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感覚ピエロと高野修平に学ぶ、音楽とブランド広告の幸せな関係性

感覚ピエロと高野修平に学ぶ、音楽とブランド広告の幸せな関係性

トライバルメディアハウス
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:岩本良介 編集:矢島由佳子

大事なのは、世界観の並列。どちらにとっても「たったひとつのビデオ」となることで価値が生まれる。(高野)

―曲作りの段階で、高野さんや立命館大学側はどのくらい関わっているのですか?

高野:曲作りには口出しすべきではないと思っていたので、コンセプトとメッセージだけお渡しして、自由にお願いします、と。立命館大学色もいりません、と言いました。ただし、「聴いた人が前を向けるような楽曲にしてください」とだけはお願いしました。

思ったよりも早くデモが送られてきたのですが、その時点でもうなにも言うことがなかったです。「こういう歌を、僕たちは求めていました」って。歌詞のなかの、<等身大超えて>という箇所とか、立命館大学の「Beyond Borders」とシンクロしてるんですよ。意図的だったのかどうかわからないけど、我々としては「やった!」という感じでした。

横山:そこはもう、わかる人にだけわかってもらえたらと思ってあえて入れました(笑)。

横山直弘

秋月琢登

―立命館大学サイドからも、特にリクエストや注文はなく?

高野:そこも正直すごいなと思ったのですが、ほとんどなかったんです。ただ、ミュージックビデオに関しては、感覚ピエロの映像作品であり、すべての受験生を応援するという根幹がありつつも、立命館大学のブランディング施策でもあるわけですから、クリエイティブディレクターとして、そのバランスの取り方にはかなり気を使いました。

随所に立命館大学の建物が映ったりしますが、立命館大学で撮ってほしいというのは、感覚ピエロと太田監督へのオーダーで。でも、太田監督がやりたいこと、細かいカットへのこだわり、意思やメッセージもきちんと伝わらないと意味がありません。大変な部分もあったと思いますが、本当に素晴らしい作品を作っていただいたと思っています。

―歌では「立命館大学色」を一切出さなかったものの、映像では、ブランドを伝えることの工夫を凝らされたんですね。

高野:大事なのは、世界観の並列だと思っていて。立命館大学のためのビデオでもなく、感覚ピエロのためのビデオでもない。どちらにとっても「たったひとつのビデオ」となることで価値が生まれるのだと思います。

横山:感覚ピエロのほとんどの作品で、僕と同じ立命館大学出身の太田タイキを起用していて。僕らのことを最も間近で見てくれている人のひとりだからこそ、抜き取れる僕らの表情もありますし、“拝啓、いつかの君へ”も“等身大アンバランス”も、彼が僕らの魅力をうまいこと引き出してくれているんじゃないかなと思います。

今回でいうと、憎しみを込めるシーン……美容師の男の子がマネキンを叩き壊すシーンや、就職活動中の学生が書類をバーっとぶちまけるシーンでの、役者さんの表情の抜き方とかが絶妙なんですよね。なにかを成し遂げていくときって、必ず苦悩や葛藤もあると思うのですが、その瞬間もちゃんと捉えてくれている。

賛否両論入り混じりながらバズったのは、僕らとしても大成功だったんじゃないかと思っています。(秋月)

―さきほど「リスクも大きかった」というお話がありましたが、Twitterのプロモトレンドで新曲解禁という仕掛けにおいて、どういったリスクを想定されていたのでしょうか?

高野:プロモトレンドというのは、全Twitterユーザーに無作為に届けられるわけですし、しかも今回は音楽なので、賛否含めていろいろな声が来ると思っていました。たとえば、「この時期に受験生でTwitterなんて見てるやつはいない」とか。

もちろん、そういった声も受け止めつつ、去年も「#がんばれ受験生」を実施しているなかで「たしかに伝わった」「勇気をもらえた」という声は届いていましたので、去年の経験も踏まえ、予想し得る内容は事前にリストアップして立命館大学側と感覚ピエロ側には伝えました。

実際は思ったよりも少なかったし、こちらの想定を超えるようなクレームもなかったです。一方で、僕らの想定を遥かに超えて、“等身大アンバランス”のミュージックビデオは24時間で数百万回再生され、ポジティブな感想が多く寄せられました。

秋月:なにより、一番切ないのは「無風」だと思うんです。そりゃ100人いて100人が満足してくれたらいいですけど、そんなことはまずないですからね。一部の賛同者だけで盛り上がるのではなく、賛否両論入り混じりながらバズったのは、僕らとしても大成功だったんじゃないかと思っています。

左から:秋月琢登、横山直弘、高野修平

高野:Twitterだと、可視化できちゃう分、人はどうしてもネガティブな意見に目が行きがちですけど、ちゃんとポジティブな面を見ていかなければと思うんです。少なくとも、当初の願いどおり、勇気をもらえたり、前を向けたり、頑張ろうと感じてくれた方々がたくさんいて、「応援歌」を届けることができたかなと思っています。なかには「こんな面白い試みをしている立命館大学、受けてみようかな」みたいな声もありました。

横山:当日は、僕もTwitterで受験生に向けて、「がんばれ」っていうメッセージを投げかけてみたんですけど、「今、いろいろ悩んでいたんですけど、この曲を聴いて少し気持ちが前向きになりました」とか、「受験で自信なかったけど、頑張ってきます!」みたいなリプライをたくさんもらえて。僕らの伝えたかったことが、伝えるべき人のところにちゃんと届けられたし、リアクションももらえたのは、本当にやってよかったなと思いました。

