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クラシック界の若きスター・反田恭平の魅力を湯山玲子が徹底解説

クラシック界の若きスター・反田恭平の魅力を湯山玲子が徹底解説

反田恭平『Clair de Lune〜Recital Pieces Vol.1』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:山元翔一、川浦慧
2017/08/10
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セッションが上手いんだよね。相手とのエネルギーの交換が上手いというか。相性のいいセックスみたいな?(湯山)

―そもそも湯山さんは、どういうきっかけで反田さんを知ったのですか?

湯山:懇意にしているレコード会社の人から聞いたんですよ、「すごい才能がいる」と。あれは2015年の春だったかな。サントリーホール(小ホール)で、「新人発表会」という異例のコンベンションがあって、そこで初めて反田くんの演奏を聴いたのですが、かっこよさと力強さにとにかく圧倒されました。

あのコンベンションの後、彼がアンドレア・バッティストーニとトリノで行ったレコーディング(『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 パガニーニの主題による狂詩曲』)に、光栄にも立ち会うことができて。それがまた素晴らしかったんですよね。先日の『題名のない音楽会』のときの、池上英樹さん(パーカッション / マリンバ奏者)とのコラボを観たときにも思ったけど、セッションが上手いんだよね。いや、ソロが悪いっていうんじゃなくて(笑)。なんていうか、相手とのエネルギーの交換が上手いんでしょうね。相性のいいセックスみたいな?

湯山玲子

反田:(笑)。でもそれはわかりますね。一人で弾くのはちょっと寂しいところもあって、僕はオーケストラと演奏するコンチェルトが一番好きなんですよ。11歳くらいまでサッカーをやっていたので、チームみんなで力を合わせてみんなで喜ぶ、みたいなのが大好きで。

だからコンチェルトで知り合いのメンバーがいればなおさら嬉しいですし、指揮者が知り合いというのも大事だし。トリノで録音したときは、バッティストーニ以外は初対面でしたが、すぐに打ち解け合うことが出来たのがよかったのだと思います。僕、イタリア人の気質も大好きですし(笑)。

―クラシックのコンチェルトの場合、インプロ(即興)をぶつけ合うジャズのセッションとはまた違う醍醐味なんでしょうね。

反田:違いますね。クラシックは決められた譜面があり、それを指揮者が解釈した通りに演奏するわけですから。ただ、例えばクレッシェンドを指定されていても、クレッシェンドの仕方には何種類かあって、この曲ではどのクレッシェンドが最適なのかは自分でも探っていくわけです。いきなりグイッと上がるのか、徐々に上がっていくのか、とか。リフレインが3回繰り返されたとして、3回とも同じクレッシェンドじゃつまらないから、ちょっとずつ変えてみたりして。

反田恭平

湯山:トリノでは反田君の解釈が指揮者とピッタリと合ってて、なおかつオーケストラには、指揮者に対するリスペクトがあって。全体の「ノリ」が一緒になったというんですかね。快感をみんなで一緒に持っていけたということだと思います。そういう意味では、反田君、相性のいい音楽セックス巧者(笑)。

―あと、反田さんの楽譜へのアプローチで面白いなと思ったのは、「ピアノ譜をオーケストラ譜に見立ててみる」というお話だったんです。

反田:弾く前に楽譜を読み解くという作業がとても大事なんです。例えばシューベルトの即興曲1番などは、男女の混声4部合唱から成り立つオーケストラにそっくりなんですよね。オーボエが旋律を奏で、コラールの合唱が4声で「ポン、ポポン」って始まって、っていうことを頭の中でイメージしていくと、止まらなくなっちゃうんですけど(笑)。それをすることで、ピアノの音色の幅を広げるヒントになるんじゃないかなと。演奏に行き詰まったときなど、ただがむしゃらに弾くよりは近道なのかなと思ってやっていますね。

―それだけピアノにはポテンシャルがあるということですよね?

反田:ええ。やっぱりピアノは88鍵の音があって、オーケストラの楽器のほとんどの音域を網羅しているわけですから。

湯山:そうそう。オーケストラなんだよね、ピアノって。

シューベルトってものすごく難解なんですよ。だからこそ今、あえて残しておきたいとも思った。(反田)

―今回の反田さんの新作『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』を聴いて、湯山さんはどんな感想をお持ちになりましたか?

反田恭平『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』ジャケット
反田恭平『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』ジャケット(Amazonで見る

湯山:まず、この選曲はどうやって決めたの? リストを選んだのはわかるんだ、反田くん得意だから。でもシューベルトは驚いた。

反田:元はリサイタルのために2つプログラムを作って、そこから抜粋したものを収めたのが本作です。シューベルトってものすごく難解なんですよ。だからこそ今、あえて残しておきたいとも思った。歳を取ってから聴いて確認したいなっていう、ある種エゴイスティックな気持ちもありましたね。

反田恭平

―素人な質問で恐縮ですが、シューベルトってそんな難しいんですか?

