
the engyの研究発表 今の時代の「芸術性と大衆性を成す音」とは
the engy『Talking about a Talk』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:垂水佳菜 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
休符で遊んでる音楽のことを「音数が少ない」という言葉で表されているのだと思う。
―ぜひ聞かせてください。
山路:「楽器の数が少ない=音数が少ない」ではないんですよね。僕たちの中で常に一番の曲が“ルビーの指輪”(寺尾聰、1981年)で、あの曲は本当にすごくて。めっちゃ音入ってるんですけど、全部の住み分けがちゃんとできてるんです。あれには勝てないなって思う。
つまり、音色ごとの役割がはっきりしていて、すべての楽器がそれぞれの役割を全うしてることが「音数が少ない」のだと思う。だから、ちゃんとその状態を保てれば、楽器の数を増やしても「音数が少ない」という状態にはできるんです。それを「やりすぎ」でできないかなって、今回は思ったんですよね。
―やりすぎてるんだけど、でもその全部がちゃんと役割を全うしてる曲を目指したわけですね。
山路:休符で遊んでる音楽のことを「音数が少ない」という言葉で表されているんだと思っていて、そのかっこよさもすごくわかるんです。ただ、その一方で、「ダーン!」もかっこいいと思うから、その両方に手を伸ばしたかったんです。
曲を作るときの大きなテーマとして、「芸術性と大衆性は結びつく」と考えている。
―the engyの歌詞は基本英語ですが、新作では日本語の歌詞も登場しています。これはどんな考え方の変化の表れだと言えますか?
山路:もともとは、中学生のときに「もしかして日本語って、自分がやりたい音楽にハメるための言葉じゃないんじゃないか?」と思って、英語で歌うようになったんです。最初は使えそうなフレーズを書き溜めることから始めたんですけど、「これは膨大な時間がかかるから、しゃべれるようになった方が早い」と思って、英会話学校に行って。
今回は……まあ、「日本語を聴きたい」という声が多かったので、やってみたら、意外とよかったということなんですけど(笑)。日本語で歌詞を書く上では、文字に起こしたときにきれいじゃないと嫌だし、耳に入ったときに心地よくないと嫌で。(マキシマム ザ)ホルモンとか日本語使うのが上手いなって思うんですけど、僕も全部音で捉えてて、音に当てはめた結果、ラップっぽいフロウになった感じです。
まだまだ日本語は模索中ではあって、今度はちゃんとしたメロにどうやったらハメられるのかも試したいんですけど……そこに関してはサカナクションがすごく高いところにいると思うので、同じことをやっても意味がないし、僕らの現状はこれ、という感じですね。
the engy“In my head”(Apple Musicはこちら)
―ホルモンやサカナクションもそうだと思うんですけど、すごく研究されていて、作り込まれてるんだけど、決して難しい印象ではなくて、あくまでポップミュージックですよね。そこに関してはthe engyも一緒かなって。
山路:そうですね。曲を作るときの一個の大きなテーマとして、「芸術性と大衆性は結びつく」というのは考えていて。芸術性を突き詰めた結果、大衆性から離れちゃうと、狭いものになっちゃいますよね。でもーー語るのもどうなんって話ですけどーーThe Beatlesにしろ、ゴッホにしろ、すごく芸術的で、すごく大衆的でもある。そういうものがかっこいいとはずっと思ってます。広くに働きかけるけど、すごく尖ってもいる。そういうのを作りたいという欲求がありますね。
―やっぱり、「おしゃれバンド」というイメージからはかなり遠いところにいますよね。
山路:よかったです。まあ、そう呼んでくれても全然いいんですけどね。
the engy『Talking about a Talk』(Apple Musicはこちら)
リリース情報

- the engy
『Talking about a Talk』初回限定盤(CD) -
2019年10月30日(水)発売
価格:2,530円(税込)
VICL-652571. At all
2. Still there?
3. Sick enough to dance
4. In my head
5. Touch me
6. Hey
7. I told you how
8. Have a little talk
9. Sick enough to dance [Pf ver.](ボーナストラック)
- the engy
『Talking about a Talk』通常盤(CD) -
2019年10月30日(水)発売
価格:2,200円(税込)
VICL-652581. At all
2. Still there?
3. Sick enough to dance
4. In my head
5. Touch me
6. Hey
7. I told you how
8. Have a little talk
イベント情報
- 『ONEMAN LIVE「Talking about a Talk」』
-
2019年11月25日(月)
会場:東京都 渋谷 WWW2019年12月3日(火)
会場:大阪府 心斎橋 Pangea
- 『「Talking about a Talk」インストアLIVE』
-
2019年11月16日(土)
会場:東京都 タワーレコード新宿店7F イベントスペース2019年11月17日(日)
会場:大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース2019年11月23日(土)
会場:京都府 タワーレコード京都店 イベントスペース
プロフィール

- the engy(じ えんぎー)
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京都発。山路洸至(Vo,Gt,Prog)と濱田周作(Ba)、境井祐人(Dr)、藤田恭輔(E.Gt,Cho,Key)の4人からなるロックバンド。山路のスモーキーかつブルージーな歌声とソウル、ヒップホップ、ダンスミュージック、エレクトロニックなどあらゆるジャンルを取り込みつつ緻密に構築されたトラックメイクとロックサウンドが特徴。 2017年5月に自主制作盤1st EP『theengy』を発売。未流通の自主制作盤ながら耳の早いバイヤーがYouTubeなどで楽曲をキャッチし、コアな専門店やアパレル店などで取り扱いされ関西を中心にジワジワと存在感を増しいく。2019年には『Touch me』(6月12日配信)、『Still there?』(8月28日配信)と配信シングルを立て続けにリリースし、Apple Music「今週のNEW ARTIST」への選出、Spotifyでは国内外複数のプレイリストに取り上げられるなど更に注目度を上げている。