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ピノキオピー、「人間の不完全さを許そう」とネット社会に訴える

ピノキオピー、「人間の不完全さを許そう」とネット社会に訴える

ピノキオピー『HUMAN』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:岩本良介 編集:山元翔一

完璧すぎるものって、ある種の厳しさがあるんです。優しくないんですよね。「不完全なものをもっと許そう」っていうのはすごく思います。

―そういう話で言うと、「SNSも楽しいけど、やっぱり直接会って話した方が何倍も情報量あるよね」とか、「打ち込みの音楽もいいけど、やっぱり生演奏の熱量は替えがたいよね」とか、今年ってそういう「人間回帰」みたいなムードがあった気がします。

ピノキオピー『HUMAN』ジャケット
ピノキオピー『HUMAN』ジャケット(Amazonで見る

ピノキオピー:確かに。今年、「人間」被りが多いんですよ。比較するのは恐縮ですけど、RADWIMPSの新作は「人間開花」じゃないですか? あとは、Lady GaGaの新作のキャッチコピーが「人間回帰」だったり。なんか、人間ブームだなって(笑)。

―「HUMAN」というタイトルの背景に、そういう時代のムードも関係していたと言えますか?

ピノキオピー:SNSの文字上では完璧な姿を演じられるし、音楽でも打ち込みだと完璧な演奏が作れるわけじゃないですか? だから、今って完璧なものが溢れすぎだと思うんですよね。でも、完璧すぎるものって、ある種の厳しさがあるんです。優しくないんですよね。

ピノキオピー

ピノキオピー:「不完全なものをもうちょっと許そうよ」ってすごく思います。今って誰かが何か失敗して、叩いてOKという空気になったら、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」って感じで重箱の隅を突くように叩きがちじゃないですか? 小さなほつれを大きなほつれになるまで突くって、本当に怖いですよね。そのほつれは自分の中にもあるものかもしれないのに。ネット上では完璧を演じられるから、そういうふうに自分のことを棚に上げて他人を責めちゃうのかなって。でも、「人間なんだから完璧なわけねえじゃん」って思うんですよね。

―その考えって、具体的な曲に込められていますか?

ピノキオピー:“すきなことだけでいいです”はそうですね。この曲は、YouTuberの人が「好きなことで、生きていく」って言ったときに、それをできるのは一握りの人間だけだし、「そんなのできるわけないじゃん」って反射的に否定したくなると思うんですけど。でも、そうやって否定する人だって本当は好きなことで生きたいという気持ち自体は持っているはずなんですよね。その気持ちと向き合うことは悪いことじゃないと思うんです。

叩きやすいものを叩くのって、しょうもないなって思うんです。別にYouTuberにはあの人たちなりの役割があるし、自分を脅かす存在だったら別ですけど、敵でもないわけですよね。ならそこまでやんややんや言わなくても……と思います。その状況に対して、初音ミクが水を差しているのが面白いかなって思って作った曲ですね。

ボカロと人間が同じ目線で一緒に肩を組んで歌うみたいなイメージが理想的。

―最初に「人間の声もボカロの声もごちゃまぜにしたい」っていう話がありましたけど、決して文明を捨て去ることが人間らしさを取り戻すってことではないわけで、だからこそ、人間とボカロが水を差し合っている『HUMAN』の温度感はすごくいいなって思います。

ピノキオピー:ボカロって「人間じゃないものが歌っているからこその良さ」ってよく言われるじゃないですか? でも、それって人間より劣っているものに対して、愛でる感じに近いというか、人間の上から目線なんですよね。

そこを一段降りて、ボカロと人間が同じ目線で一緒に肩を組んで歌うみたいなイメージが理想的だなって思うんです。発想としては、VRもそこに近いというか、あれって仮想現実に人間が入っていくわけじゃないですか? 切り離されたものじゃなくて、「同じ次元に身を置く」っていうのが、今の時代のテーマなんじゃないかなって思うんです。

ピノキオピー

―確かに、人工知能の暴走とかについても、人間が上から目線で「教えてやる」みたいな構図だから、鬱屈がたまって暴走しちゃうのかもしれないですよね。

ピノキオピー:そうですね。なので、『HUMAN』はすごく平和的な作品だと思っています。最近いろんなことが厳し過ぎるから、なるべく優しい作品にしたかったんですよね。