高野:今回、受験生の「後輩」にあたる層から、「先輩、頑張ってください」みたいなエールを投げかけている人がすごく多かったんです。去年は先輩たちからのエールのほうが多かったのですが、それはやはり、感覚ピエロのファンがたくさん見ていてくれたからなのかなと。

ロジカルやクリエイティブを「美しい」と思える文脈で創造した上で、心が動く物語を作れるかどうかが大切。(高野)

―これまで高野さんは、ソーシャルメディアと音楽を融合させることについての本や、音楽マーケティングについての本などを執筆してこられました。最初の著書から5年ほど経ちますが、当時と状況はどのように変わってきたと思いますか?

高野:サブスクリプションも始まり、音楽の届け方はいろいろ変わってきていますが、届け方に関してはまだまだ「変化ができる」と思っています。だからこそ、感覚ピエロのようなスタンスを持つバンドは貴重で。またこういった機会を、感覚ピエロと作っていきたいです。

―企業のあり方や宣伝方法に関しては、なにか変化を実感していますか?

高野:多くの企業さんが、エンターテイメントの力を信じていると思います。ただ、CMタイアップだけではなくて、他にもやり方はあるんじゃないか、やってみたいと思いつつも、具体的な手法としてはわからない、ということをよく相談されます。そういうところに、Modern Age/モダンエイジとして僕らがなにかしらの価値を提供できたらいいなと。

僕らはCMタイアップのようなこともできますし、その一方で今回のようなある種の飛び道具を企画することも可能です。大切なのは、手法やメディアありきではなく、ブランド側にとってもアーティスト側にとっても、今の時代にもっと届く、伝わるやり方を考えることだと思っています。

―Twitterを含め、SNSの力はどのように変化したと見ていますか?

高野:ソーシャルメディアが普及した結果、企業もアーティストも、ある一定の使い方の型が決まってきたと思います。個人的には、もっといろいろな活かし方があると思うんです。今回のプロモトレンドもそうですし、THE NOVEMBERSの企画(音楽ビジネスには何が足りない? 高野修平×THE NOVEMBERS)や、Aureoleでやったこと(インディーズでもやればできる。Aureoleがタワレコをジャック)もそうですが、ブランドであれ、アーティストであれ、まだまだTwitterもSNSも含めて届け方はたくさん眠っていると思いますし、開発できると思います。

―アイデア次第、ということですね。

高野:アイデアというと「一発ビッグアイデア」みたいになりそうですが、それも確かに必要な反面、ロジカルな要素も当然必要なわけで。ロジカルやクリエイティブを「美しい」と思える文脈で創造した上で、心が動く物語を作れるかどうかが大切だと思います。

今回のように感覚ピエロというロックバンドと一緒にできたことは、すごく幸せなことでした。これからも音楽やマーケティングを通して、人生を変える出会いやきっかけを作っていきたいです。僕は音楽で何度も人生を変えてもらいましたから。

左から:高野修平、横山直弘、秋月琢登

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リリース情報

感覚ピエロ『等身大アンバランス』
感覚ピエロ
『等身大アンバランス』(CD)

2017年2月22日(水)発売
価格:1,944円(税込)
JIJI-0009

1. 等身大アンバランス
2. 加速エモーション
3. CCC
4. TELL ME WHY
5. チェシャ

イベント情報

『感覚ピエロ ワンマンツアー2017』

2017年6月3日(土)
会場:福岡県 Live House CB

2017年6月4日(日)
会場:岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM

2017年6月11日(日)
会場:北海道 札幌 Sound lab mole

2017年6月23日(金)
会場:東京都 お台場 Zepp DiverCity

2017年6月24日(土)
会場:愛知県 Zepp Nagoya

2017年6月30日(金)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside

プロフィール

高野修平(たかの しゅうへい)

エンターテイメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」レーベルヘッド。コミュニケーションデザイナー / クリエイティブディレクター。音楽を中心にエンターテイメント業界へのマーケティングを支援しつつ、ブランドとエンターテイメントを掛け合わせるコミュニケーションデザインが専門領域。日本で初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』を執筆。メディア出演、講演、寄稿など多数。2014年4月18日に3冊目となる『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』を上梓。また、THE NOVEMBERSのコミュニケーションデザイン、クリエイティブディレクターも担当している。M-ON番組審議会有識者委員。尚美学園大学非常勤講師。

感覚ピエロ
感覚ピエロ(かんかくぴえろ)

2013年7月大阪にて結成。結成直後、自主レーベル&マネジメント「JIJI / JIJI RECORDS」(Just Imagine. Just Idea.)を設立。確信的に中毒性の高い楽曲と圧巻のライブパフォーマンス、驚異的な活動スピードを持ちながらも、どこにも属さずにこれまでのすべてをメンバーの自主プロデュースで活動してきた感覚ピエロ。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』『RADIO CRAZY』などの大型フェスにも数多く出演しており、2016年6月にリリースされた2ndミニアルバム『不可能可能化』収録曲“拝啓、いつかの君へ”は宮藤官九郎が脚本を務める日曜ドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌に抜てきされる。現在もなお、「メジャー」「インディー」問わず、自己・唯一無二である彼らの活動は止まらない。

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