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なぜ、デヴィッド・ボウイは特別なのか? 奈良美智が語る

なぜ、デヴィッド・ボウイは特別なのか? 奈良美智が語る

『DAVID BOWIE is』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:豊島望 編集:野村由芽、山元翔一

歳をとったら死ぬのは当たり前のことだけど、死期を感じとって、どれだけ冷静に作品を残していけるかにボウイは向き合った。

―今回、ひとつ聞きたいと思ったのは、過去のCINRA.NETのインタビューで(奈良美智インタビュー「君や 僕に ちょっと似ている」)、奈良さんは「僕がいなくても作品が語るようでなくちゃいけない」とおっしゃっていて。改めて、それはどういう意味なのでしょう?

奈良:それをボウイの作品でたとえるならば……僕が大好きだったジギー・スターダストは、1970年代の前半に、いなくなってしまうんですよね。デヴィッド・ボウイはいたけど、ジギー・スターダストは宇宙に帰ってしまって、僕の前からいなくなってしまったんです。


1973年、ジギー・スターダストが人気絶頂のなか、突如「これが僕たちの最後のショーになる」と言い放つ一幕

―デヴィッド・ボウイがジギー・スターダストとして活動したのは、わずか1年半だったんですよね。

奈良:そうなんですよね。でも、ジギーの引退によって、『ジギー・スターダスト』というアルバムは、僕のなかで不滅のものになったんです。もう二度とジギー・スターダストの新作は出ないわけですからね。

当時、デヴィッド・ボウイが、どういうつもりで突然ジギーをやめるって言ったのかはわからないけど、ジギーがいなくなることで、あのアルバムが宝物のようになっていったんです。自分が、それ以降のデヴィッド・ボウイに対して、ジギーのときほど熱狂しなかった理由を考えると、まだボウイ自身は生きていたからだと思う。

奈良美智

―なるほど。その話を踏まえたうえで、ボウイの最後のアルバム『★(ブラックスター)』(2016年)と、その発表の2日後に訪れたボウイの死について、奈良さんはどんなふうに捉えているのでしょう?

奈良:ああ、これで本当に完結したんだなって思いました。というか、その最期にアルバムを用意していたことに、すごく驚きましたよね。それは、ジギー・スターダストではできなかったことなので。ジギーをやっていた頃は、ボウイも若かったし、自分の寿命なんてわからなかったと思うんです。でも、歳をとるにつれて、死というものを捉えていくようになって……。

奈良:歳をとったら死ぬのは当たり前のことで、年齢とともに人が老いて、やがて土に返るというのは、すごく自然でまっとうなことですからね。でも死期を感じとって、どれだけ冷静に作品を残していけるかにボウイは向き合った。すごい人だなって、最後の最後にまで思わせられましたね。

―『ジギー・スターダスト』が不滅のものとなったように、『★』もまた不滅のものになっていくのかもしれないですね。

奈良:そうですね。「ボウイは死ぬことまでも作品化した」みたいなことをみんな言っているけど、ホントにそうだなと。そういうことをできる人って、なかなかいないですよね。即身成仏する僧侶じゃないですけど、強い覚悟のもとに自らの存在そのものを作品化していくというか。人間的にもすごく強い人だったんでしょうね。

奈良美智

僕の感性がいちばん育まれた10代の頃に聴いた、“Starman”という1曲で、自分の感性の大部分が作られたんだなと今回改めて感じた。

―その死から1年が経った今、この日本でボウイ展が開催されていることの意義については、どんなふうにお考えですか?

奈良:正直に言うと、僕はちょっと客観的に見ることができないんです。デヴィッド・ボウイの死というのは、自分にとっては親兄弟や親しい友人が亡くなったときと同じような感覚がしているので。身近な親しい人が亡くなったときって、その人の人生を通して、自分がどう関わってきたかが見えてくるじゃないですか。

それと同じで、僕の感性がいちばん育まれた10代の頃に、デヴィッド・ボウイの存在はまったく重なっていて、その頃に聴いた“Starman”という1曲で、自分の感性は、その大部分が作られたんだなと今回感じました。そんなこと、これまであまり思い返したことがなかったんだけど。

奈良美智

―では、今回の回顧展を観て、改めて気づいたことや発見したことはありましたか?

