックスに歌やメロディを取り入れる独自のスタイルを確立しています。ビートボックスと和風の要素、さらにメロディや歌を融合させていった経緯は?
SHOW-GO:もともと僕は音楽をまったくやってこなかったんです。楽器も弾けないし、コード進行も分からない。でも昔からメロディや「声」がすごく好きでした。
ビートボックスって、人間離れしたキック(※1)が出たり、ハイハット(※2)やベースっぽい音も出せたりするじゃないですか。そういう音も面白いんですけど、「ビートボックスの中でいちばん映える音って何だろう?」って考えたとき、結局いちばん個性的なのは声だな、と一周回って思ったんですよね。
※1 低音域でリズムの土台を作る打撃音のこと。
※2 リズムの中で細かい刻みを担当する高い「シャッ」や「チッ」という音のこと。
─「声」は、その人だけのオリジナル楽器ともいえますし。
SHOW-GO:だからこそ、自分の曲のなかで「声」を使いたいという気持ちが強くなっていきました。誰もが持っているけど、その人にしかない「声」を、ちゃんと楽曲のなかに入れたいなって。
─SHOW-GOさんのオリジナリティは、そうやって確立されていったのですね。
SHOW-GO:日本的な要素も大きいんですけど、僕の場合は映像のつくり方もかなり大きいと思っています。というのも、ビートボックスの動画を撮るときに、景色をすごく大事にしているんですよね。
ビートボックスの動画って、「白背景の空間でマイク1本」みたいなスタイルが多いと思うんですけど、僕は外に出て山や森、川、あるいはお寺とか、トラックの雰囲気に近い景色、聴いてくれた人が何かを感じてくれそうな景色のなかで撮る、という手法をずっと続けてきました。僕が始めた当時は、周りにそういう発想でつくっている人がほとんどいなかったので、音だけじゃなく映像も含めて「面白い」と言ってくれる人が増えた感覚はありますね。
「気仙沼で獲れたサメが、遠く離れた場所で『音』になる」——SHARK BURGERが届ける「声」
SHOW-GOは今回、サメ革を利用した「SHARK BURGER」を制作するプロジェクトへオリジナル楽曲“Ocean Voices”を寄せた。宮城県気仙沼の伝統産業であるサメ漁と、オーディオテクニカが手を取り合い、生まれたプロジェクトだ。
そもそもオーディオテクニカはこれまでも、日本各地の地域産業や伝統技法を製品づくりに取り入れてきた。例えば福井県の越前漆と蒔絵を用いたヘッドホン、職人の手作業による七宝風装飾を施したMCカートリッジ……。そうして失われつつある文化や産業の現状を目の当たりにしたという。それらに光を当てながら、アナログレコードの魅力を次世代へとつなげたい——「SHARK BURGER」のプロジェクトは、そうした思いから端を発している。
SHOW-GOはそんなプロジェクトの「届かない声を届ける」というテーマにも共感したと語った。それはどういうことだろう? あらためて聞いていこう。
─今回、「SHARK BURGER」を制作するプロジェクトへ、オリジナル楽曲“Ocean Voices”を寄せられました。そのきっかけは?
SHOW-GO:1〜2年くらい前にご連絡をいただいたのがきっかけです。お話を聞いた瞬間にイメージが湧いたというか、「面白そうだな」と思って。それで「ぜひやりたいです」とお返事しました。
─どんなところに面白さを感じたのでしょうか。
SHOW-GO:自分のなかでは、意外と「これまでやってこなかったかたちだな」と思ったんですよね。曲をつくったり、外で撮影したりはずっと一人でやってきたので、誰かと一緒につくる、しかも「モノ」が絡むプロジェクトはあまり経験がなかった。
そのうえで「気仙沼で撮る」と聞いて、これまで自分がやってきた表現に近いところに、外から声がかかった感覚があったんです。自分が積み重ねてきたことを、もう一段深くできるいい機会になるなと思いましたし、気仙沼は前から行ってみたい、滞在してみたい気持ちもあったので、「ご縁があるな」と感じました。
─実物の「SHARK BURGER」を見たとき、どんな感想を持ちましたか?
