インタビュー

前野健太、2018年は『紅白』も出場圏内か?ひと皮むけた男が語る

前野健太、2018年は『紅白』も出場圏内か?ひと皮むけた男が語る

インタビュー・テキスト
九龍ジョー
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一 取材協力:器と珈琲 — 織部下北沢店

前野健太

脱いで、亀甲縛りまでされて、僕自身もメタモルフォーゼさせてもらったという意味で、あの映画はターニングポイントでしたね。

―『変態だ』のときは、気を張ってたところもあったんですか?

前野:あのときは、まだ僕もちょっと闘ってしまっていたというか。もちろん、僕が主演の映画だったっていうのもありますけど。

―5年前のインタビュー(誰もがちょっとムキになる男 前野健太インタビュー)で前野健太はM的だという話をしましたけど、『変態だ』の劇中で実際に女王様に縛られてしまったので、笑いましたよ。

前野:あれは予言でしたね(笑)。脱いで、亀甲縛りまでされて、僕自身もメタモルフォーゼさせてもらったという意味で、あの映画はターニングポイントでしたね。ただ、いまだにみんなが僕の何をいいと思ってくれているのか、正直わからないんですよ(笑)。NHKで『オドモTV』って始まりましたけど、収録でみんなゲラゲラ笑ってくれるんです。でも、僕には自分のどういう部分が面白いのかわからない。でも、もうそれでいいやって。

―ようやく前野健太の無意識が商品化されるようになったわけですね(笑)。

前野:いや、ホントそうですよ。他ジャンルの人たちが壊して、見つけてくれましたね。

―「マエケン、お前の面白いところは、お前自身が思っているところではないんだ」と(笑)。『サクラ』のジャケットデザインにも、そのへんの意識が反映されているのを感じました。

前野:ええ、一切をおまかせしました(笑)。フォトグラファーの横浪修さんとスタイリストの小川恭平さん、デザイナーの木村豊さんに委ねたら、素晴らしいディレクションをしてくれましたね。

前野健太

前野健太『サクラ』ジャケット・帯付き
前野健太『サクラ』ジャケット・帯付き(Amazonで見る

―アレンジャーに曲を託したこともそうですし、すべてがつながっていますね。ただ、そうやってさまざまなことを人に託しながらも、それでも前野さん自身がこれは手放せないというものは何ですか。

前野:歌心、でしょうね。歌を捕まえること。そこは完全に僕ひとりの作業であり、誰にもいじることのできない部分ですね。

熊谷守一も、石内都も、いのちへのまなざしがすごく丁寧で、いっぱい歌心をもらった気がしました。

―歌心といえば、以前に新海誠監督の映画『君の名は。』(2016年)の感想で、「新しい時代の歌心を感じた」と言っていましたね。

前野:あの映像のスピード感、アニメの色味、それからRADWIMPSの主題歌(“前前前世”)、あの組み合わせはちょっと感じたことのない歌心でしたね。見終わって映画館を出たあと、新宿の風景が瑞々しく見えましたから。カラッカラだったはずの街が潤ってるんですよ。僕も新宿でずいぶん歌をつくりましたけど、あれはホント驚きでしたね。しかも“前前前世”って、実は僕もすでに同じことを歌っているわけですよ。

―たしかに歌ってますね、“新しい朝”で<おじいさんのおじいさんのおじいさん>って(笑)。

前野:だから、うわっ、やられた! って。僕が「おじいさん」って言っている間に、向こうは「前」の一文字で遠くまで抜き去っていきますからね。スピード感では敵わない。だから、今回のアルバムは、むしろグッとスピードを落として、真逆のアプローチですよ。山の歌から始まって、海の歌で終わるわけですから。カエルやウサギや馬も出てくる。そういえば、先日、東京国立近代美術館で観た熊谷守一展(『没後40年 熊谷守一 生きるよろこび』)にも歌心を感じましたね。

前野健太

―まさに熊谷も、身近な自然や生きものを絵に描いたわけですからね。

前野:面白いのが、キャリアの始めの頃はわりと普通の絵を描いているんですけど、途中から赤い縁取りをするようになったとき、あの人、何か見つけたんだと思うんですよ。そこからどんどん変化して、生き物を描くようになる。晩年は行動範囲も狭まって、そこで有名なネコとかアゲハチョウの絵を描くんですけど、これがまたすごく生きものに自由を感じる絵なんですよ。あと、歌心という意味では、横浜美術館の石内都さんの写真展(『肌理と写真』)もすごかった。

―石内さんの写真を見ると、いつも前野健太の“だれかの”という曲を思い出します。

前野:なるほど。広島の被爆者の方の遺品のワンピースも、まず写真がかっこよくて、その人が生きていたという事実が迫ってくる。フリーダ・カーロのスカーフの写真を見たときは、あまりの美しさに思わず涙が溢れてきました。熊谷守一も、石内都も、いのちへのまなざしがすごく丁寧で、いっぱい歌心をもらった気がしました。

前野健太

―まさに今回のアルバムにも“いのちのきらめき”という曲がありますしね。もともとNHKのドラマ(兵庫発地域ドラマ『あったまるユートピア』 / 2018年)のためにつくった曲ですが、これだけNHKへの貢献度があると、『紅白』出場の可能性が高まってきた気もします。

前野:今回、NHKからの依頼きっかけの歌が3曲(“いのちのきらめき”“アマクサマンボ・ブギ”“人生って”)もありますからね。『オドモTV』も、春からレギュラー放送ですし。

