パノラマパナマタウンが掬いあげる、社会の中で死んじゃってる心

パノラマパナマタウンのフロントマン・岩渕想太と初めて出会ったのは、アート集団・Chim↑Pomの個展だった。レコード会社・A-Sketchのスタッフ(この人→なぜA-Sketchはflumpool、ワンオクなどヒットを続けられるのか?)と偶然会って話していたら、隣にいたのが彼だった。正直に言うと、当時の私はまだパノラマパナマタウンの音楽や表現をちゃんとは知らなかった。でも、彼としゃべればしゃべるほど、彼がどれだけ好奇心旺盛で、あらゆるカルチャーを目をキラキラさせながら貪欲に吸収していて、アンダーグラウンドなものも掘りながらも、オーバーグラウンドにも目を向けて、今の時代を生きる人がなにを考えているのかを敏感な感性で感じ取っている方だと知り(あと実家が餅屋だということも)、どんどんとリスペクトが湧いていった。

そんなパノラマパナマタウンが、バンドとしての表現力と説得力を一段上げてミニアルバム『GINGAKEI』を完成させたタイミングで、CINRA.NETとして初めてインタビューさせてもらうことにした。さらには、CINRAが運営する渋谷ヒカリエ8Fのカルチャースペース「MADO」で、パノラマパナマタウンの世界観を体感してもらえるイベントを企画した。

自己肯定感を持てないこと、他人に合わせてしまうこと、社会の型にハマって物事を考えてしまうこと、迷惑をかけないのが絶対的な正しさだと思っていること……パノラマパナマタウンは、人々が無意識に身につけている様々な枷を外しにかかってくる。

人が喜ぶように生きて、自分を殺しちゃいがちだったんです。それが昔からコンプレックスだった。(岩渕)

パノラマパナマタウン
左から:タノアキヒコ(Ba)、田村夢希(Dr)、岩渕想太(Vo,Gt)、浪越康平(Gt)
福岡、広島、大阪、神戸と、それぞれ出身の異なる4人が、神戸大学の軽音楽部で集まり、結成されたオルタナティヴロックバンド。ロックとヒップホップ両方に影響を受けた、熱いライブパフォーマンスと独特なワードセンスを武器に奔走する。「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」が「MASH A&R」として主催する4社合同オーディションでグランプリを獲得。2018年1月にメジャーデビュー。2019年11月13日にミニアルバム『GINGAKEI』をリリースし、同月15日からアルバムをひっさげてのツアー『銀河探察TOUR 2019-2020』を開催。年明けには大阪BIGCAT、恵比寿LIQUIDROOMでもワンマンライブも決定している。

―これまでのパノラマパナマタウン(以下、PPT)の曲は、自分が抱えてるモヤモヤを吐き出したり、メッセージを自分自身にも言い聞かせてたところがあったように思うのですが、最新作『GINGAKEI』を聴かせてもらって、今はもう自分の生き方に対して確固たる意志を持っているし、メッセージは自分に向いてるのではなくて人に伝えている、という姿勢に変わったなと感じました。

岩渕(Vo,Gt):そうですね。確かに、前までは葛藤とか自分の悩みがそのまま歌詞になってたけど、今回は……まあまだ自分のこともあるけど……やっぱり人に伝えたいことが鮮明に出てると思います。

前作(『情熱とユーモア』2019年2月発売)は、メジャーに行って最初のフルアルバムということもあって、音楽的にもなにをするかすごく悩んでいたときだったし、歌いたいことはずっとあったけど、いざとなると「自分が伝えられること、歌えることって、なんだろう」って悩んだりもして。やっぱり、一個腹が決まったのがデカイかもしれないです。

岩渕想太

―腹が決まった、というのは?

