インタビュー

mabanuaがプロデューサー視点で語る、「流行」を無視すべき理由

mabanuaがプロデューサー視点で語る、「流行」を無視すべき理由

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:池野詩織 編集:山元翔一

自分が好きな音楽を振り返ってみたとき、ジャンルが特定されていない音楽を好んでよく聴いていた。

—『Blurred』について改めて聞かせてください。以前まで作っていたものを一度消去して、もう一度作りはじめるにあたって、アルバムとしての青写真はどの程度あったのでしょうか?

mabanua:『Blurred』というタイトルにも表れていると思うんですけど、ただ明るいだけの作品にはしたくなかったんです。アルバムの色を風景とか時間帯で表現するとしたら、夕日が落ちる前後、または朝日が昇る前後の時間帯の風景が思い浮かんでいて。

歌詞にしても、別れとも出会いともつかない内容が多いんですよ。ジャケットも、2人が寄り添ってるのかなと思ったら、これ、男の人が女の人の手を掴んでいるんですよね。離れようとするのを止めてるのか、単純に引き寄せてるだけなのか、どっちにも取れる。

mabanua『Blurred』ジャケット
mabanua『Blurred』ジャケット(Amazonで見る

—ただ2人が肩を寄せ合ってるわけではないんですね。

mabanua:そういう切なさみたいなのもあったり、暗いんだけどダークともまたちょっと違ったり、曖昧なぼやけた感じっていうイメージがずっとあって。そうすると、シンセの音もアナログに寄っていくというか、あまりバキバキしたものでない世界観で全体をまとめるように作っていきました。あと、改めて自分が好きな音楽を振り返ってみたとき、ジャンルが特定されていない音楽を好んでよく聴いていたんです。

—具体的にはどんな音楽でしょうか?

mabanua:僕、Unknown Mortal Orchestraが好きなんですけど、彼らの音楽ってサイケデリックとも言えるし、ヒップホップ要素もあるのに歌はフォーキーだし、ギターが歪んでるからロックでもある。ああいう音楽がすごく好きなんですよね。

以前よく比べられたToro Y Moiも、トラックものっぽい曲もあれば、バンド一発録りのアルバムもあったりする。ああいう「何やってるんだろう、この人?」っていうサウンドが、自分的には一番いいんです。「俺、R&Bやってます!」みたいな、R&Bのあるべき法則だけで固められた音楽とか、聴いていてあまり面白いと思わないんですよね。

Unknown Mortal Orchestra『Sex & Food』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら Toro Y Moi『Boo Boo』(2017年)を聴く(Apple Musicはこちら

—今はそういう音楽がポップミュージックとして一般化しつつありますよね。「ジャズとヒップホップのクロスオーバー」も、もうわざわざ言う必要がないというか、より若い世代の音楽って、クロスオーバーが前提になっているなと感じます。

mabanua:確かに。ジャズとヒップホップだけでも、他のジャンルが混ざっている感じが十分しますけど、今はそれだけでも足りない感じはありますね。

—今作にしても、ヒップホップなのか、ネオソウルなのか、ロックなのかって聞かれたら、「どの要素も入ってます」という作品だと思いますし。

mabanua:日本語で歌っているから邦楽と言えば邦楽だけど、オケだけ聴くと海外のサウンドっぽいとも言われます。悪く言うと「散漫」なのかもしれないですけど、よく言うと「誰でも、いろいろな角度から聴ける」ってことなのかなって。

そういうこともあってか、「普段パンクバンドをやってます」という人から「いつも聴いてます!」と言われたり、去年台湾へライブに行ったときは、ヒップホップの格好した人から「毎日聴いてるよ」って言われたりもして(笑)。こういうスタイルゆえに、いろいろな人が聴いてくれるのかなって。

mabanua

mabanua『Blurred』を聴く(Apple Musicはこちら

やっぱり日本語は意味が直接的になりがちで、意識していなくてもJ-POP化してきちゃう。

—歌詞の話が出ましたが、これまでの作品が英語詞だったのに対して、今回は日本語詞だというのは大きなポイントの1つで、これはやはりプロデューサーとして日本のポップシーンと関わってきたことも関係しているのかなと。

mabanua:去年弾き語りライブをちょこちょこやったんですけど、そのときに日本語の強さを実感したんですよね。自分みたいなネイティブじゃない人間が、ミニマムな空間で、英語だけで1時間のライブを完結させるのって、リスナー側からしても結構ハードルが高いというか。そういうときに、日本語できちんと言葉尻に意味合いを持たせつつ歌えると、何かしら印象を持って帰ってもらえることが多い気がして。

バンドでも弾き語りでも対応できるようにと考えたときに、日本語で作ったほうが強いなと。なので、ちゃんと日本語がハマるようなメロディーをずっと模索しながら作っていたんです。でも、やっぱり日本語は意味が直接的になりがちで、意識していなくてもJ-POP化してきちゃうところが難しくて。また名前出しますけど、Charaさんはそのバランスがすごくいいんですよ。

Chara“Symphony feat. mabanua”を聴く(Apple Musicはこちら

—ああ、そうですよね。

mabanua:Charaさんの歌詞は日本語詞でも、はっきりと意味はわからない。でもなんとなくストーリーが伝わってくるから、自分で模索する楽しさがあるんですよね。意味はわからないんだけど、すごく切ない気持ちになったり、ストーリーが思い浮かんでくる。リスナーに自然と考えさせる瞬間が生まれるくらいの日本語の感じがすごくいいなと思って。そういう日本語だと、どんなオケを作ってもハマりやすいんですよね。

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リリース情報

mabanua『Blurred』限定盤
mabanua
『Blurred』限定盤(2CD)

2018年8月29日(水)発売
価格:3,240円(税込)
OPCA-1039

[DISC 1]
1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint
[DISC 2]
DISC 1のインストゥールメンタルバージョンを収録

mabanua『Blurred』通常盤(CD)
mabanua
『Blurred』通常盤(CD)

2018年8月29日(水)発売
価格:2,700円(税込)
OPCA-1038

1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint

イベント情報

『mabanua tour 2018“Blurred”』

2018年11月1日(木)
会場:福岡県 BEAT STATION

2018年11月14日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW X

2018年12月14日(金)
会場:大阪府 心斎橋 CONPASS

料金:各公演4,000円

プロフィール

mabanua
mabanua(まばぬあ)

日本人ドラマー、プロデューサー、シンガー。ブラック・ミュージックのフィルターを通しながらもジャンルに捉われないアプローチで全ての楽器を自ら演奏し、国内外のアーティストとコラボして作り上げたアルバムが世界各国で話題に。また、プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手がけ、多数のCM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も担当。またToro Y Moi、Chet Faker、Madlib、Thundercatなど海外アーティストとも多数共演。さらに、Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド “Ovall” としても活動し、大型フェスの常連となる。また、ビートメイカー・Budamunkとのユニット「Green Butter」、タブラ奏者・U-zhaanと共に「U-zhaan × mabanua」、ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文のソロプロジェクト「Gotch BAND」のメンバーとしても活動中。

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