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鹿野淳に訊く、日本のフェスの課題、『VIVA LA ROCK』の理想

鹿野淳に訊く、日本のフェスの課題、『VIVA LA ROCK』の理想

『VIVA LA ROCK 2017』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:柏井万作

ロックフェス『VIVA LA ROCK』が、5月3日から3日間にわたって開催される。質の高いブッキングや、都心からほど近いロケーションの利便性などもあって、すでに「春フェスの定番」というポジションを確立した印象だが、4年目を迎える今年は、また新たな一歩を示す年となりそうだ。

注目すべきは3日間のラインナップ。例年以上に1日ごとの色分けがはっきりしている印象だが、なかでも2日目は非常に興味深い。サカナクションや東京スカパラダイスオーケストラに混じって、Suchmos、cero、ぼくのりりっくのぼうよみ、D.A.N.、yahyelなど、いわゆる「邦楽ロックフェス」の既存のイメージに当てはまらない若手が多数並んでいるのだ。

このラインナップには、主催者である鹿野淳の問題意識が明確に反映されている。ロッキング・オン時代に『JAPAN』の編集長を務めてこの国のロックジャーナリズムをリードし、退社後に創刊した『MUSICA』が今年10周年を迎えるなか、彼は今の音楽シーンをどのように見つめ、『VIVA LA ROCK』でどんな未来を描こうとしているのだろうか?

『ビバラ』は「ロック」の位置付けを明確にするフェスでありたい。

―まずは『VIVA LA ROCK(以下、『ビバラ』)』を3年間開催して感じた手応えと、そのなかで見えた課題、あるいは問題意識について話していただけますか?

鹿野:フェスを始めるにあたって、パートナーのディスクガレージと明確な約束事をしていて、それは「もし赤字でも、3年間は続けよう」っていうことだったんです。つまり、実際やって赤字になって、ビビッてやめるくらいだったら最初からやめようと。フェスってそれくらいリスクの高い事業だと思ってるんですけど、すごくラッキーだったのが、1年目から事業として成立したんですよね。

―1年目から、黒字を出すことができたと。

鹿野:音楽ファンが読んでくれるであろう記事で、あんまり収益の話をしてもしょうがないですけど、うちもディスクガレージも決して協賛企業をつけるのに長けた会社ではないので、つまりはみんなが買ってくれた実券が収益のほとんど全てなんです。去年は1日2万5千ものチケットが両日ともソールドアウトして、春にそれだけ呼べるフェスはなかなかないので、そのポジションに行けたのは、大ラッキーだったなって正直に感じています。

『VIVA LA ROCK 2016』の風景
『VIVA LA ROCK 2016』の風景

―成功の要因をどのように分析していますか?

鹿野:そもそも『ビバラ』は2014年から始まった後進フェスなので、成功する可能性が限られていると思ったので、開催前にコンセプトを絞り込んだんです。それは大きく2つあって、ひとつはこれまで大きなフェスがなかった埼玉県という場所と徹底的に向かい合うフェスにすること。

これに関しては結果が出ていて、過去3年間でお客さんの埼玉県率がどんどん上がって、去年は東京都のチケット購買を超えたんです。このフェスはチケットを100%埼玉人が買いさらってしまうっていうのをひとつの目標にしているので(笑)、それはすごくよかったなって。

鹿野淳
鹿野淳

―もうひとつのコンセプトとは?

鹿野:2010年を過ぎてフェスが多様化し、2万人以上集客するフェスが「メガフェス」という言葉に括られるなか、『ビバラ』は「ロック」の位置付けを明確にするフェスでありたいと思いました。むしろそういうフェスが少ないとも思ったからでもあります。

ただ、これに関しての手応えはイマイチわからない。他のフェスに比べて、ブッキングしない類のアーティスト――例えばわかりやすい例を挙げるならアイドルなんですけど、その線引きがこのフェスの色味にはなってると思うんですね。ただ、それがウェルカムなのか、もしくは、それによってマイノリティなフェスだと思われてるのか、もはや僕らにはわからなくて。

―「ロックの位置付けを明確にする」というコンセプトについて、もう少し具体的に話していただけますか?

鹿野:つまりは、「今年のロックはこういうものですよ」っていうのを、ちゃんとミュージアム化して見せたいんです。ただフェスのブッキングって、必ずしも自分の初期の理想通りにいくわけではないので、今言ったことの自己実現度は初期設定として考えると100%にはならない。結果素晴らしいアーティストと音楽が集まるので、その意味では「100点」なんですけどね。

そうなったときに、最高に今なロックミュージアムというコンセプトがちゃんと打ち立てられているのか、何より、それがちゃんと届いているのか、そこは難しいと日々感じてます。「便利な場所でやっている、春の名物の音楽フェス」って思われてるだけでも全然ラッキーなんですけど、今はもう一歩踏み込んだところにいきたいと思ってるんですよね。集まってくれるアーティストや音楽、そして参加してくれる音楽ファンのためにも。

鹿野淳

フェスっていうのは、いろんなジャンルがあるのを見せて、広げる場所であるべきだと思うんです。

―鹿野さんが「ロック」にこだわるのは、「『MUSICA』という雑誌がロックを主眼とした雑誌だから」と言えますか?