岩渕:自分たちが面白いと思うことをしないと、面白いと思ってもらえないなって。メジャーに行って、自分で枷をハメてたところがあったなと思ったんです。「ロックバンドってこうじゃなきゃいけないんじゃないか」って考えたり、プレッシャーを抱えてダメになっちゃったり、焦ってた感じもあったし、焦ってがむしゃらにやってた部分もたくさんあったりして。

もともと自分たちは4人の楽しいことをやっていたはずで、枷をハメたりルールを作ったりなんてしてなかったのに、自分で自分のことを面白くなくしてるなっていう気持ちが出てきて。だから今回は、「自分たちが面白いと思えることに振り切ろう」というモードでアー写も撮ったし、曲も作ったし、歌詞も書いたし。

パノラマパナマタウンの最新アーティスト写真

タノ(Ba):前回のアルバムの終盤にできたのが“めちゃめちゃ生きてる”だったんですけど、これができたときに「抜けれたな」という感覚がありました。多分、ハマりきった状態だと、「めちゃめちゃ生きてる」という言葉は出てこなかったと思うし。

実際、ミュージックビデオを撮るときも、岩渕が監督さんに結構いろいろ言って、ちょっとモメたりもしたんですけど、でもそうやって突き通したからこそ納得のいく曲と映像が作れたなっていう感覚があって。しかも、通したら本当に靄が晴れた。だからやっぱり、自分らがやりたいことちゃんと通さないといけないし、やりたいことは無理に抑えないでいいんだなって思いましたね。

タノアキヒコ

―『GINGAKEI』は、日本人が抱いているあらゆる「恐怖心」を指摘しつつ、外へと導いてくれる内容になっているとも思いました。そのひとつは「人からなにか言われること」に対する恐怖心で。今言ってくれたような、自分で自分を抑えなくていいんだよ、他人や社会に合わせようとしなくていいんだよ、というのはこのアルバムのメッセージの大事な核になっていますよね。

岩渕:僕、もともと小さい頃から人に合わせちゃいがちで。いろんな人が見てるところに出たら、みんなが喜ぶようなことをしたり。人が喜ぶように生きようと思ったら、そういうふうに生きれちゃって、自分を殺しちゃいがちだったんです。それが昔からコンプレックスで。

だから、一人ひとりが輝いていこうとか、一人ひとりが本当はもっと面白いはずだからそのまんま輝いてほしい、というメッセージを強く言いたかったんですよね。

―エンターテイナーを演じることができるのもひとつの個性だとは思うけど、自分の素を肯定してもらえることの安心感って人間には必要ですよね。

岩渕:小中高のときは仲良い友達が3人くらいいたんですけど、その友達とかこのメンバーに、「みんなといるときの岩渕ってなんか違うよね」って絶対に言われたんですよ。女の子との1対1の会話でも、「なんか違うよね」って絶対に言われて。本当はこんなんじゃん、もっと面白いじゃん、って。

それで自分に対しての悔しさみたいなものがすごくあって。なんでこんな自分の面白いところを殺さなきゃいけないんだろう、これを素直に出した方がよっぽど面白いのになあ、みたいなつらさがずっとあったんです。

左から:タノアキヒコ、田村夢希、岩渕想太、浪越康平

今はすごく自由になれているんですよね。だから聴いてる人にも枷を外してほしいし、そのまんまでいいんだよ、って歌いたい。(岩渕)

―せっかくメジャーデビューしたのに、そこでもまた自分を隠して周りに合わせるのをやり続けるのか、俺? みたいなジレンマも生まれてたということですか。

岩渕:そうですね。いろんな人と話したりすればするほど、自分がどんどん面白くなくなっていくような気がして。子どもの頃から人と違うことをバーって言ったらいじめられて、みんなの中で生きていくために嘘の自分を作って、みんなが笑顔になることばっかり言ってたから、そういうのが自分の中で染みついちゃってたんですよね。だからいざすごく強い想いがあったりやりたいことがあったりしても、たとえばライブでMCするときとか、こうやってインタビューでしゃべるときも、安全な方、安心な方、みんなが喜ぶであろうことを言っちゃう方に逃げてた。そのたびに「本当に面白くないな」と思って、一人になるとつらくなる、みたいなことがすごくあって。

―音楽って、そもそも自由な場であるはずなのに。

岩渕:そうですね。一番自由な職業だし、やりたいことを選んだはずなのに、自分で面白くなくしてたところがあったなって。

でも今は開き直れて。「めちゃめちゃ生きてる」というメッセージが出てきたり、自分の素を肯定したことによって『GINGAKEI』を作れたりして、今はすごく自由になれてるんですよね。そういう想いで、聴いてる人にも枷を外してほしいし、そのまんまでいいんだよ、って歌いたいと思ってます。……すげえパーソナルな話をしてるけど大丈夫ですかね(笑)。