SHOW-GO:まず率直に「面白いな」と思いました。制作を進める中で、レコードの仕組みにもあらためて感銘を受けたんですよね。レコードって音の振動を溝に刻んで、それを針で再生するわけじゃないですか。突き詰めると、音って全部「振動」なんだなって。口や喉の振動で鳴らすビートボックスもそうだし、街の音も海の音も、結局は全部振動でできている。
そこにサメの素材が使われていると、その素材もまた振動して、それを通って音が耳に届く。気仙沼で獲れたサメが、遠く離れた場所でも別のかたちで「音」になって届くというか……言葉にしづらいんですけど(笑)、そういうロマンがあるなと思いました。
気仙沼で魚市場を見学するSHOW-GO
─こういうプロジェクトを始めたオーディオテクニカについては、どんな印象がありますか?
SHOW-GO:一見つながっていなさそうなものを「つなげる」ことにも、僕はロマンを感じるんですよね。サメ漁という伝統的な一次産業と、オーディオテクニカさんがつくる現代のプロダクトを結びつける発想がすごく面白い。遠く見えるもの同士でも、根っこの部分ではちゃんとつながっている、という感覚があるというか。
僕自身も、ビートボックスと日本的なものって一見遠いけど、根底ではつながっていると思いながら組み合わせてきました。だからこういう取り組みは大好きですし、企業として動いて実現していく姿勢にも感動しますね。
気仙沼伝統のサメ漁を見て感じた「美しさ」。“Ocean Voices”MVはいつもと違うつくり方で
─気仙沼伝統のサメ漁については、もともとご存じでしたか?
SHOW-GO:サメ漁が盛ん、というのは漠然とですが知っていました。でもサメといえばフカヒレ、みたいなイメージしかなくて。今回オーディオテクニカさんからお話をいただいてから調べて、肉として食べられていたり、いろんな用途に使われていたりすることを初めて知りました。企画をいただくまでは、そこまでわかっていなかったです。
情報がこれだけ可視化された時代でも、見えているのって本当に表面だけだと思うんですよね。地域ごとに、表に出てこないこと、知られていないことがたくさんある。今回は気仙沼に行って、あらためてそのことを強く感じました。
そういう意味でも、このプロジェクトの「届かない声を届ける」というテーマにはすごく共感しました。「届かない声」はたしかにあるし、それを「届ける」といっても簡単ではないんですけど……。少しでも、かすかでもいいから、そういう声を感じられるところに自分のビートボックスがつながっていけばいいな、という気持ちはありましたね。
─「届かない声を届ける」というテーマの、どんなところに共感しましたか?
SHOW-GO:気仙沼の漁港も、サメ漁のこともですけど、外から見ているだけだと、中で何をしているかってわからないじゃないですか。今回、実際に中に入って作業しているところや加工しているところを見せてもらって、そのことをあらためて痛感しました。言い方が合っているか分からないですけど……僕はあの加工の現場を「美しい」と感じたんですよね。
もちろん、魚や生き物が血を流している場面だけを見ればショックはある。でも、それが生きることだし、自然ってそういうものだと思うんです。一次産業って、命をいただいて、それを自分たちの生活にしていく場じゃないですか。そこで働いている人たちの迫力やエネルギーも含めて、すごく格好いいなと思いました。
─なるほど。
SHOW-GO:しかも、一つひとつの工程が本当に丁寧で。軟骨は軟骨、肉は肉、皮は皮、みたいにきちんと仕分けして、工程も細かく分かれている。「命を扱う」ってこういうことなんだな、と実感しました。
いただいた命を残さず使う姿勢を目の前で見て、これは当たり前じゃないし、そこには努力がある。だからこそ、現場で積み重ねられてきた思いや、これまで届かなかった声を、音楽の力で少しでも届けていくことには大きな意義があるな、と感じました。
─そういったことを踏まえ、“Ocean Voices”はどのように制作していきましたか?