反田:難しいですね。

湯山:あのね、正直言うと、曲はつまらないよ。

反田:あははは。僕はそんなこと絶対に言えません。

湯山:キャッチーじゃないしねぇ。私ずっとダメだったの。それが最近「シューベルト、ヤバイな」みたいな。独特の居心地のいい環境、というか。何の変哲もないホテルのロビーなんだけど、椅子が座り心地がよかったり、家具の配置が絶妙だったりする、というような。例えばショスタコーヴィチやチャイコフスキーなんて、個性がはっきりしていて、キャッチーで取っつきやすいでしょう。シューベルトはある意味、最終形かも。反田くんはどう思ってるの?

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リリース情報

反田恭平『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』
反田恭平
『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』(CD)

2017年6月21日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCQ-85364

1. I. アレグロ・モルト・モデラート
2. II. アレグロ
3. III. アンダンテ
4. IV. アレグレット
5.亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル)
6.喜びの島(ドビュッシー)
7.月の光 ~《ベルガマスク組曲》より 第3曲(ドビュッシー)
8.献呈(シューマン/リスト編)
9.別れの曲 ~《12の練習曲 作品10》より 第3曲(ショパン)
※HQ-CD仕様

ライブ情報

反田恭平ピアノ・リサイタル2017 全国縦断ツアー

2017年7月8日(土)
会場:神奈川県 ミューザ川崎 シンフォニーホール

2017年7月13日(木)
会場:静岡県 静岡音楽館AOI

2017年7月15日(土)
会場:愛知県 愛知県芸術劇場 コンサートホール

2017年7月21日(金)
会場:新潟県 長岡リリックホール コンサートホール

2017年7月28日(金)
会場:富山県 富山県教育文化会館

2017年8月3日(木)
会場:北海道 札幌コンサートホールkitara 大ホール(プログラムI)

2017年8月4日(金)
会場:北海道 函館市芸術ホール

2017年8月6日(日)
会場:福岡県 アクロス福岡 シンフォニーホール

2017年8月17日(木)
会場:岩手県 岩手県民会館 中ホール

2017年8月20日(日)
会場:福島県 福島市音楽堂

2017年8月26日(土)
会場:兵庫県 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

2017年8月31日(木)
会場:秋田県 秋田アトリオン 音楽ホール

2017年9月1日(金)
会場:東京都 初台 オペラシティ コンサートホール(プログラムI)

『河口湖音楽祭2017 反田恭平のKIDSコンサート ~ピアノってどんな楽器!?』

2017年8月15日(火)
会場:山梨県 河口湖円形ホール

『河口湖音楽祭2017 ぱんだウインドオーケストラ2017』

2017年8月16日(水)
会場:山梨県 河口湖ステラシアタ-

プロフィール

反田恭平
反田恭平(そりた きょうへい)

1994年生まれ。2012年高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を受賞。2013年M.ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。2015年プロとしての第一歩を踏み出す。イタリアで行われている「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。7月にはデビューアルバム「リスト」を日本コロムビアより発売。またCDのデビュー以前に東京フィルハーモニー交響楽団定期への異例の大抜擢を受け、ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 を熱演し、満員の会場で大きな反響を呼んだ。そして、年末には「ロシア国際音楽祭」にてコンチェルト及びリサイタルにてマリインスキー劇場デビューを果たす。2016年に開催したデビューリサイタルは、サントリーホール2000席が完売し、圧倒的な演奏で観客を惹きつけた。夏の3夜連続コンサートをすべて違うプログラムで行うも一般発売当日に完売し、3日間の追加公演を行い新人ながら3,000人を超える動員を実現する。コンサートのみならず「題名のない音楽会」「情熱大陸」等メディアでも多数取り上げられるなど今、もっとも勢いのあるピアニストとして注目されている。最新CDは11月に発売された、Aバッティストーニ指揮RAI国立交響楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のセッション録音。現在、国内外にて演奏活動を意欲的に行っている。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

1960年生まれ、東京都出身。著述家。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多く、全世代の女性誌やネットマガジンにコラムを連載、寄稿している。著作は『四十路越え!』『ビッチの触り方』『快楽上等 3.11以降を生きる』(上野千鶴子との対談本)『文化系女子の生き方 ポスト恋愛時宣言』『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』等々。クラシック音楽を爆音で聴くイベント『爆クラ!』と美人寿司主宰。

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