岩渕想太

田村(Dr):今のパーソナルな話をMCとかで言えばいいのになあっていつも思ってたんですよね。でもやっぱりそれが難しいし、ずっと岩渕にとって戦いでもあったから。

タノ:簡単にできたら曲にならへんもんなあ、そんなの。

田村:そうそうそう。戦わないとおもんないし。でもこうやって自分の人生が作品になって、それで共感して聴いてくれる人が増えるのはすごくいいことだなあと思う。それが多分、最初に言ってくれた、今回の作品に出てる変化なんじゃないかなって思いますね。

田村夢希

小さい頃に公園で会ったホームレスの人が、いろんな遊びを教えてくれたんです。(岩渕)

―“エイリアン”は、今話してくれたような原風景みたいなものを閉じ込めた曲ですか?

岩渕:そうですね。“エイリアン”は、地元とか、小さい頃の思い出とかを書きました。やっぱり、無邪気な心って一番強いなと思って。「馴染めないから」って、型にハマるようにしたり、社会にハマるようにしても、生きやすくはなるかもしれないけど死んでいく心はいっぱいあるから。

パノラマパナマタウン“エイリアン”を聴く(Apple Musicはこちら

―「エイリアン」というのは、変わり者扱いされた自分のことでもある?

岩渕:いや、これは、小さい頃に公園で会ったホームレスの人のことなんです、実は。

―ああ、そうだったんですね。

岩渕:秘密基地の作り方とか、いろんな遊びを教えてくれたんです。子どもの頃の俺にとっては、その人がなんか羨ましくて。父親がせっせと餅を作ってる中で(笑)、この人はすげえ楽しそうに生きてるなあ、自由に生きてるなあ、って。全然金もないはずだし、ろくなもん食ってなかったと思うんですけど。その人が好きだっていう歌ですね、うん。

―ああ、その経験は岩渕さんにとって大きそうですね。

岩渕:デカイですね、確かに。しかもその人、めっちゃ悪い友達にいじめられて、背負い投げされたりして……そういうときも俺は見ていることしかできなかったのが、すげえつらくて。それで結局、その人は公園からいなくなっちゃったんですよね。

世の中は知らないことの方が絶対に多いけど、それってめちゃめちゃプラスだと思うんです。(岩渕)

―“エイリアン”を聴いていると、Chim↑Pomが前に、東京の再開発について話してくれたことを思い出したんです。公共の場って、本当は雑多な人間がいられる空間のはずなのに、あくまでお互いが迷惑をかけないとする人たちが楽しめるための「マジョリティ」の場に変わってる、っていうような(参照:Chim↑Pomが、「ロボット」でなく「人間」レストランを開く理由)。

岩渕:ああ、その話知ってます。余白がなくなってるっていうのは本当に思いますね。誰でも入れるところとか、なにをしてもいい場所がなくなってきてるし、目的があるものしかなくなってきてるっていうのは、渋谷を歩いててもすごく思います。

左から:タノアキヒコ、田村夢希、岩渕想太、浪越康

―今ホームレスの方の話を聞いて、「公共」とか「迷惑」とか「自由」ってなんなんだろう、って改めて思いました。“Chopstick Bad!!!”も、マナーとか礼儀のことを歌ってて、それらって人に迷惑をかけないためにあるんだろうけど、でも迷惑をかけないのが必ずしもいいというわけでもないし。本当は「迷惑をかけちゃだめ」じゃなくて「お互い様」を子供のときから教えた方がいい、って個人的にはいつも思ってるんですけど。

パノラマパナマタウン“Chopstick Bad!!!”を聴く(Apple Musicはこちら

岩渕:確かに、そうですよね。迷惑かけた方がいいことも絶対にあるし。そうしないと突破できないものっていっぱいあるはずですよね。僕も迷惑をかけずに、いざこざが起きないように生きちゃってるから、それがつまんないなと思うときもあるし。僕、本当は、普通の会話では生まれ得ない言葉とか仕草が大事だと思ってるんですよ。

―どういうことですか?