SHOW-GO:ミュージックビデオを撮る前に、一度ロケハンを兼ねて気仙沼に滞在させてもらって、そこから曲作りを始めました。普段のMVは、ほとんどワンカットというかカット割りなしで、一つの場所にカメラを固定して僕がパフォーマンスすることが多いんです。“Ocean Voices”も当初はそういう撮り方をするつもりでした。
でも実際に現地に行って、サメの工場を見たり、港や街の景色を見たりしていくうちに、「ここから一箇所に絞って撮る」のはもったいないなと思って。それだと街の良さやサメ産業のことが伝わりきらないだろうな、と。だったら撮りたい場所へどんどん行って、たくさん撮ろうと決めたんです。そこから映像のイメージに合わせて、楽曲も作っていきました。
─だから1曲のなかで、さまざまな展開があるのですね。
SHOW-GO:そうなんです。静かなセクションがあったり、ビートがぐわーっと押し寄せてくるセクションがあったり、映像に合わせてどんどん展開していく曲になりました。制作前に気仙沼に滞在できたのは、やっぱりすごく大きかったと思いますね。
現地で感じた「肌感覚」——「小さな変化」のサイクルを、自分のビートボックスから
─音楽をはじめとする文化が、社会に対してできるのは、どんなことだと考えていますか?
SHOW-GO:僕自身、そこまで大きい力があるとは思っていないです。でも、動き続けること、変わっていくことが大事だと思っています。
今回の気仙沼も、直接的に何かをするというよりは、僕のビートボックスと気仙沼の景色で撮った映像を見て音楽を聴いてもらって、「気仙沼に行ってみたいな」とか「サメ産業や気仙沼について調べてみようかな」と思う人が、ほんの少しでも増えたらいいな、という気持ちなんです。
見てくれた全員じゃなくてもいい。何人かでも意識が変わったり、行動がちょっと変わったりする。そういう小さな変化が積み重なって、少しずつ変わっていくんだと思うし、復興もそうやって進んでいくしかない。そういう小さなきっかけのひとつになれたら、本当に嬉しいですね。
─今回のプロジェクトを経て、これからどんなことに取り組んでいきたいですか?
SHOW-GO:気仙沼にはまた行きたいですし、他のいろいろな地域にも行ってみたい、という気持ちがさらに強くなりました。たとえば九州。父親が九州出身なので、自分のルーツという意味でも気になっています。あと最近、焼き物とか民芸運動にハマっているというか、もともと好きなんですけど、そういうものも現地でちゃんと見たいな、という気持ちが強いです。温泉街でのんびり過ごす時間も好きなので、温泉街でビートボックスをつくったり、映像を撮ったりしてみたいですね。
とにかく、自分の知らないことって本当にたくさんあるし、実際に行ってみなければわからないことだらけだな、と今回のプロジェクトを通してあらためて強く感じました。僕は音楽をやっていて、感じたことをかたちにする手段を幸い持っているので、それぞれの場所でもらったインスピレーションをアウトプットして、世の中に発信できたらいいなと。ほんの小さなサイクルでも何か生み出せたら、それはすごく幸せなことですよね。
- 商品情報
-
オーディオテクニカ「SHARK BURGER(シャークバーガー)」
レコードを挟むだけでどこでも気軽にアナログサウンドを楽しめるオーディオテクニカの「SOUND BURGER(サウンドバーガー)」と、江戸時代から続く宮城県気仙沼の伝統産業、「サメ漁」との初の共創プロジェクトにより、気仙沼産サメ革を採用したデザインのポータブルレコードプレーヤー。
応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」にて先行販売中。
※5月15日(金)終了予定。販売状況により予定より早く終了する場合があります。
- プロフィール
-
- SHOW-GO (しょうご)
-
1999年、北海道出身。中学生の頃にYouTubeでビートボックスに出会い、独学で技術を習得する。数々の世界大会で好成績を残し、日本人ビートボクサーとして世界から注目される。口から出したビートボックスの音のみを使った楽曲をはじめとして、作詞作曲、映像やデザインなど制作全てを自身で手がけている。近年はアーティスト活動に力を入れており、ビートボックスにこだわらない抄語(しょうご)名義での音楽活動を開始。現在は京都の町家スタジオから作品を世に放っている。
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-