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人生を少し輝かせる、下司尚実の演劇とスズキタカユキの服の話

人生を少し輝かせる、下司尚実の演劇とスズキタカユキの服の話

シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.9 泥棒対策ライト◎11号機設置公演『ドラマティック横丁』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:野村由芽、宮原朋之

私が感じるネガティブな感覚は、他の人も体験していることだってふと気づいた時に、この感覚は信頼していいものなんだと思えた。(下司)

―それぞれのクリエイションについて伺っていきたいのですが、スズキさんが服を作るときに大切にしていることってなんでしょう?

スズキ:基本的には、着たり、見たり、触ったりすることが、何かしらのきっかけになればいいなと思っています。例えばある人が目覚めて、僕の服を選ぶことで、ちょっと元気になって、優しくなれるとか。救いのような、お守りみたいなものかもしれませんね。

舞台衣装に関して言えば、俳優の方は舞台上では1人で戦っているようなものですから、彼ら / 彼女らのいちばん近くにいる服が助けになって、見た目だけでなく中身もふっと解放するようなものであれば、と考えています。

スズキタカユキ

下司:私の場合は……前回スズキさんとご一緒した『一寸先ワルツ』の話からしますね。人生って、この先に何が起こるか本当にわからないものだから、踊るくらいの余裕があればいいな、でもそう簡単にはいかなくて四苦八苦していくしかないなあ、みたいなことを考えてタイトルをつけたんです。

今日は頑張りたいからこの服を着る、今日はちょっと頑張ったからお酒を呑むことを許す、みたいに自分をなんとかコントロールしながら進めていくけれど、まあ凹むことはしょっちゅうあるし、夜中に突然イヤな記憶がフラッシュバックしてウゴウゴしたりする。

下司尚実

スズキ:(笑)。

下司:でも、それって私だけじゃなくて他の人も思ったり体験していることだってふと気づいた時に、私が感じることは他の誰かと共有できる、信頼できる感覚なんだと思えたんですね。それ以降、作品を作るたびにやっているのが、個々の俳優への「聞き取り」なんです。

トップミュージシャンや有名アーティストでなくても、みんなそれぞれに紆余曲折のドラマティックな人生を生きている。(下司)

―俳優の方への「聞き取り」とはどんなものでしょうか?

下司:『ドラマティック横丁』の初演では、最初に「いちばん古い記憶はなんですか?」と尋ねました。ある人は、お母さんの「お茶飲む?」って声だったと言うし、またある人は、大きな宝石の付いた指輪のかたちをした飴をお姉ちゃんが買ってきてくれたことを嬉しい記憶として覚えていたという。そんな記憶の肌触りをもとにシーンを作っていったりします。

左から:スズキタカユキ、下司尚実

下司:あと『自分研究ワークショップ』という催しをたまに開いて、その最後に必ず「自分が変わった瞬間」について話を聞くんです。「小さいことでいいから、変わったと感じた瞬間を話してください」という問いかけをして。

例えば「先生として働けるなら結婚しなくてもいい」と思っていた女性の教師の方は、他の教師の方から「あなたは結婚をするともっといい先生になれる気がするよ」と言われたそうなんです。その時「そういう見方もあるんだ!」と思ったそうで、その女性はその後ご縁があって結婚なさったそうなんです。そういう話を聞くたびに、トップミュージシャンや有名アーティストでなくても、みんなそれぞれに紆余曲折のドラマティックな人生を生きていると感じるんです。

『ドラマティック横丁』 撮影:buu otsuka
『ドラマティック横丁』 撮影:buu otsuka

―ああ、それで『ドラマティック横丁』なんですね。

スズキ:いい話だね。

下司:泥棒対策ライトでやっていることは、スズキさんの作った服が着る人の救いやお守りになるってこととすごく通じるところがあると思うんですよね。

『一寸先ワルツ』 撮影:buu otsuka
『一寸先ワルツ』 撮影:buu otsuka

スズキ:当たり前ですけど、服って人が着ないと完成されないんですよね。作品としての必然性がある衣装は大事だけれど、その人が「う~ん……」と思う服を強いても、絶対にやらされている感が出ちゃうでしょう。やっぱりその人に心から気に入ってもらえる服を作りたいです。

本人の好みとか、何を考えてるのかがすごく気になるので、舞台の衣装を手がける場合、僕はよく役者さんの稽古着や普段着を注意して見てます。そこには個々人の感覚や大切にしていることが表れるから。だから僕が提案する服は、着る人を前提にしています。

スズキタカユキ

―ある役のために衣装を作るというより、俳優個人のために服を作るということですか?

スズキ:着る本人が心から喜んでもらえるもの。それが大前提ですね。でも服には記号的な側面も強いから、作品が提示したい雰囲気で、時代劇風とか未来風とか、そういう枠組みを想起させる記号を当てはめつつ、個々人に合うものを作る、っていう順番で作るときもあります。

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イベント情報

泥棒対策ライト◎11号機設置公演『ドラマティック横丁』
シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.9
泥棒対策ライト◎11号機設置公演『ドラマティック横丁』

2016年12月22日(木)~12月24日(土)全3公演
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム
作・演出・振付:下司尚実
出演:
佐々木富貴子
鈴木美奈子
傳川光留
長尾純子
丸山和彰
若松力
渡辺芳博
下司尚実
料金:一般3,500円 U24チケット2,500円 小・中・高校生1,000円 友の会会員割引3,000円 せたがやアーツカード会員割引3,200円 未就学児500円
※チケット詳細は公式サイトまで
※12月23日終演後はスズキタカユキがゲストのポストトークあり

プロフィール

下司尚実(しもつかさ なおみ)

振付家・演出家・ダンサー。自由形ユニット「泥棒対策ライト」主宰。個性を活かしたぬくもりのある時間創りを得意とする。振付・演出助手・出演での参加作品に、小野寺修二『空白に落ちた男』、NODA・MAP『エッグ』、『逆鱗』、野田秀樹演出オペラ『フィガロの結婚』、近藤良平『山羊ボー走』、康本雅子『絶交わる子、ポンッ』ほか多数。彩の国さいたま芸術劇場日本昔ばなしのダンス『いっすんぼうし』では演出を手がけた。ダンス、芝居などジャンルを問わず幅広く活動している。

スズキタカユキ

1975年愛知生まれ。東京造形大学在学中に友人と開いた展示会をきっかけに映画、ダンス、ミュージシャンなどの衣装を手掛けるようになる。2002-03A/Wから「suzuki takayuki」として自身ブランドを立ち上げる。舞台衣装なども数多く手がけ、自身も現代サーカスグループの「仕立て屋のサーカス」で、金沢21世紀美術館など国内外で多数の公演を行っている。次回は2017年1月に新宿 LUMINE0にて公演を予定している。

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