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『SICF』受賞 後藤映則のデジタル×アナログな脳内に世界が注目

『SICF』受賞 後藤映則のデジタル×アナログな脳内に世界が注目

『SICF18』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:野村由芽、飯嶋藍子

東京青山のスパイラルが主催する『SICF』(SPIRAL INDEPENDENT CREATORS FESTIVAL)は、若きクリエイターを発掘するジャンル不問の公募形式のアートフェスティバルである。今年も5月2日から6日間にわたる開催が決定しており、従来の100組から150組へと出品者が増大した。よりいっそう、新しい才能に出会えるチャンスが広がった『SICF』に期待が高まる。

今回は前回の『SICF17』で審査員を務めた岡本美津子と、準グランプリとオーディエンス賞を獲得し、『SICF18』と同時開催する『SICF17受賞者展』に出展が決まっている後藤映則に集まってもらった。二人が考える映像表現とメディアアートの現在、そして未来とはいかなるものか?

フェスティバルで「W受賞」した作品が生まれたきっかけ

―まず、昨年の『SICF17』で準グランプリとオーディエンス賞をW受賞した後藤さんの作品『toki- BALLET_#01』について聞かせてください。

後藤:テーマとしては、時間と動きの関係性や性質、そしてそこから生じる美しさを扱っています。技術的な話でいうと、バレエダンサーの踊りを撮影して、そのシルエットをフレーム毎に取り出し、円のかたちに配置したCGデータを作ります。さらにそれを3Dプリンターで出力するのですが、回転させながら上方向から光を投射すると、バレエダンサーが踊っている姿が浮かび上がります。

左から:岡本美津子、後藤映則
左から:岡本美津子、後藤映則

―映像で見てもらうとわかりやすいですが、いわば最新技術で作ったゾーイトロープ(高速で2つ以上の絵を交互に表示すると動いているように見える、アニメーションの原理を利用した古い玩具)ですね。

『toki- BALLET_#01』
『toki- BALLET_#01』(動画を見る)

岡本:時間という抽象的な概念が可視化するというのが面白いですよね。日々繰り返す時間の流れってなんとなく円環を想像させますけど、実際にかたちにすると本当に「ループだったんだ!」と驚かされる。

後藤:もともと映像作品も作っていたので、動くものに興味があるんです。映像編集の経験がある人は思い当たると思うのですが、動きと時間はとても密接です。静止した状態では単なる絵や写真だったものが、動き出した瞬間に時間を体現し始める。つまり動きに時間の本質的な側面があるのではないかと……というのは自分の仮説ですが。

ゾーイトロープの原理が視覚の錯覚を利用してアニメーションを生み出すということは、コマとコマの間に見えない時間があるわけです。じゃあその間を繋げた状態で視覚化できないだろうか? というのが『toki-』の出発点のひとつになります。

『toki- BALLET_#01』の元となった作品

学生時代、周囲の能力に圧倒されて悩む日々。メディアアートの道へ

―『テクネIDアワード』(NHK Eテレで放送される『テクネ 映像の教室』内で行われた映像作品公募)を受賞した『Magic Finger』も似た問題意識を感じさせる作品でした。白手袋をはめた指を左右に素早く動かして、そこに映像を投影させると即席のスクリーンになる。

後藤:いわば身体のスクリーン化、拡張ですよね。じつは撮影時に尿管結石を患っていて、指を振るたびに痛みが走る(苦笑)。二重に身体をはった作品になりました。

後藤映則

後藤映則『Magic Finger』

―映像技術のなかでもアニメーションとスクリーンに興味があるんでしょうか?

後藤:そうですね。学生時代は漠然とグラフィックデザインなどの平面系のデザインをやりたくて武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科に入学したんですけど、周囲の人の能力の高さに圧倒されて「この先なにをしていこう……」ってかなり悩んだんです。そのときに大学の図書館でたまたま『岩井俊雄の仕事と周辺』という本を読んで、メディアアートというジャンルが世の中にあることをはじめて知りました。

―岩井さんは1980年代から活動する、日本のメディアアート黎明期を代表するアーティストですね。代表作の『時間層II』は、後藤さんの『toki-』と同じゾーイトロープの原理に着目しています。

後藤:岩井さんの本に出会っていなかったら現在の作品は生まれていないと思いますね。当時「こんな表現があるんだ!」と興奮して、秋葉原の電気街に走りました。でも、なにしろ初心者なのでコンデンサー(電気を蓄えたり放出したりする電子部品)とか抵抗器なんて言われても何のことだかさっぱりわからない。小学生でもわかるような電子回路図の本を手引きにしてやっと完成させたのが、頭上で回転するプロペラに映像を投影させるっていうインスタレーションでした。

後藤が学生時代に制作した、プロペラに映像を投影させるインスタレーション
後藤が学生時代に制作した、プロペラに映像を投影させるインスタレーション

岡本:最初から拡張的な映像表現に興味があったんですね。

後藤:テレビのように四角いフレームは合理的ですけど、「映像表現」について考えるなら平面である必要もないし四角い必要もない。もっと画面を飛び出す立体的な映像を作れないかと思って、複数のプロペラを高さの異なる場所で回せば、映像が空中に浮かんでいるような表現になると考えたんです。

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イベント情報

『SICF18』

A日程:2017年5月2日(火)、5月3日(水・祝)11:00~19:00
B日程:2017年5月4日(木・祝)、5月5日(金・祝)11:00~19:00
C日程:2017年5月6日(土)、5月7日(日)11:00~19:00

会場:東京都 青山 スパイラルホール
時間:11:00~19:00
審査員:
石田尚志(画家・映像作家、多摩美術大学准教授)
栗栖良依(SLOW LABELディレクター)
張熹(藝倉美術館チーフディレクター)
中村茜(プリコグ代表、パフォーミングアーツプロデューサー)
森永邦彦(ANREALAGEデザイナー)
藪前知子(東京都現代美術館学芸員)
大田佳栄(スパイラルチーフキュレーター)
料金:一般500円 通し券(A・B・C日程)1,000円
※学生はSICF 公式Facebook、Twitterに「いいね!」「フォロー」で無料(要学生証提示)

『SICF17受賞者展』

2017年5月2日(火)~7(日)
会場 : 東京都 青山 スパイラルガーデン
時間:11:00~20:00

プロフィール

岡本美津子(おかもと みつこ)

東京藝術大学大学院映像研究科教授。NHKにて、編成、番組開発、番組制作、イベント制作、およびデジタルTV、インターネット関連業務に従事したのち、現職へ。NHK Eテレ『2355・0655』プロデューサー。NHK Eテレ『テクネ 映像の教室』映像監修&プロデューサーなどを務める。

後藤映則(ごとう あきのり)

1984年岐阜県生まれ。メディアアーティスト。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。先端のデジタルテクノロジーと古くから存在するメディア・手法を組み合わせて新たな表現を生み出す。人と人やモノとモノの背景にある繋がりや関係性に興味を抱き、作品として展開中。『サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)2017』に新設されたアートプログラムにおいて、世界中から応募があった200以上の作品のうち、展示される5作品に選ばれた。

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