岩渕:今ここで叫んでみるとか、笑いたいときに笑うとか、そういう仕草一つひとつがめっちゃ大事だなと思っていて、そういうのを殺したくないっていう気持ちが本当に、本当にあって。それが社会によって殺されてると思ってるから。

マナーとか慣習とかで普通の会話をしちゃうけど、別に叫びだす人がいてもおかしくないじゃないですか。だから逆に、みんな普通に話してることの方が自分にとっては怖くて。それがやっぱり面白くなくしてることだと思ってますね。もちろん、それが社会を成り立たせてるのかもしれないけれど。

左から:タノアキヒコ、田村夢希、岩渕想太、浪越康平

―『GINGAKEI』は日本人が抱く恐怖心を指摘してくれてる、って最初に言いましたが、「人に迷惑をかけることへの恐怖」もそうだと思う。他には、1曲目“Dive to Mars”では知らないものとかわからないものに対する恐怖心とか否定を指摘していて、それって最近世の中でより顕著になってるなと思っていて。

岩渕:わかるっすわー。未知なものに対して本当に怖くなってるし、未知なものが許せない、みたいになってる人もすごくいますよね。自分が知ってるなにかに変換したい、みたいな気持ちが湧くから、すぐに「何々っぽい」とか括ったりするし。自分らも「何々系」とか言われたりするんですけど、そういうのも結局、なにか知ってるものにハメないと理解できないんだなと思って。

―サビでは<君が見てるより世界は不明!>と言ってるけど、それを恐怖心の意味とかではなく、ポジティブに言っているのは、まさにそうあるべきだなと思いました。

岩渕:不明なことって全然恐れることじゃないし、喜ばしいことだなと思って書きましたね。世の中は知らないことの方が絶対に多いけど、それってめちゃめちゃプラスだと思うんですよ。だって、めっちゃ楽しいじゃないですか?

―岩渕さんがいろんなカルチャーを探求するのも、そういう原動力ですか? カルチャーってなんのためにあるのだろう、という質問も今日岩渕さんに投げてみたいと思っていたんですけど。

岩渕:僕は知らないものに出会いたいんです。音楽にしろ映画にしろ展覧会にしろ、聴いたことのないものや見たことのないものって、永遠にあって。「これ見たことないな!」っていうものが見たくてしょうがない。心を豊かにしてくれると思ったことがなければ、教養が得られるとも思ったことないけど、「見れた!」という喜びがとにかくデカイんですよね。

―すっごくシンプルですね。

岩渕:普通に生きてたら見れないようなものが見れる、知れないものを見せてくれるって、すごく楽しいですから。自分にとってカルチャーはそういう意味ですね。

岩渕想太

本当に、メンバーそれぞれに役割があって、かなりいいバランスだなと思ってる。(浪越)

―こういう好奇心旺盛な岩渕さんの生き方について、他のメンバーはどう見てるんですか?

田村:まあ……そうやんな……(低い小声)。

岩渕:こっわ(笑)。

浪越(Gt):本当に、メンバーそれぞれに役割があって、かなりいいバランスだなと思っているんですけど。それぞれに趣味として自分で動いて吸収しているものがあって、その中で岩渕は見たことないものを見に行ったり、いろんなカルチャーに対しての好奇心旺盛な役割で。僕はそういうのがあまり得意じゃないというか、インドア派やし、カルチャー的なものには閉鎖感を感じてしまうというか……。やっぱり人それぞれに好きなことがありますからね。

浪越康平

岩渕:確かに、メンバーと話すときにいつも思うのが、「自分の好きなものはもう100%面白いし、誰にとっても絶対面白い」って思い込んじゃう節があるということで。「これ面白そう」というのがあったら、絶対チェックして調べて行くもんだっていう、自分の行動原理が頭の中にあるけど、「全員がそうじゃないよ」「独り善がりになってるよ」ということをメンバーに言われて気づくことはあって。

田村:好きなもののおすすめって、言い方を間違えると厚かましく感じるからなあ。

岩渕:(田村)夢希と2人で話してたら、言ってることがまったくわからないときが結構あって(笑)。真逆のことを考えてるときがあるんですよ。

田村:岩渕って、結局主観タイプだと思うんです。なにに対しても。

岩渕:タノも結構主観タイプ。

タノ:そうやな、物事を比較で見れないタイプ。曲を作るときは、最初は主観でも、バンドでやるものとして主観と客観の配合比率は考えるけど……。

浪越:このアルバムなんか本当にその典型的な例だと思ってて。岩渕とタノが主観的に突っ走ってたところで、最終的に僕がそこを相対的に見て、どういうリード曲がいるのかを考えて、“Dive to Mars”の曲をバンッて出せたことでひとつの作品にまとまったような気はしてるから。そういうまとめ役が僕は好きなので。

