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演劇×建築で人と人を近づけ対話を生む。JK・アニコチェ×山川陸

演劇×建築で人と人を近づけ対話を生む。JK・アニコチェ×山川陸

フェスティバル/トーキョー19
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:鈴木渉 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

シェア、分有、オープンソース化、コモンズといった新しい所有の考え方は、ネットカルチャーの広がりとともに一般化したが、いっぽうで目には見えない格差を生む一因にもなりつつある。Google、Amazon、Facebook、Appleのサービスにお世話にならない日はほとんどないが、その便利さの影で、ライフスタイルは画一化し、利便性と引き換えに個人情報はどんどん吸い取られる。自由なようで不自由な日常がいつまでも続く……というのが、2019年時点の私たちの生だろう。では、そこから距離を置いて生きることは可能だろうか? それを問うようなプロジェクトがまもなく始まる。

フィリピンを中心に活動するアーティストのJK・アニコチェと、建築家の山川陸がコラボレーションして発表する『Sand(a)isles(サンドアイル)』は、移動式の砂場を使って新しい公共、新しいコミュニケーションの回路を開くものであるという。異なる分野、異なる文化圏で生れ育った2人の作家に話を聞いた。

パフォーミングアーツと建築には、「どのように人々が一緒にいるか?」を問う、という共通点があると思っているんです。(アニコチェ)

―アニコチェさんと山川さんは、パフォーミングアーツと建築という異なる分野で活動していますが、社会への意識など共通するところも多く感じます。それが新作『Sand(a)isles(サンドアイル)』を共同制作する理由にもなったように思うのですが、どんなきっかけからこのプロジェクトは始まったのでしょうか?

左から:山川陸、JK・アニコチェ
左から:山川陸、JK・アニコチェ
左から:山川陸、JK・アニコチェ

山川:『Sand(a)isles』は『F/T』のなかの「トランスフィールド from アジア(以下、TFA)」という企画のひとつなのですが、僕は昨年のTFAにも空間設計として関わったんですね。そのときはカンボジアの作家との制作だったのですが、リサーチのために同国を訪ねてみて「ただ会場をデザインするだけじゃ意味がないのでは?」と思ったんです。

TFA自体のねらいも、単に海外アーティストを招聘して公演・展示して終わり、ではなくて、彼らが作品を作るに至った背景、生れ育った社会、パフォーマンスを通してどのような身体性が育まれてきたのかまでを深堀りして伝えることでしたから。それで昨年は、自主的にリサーチ成果をまとめた冊子を作って配布したんです。今年は、その発展系として作品作りの段階から関わることになったわけです。

アニコチェ:私自身、建築にはとても興味があったんです。タイミングが揃ったのか、なんと今年は陸さんも含めて3組とコラボレーションするのですが(笑)。

―パフォーミングアーツの人が建築に興味を持つ、というのが面白いですね。

アニコチェ:この2つには共通点があると思っているんです。私はパフォーマンスを、「どのように人々が一緒にいるか?」を考えるためのソーシャルエンジニアリングの実践ととらえて被災地や内戦のあった土地での活動を続けているのですが、同様の問いを建築の分野で立てている人は非常に多くいるんですよ。

JK・アニコチェ<br>マニラを拠点に活動する「シパット・ラウィン・アンサンブル」のアーティスティック・ディレクター。被差別、被災コミュニティの若者向けのワークショップや読み聞かせの普及など、コミュニティと舞台芸術との関係を軸に幅広く活躍する。
JK・アニコチェ
マニラを拠点に活動する「シパット・ラウィン・アンサンブル」のアーティスティック・ディレクター。被差別、被災コミュニティの若者向けのワークショップや読み聞かせの普及など、コミュニティと舞台芸術との関係を軸に幅広く活躍する。

街中ではまったく違う行為や意思が共存できてしまう状況が、なぜ劇場だとできないのかが不思議なんですよね。(山川)

―そういえば、山川さんもパフォーマンス作品の制作に関わる機会が多いと聞きました。

山川:はい。『Whenever Wherever Festival』というフェスの企画に関わっているのですが、今回のプロジェクトはそのB面みたいに考えてるところがあります。テーマは「現実の都市的状況を、いかにして劇場に持ち込むか?」です。

例えば、街中だとスマホをいじっている人のすぐ隣で、募金活動をしている人がいたりしますよね。街中ではまったく違う行為や意思が共存できてしまう状況が、なぜ劇場だとできないのかが不思議なんですよね。いっぽうアニコチェさんがやっているのはその逆で、ふつうは劇場で行われるパフォーミングアーツを、外の社会で実践している。まさにソーシャルエンジニアリングとして。劇場から社会へ、社会から劇場へ、という違いはあっても、それぞれの技術や知恵をフィードバックできるはずだ、というのが僕たちの共有する考えなんです。

―そこでパフォーマンスと建築がクロスしたんですね。

アニコチェ:そのとおりです(笑)。

山川:加えて言うと、僕はアニコチェさんに助けられるところがとても多いです。建築家って、問題のフレームを見出して、その対処法を考えるのは得意だけれど、最初の主題となるモチーフを設定することが苦手な職業だと思うんです。実際に僕がそうなんですが(苦笑)。クライアントありきの仕事ですから、どういう家にしたい、どういう暮らしがしたい、という動機は施主さんからもたらされるもので。