鹿野:音楽メディアが根幹を握っているフェスなんだったら、そのフェスは音楽メディアであるべきだと思っています。このフェスを足掛かりに、コンサート事業を始めようと思っているわけではなくて、あくまでメディアとしてありたいわけです。『ビバラ』っていうフェスが、ちゃんと今の時代の音楽を探せる場所でありたいんですよね。

フェスという場所がアーティストとお客さんにとって単に都合のいい場所であるだけではなく、ちゃんと今の時代に聴いてもらいたい、聴かれるべき音楽を提示して、自分が好きな音楽以外のものもキャッチして帰ってもらいたい。非常にエゴが内在したフェスだったりもするんです。

―そうしたエゴもありつつ、コンセプトが届いているのか、手応えがイマイチわからないと。その原因を、紐解いていきたいですね。

鹿野:主催者側として個人的に歯がゆいのが、今「フェスロック」っていう音楽のジャンルがどうやらあるらしいってことなんですよね。

それがどういうものか調査したところ、フェス向きで、盛り上がれて、みなさんにとって記号性の高い、コーラスの場所、手を挙げる場所、ステップを踏む場所があり、そういったものが複合して、空間として一体感を持てる。そういう音楽が「フェスロック」と呼ばれていて、実際朝の情報バラエティーとかで「フェスシーンを中心に活躍している」みたいな紹介のされ方をしている。フェスをプロデュースする者としても音楽メディアの人間としても正直、これはどうかと思うんです。

鹿野が発行人を務める『MUSICA』2017年4月号
鹿野が発行人を務める『MUSICA』2017年4月号(Amazonで見る

―どこが一番の問題だとお考えですか?

鹿野:フェスっていうのは音楽のジャンルを作る場所じゃなくて、音楽のなかにはいろんなジャンルや世界があるっていうのを見せて広げる場所であり、マップであるべきだと思うんです。なのにフェス自体がジャンルになってしまうと、結果的にバンドの音楽を閉じさせていく本質的な原因になっていく可能性さえあるんじゃないかと思っていて。僕は、それを本気でほどきたいんですよね。

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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2017』
『VIVA LA ROCK 2017』

2017年5月3日(水・祝)~5月5日(金・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
5月3日出演:
アルカラ
THE ORAL CIGARETTES
KANA-BOON
KEYTALK
クリープハイプ
Getting Better(片平実、神啓文、斎藤雄)
go!go!vanillas
SHISHAMO
SiM
SUPER BEAVER
パノラマパナマタウン
04 Limited Sazabys
BRADIO
BLUE ENCOUNT
フレデリック
Base Ball Bear
PELICAN FANCLUB
ポルカドットスティングレイ
yonige
LAMP IN TERREN
LEGO BIG MORL
Lenny code fiction
and more
5月4日出演:
雨のパレード
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)
Gotch & The Good New Times
サカナクション
Suchmos
シンリズム
水曜日のカンパネラ
SKY-HI
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)
SPECIAL OTHERS
cero
DADARAY
D.A.N.
DJピエール中野(凛として時雨)
DJやついいちろう(エレキコミック)
DENIMS
東京スカパラダイスオーケストラ
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
フレンズ
THE BAWDIES
ぼくのりりっくのぼうよみ
yahyel
UNISON SQUARE GARDEN
lovefilm
and more
5月5日出演:
Ivy to Fraudulent Game
ACIDMAN
175R
UVERworld
打首獄門同好会
Age Factory
ENTH
Ken Yokoyama
G-FREAK FACTORY
DJダイノジ
10-FEET
Dragon Ash
NUBO
爆弾ジョニー
the band apart
BIGMAMA
HEY-SMITH
Bentham
My Hair is Bad
MONOEYES
MOROHA
ヤバイTシャツ屋さん
ROTTENGRAFFTY
LONGMAN
and more
料金:1日券10,000円 2日券18,000円 3日券(5月3日~5月5日)24,000円 4日券(5月3日~5月6日)30,000円

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

1964年、東京都生まれ。2007年に音楽専門誌『MUSICA』を創刊。これまでに『ROCKIN'ON JAPAN』』、『BUZZ』、サッカー誌『STAR SOCCER』の編集長を歴任。各メディアで自由に音楽を語り注目を集め、音楽メディア人養成学校「音小屋」を開講。2010年には東京初のロックフェス『ROCKS TOKYO』、2014年にはさいたま初の大規模ロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げるなど、イベントプロデュースも手がける。

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