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いとうせいこう×三浦康嗣 かつての新宿、変わりゆく東京の街を思う

いとうせいこう×三浦康嗣 かつての新宿、変わりゆく東京の街を思う

『-shin-音祭 2019』『-SHIN-夜祭 2019』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:永峰拓也 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

新宿って、大きな街のわりに個人の集合体なんですよね。(三浦)

―当時と比べると、現在の新宿はどうでしょう? やっぱりおとなしくなった印象がありますけど。

三浦:そうですねえ。単純に言うと、もう新宿に行かなくなっちゃってるんですよね。飲み食いするのも御徒町とか上野あたりになっちゃって。

いとう:東京の東が強くなってるんだね。

三浦:神楽坂に引っ越したのも、古くからあった土地に惹かれるようになったからだと思うんですよ。ニュータウンではなく、オールドタウンに惹かれてる。

三浦康嗣

いとう:たしかに、たとえば演劇を観に行こうと思っても原宿や渋谷で公演やってます、と聞くと「それはチェックしなくても大丈夫かな。誰かがなにか言うだろう」ってなるもん。で、むしろ北区とかの怪しげな場所でやってる演劇のほうに足が向いちゃう。「なんでそこでやる?」って思わせるもの。

三浦:すげえ雑にまとめますけど、渋谷・原宿に行くものはいい意味でも悪い意味でも漂白されてて、商品っぽいものになりがちというか、むしろそうじゃないと勝負できないというか。

いとう:そうね。そういう意味でも昔の新宿は「漂白」って感じがしなかった。新宿騒乱のあった1968年、1970年代周辺の学生運動で大暴れしていた空気や匂いは、1980年代にもまだまだあった。フォークゲリラの残滓がすごくあったし、一世代上の人が書く小説にもそういうのが残っていたから。だからこそ逆に反発して僕らは「もっと漂白したものをやろう」と思ったんだよ。まさにポストモダン。

三浦:逆にね。

いとう:でもだんだんと歳をとってくると「ただのポストモダンもつまらないなあ」となって、どこか新宿的、政治的なものに意識が向いていく。だから最近は、それこそJAGATARA(江戸アケミを中心とする、日本のファンク・ロックバンド)まわりの兄貴たちと付き合いができてきて、そういう兄貴たちとも話せるようになってきた。

三浦:なるほどね。

いとう:東東京の話が出たけれど、最近はむしろ東京の東や北のほうが漂白され始めていて、『-shin-音祭』みたいなのはまずできなくなってる。行政や企業主導の大きな都市開発のなかで、オールドタウンのよさが失われている。やっぱりもっと小さいもの、個人、人がいて成り立つものが大事なんだよ。

特に新宿文化は、構造じゃなくて、とにかく人だったと思う。小さな映画館とかに名物オヤジが必ずいて、彼らは地域では文化人で、その人が頑固だからいつまでたってもヤバい映画しかやらない。そういうマインドが新宿にはあったし、今もある。

三浦:新宿って、大きな街のわりに個人の集合体なんですよね。

いとう:それが大事なんだよ。渋谷とか、プロジェクト単位の「構造」で動くじゃない。

左から:いとうせいこう、三浦康嗣
左から:いとうせいこう、三浦康嗣

文化人が必ずいた喫茶店も閉まっちゃったし、あの店もこの店もなくなってる。ちょっと驚くべき事態だよ。(いとう)

―駅があって、隣接してでかい商業ビルを建てて、っていう。

いとう:下町でさえそういう資本の力がずんずん入ってきてるから。俺が生まれ育った下町に戻って行ったのが30年くらい前だけど、そのときは観光客なんてまったくいなくてさ。浅草の人から「せいちゃん。ここはもうダメだから、作家として見届けてくれ」なんて言われてたんだよ。それが、テレビの取材とかでだんだんと人が増えてきて、今度のオリンピックの影響で外国の人がガーンと増えて、今はもうまともに歩けないくらいごった返してるんだから、驚きだよ。

で「このまま、うまくやっていけばいいなあ」とみんな思ってて、商店街の人たちはなるべく全国区のチェーン店を入れないようにして守ってたんだ。だからこそ、街の魅力に人が集まってきた。