だけど、作品創作となると自分でモチーフを決めないといけない。そのときにアニコチェさんがそもそも持っている、ローカルで活動すること、人や社会のなかから取り組むべき課題を発見する、アーティストとしての才能に助けられました。

山川陸(やまかわ りく)<br>1990年生まれ。松島潤平建築設計事務所を経て、東京藝術大学美術学部教育研究助手。建築意匠を介した非言語情報の読み取りを関心として活動する。演劇カンパニー「新聞家」の美術制作、「Whenever Wherever Festival」(18-19)の空間設計も手がける。
山川陸(やまかわ りく)
1990年生まれ。松島潤平建築設計事務所を経て、東京藝術大学美術学部教育研究助手。建築意匠を介した非言語情報の読み取りを関心として活動する。演劇カンパニー「新聞家」の美術制作、「Whenever Wherever Festival」(18-19)の空間設計も手がける。

アニコチェ:私も陸さんとコラボしてよかったですよ! お互いにアートや建築の手法を、外の世界に開いていく実践をすでにやっていますからね。

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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー19』
『フェスティバル/トーキョー19』

2019年10月5日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場、あうるすぽっと、シアターグリーンほか
主催:フェスティバル/トーキョー実行委員会
「トランスフィールド from アジア」共催:国際交流基金アジアセンター

『Sand(a)isles(サンド・アイル)』
2019年10月28日(月)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 周辺
演出・設計:JK・アニコチェ × 山川陸

『やわらかなあそび』
2019年11月9日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 シアターグリーン BIG TREE THEATER
演出・出演:谷口暁彦

『Bamboo Talk(バンブー・トーク)』『PhuYing(プニン)』
2019年10月25日(金)~10月27日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
振付:ウンラー・パーウドム、ヌーナファ・ソイダラ

『To ツー 通』
2019年11月2日(土)~11月4日(月)
会場:東京都 池袋 シアターグリーン BIG TREE THEATER
企画・出演:オクイ・ララ × 滝朝子

『トランスフィールド from アジア トーク』
2019年11月2日(土)、11月3日(日)、11月9日(土)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シンフォニースペース他

『ファーム』
2019年10月19日(土)、10月20日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
演出:キム・ジョン
作:松井周

『新丛林 ニュー・ジャングル』
2019年10月18日(土)~10月20日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターウエスト
コンセプト・演出・出演:香料SPICE

『Strange Green Powder』
2019年10月24日(木)、10月26日(土)、10月27日(日)
会場:東京都 池袋 豊島区立目白庭園 赤鳥庵
振付・演出:神村恵

『Changes シーズン2』
2019年11月2日(土)~11月4日(月)
会場:東京都 池袋 HUMAXシネマズ
ディレクション:ドキュントメント

『オールウェイズ・カミングホーム』
2019年11月9日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
原案:アーシュラ・K・ル=グウィン
演出:マグダ・シュペフト

『NOWHERE OASIS』
2019年11月1日(金)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 劇場前広場 ほか
コンセプト・ディレクション:北澤潤

『ひらけ!ガリ版印刷発信基地』
2019年10月12日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 大塚 ガリ版印刷発信基地
ディレクション:Hand Saw Press

『Sand (a)isles(サンド・アイル)』
『Sand (a)isles(サンド・アイル)』

演出・設計:JK・アニコチェ×山川陸

日時:2019年10月28日(月)18:00~
Aルート

日時:2019年10月29日(火)18:00~
Bルート

日時:2019年10月30日(水)18:00~
Cルート

日時:2019年10月31日(木)18:00~
Dルート

日時:2019年11月日(金)18:00~
Aルート

日時:2019年11月2日(土)12:00~/17:00~
ABCDルートで同時実施

日時:2019年11月3日(日)12:00~/17:00~
ABCDルートで同時実施

日時:2019年11月4日(月)12:00~/17:00~
ABCDルートで同時実施

日時:2019年11月6日(水)18:00~
Bルート

日時:2019年11月7日(木)18:00~
Cルート

日時:2019年11月8日(金)18:00~
Dルート

日時:2019年11月9日(土)15:00~
ABCDルートで同時実施

日時:2019年11月1日(日)13:00~
ABCDルートで同時実施

受付場所:
Aルート:としまエコミューゼタウン 南側地区広場
豊島区南池袋2丁目45-1

Bルート:シアターグリーン BIG TREE THEATER
東京都豊島区南池袋2丁目20−4

Cルート:池袋青柳ビル前
東京都豊島区池袋2丁目43−1 池袋青柳ビル

Dルート:IKE・Biz(としま産業振興プラザ)前
東京都豊島区西池袋2丁目37−4

プロフィール

JK・アニコチェ

マニラを拠点に活動する「シパット・ラウィン・アンサンブル」のアーティスティック・ディレクター。被差別、被災コミュニティの若者向けのワークショップや読み聞かせの普及など、コミュニティと舞台芸術との関係を軸に幅広く活躍する。

山川陸(やまかわ りく)

1990年生まれ。松島潤平建築設計事務所を経て、東京藝術大学美術学部教育研究助手。建築意匠を介した非言語情報の読み取りを関心として活動する。演劇カンパニー「新聞家」の美術制作、「Whenever Wherever Festival」(18-)の空間設計も手がける。

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