奈良:今までは、ただ好きっていうだけだったけど、今回の回顧展で、デヴィッド・ボウイというひとりの人間の生き方を通して見ることによって……繰り返しになるけど、ずっと挑戦し続けた人だったんだなと、改めて思いましたね。そこがやっぱり、他のミュージシャンとは違う。

ボウイは音楽に埋没して、音楽のなかだけに道を求める表現者じゃないんです。音楽に埋没することなく、表現やカルチャーという大きなくくりで、俯瞰した目線で創作の種を探しながら、音楽を作っていたから。そういうスタンスがアーティストとしての命綱になっていたというか、音楽に溺れそうになったときに、他の分野のものを取り入れることで、表現に厚みが増していったような。イメージで言うと、そんな感じがしましたね。

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イベント情報

『DAVID BOWIE is』
『DAVID BOWIE is』

2017年1月8日(日)~4月9日(日)
会場:東京都 品川 寺田倉庫 G1ビル
時間:10:00~20:00(金曜は21:00まで、最終入場は閉場の1時間前)
休館日:月曜(3月20日、3月27日、4月3日は開館)
料金:
一般 前売2,200円 当日2,400円
中高生 前売1,000円 当日1,200円
※16時以降入場の会場販売当日券はそれぞれ200円引き

プロフィール

奈良美智(なら よしとも)

1959年青森県生まれ。愛知県立芸術大学修士課程修了。1988年渡独、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに在籍。ケルン在住を経て2000年帰国。2001年国内で初めての大規模な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」を横浜美術館で開催。独特のひねた表情の子どもを描く絵画やドローイングが国境や文化の枠組みを越えて絶賛される。2000年中頃、大阪のクリエイター集団grafとの共同プロジェクト「Yoshitomo Nara+graf: A to Z」を展開。音楽を愛し、山々を望むアトリエで制作する。

デヴィッド・ボウイ
デヴィッド・ボウイ

移り変わり行くロック・シーンの中で、時代と共に変化し続ける孤高の存在にして、英国を代表するロック界最重要アーティストの一人。60年代から、その多彩な音楽性をもって創作された、グラム時代を代表する『ジギー・スターダスト』、ベルリン三部作と呼ばれる『ロウ』、『ヒーローズ』、『ロジャー』、80年代を代表する『レッツ・ダンス』などの名盤の数々は、その時代のアート(芸術)とも言え、全世界トータル・セールス1億4,000万枚以上を誇る。「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」(NME/ミュージシャンが選ぶ)や「100人の偉大な英国人」(チャーチル、ジョン・レノン、ベッカム等と並び)にも選出される。2004年の『リアリティ』ツアー中に倒れ心臓疾患手術を行い、第一線から退いてしまい、もはや引退か??と囁かれた中、2013年世界中の誰もが驚いた予期せぬ復活劇は、「事件」として瞬く間に全世界を駆け巡り、10年振りの新作にして、ロック史上最大のカムバック作となった『ザ・ネクスト・デイ』を発表、アルバム・チャート初登場全英1位、全米2位を獲得し、世界的な大ヒットとなった。その後も大回顧展『David Bowie is』がイギリスはじめ世界で開催され話題を集めている。 ウォルター・テヴィス著『地球に落ちてきた男』(The Man Who Fell to Earth)がインスピレーション基となって、デヴィッド・ボウイと劇作家エンダ・ウォルシュによって書かれた『ラザルス』は、演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェが監督、舞台作品として2015年12月7日からニューヨーク・シアター・ワークショップ(NYTW)にて上演中。舞台の中ではボウイのバック・カタログからの楽曲に新鮮なアレンジを施したものや、新曲「ラザルス」がフィーチャーされている。2016年1月8日(金)69回目の誕生日に、ニュー・アルバム『★』(読み方:ブラックスター)が発売。その2日後、2016年1月10日(金)にこの世を去った。

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