左から:タノアキヒコ、田村夢希、岩渕想太、浪越康平

―4人結構バラバラなんですね(笑)。『GINGAKEI』って、誰しもに銀河系のように輝くものがあって、だから私は私の中の銀河系を信じるし、あなたの輝くものも尊重するし、ということを歌ってるじゃないですか。

岩渕:はい。

―それを、そもそもこのバラバラの4人が、バンドの中で日々やってるんだなと思いました(笑)。

岩渕:ああ、本当にそうだと思います。4人の好きなものとか、4人の生きてきた道は違うけど、それらが全部絶対ここには入ってるし、話し合って話し合って4人が納得するものを作ったっていうのも、そうだと思いますね。

左から:タノアキヒコ、田村夢希、岩渕想太、浪越康平

今って、音楽を聴き流せる時代だからこそ、ただただ聴き込んでもらう時間を作るのは大事だなと思った。(岩渕)

―11月23、24日には、渋谷ヒカリエ8FのMADOにて、アルバムを体感できる『GINGAKEI探索 in MADO』を開催しました。歌詞を読み込まないと解けない謎解きゲームや、自分のオリジナルジャケットが撮影できるフォトブース、Tシャツの手刷り体験など、やってみていかがでしたか?

会場内でみんなが謎解きに挑んでいる様子
好きなデザインが刷れるTシャツ

岩渕:謎解きに関しては、曲の隅々まで聴かなきゃわからないから、何回も聴くじゃないですか。今って、音楽を聴き流せる時代だからこそ、イヤホンをつけて他の情報をなにも入れずにただただ聴き込んでもらう時間を作るのは大事だなと思ったし、それを楽しみながらやってもらえたと思うのでよかったですね。

田村:岩渕らしい問題やなあと思いましたけど。主観の塊(笑)。だって、解けなかったですよね?

―ヒントがなければ全然無理でした(笑)。

タノ:みんな何時間もおってすごかったな。

浪越:確かに。もう2~3時間います、みたいな人もたくさんいたもんな。

ヒントを与えてくれる、謎解きマスターIWAの映像。1時間に数回だけ流れるため、行き詰まった人たちはその映像を見入っていた
メンバーがサプライズで会場に来た場面

浪越:最初「写真展にしようか」とかも言ってたんですけど、それって本当に押し付けがましいというか。こっちが「こうだ」って言って、それをただ受け取ってもらうより、頭使ってもらうのはよかったなって思いましたね。

岩渕:やっぱり能動的に動いてほしいというか。『GINGAKEI』の中に入ってもらうということはできたんじゃないかなと思ってて。一人ひとりが輝いてる、一人ひとりが面白い、一人ひとりが作れる、というのが言いたいことだったから、フォトブースを作ったり、手刷りのTシャツも「作ったTシャツを売ります」ではなく自分でデザインを決めてプリントできるというやり方をやったし。アルバムのコンセプトを伝えるという意味でもよかったなと思うし、なにより来てる人がめっちゃ楽しそうでよかったです。

自分のオリジナルジャケットを撮影できる、フォトブース

―ちなみに、岩渕さんが歌舞伎町の人間レストランでやる『俺の命はクリスタルガイザー何本分なのよ?』展は、なんなんですか?

岩渕:クリスタルガイザーを定期便で届くようにしてるんですけど、飲み干して、袋に入れてゴミ出しして、また届くみたいな、そのプロセスがすっごい虚しいなと思って。水に生かされてるみたいだなって。そもそも、水が売られてるのがちょっと怖いじゃないですか? これが資本主義、みたいな。

―わかります。500mlのミネラルウォーターを人が買うようになったのって、ここ20年くらいの話ですもんね。

岩渕:水にラベルをつけたら売り物になるっていう事実が、自分の中ですごく気持ち悪くて。だから昔から歌詞とかに「ミネラルウォーター」って入れてたんですけど。なので今回は、クリスタルガイザーを人が行き交うところに置いたら普段持ち得ないような意味を持つんじゃないかなと思って、新宿の至るところに置いて撮った写真を展示するのと、俺が路上でひたすら3時間くらいクリスタルガイザーを飲むだけの映像を流します。