三浦:うん。

いとう:それが今はもう抵抗しきれなくなってしまっている。一気にホテルは建つ、商業施設はできるってんで街並みが変わってきちゃってる。別の意味で終わってしまいそうだよ。せめて観音裏だけは守って、なんとか昔からの浅草らしさを残そうと頑張ってるけど、それもいつまでできるかわからない。文化人が必ずいた喫茶店も閉まっちゃったし、あの店もこの店もなくなってる。ちょっと驚くべき事態だよ。

いとうせいこう

三浦:戦(いくさ)みたいなことになってるんですね。

いとう:いまの浅草同様に新宿も同じような経験をしたわけだけど、それをどう跳ね返すか、隙間でとんでもない店を作り続けられるか、っていうのはあるよね。

街は人が作っているんだから。駅が作った街じゃないんだ。(いとう)

三浦:僕が御徒町あたりに通ってるのって、単純に夜中まで美味しい店がやってる、とかでもあるんだけど、よくよく考えてみると御徒町、湯島、末広町、上野、仲御徒町、上野広小路あたりって駅が多すぎて、むしろ駅が中心になってない街なんですよね。上野広小路の通りがめちゃくちゃ広いのは、延焼を防ぐための江戸時代の街作りの名残だし。デペロッパー的な、駅を中心にした文化圏じゃない街である、ってことが好きな理由なのかなと。

いとう:それは重要な指摘だね。

三浦:それから、普通にアジア系の店が多い。アメ横センタービルの地下に買い出しに行っても、いろんな国の人が集まっていて、日本じゃないような感じがある。多様性みたいなものがちゃんとあるんですよ。

ここ数年強く思うんですけど、日本の人って日本人とそれ以外って分け方をすごくするでしょう。白人だけど日本国籍って人もいるはずだし、南米系だけど日本人とか、いろんな人がいるじゃないですか。なのに、分けすぎるのは文化的に、ひいては経済的にもよくないことを招くと思う。その点でも、センタービルあたりの溶け合ってる感じはホッとするんですよ。

三浦康嗣

いとう:個人的に「浅草すげえな!」と思ったことがあってさ。まだ日本ではイスラム教徒向けの食品が一般的でない時期に、浅草観光連盟の会長が「いとうさん、今度ハラルを表示するようにしたから」って言ったとき「めちゃくちゃ進んでるよこの街!」って思った。詳しく聞くと「ハラル食の人が観光に来たのに、お土産買えないとかかわいそうだと思うんだよ」って。そういう人間的な理由でいいんだよ。街は人が作っているんだから。駅が作った街じゃないんだ。

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イベント情報

『新宿フィールドミュージアム「-shin-音祭 2019」』
『新宿フィールドミュージアム「-shin-音祭 2019」』

2019年10月5日(土)
会場:東京都 新宿区立新宿文化センター
出演:
GRAPEVINE
あらかじめ決められた恋人たちへ
bonobos
□□□
MONO NO AWARE
サンガツ
KAKATO(環ROY&鎮座DOPENESS)

国府達矢バンド
betcover!!

haruru犬love dog天使
Kaco
室井雅也
and more
料金:3,000円

『新宿フィールドミュージアム「-SHIN-夜祭 2019」』
『新宿フィールドミュージアム「-SHIN-夜祭 2019」』

2019年10月4日(金)
会場:東京都 新宿 LOFT、ROCK CAFE LOFT、MARZ、ACB HALL
出演:
石野卓球
菊地成孔(DJ) feat. FINAL SPANK HAPPY
三浦康嗣(DJ)
999999999
Compact Club
and more
料金:3,000円

プロフィール

□□□
□□□(くちろろ)

1998年に三浦康嗣を中心にブレイクビーツユニットとして結成。以降、徐々にポップス中心のスタイルへと移行。現在のメンバーは村田シゲ、いとうせいこうと、「契約社員」として募集したボーカリスト9名を含めた計12名。2004年にHEADZ内のWEATHERより1stアルバム『□□□』をリリース。2006年には坂本龍一らが設立したcommmonsへ移籍、2007年にブレイクビーツアルバム『GOLDEN LOVE』をリリースする。2009年にはフィールドレコーディングオーケストラと銘打った『everyday is a symphony』、声のみで構成した『マンパワー』など作品毎にさまざまなコンセプトを提示している。2016年、the band apart主宰のasian gothic labelに移籍。the band apartのメンバー全員をボーカリストに迎えたコラボレーション作品『前へ』をリリース、2017年7月に移籍後初の単独音源『LOVE』を発表した。

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