―ちょっと話を飛躍させると、「ボカロだから聴く / 聴かない」みたいな話も、そうじゃなくて、どんな音楽が好きな人も、「同じ次元に身を置く」っていう感覚が広まればいいですよね。

ピノキオピー:音楽は垣根なく聴いてほしいですよね。「ボカロだから聴かない」も「ボカロ以外は聴かない」も、どっちももったいないですから。そこで垣根なく聴くきっかけとしてピノキオピーが存在できたらいいなと思います。

ピノキオピー

―垣根を取り払って混ざり合うことってすごく大事で、そこから生まれる豊かさって絶対にあると思います。なので、いずれはピノさんのルーツの中にあるパンクもフォークもDJも全部混ぜたようなイベントを観てみたいです。

ピノキオピー:それこそ、ボカロ初期ってそんな感じだったんですよね。エレクトロの人もいれば、メタラーもいれば、ノイズの人もいたり、でもみんな優しかったんです。バラバラな人たちが一緒の場所に集まって、垣根のない形でやれたらそれが一番いいと思いますね。

―今年のニコ動にはその空気が戻ってきていると思うし、一回失敗を経験した分、それを踏まえて、また次のステージに進めるのかなと。

ピノキオピー:経験はしましたけど、人間って弱いのでまた同じ歴史を繰り返すんだろうなとも思っています。なので、僕がどうこうするというよりは、みんながマイペースに自分が楽しいと思うことをやって、それが少しでも面白い方向にいけばいいと思いますね。

ピノキオピー

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リリース情報

ピノキオピー『HUMAN』初回限定盤
ピノキオピー
『HUMAN』初回限定盤(2CD)

2016年11月23日(水・祝)発売
価格:3,300円(税込)
UMA-9086/7

[CD1]
1. ニッポンの夜明け
2. 動物のすべて
3. 頓珍漢の宴
4. Cryptid
5. デラシネ
6. 祭りだヘイカモン
7. 羊たちの沈黙
8. China Girl
9. 空想しょうもない日々
10. ウソラセラ
11. すきなことだけでいいです
12. きみも悪い人でよかった
13. SAYONARA HUMAN
[CD2]
1. 1year
2. はじめまして地球人さん -HUMAN ver.-
3. からっぽのまにまに -HUMAN ver.-
4. 前夜祭のデルトロ
5. 腐れ外道とチョコレゐト -HUMAN ver.-
6. ありふれたせかいせいふく-HUMAN ver.-
7. hanauta

ピノキオピー
『HUMAN』通常盤(CD)

2016年11月23日(水・祝)発売
価格:2,500円(税込)
UMA-1086

1. ニッポンの夜明け
2. 動物のすべて
3. 頓珍漢の宴
4. Cryptid
5. デラシネ
6. 祭りだヘイカモン
7. 羊たちの沈黙
8. China Girl
9. 空想しょうもない日々
10. ウソラセラ
11. すきなことだけでいいです
12. きみも悪い人でよかった
13. SAYONARA HUMAN

イベント情報

ピノキオピー『HUMAN』Release Tour -人間の集まり-

2017年2月25日(土)
会場:京都府 KYOTO VOXhall

2017年2月26日(日)
会場:愛知県 名古屋 CLUB JB'S

2017年3月5日(日)
会場:広島県 TBA

2017年3月19日(日)
会場:福岡県 club selecta

2017年3月25日(土)
会場:東京都 渋谷 club asia

プロフィール

ピノキオピー
ピノキオピー

2009年より動画共有サイトにボーカロイドを用いた楽曲の発表し、ピノキオピーとして活動開始。以降も精力的に楽曲を発表しつつ、ここ数年はライヴ活動に尽力している。作風は、フロアを意識したシリアスグルーヴィーテクノミュージックやお祭りどんちゃん盆踊り型ダンスミュージックから、ノスタルジックなフォークトロニカなど幅広いサウンドをエレクトロ・パンク精神で発信するサウンドクリエイター。ライブにおいては、2014年より今までのパフォーマンス形態からリニューアルを図り、笑って歌って踊って楽しめるパフォーマンスを提供している。2016年現在、新アルバム『HUMAN』を引っさげた、全国ツアーを控えている。

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