あと、水がずっと無限に循環するクリスタルガイザーのオブジェを作ってます(笑)。それが人生じゃないですか、命じゃないですか。飲んで、捨てて、また水が入ってきて、というのを繰り返すだけで死んでいくから。……というのを表現できたらなあと思ってます。

「普通に考えたらいらなくない?」っていう思考って、めちゃめちゃ恐ろしいなと思う。(岩渕)

―最後に……“エイリアン”で歌ってる<美しく生きている>というフレーズは、このアルバムを根底で支えてる一行なのかなと思っていて。

岩渕:そう思います、はい。

―岩渕さんが思う「美しい生き方」ってなんなのか、ということを最後に聞かせてもらってもいいですか。

岩渕:いろんなものに感動しながら、立ち止まって考えながら、生きるということですかね。「効率よく生きる」の逆で書いているんです。なにも考えずに生きていこうと思ったら生きられるし、ただ生活しようと思ったら便利に生きられるけど、いろんなことに立ち止まって考えたり、感動したり、普段と違うことしてみたり、知らないものに飛び込んでみたり、そういうのが美しいと思う。

それって、普通に毎日効率よく生きてたら生まれない発想だと思うんです。「普通に考えたらいらなくない?」っていう思考があるけど、それってめちゃめちゃ恐ろしいなと思っていて。「いらない」っていうのをやっていったら、もうなんにもなくなっちゃうから。普通に考えたらいらないものを、やっぱりやった方がいいし。

―うんうん。

岩渕:「綺麗」に生きてる、ではなくて、「美しく」なんですよね。「綺麗」の逆くらいの意味で書きました。些細な夕日とかを見ながら、「普段はこうだけど違うことしてみよう」とか、「普段食わないもん食ってみよう」とか、「普段言わないことを言ってみよう」とか、そういう生き方ですね。

左から:タノアキヒコ、田村夢希、岩渕想太、浪越康平
パノラマパナマタウン『GINGAKEI』を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
パノラマパナマタウン
『GINGAKEI』(CD)

2019年11月13日(水)
価格:1,980円(税込)
AZCS-1087

1. Dive to Mars
2. 目立ちたくないMIND
3. ずっとマイペース
4. Chopstick Bad!!!
5. HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~
6. エイリアン
7. GINGAKEI

イベント情報
『パノラマパナマタウン 「銀河探索TOUR 2019-2020」』

2020年1月13日(月・祝)
会場:大阪府 BIGCAT

2020年1月19日(日)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

『俺の命はクリスタルガイザー何本分なのよ』

2019年12月16日(月)~12月25日(水)
会場:東京都 歌舞伎町 人間レストラン
時間:18:00~5:00

プロフィール
パノラマパナマタウン
パノラマパナマタウン

メンバーは岩渕想太(Vo,Gt)、浪越康平(Gt)、タノアキヒコ(Ba)、田村夢希(Dr)。福岡、広島、大阪、神戸と、それぞれ出身の異なる4人が、神戸大学の軽音楽部で集まり、結成されたオルタナティヴロックバンド。ロックとヒップホップ両方に影響を受けた、熱いライブパフォーマンスと独特なワードセンスを武器に奔走する4人組。2015年、ロッキング・オンが主催する『RO69JACK』でグランプリを獲得し、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』へ初出演。「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」が「MASH A&R」として主催する4社合同オーディションでグランプリを獲得。2016年3月には初の全国流通盤となる『SHINKAICHI』をリリース。2018年1月17日、メジャーデビューミニアルバム『PANORAMADDICTION』をリリース。2019年2月13日、1stフルアルバム『情熱とユーモア』をリリース。2019年11月13日にミニアルバム『GINGAKEI』をリリースし、同月15日からアルバムをひっさげてのツアー『銀河探察TOUR 2019-2020』を開催。年内はゲストを迎えた2マン公演で全国をまわり、年明けには大阪BIGCAT、恵比寿LIQUIDROOMでもワンマンライブも決定している。



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