―ここまでくると時間の問題というか、もはや『紅白』への期待をことさらにあおる必要はないかもしれないですね(笑)。粛々と歌を大勢の人に届けていけばよいわけで。

前野:そうですね。何よりも今回は新しい歌をつくれた手応えがあって、それがいちばんですね。早くいろんな人に聴いてもらいたいな。

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リリース情報

前野健太『サクラ』
前野健太
『サクラ』(CD)

2018年4月25日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1150

1. 山に囲まれても
2. 今の時代がいちばんいいよ
3. アマクサマンボ・ブギ
4. 嵐~星での暮らし~
5. 夏が洗い流したらまた
6. マイ・スウィート・リトル・ダンサー
7. 大通りのブルース
8. SHINJUKU AVENUE
9. 虫のようなオッサン
10. 人生って
11. いのちのきらめき
12. ロマンティックにいかせて
13. 防波堤

イベント情報

『前野健太 ニューアルバム 「サクラ」 発売記念ツアー ~開花宣言~』

2018年5月20日(日)
会場:東京都 渋谷 WWW X
出演:前野健太バンド
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2018年5月31日(木)
会場:福岡県 福岡 BEAT STATION
出演:
前野健太バンド
ゲスト:ハンバートハンバート
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月1日(金)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO
出演:
前野健太バンド
ゲスト:ハンバートハンバート
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月2日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La
出演:
前野健太バンド
ゲスト:シャムキャッツ
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月3日(日)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN'
出演:
前野健太バンド
ゲスト:シャムキャッツ
料金:前売3,800円(ドリンク別)

『前野健太 ニューアルバム 「サクラ」 発売記念ツアー ~開花宣言2~ <ソロ対バン篇>』

2018年6月7日(木)
会場:宮城県 仙台 Rensa
出演:
前野健太
ゲスト:竹原ピストル
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月22日(金)
会場:北海道 札幌 BFHホール
出演:
前野健太
ゲスト:スカート
料金:前売3,500円(ドリンク別)

2018年7月7日(土)
会場:沖縄県 桜坂劇場ホールA
出演:
前野健太
ゲスト:大森靖子
料金:前売3,500円(ドリンク別)

2018年7月12日(木)
会場:京都府 磔磔
出演:
前野健太
ゲスト:吉澤嘉代子
料金:前売3,800円(ドリンク別)

『CROSSING CARNIVAL'18』
『CROSSING CARNIVAL'18』

2018年4月22日(日)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE
出演:
KOHH
Chara×韻シストBAND
GRAPEVINE(ゲスト:康本雅子)
大森靖子(world's end girlfriendとコラボライブも)
藤井隆
おとぎ話(新作の完全再現ライブ)
前野健太
Awesome City Club feat. Jiro Endo
world's end girlfriend × Have a Nice Day!
THE NOVEMBERS(ゲスト:志磨遼平(ドレスコーズ))
GAGLE(ゲスト:鎮座DOPENESS、KGE THE SHADOWMEN)
DADARAY(ゲスト:藤井隆)
WONK
Tempalay feat. JABBA DA FOOTBALL CLUB
King Gnu × Ryohu
LILI LIMIT(牧野正幸による映像とコラボ)
Emerald(ゲスト:環ROY)
料金:前売6,000円 当日6,500円(共にドリンク別)

「今月の顔」とは?

日々数多くの情報を発信しているCINRA.NET編集部が毎月1組だけ選出する、「今月のカルチャーの顔」。ジャンルや知名度を問わず、まさに今、読者の皆さんに注目していただきたいアーティストや作家を取り上げます。

プロフィール

前野健太(まえの けんた)

1979年埼玉県入間市出身。シンガーソングライター。2007年に自ら立ち上げたレーベル「romance records」より『ロマンスカー』をリリースしデビュー。2011年には第14回みうらじゅん賞を受賞。2013年1月、ジム・オルークをプロデューサーに迎え制作された4枚目のアルバム『オレらは肉の歩く朝』を発売。同年7月『FUJI ROCK FESTIVAL'13』へ出演。12月、5枚目のアルバム『ハッピーランチ』を発売。2014年、月刊「すばる」にてエッセイの連載を開始。2015年7月、KAATキッズ・プログラム2015 おいしいおかしいおしばい『わかったさんのクッキー』(台本・演出:岡田利規)の劇中歌を作曲。12月NHK番組『ジドリ』の音楽を担当。雑誌『Number Do』に初小説を寄稿。CDブック『今の時代がいちばんいいよ』を「エランド・プレス」より発売。2016年10月、初のラジオレギュラー番組「前野健太のラジオ100年後」が1422ラジオ日本で放送開始。同年12月、主演映画『変態だ』(みうらじゅん原作、安斎肇監督)が新宿ピカデリーを皮切りに全国公開。2017年2月、初舞台となる『なむはむだはむ』(つくってでる人:岩井秀人、森山未來、前野健太)に参加。東京芸術劇場にて2月18日~3月12日まで上演。同作の滞在制作の模様を密着したドキュメント映像「コドモのひらめき オトナの冒険~“なむはむだはむ”の世界~」がNHKEテレで放映された。同年3月3日初のエッセイ集『百年後』を「STAND!BOOKS」より刊行。2018年4月からNHK Eテレ『オドモTV』にレギュラー出演。

関連チケット情報

2018年12月22日(土)
前野健太
会場:日本橋三井ホール(東京都)
2019年2月24日(日)〜3月17日(日)
「世界は一人」
会場:東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

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